<他者変身>俺の彼女は”裏垢女子”

真面目でとても心優しい彼女がー
ツイッターで”裏垢女子”として、
過激な写真をツイートしていることを知ってしまった彼氏ー。

しかしー…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

男子大学生の磯原 卓夫(いそはら たくお)は、
スマホを手に、震えていたー。

”お前の彼女、やべぇじゃん”

親友の谷田 史郎(たにだ しろう)に
そんな言葉と共に”見せ付けられた”のは、
”彼女の裏垢”だったー。

卓夫の彼女ー、
藤坂 日葵(ふじさか ひまり)。
彼女はとても優しい性格で、とても穏やかな性格だったー。

卓夫自身も、比較的おとなしい性格で、
奥手な性格だったからか、卓夫はそんな日葵と意気投合し、
去年から付き合っているー。

卓夫も、日葵も、
”まさか自分に恋人ができるとは思わなかった”と
恥ずかしそうにしながらも、
付き合い始めてからおよそ1年が経過した今でも
その関係は変わらず、二人の関係は良好だったー。

しかしー
今ー、
それが、崩れ去ろうとしていたー。

「ーーこれ、藤坂さんだよな?」
友人の史郎がそう呟きながら見せて来たスマホの画面ー。

それはー
彼女である日葵の裏垢ー。

顔は隠してあるものの、
過激なコスプレ衣装や、見せてはいけないような写真まで
色々なものを見せては嬉々として
フォロワーたちと会話をしているー。

”彼氏がわたしを満足させてくれなくて欲求不満”

”ーわたしと全然してくれなくて、不満!”

などー
卓夫に対する不満の言葉も確認することができたー

「ーーー……」
思わず表情を歪める卓夫ー。

顔は出ていないものの、
それが日葵本人だと確信できる要素は色々とあったー。

日葵の薬指には特徴的なほくろがあるのだが、
裏垢女子を名乗るそのアカウントの写真にもそれがありー、
髪型から口元まで、何もかもが日葵のものだー。

いくら顔の全景を隠していても、
親しい人には分かるー。

「ーーー……お前ー…昔からこういう子、苦手だもんな」
史郎がため息をつきながら言うと、
卓夫は「ーーまぁな…」と寂しそうに呟くー。

史郎は、卓夫の小さい頃からの幼馴染。
卓夫はよく”幼馴染が女の子ならなぁ”などとふざけて
言ってはいるものの、基本的には今でも仲良しだー。

「ーーーまぁ、100パーセントって決まったわけじゃねぇけど」
史郎がそう言うと、
卓夫はスマホで”日葵の裏垢”を見つめるー

日葵のものと思われる裏垢には、
”欲求不満の裏垢女子 JD”などと書かれていて、
そこには先ほども見たような言葉の
数々が刻まれているー。

卓夫はー
エッチなことや、こういう裏垢女子だとか、
AVの類がとても苦手だー。

だからこそ、そういう感じが全くない、
穏やかな性格の日葵に惹かれたー。

しかし、日葵は裏でこんなことをー…。

「ーーー……」
困惑する卓夫ー。

史郎はそんな卓夫の様子を見つめながら
「ま、まぁ…そんなに思い詰めるなよー?」と、
少し戸惑った様子で言うと、
卓夫は「あ、いやー…教えてくれてありがとなー」と、
史郎に対してそう言い放ち、
そのまま元気のない様子で立ち去って行ったー。

・・・・・・・・・・・・・・・

それ以降ー
日葵のことを避けるようになってしまった卓夫ー。

「ーー…ねぇ…わ、わたし、何か悪いこと、したかな?」

卓夫が日葵を避け始めてから数日ー。
露骨に避けているのが、日葵にも伝わったのだろうー。

日葵が不安そうに、卓夫にそう聞いてきたー

「ーーあ…え、えっと…そ、そういうわけじゃー」
卓夫は気まずそうに日葵から目を逸らしながら
ようやく言葉を吐き出すと、日葵は「避けてるよね…?」と
不安そうに確認してきたー

「ーーーー」

「ーーーー……避けてるなら、言ってー…
 理由も知りたいからー…」

日葵が悲しそうにそう言葉を口にするのを見て、
卓夫はソワソワした様子で考えてから、
言葉を口にしたー

「ーーー…”裏垢”とかやってる?」
卓夫がそんな風に呟くー

まさか”見た”とは、卓夫の性格上、死んでも言えなかったー

なんだか、彼女の裏垢を見つけたなんて、
ストーカー見たいだし、
とにかく、卓夫からしてみれば、恥ずかしすぎて
”裏垢”という言葉を口にすることすら、できなかったー。

「ー裏垢?」
日葵がドキッとした様子で声を出すと、
「ーや、やってないけどー」と、
顔を赤らめながら目を逸らすー

「ーそ、そっかー……
 お、お、俺はー…そのアカウントみたわけじゃないんだけど、
 友達が、ひ、日葵の裏垢見つけたって言っててー…」

やっとの思いで卓夫がそこまで言うと、
日葵は「絶対ないないー」と、自信満々に言い放つー。

「ーーーお、俺のこと、裏で不満に思ったりしてない?」
卓夫が自信なさげにそう確認すると、
日葵は「ーないよ~!絶対!」と、再び断言するー

「ーー………そっかー…な、ならよかったー」
数日間、日葵のことを避けていた卓夫ー。

だが、日葵のそんな言葉に、あっけなく日葵を信じる気になったのかー
「ご、ごめんー…裏で悪口言われてると思ってー
 少し、避けてたー」と、本当のことを口にしたー

「ーー…そ、そんなぁ…もうちょっと、わたしのこと、信用してほしいなー」
日葵が少し戸惑った様子で言うのを見て、
卓夫は「ごめん」と、素直に謝罪の言葉を口にしたー。

しかしー

その日の夜ー

”裏垢”に動きがあったー

「ーーーー!!!」

キツイメイクをしているがー
”顔出し”の写真がツイートされたのだー

しかも、挑発的なポーズをしながら
過激な衣装を身にまといー
「彼氏がウザいです」などとツイートしているー

「ーーー……~~~」
その言葉を見て、卓夫は絶句してしまうー

ついさっきー
日葵は”絶対ない”と断言していた上にー
”もう少しわたしを信じてほしいな”などと言っていたのに、
これはどういうことなのかー

しかも、”裏垢”と言う言葉を卓夫が口にした以上、
当然日葵は”裏垢の存在に気付かれているかもしれない”ということぐらい、
想像すれば分かるはずだー。

”見られているかもしれない”のに、
顔を出して、しかも”彼氏がウザいです”と過激な服装で
挑発的に指を突き立てている姿をツイートしているー。

「ーーーー」
しかも、日葵の裏垢のファンと思われる人たちから
歓喜のコメントも多数ついていて、
”彼氏なんか捨てちゃえよ!”と盛り上がっているー

それを見た卓夫は、悲しそうに表情を歪めたー。

元々奥手は卓夫は、
今日ー、日葵に対して、”裏垢”のことを少し
話するだけでも、本当に勇気が必要だったし、
それだけでも精一杯だったー。

今日ー
こんな風に”裏切り”をされて、
こんなことを裏垢で言われてー
卓夫がこれ以上日葵のことを好きでいられるはずなど、なかったのだー

「ーーー卓夫ー……」
日葵は困惑した様子で卓夫を見つめるー。

卓夫が、今までよりも露骨に日葵を避け始めて
話しかけても「ごめん」とだけ呟いて
そのまま立ち去ってしまうー。

困惑する日葵ー。

日葵は日葵で、卓夫になかなか積極的に
”何で…?”とこれ以上聞くことが出来ずー
次第にその距離は広がっていくー

卓夫も、日葵も奥手な性格ー
それ故に、意気投合して、恋人同士になったー

だがー、
卓夫も日葵も奥手であるが故にー
相手に拒絶されていると感じるとー、
自信を無くしてしまい、自分も距離を取ってしまうー。

やがてー
卓夫は日葵に対して「別れよう」と言葉を口にしたー

日葵は混乱するー

「え…なんで…どうしてー…?」
涙目の日葵に対して、
卓夫は「そうやって、俺を悪者にするんだなー」と
悲しそうに呟くー。

否定する日葵ー
”何のことか、分からないー”

とー。

しかし、卓夫は「もういいよ」とだけ言い放つと、
「女子って怖いんだなってよくわかったー…
 俺なんかが、ごめんー」と、だけ言い放って
そのまま頭を下げると、立ち去って行こうとするー

「ーま…待ってよ!意味が分からないよ!」
日葵が叫ぶー。

けれどー
卓夫は「俺も意味が分からないしー、もう、傷付きたくないんだー」と
だけ言い放ってそのまま立ち去って行ったー。

「ーーーー…何よ……
 自分から避け始めてー……何なの…」

日葵も困惑して、拗ねた様子で頬を膨らませると、
”卓夫に対する不信感”を抱きー、そのまま卓夫と口を利くことは
なくなってしまったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーははははははは!そりゃ残念だったなぁ~
 まぁ、でもーいい勉強になっただろ?」

卓夫の友人・史郎が笑いながら
卓夫と電話をしているー。

”うんー…まぁなー…やっぱ女子って怖いし、
 当分、彼女とかはいいかなぁ”

卓夫の言葉に、
史郎は「まぁまぁ、そう言うなって」と呟くと、
「今度、駅前でチーズバーガーおごってやるからさ」
と、苦笑いしながら言うー

”ダブルがいい”

そんな返事に、
史郎は「おい!がめつい奴だな!」と笑いながらもー
「まぁ、そんなこと言えるぐらいなら、大丈夫か」と、
ホッとした様子で、会話を続けたー。

”ーー話せて良かったよー
 気が楽になったー。
 やっぱ、女より男と仲良くしてた方が楽だなぁ”

卓夫がそう言うと、
史郎は「はは…じゃ、またな」と、言葉を呟きながら
そのまま会話を終了したー。

「ーーーーふ~~~~」

卓夫との電話を終えた史郎はひと息つくと、
背後を見つめたー。

背後には”女が着るような”服が
いくつか転がっているー

メイド服やー
チャイナドレスー
さらに過激な衣装までー。

「ーー」
史郎は、それらを見つめると、
笑みを浮かべたー。

”女装趣味”が、あるわけではないー。

笑みを浮かべていた史郎がー
念じるようにして目を閉じるとー

突然、史郎の姿が”日葵”の姿に”変身”したー

「へへへへへへへ…
 もう、”裏垢”やる必要はねぇんだけどなー」

”日葵”と全く同じ声で、史郎がそう呟くと、
史郎はチャイナドレス姿に着替えて
鏡の前でポーズを決め始めるー

「へへへ…まさか、藤坂さんも
 こんな風に、”自分の知らないところ”で
 勝手にその姿を使われてるなんて、
 夢にも思わないだろうなぁー」

日葵に変身した史郎は笑うー。

日葵と全く同じ姿ー
日葵と全く同じ声ー。

しかし、この身体は日葵のものではなくー、
今、この瞬間も、日葵本人は
別の場所で、”まさか自分の姿が欲望のために使われている”などとは
夢にも思わずに、”普通に生活を”続けているー。

「ーーもう少しの間だけ、卓夫のやつが”気づく”のを防ぐために
 裏垢を更新したらー
 あとは、オナるときだけ、変身して遊ぶことにするかなぁ…」

日葵の姿で、史郎はそう呟くと、笑みを浮かべるー。

一度”撮影”した相手に自由に変身することができる力を持った
謎のカメラー。
それをネットで手に入れて、前々から一人、欲望を満たしていた史郎ー。

がー、
親友の卓夫に彼女が出来たと聞いて、史郎は表向きは祝福しつつも、
裏では”何で俺より卓夫なんだー?”と激しく嫉妬ー、

卓夫の性格をよく知っている史郎は、
日葵に変身して”日葵の裏垢”を自分で作りー、
それを何食わぬ顔で卓夫に教えてー
日葵と卓夫の関係を引き裂いたー。

別に、史郎は日葵を奪いたいわけでも、
卓夫のことが嫌いなわけでもないー

ただ、何となくー
”俺より先に、奥手な卓夫に彼女が出来た”ことに嫉妬して
その関係を引き裂いたのだったー。

「ーーへへへへ」
日葵の姿で今日も欲望を満たす史郎ー

この”真実”を、
卓夫も、日葵も知ることはないままー
二人の関係は大学卒業まで修復されることはなかったー。

一方、史郎は卓夫と大学卒業までずっと”友達”として
何の罪悪感を感じることもなく、
仲良く接し続けー
大学卒業後の今でも、卓夫と史郎は連絡を取り合う間柄が
続いているのだというー。

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

1話完結の他者変身モノでした~!☆

元々は夏の初めごろに書こうと3話構成で考えていたお話
(公表前に一度中止したので皆様には一度もお知らせしてませんが…)でしたが、
ジャンル・題名・内容を考えた際に
「そもそもタイトルとジャンルでネタバレしてるから、イマイチ盛り上がらない気が…」と
なってしまって、中止にしていた作品ですネ~!

ただ、そのままお蔵入りにしてしまうのももったいない気がしたので
1話完結のお話として再構築して、ようやく皆様の元に届けることができました…!☆

ジャンル「???」でやれば、ドキドキ感もあったかもですネ~!

お読み下さりありがとうございました~!

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小説

コメント

  1. ムッシュ より:

    史郎は、一切危ない橋を渡る事なく目的を達成したな。最後まで藤坂日葵を名乗らなかった、つまり卓郎は「よく似た別人だよ!」って押し通す自由もあったんだよな。
    その場合、史郎がどういう行動に出たか長編
    バージョンなら見れたのかな。

    • 無名 より:

      コメントありがとうございます~!☆

      話数が長ければもう少し色々細かい部分まで
      描けた気はしますネ~!

  2. ムッシュ より:

    「不特定多数の人間に化けながら無双する。」が自分が見たい他者変身ですが「憑依空間」でそれをやったのは今の所「変身おじさん」だけ、後は1人の人間に成りすますのに四苦八苦している弱キャラばかり。
    自称宇宙人、自称女神は強キャラの部類か?
    再会屋、スキャンダル捏造は一応複数に化けたか?
    1本物が行った事がある場所ならどこへでも瞬間移動できる。
    2本物の家族友人の記憶を改変して簡単に双子の姉妹になれる。
    3逆に自分が家族友人の記憶を改変して最初から娘がいた事にできる。
    4本物が成長した姿にも子供の頃姿にもなれる。
    こんな感じの強キャラ他者変身が読みたい
    以前頼んだ「変身おじさん」の続編、前日譚楽しみにしてます。

    • 無名 より:

      ありがとうございます~!☆

      実現できるかどうかは分かりませんが、
      変身おじさんのものも含めて
      頂いたご希望は私のメモにちゃんと残してあります~★

      変身で無双系のお話も確かに面白いかもしれないですネ…!

  3. 匿名 より:

    いつもありがとうございます。
    こういうお話好きです。
    一話完結とは言わず、三話でやってもらいたかったです。
    またお時間がある時に、こういうお話をぜひお願いします。

    • 無名 より:

      コメントありがとうございます~!☆

      また機会があればチャレンジしてみます~!☆
      今度は2話~3話ぐらいでやってみるかもしれません~!