<憑依>憑依の力は抑止力①~憑依石~

複数の国家が乱立する異世界ー。

各国は”憑依石”と呼ばれる、他人に憑依する力を持つ
不思議な石を抱えていたー。

が、ひとたびそれを使い始めれば世界は破滅するとして、
各国は実際に使用することを禁じる条約を結び、
”決して使われない強大な力”ーー…抑止力としてのみ、存在していたー。

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とある異世界ー。

魔法大国である”ルーン”と、
訓練された騎士団をいくつも持つ騎士大国”ソーディス”による
争いが続いていたー。

この世界には、いくつもの国家が存在していて、
互いに覇権を狙い、争いが絶えない状況が長らく続いているー。

現在は魔法大国のルーンと、
騎士大国のソーディスが争いを繰り広げている状態で、
そこに、強力な水軍を持つ”オーシャン”と呼ばれる国も乱入ー、
闘いは続いていたー。

が、次第に魔法大国”ルーン”が追い詰められていき、
騎士大国の”ソーディス”が、ルーンを降伏寸前のところまで
追い込んでいたー。

しかし、追い詰められたルーンは
”ある禁忌”に手を染めたー。

それがーー

「ーー我が国にこれ以上、侵略するつもりならば、
 我々は”憑依石”の利用に踏み切ることになるー」

魔法大国”ルーン”の現女王”リオ”がそう言葉を口にしたのだー。

”憑依石”ー
数百年前、この世界で見つかった、禁忌の力を持つ石。
この石の力を使うことで、”他人への憑依”が可能になり、
相手の身体を乗っ取り、意のままに操ることができる、というものだー。

数百年前まで存在していた資源大国”クエイク”が、
見つけ出したもので、憑依石を見つけたクエイクは
憑依能力を惜しみなく使い、他の各国に甚大な被害を出したー。

クエイクの人間が、他国の民に手あたり次第憑依し、
恐ろしいまでの虐殺行為を行ったのだー。

がー、その結果、他の各国は一斉にクエイクに攻撃を仕掛け、
資源大国”クエイク”は地図上から消滅したー。

”憑依の悪夢”と後の歴史で呼ばれるその争いで
出た犠牲者は数百万人に上ると言われており、
クエイクを占領した連合軍は各国にクエイクの資源を分配ー、
憑依石も各国がそれぞれ少しずつ管理することで同意したー。

しかし、各国は来たるべき戦いに備えて憑依石を量産ー
これに危機を抱いた各国は話し合いの場を設けて
”憑依石の使用禁止”条約を作ったのだったー。

また”憑依の悪夢”を繰り返さないために。

それから数百年ー”憑依石”は
強大な力を持つ兵器であると共に、
決して使うことのできない抑止力としてのみ存在する
存在となり、
この数百年は、争いはあれど、どの国家も
実際に憑依石を使うようなことはなかったー。

一度、どこかが憑依石を使ってしまったら、
報復の連鎖が起きるー。

”憑依”に対する対抗策はないー。

資源国家”クエイク”が憑依石を使って
数百万人の命を奪った時とは違い、
今は憑依石は膨大な数、量産されているー。

数万人が一斉に憑依して、悪事を行うこともできるために
あの時以上の大惨事が生まれるし、
最悪の場合は世界が滅ぶような事態に繋がるかもしれない。

だからこそ、”憑依石”を実際に使ってしまうわけには
いかなかったー。

が、その数百年の禁忌を破り、
魔法国家”ルーン”の女王・リオが憑依石の使用を
仄めかし始めたのだー。

これを受け、騎士大国の”ソーディス”の
”筆頭騎士”である、エドワルドは、
慌てて攻撃を停止、
魔法大国”ルーン”の女王・リオに停戦を申し出始めたー。

「ーーでは、これ以上の侵略は停止すると、
 そう約束してくれますね?」
女王・リオの言葉に、筆頭騎士・エドワルドは
不満そうな表情を浮かべながらも、
「ーーー約束しましょう」と、そう言葉を口にしたー。

憑依石をどこかの国が使い始めたら
世界が滅ぶかもしれないー。

この世界では”憑依石”は決して使ってはならない
禁忌の力ー。

今までも、そして、これからもー…
”そのはず”だったー。

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その数日後のことだったー。

騎士大国”ソーディス”の筆頭騎士・エドワルドは
困惑の表情を浮かべたー。

「ーど、どうしたんだ!クロナ!」
そう言葉を口にする彼の視界の先には、
妻であるクロナの姿があったー。

が、クロナは邪悪な笑みを浮かべながら
自分の胸を揉むと、
「ーへへーせっかくだから死ぬ前に楽しもうと思ってなー」と、
本人とは思えない言葉を口にしたー。

既に、娘二人はクロナの近くで横たわっている状態ー。

そして、城下町からは、悲鳴や笑い声が聞こえているー。

「ーーき、貴様ー…!まさか”憑依石”をー!?」
エドワルドがそう叫ぶと、
憑依されているクロナは笑みを浮かべながら
「あぁ、そうさー。これが憑依石の力さー。たまんねぇよなー」と、
嬉しそうに言葉を口にするー。

「ふ、ふざけるな!憑依石を使うことは禁じられているはずだ!
 今すぐ、クロナを解放しろ!」
エドワルドがそう叫ぶと、クロナはニヤリと笑みを浮かべたー。

「ールールなんて、”人間”が作ったものー。
 そしてまた、そのルールを破るのも人間さー」

とー。

エドワルドは”憑依された妻”を前にどうすれば良いのか分からず、
只々困惑するー。

倒すこともできないしー、
放置しておけばそのまま命を絶つ可能性もあるー。

どうすることもー…
どうすることも、できない。

そうこうしているうちに、城下町に火の手が上がるー。

「ーくそっー…”ルーン”めー… 
 こちらは停戦すると約束したはずだぞー」
エドワルドがそう言い放つと
憑依されている妻・クロナは笑みを浮かべながら
「女王様の命令だー。悪く思うなよー」と、
そう言葉を口にしてから、自分に小刀を向けたー。

「ーやめろ!!!」
エドワルドは必死に飛びついたー。

がー、クロナは小刀を振るい、エドワルドの腕を斬りつけると、
「”憑依”の力には誰も逆らえないぜ!」と、そう言葉を口にして、
そのまま自ら命を絶ってしまったー。

「ーーーーうっ…うああああああああああああ!!!」
怒りの形相で叫び声をあげるエドワルドー。

しかし、この国を統治する”筆頭騎士”として、
これ以上、憑依石による悪事を放置しておくわけにはいかないー。

「ーーエドワルド様ー」
部下の騎士が騒ぎを聞きつけてやってくると、
エドワルドの近くに、クロナの亡骸が転がっているのを見て、
「ーーそ、そんなー」と声を上げるー。

しかし、エドワルドはもう決意していたー。

「ーールーンに対して”憑依石”での報復攻撃を仕掛けるー」
とー。

「ーーただちに生き残っている者を集めて、
 憑依石の使用準備をするのだ!」

エドワルドは、怒りを露わにして、
憑依石が保管されている場所に向かうー。

がー、妻をー、娘たちを奪われて
怒り狂っているエドワルドには分からなかったー。

”敵”はどうして、
エドワルドら、この国の重鎮を”憑依”で仕留めなかったのかー。

憑依を前にしたら、警備も何も関係ない。
本人の実力だって関係ない。
身体を乗っ取ってしまえば、あとは自害しようと、
勝手だからだ。

それなのに、”敵”はあえてエドワルドに憑依しなかったー。

その理由を、怒りと憎しみに支配されたエドワルドは
考えることができなかったー。

その日のうちに、”ソーディス”国による
報復が始まったー。

憑依石を使ったエドワルドと、およそ1000名の騎士が
一斉に魔法国家”ルーン”の人々に憑依し始めたー。

「ーー女王様ー…!大変ですー街の人々がーー あっ!?」
側近の女魔術師がそう叫ぶと、
自分の口に向けて、火の魔法を放って、そのまま命を落とすー。

「ーー!?」
女王・リオは驚きの表情を浮かべながら
「ーーい、いったいどういうこと!?」と、そう叫ぶー。

しかしー、直後、女王・リオも憑依されてしまうと、
その場でニヤリと笑みを浮かべるー。

「ーーへへへ…女王様の身体を好き放題できるなんて」
”ソーディス”国の騎士に憑依されたリオは
ニヤニヤしながら、そう言葉を口にすると、
その場で自分の胸を揉んだり、
服を脱ぎ捨てたりして、欲望の限りを尽くすー。

「じ、女王様ー!?」
女王・リオを守ろうと必死にこの場所までたどり着いた
親衛隊の男が、リオの乱れた姿を前に呆然とするー。

「ふふふふー…これは報復だ。お前たちにもう、生きる道はない」
リオは顔を真っ赤にしながらそう言葉を口にすると、
親衛隊の男は「女王様から出ていけ!」と、感情的に叫ぶ。

けれど、そんな言葉は届かず、
親衛隊の男も背後から憑依されたメイドに刺されて、
その場で命を落としてしまう。

憑依されたメイドも、その場で持っていた小刀を手に
命を絶とうとするも、憑依されたリオが「ちょっと待った!」と、
そう言葉を口にすると、
「どうせ死ぬなら、その前にその身体も味わいつくそうぜー」と、
邪悪な笑みを浮かべながら言葉を口にするのだったー。

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「ー”ルーン”が壊滅したー?」
強大な水軍を持つ国家”オーシャン”がそう言葉を口にすると、
「ーー憑依石が使われたようです」
と、広大な花園が広がる平和な国家”フローラ”の女王がそう言葉を口にするー。

「ーーきっと”ソーディス”の仕業に違いない!
 惨事になる前に、こちらも憑依石を使って奴らを全滅させるべきだ!」
”機械技術”に優れる国家”ラギア”の将軍が怒りの形相でそう言葉を口にすると、
フローラの女王は、「報復は更なる報復を生むだけですー」と、
憑依石の使用には慎重であるべきだと、そう嗜めるー。

「ーしかし、いずれにせよ既に大惨事は起きておりますー。
 ソーディスとルーンの争いだけで終わらず、”憑依”が拡散するようなことがあれば
 世界が滅亡の危機に瀕するかもしれません」
仮面で顔半分を隠している、鉄壁の要塞を誇る国家”バリアス”の総帥が
そう言葉を口にするー。

しかし、それでもフローラの女王は
「わたしたちが冷静に対応しなければーー
 対応を間違えれば”憑依”で世界は滅亡します」と、不安そうに言葉を口にするー。

長い間、使われることなく”抑止力”としてのみ
存在していた”憑依石”が使われてしまったことで
各国はその対処に追われ、パニックとなっていたー。

そして、その日の夜ー。
機械技術に優れる国家”ラギア”の将軍・ゲルドは
”憑依石”を使い、騎士国家”ソーディス”に攻撃を仕掛けてしまったー。

ソーディスは既に最初の憑依によって壊滅的打撃を受けていて、
これにより壊滅したー。
しかし、ソーディスの筆頭騎士であるエドワルドは逃亡、
隠されていた憑依石を使って、機械国家・ラギアに対して
報復攻撃を仕掛けてしまったー。

ラギアの住人たちも次々と憑依され、命を落としていくー。

しかも、その勢いは”ソーディス”の生き残りだけが
憑依しているとは思えないほどに凄まじく、
あっという間に人々がおかしな行動に走り、
国は大混乱に陥ったー。

「ーゲルド将軍ー…
 ここにいては将軍も憑依されるかもしれませんー
 どうかお逃げを」
側近にそう言われた将軍・ゲルドが表情を歪めながらも
逃亡を図るー。

やがて、逃亡して安全地帯に避難したゲルドは
”混乱に乗じて我が国を攻撃したものがいる”と
不満を露わにし、
憑依石の使用も辞さない、という態度を取り始めたー。

混乱は拡大していくー。

長い間、使われていなかった”憑依石”ー
それを使ってしまったことで、
世界は大きな混乱に陥り始めたー。

「ーーーーー」
フローラ国の女王・ミアは自国に広がる
自慢の花畑を見つめると、
悲しそうな表情を浮かべるー。

今日も、魔法国家・ルーンがあった場所から火の手が上がっているー。

一度始まった争いは、もう誰にも止めることはできなかったー。

②へ続く

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コメント

”使ってはいけない力”として
憑依の力が存在している世界の物語デス~!

こうして、争いに使われてしまうと、
大変ですネ~…!

続きはまた明日デス!!

今日もありがとうございました~~!

続けて②をみる!

「憑依の力は抑止力」目次

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