その世界では、”憑依石”と呼ばれるものを
各国が保有し、大量生産されていたー。
しかし、数百年前にとある国家が起こした”憑依の悪夢”により、
その惨劇を再び起こさないよう、各国は憑依石の使用を
固く禁じていた。
けれど…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーくそっー…どうしてこんなことにー」
騎士国家”ソーディス”の筆頭騎士・エドワルドは
壊滅した自らの国を見つめながら
悲しそうな表情を浮かべていたー。
魔法国家”ルーン”からの憑依による虐殺ー。
ルーンに対する報復で、ルーンは既に壊滅させたものの、
その数日後に再び攻撃を受けて、
ソーディスも壊滅状態に陥ったー。
が、その一方で、ソーディスに2度目の憑依攻撃を仕掛けた
機械国家”ラギア”も、憑依石による攻撃を受けて壊滅的打撃を
受け、将軍のゲルドも消息不明なのだと言うー。
「ーーー…俺たちは、ラギアには攻撃を仕掛けていないー」
エドワルドは表情を歪めるー。
”混乱に乗じて我が国に憑依石により攻撃を仕掛けたものがいる”と、
将軍のゲルドも不満を表明していたー。
「ーー…」
エドワルドは思うー。
”誰か”が、憑依石による報復の連鎖を望んでいるのではないか、とー。
「魔法国家のルーンが俺たちに仕掛けて来た憑依石による攻撃に乗じて
他の国家も憑依石を使っているー?」
そう考えながらも、エドワルドは険しい表情を浮かべるー。
「ーーー筆頭騎士のエドワルドを見つけて殺せー」
町娘が物騒な言葉を口にしながら、エドワルドを探しているー。
「ーーこっちにはいない」
道具屋のおじさんだった男も、そんな物騒な言葉を口にして、
エドワルドを血眼になって探しているー。
”ーー俺は、こんなところで死ぬわけにはいかないー”
エドワルドは、この憑依石の惨劇には裏があるとそう感じて、
身を隠したまま”黒幕”を探し出そうと、そんな決意をするのだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
”申し訳ないが、我々はここから会議に参加させてもらいますー”
通信用の”通信石”に表示された
”鉄壁”を誇る国・バリアスの代表ー、
仮面を身に着けたガント総帥がそう言葉を口にするー。
「ーー”連盟会議”の場に直接足を運ぶのは決まりのはずだがー?」
優れた海軍を持つ国家”オーシャン”の代表である
総統・バーレルがそう言葉を口にすると、
”現在は緊急時。身の安全を守るためにはこうせざるを得ません”と、
そう言葉を口にするー。
この世界を構成する主要な国々が参加する”連盟会議”には
直接代表が足を運ぶことが決まりだー。
しかし、防衛国家とも呼ばれる”バリアス”の代表・ガント総帥は
自らの国を守るためにと、連盟会議への出席を拒んだー。
「ーーー貴様らが、我々に”憑依”を仕掛けたのではないだろうなー?」
逃げ延びて消息不明になっていた機械技術に優れる国家”ラギア”の
ゲルド将軍が怒りの形相で言葉を口にするー。
”そのようなことは致しませんー。
憑依石の使用は禁じられているー
その法を破るような、ならず者たちとは一緒にしないでいただきたいー”
仮面の総帥・ガントはそう言葉を口にするー。
そんな様子を見かねた”平和”を追求する国家”フローラ”の女王・ミアは
「ー今はわたしたちで争っている場合ではありませんー」と、
悲しそうに釘を刺すと、
「ー”憑依石”を悪用している国があるのであれば、
それを突き止めることが先決ですー。
思い込みでの報復や、憶測での報復がこれ以上広がれば、
本当に、世界は滅んでしまうー」と、そう言葉を口にして、
諸侯に”自制”を求めるのだったー。
しかしー
その日の夜ー。
「ーーど、どうなってるー!?」
海洋国家”オーシャン”の総統・バーレルが表情を歪めるー。
「ー分かりません!我が国の船が次々と爆破されております!」
部下がそう叫ぶと、総統・バーレルは慌てた様子で
部屋から飛び出し、”オーシャン”が誇る、水軍の船が
停泊している場所へと向かうー。
そこではー、無数の男女が船に火をつけ、爆破して回っていたー。
「貴様ら!何をしている!?」
総統・バーレルが声を荒げるー。
しかし、憑依されている女は笑いながら
「ー聞かなくても分かってるでしょ~?憑依されて暴れてるの~!」と
揶揄うように言葉を口にすると、自分が巻き込まれるのをお構いなしで
船を爆破していくー。
「ーーぐ…ぐぐぐー」
その光景は、まさに”地獄”ー
総統・バーレルは必死に凶行を止めようとするー。
けれどーー
「ーあははははは♡」
笑いながら、駆け寄って来た女が船に火をつけるとー、
船に積まれていた火薬に引火ー
「ーーー!!!」
総帥・バーレルはそこで起きた大爆発に巻き込まれて命を落とし、
海洋国家・オーシャンはこの日、地図上から消滅してしまったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
その翌日ー。
”機械”の技術に精通した国家”ラギア”の、
ゲルド将軍は、憑依石を使い、
”鉄壁”を誇る国家・バリアスに宣戦布告、
攻撃を仕掛けてしまったー。
バリアスは”鉄壁”を誇る国家であるものの、
”憑依”の力を前にしては、どの国家でも
有効的な対策を取ることができないー。
どんなに立派な要塞を作ろうとも、
憑依石によって、霊体になった人間なら
簡単に内部に侵入できるのだからー。
「ーーー仕方がありませんー。我らも憑依石の使用準備を」
攻撃を受けたバリアスの総帥・ガントは、
仮面に手を触れながら、そう言葉を口にする。
バリアスもまた、ラギアに対して憑依石を使って
憑依攻撃を行い、
既に壊滅的打撃を受けていたラギアは全滅状態に陥っていくー。
「ーーーー」
そんな様子を、騎士国家”ソーディス”の生き残りである
エドワルドは物陰から見つめながら表情を歪めると、
何かを察した様子で、その場を離れるー。
そして、エドワルドは”ある場所”へと向かうのだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そこはー
幻想的な花園が広がる場所ー。
その場所で、優雅なティータイムを楽しんでいた
平和を何よりも愛する国家・フローラの女王、ミアは
「あらー」と、言葉を口にして、ティーカップを置くー。
「ーミア女王ー」
そう言葉を口にしながら、背後から姿を現したのは
騎士国家”ソーディス”の筆頭騎士・エドワルドだった。
「ーーご無事だったのですねー。何よりです」
若くして女王になったミアは、嬉しそうにそう言葉を口にすると、
エドワルドは「ーええ。何とか生き延びました」と、そう言葉を返すー。
すると、ミアはティーカップを再び手にしてから
どこか寂しそうに微笑むー。
「”ラギア”と”バリアス”も時間の問題で消滅ー。
人はどうして、争いをやめないのでしょうー?
花はこんなにも、綺麗で、穏やかに咲いているというのにー」
女王ミアの言葉に、エドワルドも悲しそうな表情を浮かべると、
「ーーだから、”人間”を消そうと、そう思ったのですか?女王ー」と、
そう言い放ったー。
「ーーー」
ミアはクスッと笑いと、ティーカップを置いて
エドワルドのほうを見つめたー。
「ーどういうことですか?」
とー、そう言いながら…。
「ーあなたが憑依石を用いて、各国に攻撃を仕掛けているー。
最初に我々を攻撃したのも、女王ーあなたですね?」
エドワルドは険しい表情で言うー。
最初に、ソーディスを攻撃したのは魔法国家・ルーンではなかったー。
確かにルーンは”これ以上攻めるなら憑依石を使う”とは言ったー。
ただ、それは抑止力としての発言で、
ルーンは、実際に憑依石を使うつもりなどなく、
事実、最初にソーディスに憑依攻撃を仕掛けたのは、
ルーンではなかったのだー。
ルーンの兵士のフリをして、ソーディスの人々に憑依、
ソーディスを壊滅に追いやったのは、
平和を愛するはずのフローラ国ー。
クスッと笑う女王ミア。
「いったい、平和を愛するあなたたちがどうしてこんなことを!?」
エドワルドがそう叫ぶと、
女王ミアは花畑のほうを見つめながら笑ったー。
「ーー綺麗な花ー。
そうは思いませんか?」
そんな言葉に、エドワルドは表情を歪めるー。
「ーただ咲き誇り、ただ美しく、そして生涯を終えていく花ー。
それと比べて、わたしたち人間はどうですかー?
争いは絶えず、過ちを繰り返し、酷く、醜いー」
女王ミアはそう言い放つと、
「ーわたしは決めたのです。この世界から人間は消え去るべきだと」
と、言葉を続けるー。
「ーじ、女王ー…」
ソーディス国のトップでもある筆頭騎士・エドワルドは困惑しながら
女王・ミアを見つめるー。
「ーーあなたたちだって、そうですー
”ルーン”と争っていましたねー?
人間とは、ああいうものー。
わたしたちがいくら呼びかけようとも、戦いは終わることはなかったー。
わたしは、諦めたんですー。
人間という種族の限界に気付いたんです。
これが、わたしたちの限界であると」
女王ミアはそう言葉を口にするー。
”そんなことない!”
と、エドワルドは反論しようと口を開きかけたー。
けれどーー
できなかった。
何故ならー…
自分たちも、魔法国家ルーンと戦っていたからー。
言い返すことができなかったー。
ようやく、間を置いて、エドワルドは
「ーーしかし、こんな方法はー」と、そう言葉を口にしてから、
「ーあなたたち”フローラ”だけが生き残っても、
あなたが言う”人間の限界”があるなら、
また争いは始まるー!
やっぱり、あなただって所詮は人間だー!
こうやって、他の国家を滅ぼして、世界を征服しようとしている!」
と、そう叫ぶー。
しかし、女王・ミアは笑ったー。
「ーー何を言っているのです?」
とー。
それと同時に、王国の城下町がある方角から火の手が上がるー。
「ーーー!?」
エドワルドが表情を歪めると、
「ーーーわたしたちも、死にますから安心して下さいー。
人間は一人残らず消すのですー。一人残らずー。
そう、わたしも含めて」と、女王ミアは笑うー。
「ごちそうさまでした」
最後の晩餐を終え、花畑を見つめると、
「この世界は”あなたたち”のものです」と、そう言葉を口にしてから、
女王ミアは、隠し持っていた仕込み刃を手に、
それを自分自身に突き立てたー。
「じ、女王!?」
エドワルドが叫ぶも、女王ミアは笑みを浮かべながら言ったー。
”わたしに賛同する直属の者たちが、憑依石で、わたしの国の民も
始末して回っていますー”
とー。
”全てが終わったら、その者たちも自ら命を絶ち、
人間は消え去るのですー”
女王ミアはそこまで言うと、笑いながら息を引き取るー。
「ーく、くそっーそ、そんなことー」
筆頭騎士・エドワルドは走ったー。
が、その最中ー…
”憑依石”を使った兵士に自らも憑依されてしまうー。
エドワルドは、その場で憑依されたまま
自ら剣で命を落としー、
女王ミア直属の兵士たちは、自分の国ー…フローラ国の民を
全滅させてから、自分たちも命を絶ち、
ーー女王ミアの宿願は達成されたのだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
フローラ国は滅びー、
海洋国家オーシャンも、機械国家ラギアも、
防衛国家バリアスも、騎士国家ソーディスも、
魔法国家ルーンも、もう存在しないー。
全ての国家は滅び、
この世界に存在していた国は、
全て消滅した。
フローラ国の女王・ミアが仕掛けた
憑依石による人類の絶滅ー。
それを食い止めることは、ついにできなかった。
けれどー…
”人間は醜いー”
そう言っていた女王・ミアも、
人間の醜さというものを甘く考えていたのかもしれないー。
「ーーーー」
にやりと笑みを浮かべる男ー。
彼は、女王ミア直属の兵士のひとり。
女王ミアの指示で、憑依石を使い、自国の民を全滅させたあと、
他の兵士たちと共に、自ら命を絶ち、
それを以てして、人間は全滅するはずだったー。
が、彼は、”自ら命を絶つ”ことをしなかったー。
”自分だけが生き延びるため”にー。
女王ミアの計画に賛同するフリをして、
賛同していなかったのだー。
「ーあなたの言う通り、人間は醜いー。
俺みたいに、平気で裏切る人間もいますからねー」
男はそう言葉を口にすると、全ての国家が崩壊したその世界で、
一人、ゆっくりと歩き始めたー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
憑依の力が存在する世界で、
それを使う人が暴走したら…?を描く作品でした~!!
最後の彼は、一人だけ生き残っても、
もうどうすることもできない気がしますケド…笑
お読み下さり、ありがとうございました~!!
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