楽しかった夏休みは、
あっという間に終わってしまったー。
本当に、一瞬かのような、
あっという間な時間だったー。
が、彼女は”どうしても夏休みを終わらせたくない”と、
とんでもないことを考え始めてしまったー…!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「あ~あ、もう夏休みも終わりかぁ~
あっという間だったなぁ~」
高校に通う、吉原 美桜(よしはら みお)は、
寂しそうな表情を浮かべながら、
そんな言葉を口にしていたー。
夏休みもあと数日ー。
色々思い出は浮かぶものの、
まるで7月から8月下旬にワープしたかのように
あっという間だったー。
「ーわたしの感覚的には、まだ数日しか休んでないぐらいの
気分なんだけどー」
そんな愚痴をこぼす美桜ー。
けれど、そうは言っても、
ちゃんと7月下旬に海に行ったりした思い出はあるし、
8月上旬にはお祭りにも行ったし、
8月中旬にはおばあちゃんの家にも行ったー。
楽しい思い出の記憶はたくさんあるー。
でもーー
なんだか、それが一瞬で終わってしまったかのような
寂しさを感じながら、美桜は思わず笑うと、
「あ~、2学期面倒臭いな~!」と、そう言葉を口にしたー。
現実逃避をするためだろうかー。
美桜はやがて、ベッドに寝転びながら
”夏休みを終わらせない方法”などと、
そんな言葉を検索し始めてしまうー。
もちろん、そんな方法、あるはずがないー。
がーー、
”あるはずのない方法”を、美桜は見つけてしまったー。
それはーーー
”憑依”だったー。
「ーーー…やばっー…」
美桜は、”憑依で夏休みを繰り返し楽しむ方法”と、
書かれたサイトを見て、
「あははー」と笑うと、
そのままそのサイトを閉じようとしたものの、
「ーでも、もし本当だったらー?」と表情を曇らせてから
”もう一度”そのサイトを開いて確認するー。
そのサイトに書かれているのは、
あまりにも現実離れした、とんでもない方法ー。
”憑依薬”を購入し、それを飲むことによって、
自分の身体を”霊体”へと変換するー。
そして、”霊体”の状態であれば”時空を超えること”ができるのだと
そのサイトには書かれていて、
つまり、憑依薬を飲んで霊体になって、
夏休み開始直後まで時空を超えて過去に行き、
そして、過去の自分自身に憑依することで
”誰にも迷惑を掛けずに”、自分としてもう一度夏休みを
楽しむことができる、と、そう書かれていたのだー。
「ーーー絶対、こんなの無理でしょー」
改めて、そう言葉を口にする美桜ー。
けれど、”憑依薬”の料金として表示されている料金は
そんなに高額な料金ではなく、
美桜が今までバイトで貯めたお金を、
使えば、十分に購入することのできる料金だったー。
「ーーーー」
美桜は少しだけ表情を歪めながら
”どうしようか”と、頭の中で考えるー。
そして、迷った挙句に美桜は決断するー。
「も、もしも本物だったら、また最初から夏休みも楽しめるしー
な、何度でも時を遡ることができるんだとしたらー…
無限に夏休みを楽しめるってことだよねー?」
美桜は目を輝かせながら呟くー。
憑依薬を飲み、夏休みが始まった直後の自分に憑依するー。
そして、夏休み終盤になったら、また憑依薬を飲んで
夏休みが始まった直後の自分に憑依すればー、
”無限夏休みコンボ”が、完成するー。
美桜は「ーか、買うしかないかも!」と、そう呟くと、
貯めたバイト代を使って、”憑依薬”を購入したー。
そして、数日後、夏休みが終わる直前に
その憑依薬は届いたー。
届いた憑依薬を眺めながら、
サイトのレビューを見つめる美桜ー。
”本当に憑依できました ありがとうございますー”と、
そう書かれたレビューや、
憑依薬のことを褒めるレビューばかりが存在する中、
ふと、一つのレビューが目に入るー
”絶対に使っちゃだめー。も”と、
そう書かれているー。
「ーーーーー」
美桜は、そのレビューを見て、少しだけ不安を覚えるー。
最後の”も”という謎の文字も気になるー。
単なる入力ミスだろうか。
それとも”何か”を伝えようとしたのだろうかー。
が、他のレビューは概ね高得点。
やはり大丈夫だろうと、美桜は憑依薬を口にする決意を固めるー。
「ーーえっと、この日付に戻るためにはー」
”どのぐらい前に戻りたいのか”、
あるいは”今の時間”で憑依したいのかー
それによって飲む分量が異なるために、
慎重に備え付けの容器を使って、量を計算していくー。
やがて、美桜は「これでよし」と、そう言葉を口にすると、
憑依薬を指定された分量飲んでー、
”夏休み開始2日目”の自分に憑依することを
考えながら、自分の身体が”霊体”に変わったのを確認するー。
”すごいー”
美桜がそう思っていると、
次の瞬間、謎の空間に取り込まれて、高速で自分の霊体が
移動しているのを感じるー。
”たぶんー、過去に戻ってるんだよねー?”
そんな感触を覚えながら、美桜の霊体がそう言葉を口にするとー、
やがてー、7月下旬ー、
夏休み2日目を迎えた美桜の部屋に、
美桜の霊体は到着したー
”あ、わたしがいるー”
自分の部屋にいる”7月の美桜”を見つめながら
思わず苦笑いすると、
「ーごめんねわたしー。
もう1回、夏休みを最初の方からやり直したくてー」と、
そう言葉を口にすると、
8月31日からやってきた美桜は、
容赦なく”7月の美桜”に憑依したー
「ひっ…!?」
ビクッと震える7月の美桜ー
が、すぐに身体の感覚を得たことー
”1カ月ちょっと前のわたし”になったことを確信した
8月の美桜は、
「ーー憑依完了~」と、そう言葉を口にしてから、
「まぁ…わたしの身体だから、何も変わったように感じないけどー」と、
苦笑いをするー。
これが仮に、5年前の、10年前の自分だったりすれば、
身体の変化を感じるだろうけれど、
1カ月ちょっと前の自分に憑依しても、
”若返った~!”などと感じることはないだろうし、
身体の感覚もほとんど変わらないー。
夏休み中に大事故にあって立てなくなってしまっていたり、
夏休み中に男体化して男になってしまっていたり、
そういう、とんでもない出来事が起きていれば話は別だけれども、
そういうこともない以上ー、
特に”憑依”しても、あまり”憑依した”とは実感できないような、
そんな状況だー。
「ーーえへへへーまぁ、でも、これでわたしはもう1回、
夏休みを楽しめるんだよねー?」
確認するかのように、1か月前の自分に憑依した美桜は、
そう言葉を口にしてから、
夏休みを再び満喫し始めるー
友達と海を満喫しー、
友達とお祭りを満喫しー、
そして、また、大好きなおばあちゃんの家にも行ったー。
当然、”7月下旬”の夏休みが始まった直後まで
戻ってきているために、
友達や家族、おばあちゃんー、周囲の人々に
”1回目の夏休み”の記憶はないものの、
それでも、十分に2回目の夏休みを楽しむことができたー。
そしてー、
2回目だからだろうかー。
今度の夏休みは、1回目の時のように
”あっという間に終わってしまった”と、
感じるようなことはなく、なんだか
前回の夏休みとはまるで違う夏休みかのように、
長く感じるぐらいに、夏休みを満喫できたー
「ーえへへーもうすぐ夏休みも終わっちゃうけどー」
そう思いながら、
最初に”もう夏休みも終わりかぁ~”と、思ったあの日になったことに
気付き、苦笑いするー。
「ーそうだ、もう1個憑依薬を買えば、3回目の夏休みも
いけるんじゃない?
お金も、7月下旬に戻ったからまた復活してるしー」
そんな風に思いながら、もう1回憑依薬を買おうと考え始めた
その時だったー。
”憑依薬のご利用、ありがとうございましたー”
そんな声と共に、突然、霊体のような白い人型の光が姿を現したー。
「ーーえっー!?」
美桜は少しだけ驚いた表情を浮かべながら、
その白い人型の光を見つめるー。
これはー
”憑依薬”に仕込まれていた自動的に再生される
”立体映像”ー
憑依薬を使った人間にあることを”お知らせ”するために、
時期が来ると、それが”再生”されるようになっていたー。
”憑依薬の最長憑依期限は1ヵ月となりますので、
お客様の憑依は間もなく終了となります”
白い人影がそう言葉を口にするー。
美桜も、確かに憑依薬の説明書に
そんなようなことが書かれていたことを思い出しながら、
「ーあ、そっかー。夏休み開始したばっかりのわたしに憑依したから
夏休みの最終日までは憑依してられないんだねー」
と、そう言葉を口にするー。
”時間が来ると、その身体は自動的に所有者の元に返され、
憑依者は、そのままその身体から離脱しますー
また、憑依されている間の記憶は、
”本人が自分の意思で過ごしていた”と認識するように補正されますので
ご心配は不要です”
そんな説明が続くと、やがて
”憑依薬のご利用、ありがとうございましたー”と、
再度、そんな言葉が聞こえたー。
美桜は「ーこちらこそー」と、
憑依薬に感謝の気持ちを口にすると、
”ふと”あることを思ったー。
「そういえばー、憑依が終わったらわたし、どうなるんだろうー?
憑依薬使った時に戻るのかなー?」
そう言葉を口にした美桜は、
「あのー…”わたし”はどうなりますかー?」と、
返事を貰えるかは分からなかったものの、
そう質問してみたー。
すると、再び白い人影のようなシルエットが出現して、
”説明”してくれたー。
”お客様は憑依終了後、消滅いたします”
とー。
「ーーー…消滅?それでそのあとどうなるの?」
美桜はそう言葉を口にすると、
”そのあとはございませんー。憑依薬をお飲みになった際に
お客様の肉体は消滅しております”と、そんな返事が返ってきたー
「えー…」
美桜は青ざめる。
”憑依が終わったら、自分は消える”
そう言われているのだー
「えっ、ちょっと待って!えっ!?!?!」
美桜がそう叫ぶも、”残り、1分ですー”と、そんな言葉が聞こえてー、
美桜は呆然としながら座り込むー。
1ヵ月の憑依を楽しんだら、消えるー
それが、この憑依薬の運命ー。
そしてー
美桜はハッとするー。
自分が憑依薬を買う前ー、
美桜は
”「ーわたしの感覚的には、まだ数日しか休んでないぐらいの
気分なんだけどー」”と、
そう思ったー。
そして、2回目の今回の夏休みは”長く”感じたー。
それは、何故かー。
そうー。
今”憑依してる側”の美桜も、
1回目の夏休みの時は”憑依された側”だったのだー。
記憶が補正されていたため、自分で夏休みを過ごしたと
認識していて、思い出も記憶にあったものの、
実際には憑依されている間の出来事であったため、
自分で過ごした夏休みと思いつつも”異様に短く”感じたのだー。
「ーーーーーー!」
美桜は、憑依薬を手に入れる前、”1回目”の夏休みの時に
ふと、ハッとして”もうすぐ夏休みも終わりかぁ~”と思った日が
今日であったことを思い出すー。
それもそのはずー、今”憑依する側”の美桜も、
1回目の時は”憑依されていて”このタイミングで
憑依していた美桜が消えて正気を取り戻したからだー。
「さ、最初の夏休みが異様に早く感じたのはー
わたしのせいー…!?」
美桜は青ざめながら、慌ててペンや紙を探すも
パニックになっているせいか、見つからないー。
そんな中、ハッとして
スマホを手にすると、
”憑依薬”を購入したサイトを開くー。
そうしないと、”この美桜”も、自分と同じ運命を辿ることになってしまうー。
そう思って、憑依薬の販売サイトに慌ててレビューを書こうとしたー
”絶対に使っちゃだめー。”
そう入力して、続けて
”もしも使ったら、わたし、消えちゃうー”と、そう書こうとしたもののー
”も”ーまで入力した時点で、身体に強い衝撃を感じて、
美桜は送信ボタンをやむを得ずそのまま押したところでーー
”憑依していた側”の美穂は消えてしまったー。
・・・・
「あ~あ、もう夏休みも終わりかぁ~
あっという間だったなぁ~」
さっきまで”1か月先の美桜”に憑依されていた美桜は、
そう言葉を口にすると、”夏休みを終わらせない方法”と、
そう検索し始めるー。
そしてーー
またーーー
”憑依薬”を買ってー、夏休み開始直後の自分に憑依するために、
それを使ってしまったー。
美桜は、”この先の時間”には存在しないー。
両親が気付いた時には、美桜はいなくなっていて、
2度と見つかることはなかったー。
当たり前だー。
憑依薬を飲んで霊体になった美桜は、1か月前に戻り、
そして、そのまま夏休みを満喫したあと、
消えてしまったのだからー。
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
8月の下旬~!ということで、
夏休みをテーマにした変わった憑依モノを書いて見ました~!
憑依も使い方によっては恐ろしいですネ~!!
お読み下さりありがとうございました★★!
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