<憑依>絶対に憑依してはいけないあの子

念願の”憑依薬”を手に入れた
男子大学生ー。

だが、友人にそのことを話すと、
”あの子には絶対に憑依するなよ…?”と、
言われてしまい…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「へへへー、天沼(あまぬま)ー
 聞いて驚くなよー」

男子大学生の浜本 四郎(はまもと しろう)が、
ニヤニヤしながらそんな言葉を口にすると、
声を掛けられた相手ー、天沼 久志(あまぬま ひさし)が、
少し呆れ顔で、
「どうせまた、くだらない話だろー?」と笑ったー。

「ーははは、そう思うかー?
 けど、今回は違うんだよなぁ!」

四郎はそう言いながら、鞄から何かを取り出すと、
それを久志に見せつけたー。

紫色の液体が入った小さな容器ー。
それを見た久志は「んだよ、ただのぶどうジュースじゃねぇか」と、
呆れたような笑みを浮かべて、そのまま立ち去っていくー。

「ーいやいやいやいや、お前の目は節穴か?」
久志に対してそう言うと、四郎は今一度振り返って、
「どう見てもぶどうジュースの色じゃねぇか。それともワイン?」と、
首を傾げるー。

「ーはははっ!違うんだなぁ、これは”憑依薬”さー」
四郎が笑いながら言うー。

すると、久志も思わず笑いだしたー。

「あははは!お前、今は9月だぞー
 エイプリルフールには程遠いー」

久志がそう言うと、四郎は「いや、嘘じゃないー。これは本物だ」と
言葉を口にするー。

四郎と久志は、それなりに共通の趣味があり、
”親友”と呼べる間柄だー。
お互いに”憑依”とか”入れ替わり”とか、そんな感じの話も好きで
”初めて抜いた憑依モノ”が偶然同じ作品だったことから、
さらに意気投合して今に至るー。

「ーーーおいおいおい、マジかー?んなもんどこで手に入れたんだ?」
久志がそう言うと、
四郎は「それは企業秘密だ」と笑いながら、
「これで俺は、千秋(ちあき)ちゃんに憑依するんだ!」と、
ニヤニヤしながら言うー。

「え?」
久志が思わず表情を歪めるー。

”内藤 千秋(ないとう ちあき)”は、友達が多く、男子からの人気も高い子ー。
とても可愛らしい見た目に、性格も良いと来たー。
まさに”理想”と言えるような、そんな子だったー。

「はははーやめとけやめとけ」
久志が笑いながら首を横に振ると、
四郎は「な、何でだよー!俺には内藤さんになれないってのか?!」と、
ムキになって言葉を口にするー。

「いや、そうじゃないけどさー…
 そのー、とにかくやめておいた方がいいってー」
久志が繰り返し”やめておけ”と忠告を繰り返すー。

四郎は、てっきり”憑依薬を使うなんて、相手のことも考えろ”と
言われてるのかと思い、反論の言葉を口にしようとするが、
その前に、久志が言葉を続けたー。

「憑依するなら、浅井(あさい)さんとか、
 光谷(みつたに)さんとか、その辺にしとけー」

とー。

その言葉に、
「なんだー…てっきり”憑依なんてやめとけ”とか
 言われてるのかと思ったー」
と、四郎は意外そうに言葉を口にするー。

「いやいや、言わねぇよ。
 ”憑依”が好きな同士なんだし、マジで憑依薬を
 手に入れたなら、俺も憑依したいぐらいだし」

久志がそう言うと、四郎は「へへ…いいだろ~?」と、
少し得意気な口調で憑依薬を見せ付けるような
仕草をしたー。

「ーくっそ~!」
悔しそうにする久志。

そんな久志を見て、少し真顔に戻ると
「まぁ…1本しか手に入らなかったんだー…悪いな」と
言葉を口にしたー

「だったら、仕方ねぇよなー」
久志はそう言いながら、
「憑依に成功したら、俺にもいい思いさせてくれよ」と
ニヤニヤしながら四郎のほうを見つめるー。

「ーーーーなんだなんだ?
 中身は俺でもいいのか?」
四郎が揶揄うようにして言うと
「”中身が他人”だからこそ、興奮するんじゃねぇか」と、
久志は笑いながら言葉を口にしたー。

「よ~しじゃあ、今日の放課後、早速内藤さんに憑依してーー
 天沼、お前と一緒にー」

四郎がそう言いかけると、
久志は「いや、だから内藤さんはやめとけってー」
と、再び言葉を口にしたー。

さっきから久志は、やたらと”内藤千秋”への憑依だけは
やめておけ、という言葉を繰り返しているー。

「え~…なんでだよ」と、不満そうな顔をする四郎ー。

「とにかく、やめとけ!
 確かに内藤さんは可愛いけど、浅井さんとか、光谷さんも
 十分可愛いだろ!?」

久志がそう言うと、
「俺は内藤さんがいいんだよ~!」と、駄々をこねるかのように
四郎が言い放つー

「ダメダメダメ!絶対に内藤さんに憑依するなよ!絶対に!」
久志が釘を刺すようにそんな言葉を口にしてくるのを見て、
「なんだよ…」と、四郎は少し考えから、
「あ、まさかお前、内藤さんのこと、好きなんだろ?」と、
ニヤニヤしながら笑うー。

別に、”憑依なんてやめとけ”と言ってくるわけじゃないー。
浅井さんや光谷さんへの憑依は勧めているところを見ると
”誰かの身体を奪うなんて、許せねぇ!”と、いうことではないのだろうー。

それなのに、”内藤さん”への憑依だけ、
”やめろ”と言ってくるのには、何か理由があるはずだー。

そう思った四郎は”答え”にたどり着き、ニヤニヤと笑うー。

「ーーーあ、わかったー」
四郎がそう言うと、久志は「な、なにがだよー」と、
少し気まずそうな表情を浮かべるー。

「天沼、お前、内藤さんのこと好きなんだろ?」
そんな言葉を口にしながら、久志のほうを指さす四郎。

「ーーあ???」
久志のそんな返事に、四郎はニヤニヤしながら
言葉を続けるー。

「ーいや、だってさ、何で内藤さんはダメなのにー
 浅井さんや光谷さんのことは勧めるんだよー?
 どう考えてもおかしいだろ」

四郎がなおもニヤニヤしながら
そこまで言葉を言い終えると、
久志は「べ、別にそんなんじゃねぇよ」と
少し顔を赤らめながら言うー。

「ーへへへ…照れるな照れるな
 まぁ、好きな子が”俺”になっちゃうって思うと
 確かにいい感情を持たない気持ちも分かるけどさー
 内藤さんに憑依したら、たっぷりお楽しみさせてやるからー

 もちろん、ホラ、
 キスもさせてやるし、胸も触らせてやるしー
 何ならヤラせてやってもいいしー
 
 コスプレだって何だってしてやるぜ!」

四郎は嬉しそうにそこまで言い終えるー。

がー、久志は「いや、そうじゃない」と、言い放つと、
冷静な表情のまま「とにかく、内藤さんには憑依するな!」と
言い放つー

「な、何だよー エロイことさせてやるって言ってんだからー
 いいじゃんかー」

四郎が不貞腐れた様子で言うー。

しかし、久志は引かず、
「だったら、浅井さんか光谷さんあたりの身体で楽しませてくれよ」
と、言葉を口にするー。

”浅井さん”や”光谷さん”たちからすれば
自分の人生が身体ごと奪われるかもしれない、
恐ろしい会話だが、本人たちがそれを知る由はないー。

「ーーはっは~~!なるほどなるほど、そういうことか」
四郎はそう言うと、
「分かった分かった!じゃ、そうするよ」と
笑いながら立ち去って行こうとするー。

「お、おいっ!内藤さんには憑依するなよ!
 絶対!絶対だぞ!」
釘を刺すかのように”内藤千秋には憑依するな”を繰り返す久志ー

「はいはいはいー」
四郎はそう言いながら、一人歩き出すと、
”内藤さんが好きなんじゃなくて、俺に浅井さんか光谷さんに
 憑依してもらって、楽しみたいんだなー”と、
四郎は解釈し、笑みを浮かべたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

四郎は憑依薬を手に、深呼吸をすると、
それを飲み干しー、
実際に”幽体離脱”を成功させてみせたー。

「うぉっ…すげぇ!本当に…本当に幽霊みたくなってる!」
そう叫ぶ四郎ー。

だが、その声は周囲にはもはや聞こえないー。

四郎はニヤリと浮かべると、
”ー悪いな久志”と、心の中で呟くー

”絶対に〇〇するなって言われるとー、
 したくなっちゃうのが、人間ってもんだろー?”

そう思いながら、霊体になった四郎は
早速大学へと向かうー。

目当てはもちろん、最初から憑依しようと決めていた
”内藤 千秋”だー。

霊体のまま大学に到着した四郎は、
周囲を見渡すー

”この空を飛んでる感じもたまんねぇなー
 憑依薬は、鳥になりたいって夢も叶えてくれるんだなー”

そんなことを心の中で呟きながら、
内藤千秋の姿を発見すると、
四郎は笑みを浮かべたー

「ーあぁ…今日もおしゃれで可愛いー」
そんなことを口にしながら、四郎は
その様子を見つめるー。

流石に”周囲にたくさん人がいるタイミング”で
憑依するのは良くないー。
何とでも誤魔化すことはできるかもしれないがー、
いきなり千秋が倒れたり、「うっ!」とか、変な声を出したり、
抵抗して、”たすけて”とか、周囲に助けを求めたりしたら、
すぐに乗っ取ることができたとしても
色々問題が生じる可能性があるからだー。

「隣にいるのは光谷さんかー。
 確かに光谷さんも可愛いけどなー」

リボンに眼鏡がトレードマークの”光谷さん”も、なかなか可愛いー。
けれど、四郎からすれば
やはり千秋一択なのだー。

「じゃあ、またあとで~」
”光谷さん”が手を振りながら千秋と別れるー。

千秋が一人、歩き出して、
大学構内の”人通りの少ない場所”に差し掛かったー。

今なら”周囲に誰もいない”状態だー。

「ー今だ!」
四郎は、そのタイミングを見逃さなかったー。

千秋の身体めがけて、霊体を突進させる四郎ー。

千秋の身体に入り込む感触ー
今まで感じたことのない感触に笑みを浮かべるー。

がーー
次の瞬間ー。

目に入ったのは”千秋の視界”ではなくーー
謎の白い空間だったー

「ーなんだ、貴様はー?」

「ーー!?」

四郎が表情を歪めるー。

「ーーーお、お前こそ誰だ!」
四郎が叫ぶと、その金髪の男は表情を歪めたー。

「ーーーーーここにいるということはー
 お前も”この女”に憑依した…ってことだよな?」

金髪の男がそう言うと、
四郎は「え…」と、困惑するー。

「ーこの身体は”俺のモノ”だー。
 先客のいる身体に憑依するなんて、いい度胸じゃねぇかー。

 ん~~…まさか”アイツ”が口を滑らせたのか?」

金髪の男が一人でそう言うと、
四郎のほうを見て、四郎が完全に困惑している様子を浮かべていることに気付き、笑うー。

「ーいや、そういうわけじゃなさそうだなー
 ただのバカかー」

金髪の男が笑みを浮かべるー。

実はーーー
四郎の友人・久志は以前、”千秋”が、一人で胸を揉みながら
”この身体は俺のものだぜ”と叫んでる現場に遭遇してしまったー。

その際に”いい思いをさせてやるから、絶対に喋らないと約束してくれ”と言われてー
久志はその約束を守っていたー。

そこに、四郎が”千秋に憑依する”と言いだしたため
久志は”千秋に憑依している金髪の男”との約束を守りつつ、
四郎を止めようとしたのだー。

だがー、四郎はこうして、久志の忠告を無視し、千秋に憑依してしまったー。

そしてーーー
その結果ーーー

「憑依は、早い者勝ちー。
 先に憑依した方が、有利」

金髪の男が笑うー。

「な、なんだとー!?」
四郎が戸惑いながら叫ぶと、
金髪の男は「俺の霊体は既にこの女の身体に根付いてるー」と、
笑みを浮かべながら言うと、
「ーつまり、後からのこのことやってきたお前は、
 身体を支配することもできずに、消えるってことさー」と、
あざ笑うようにして、言葉を口にしたー

「ーーー…!」
四郎は、表情を歪めるー。

だがー、既に”身体の自由”が効かなくなりはじめー、
自分の霊体が、”内藤千秋”の身体に吸収されていくのを感じたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

後日ー

四郎が消息を絶ったことを知り、久志は
呆れ顔でため息をついたー。

「だから、内藤さんに憑依すんなっつったのにー。」

首を横に振る久志ー。

四郎は今頃、もうこの世から消えているだろうー。

だがー、
”先に千秋に憑依していた男”と、誰にも言わないと約束したからー、
あの忠告が限界だったー。

「ーーーまぁ…仕方ねぇかー」
久志は寂しそうにそう呟くと、
今一度ため息をついて、そのまま今日も大学の中へと歩いていくのだったー。

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

絶対に憑依するなよ…!
と、言われたら、やっぱり憑依したくなっちゃうものかもですネ~!

でも、憑依能力の扱いには注意なのデス…!

お読み下さりありがとうございました~!☆

小説
憑依空間NEO

コメント

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