<MC>生意気なあの子をネガティブに

生意気なクラスメイトを
ネガティブにしてやりたい…!

ちょっとした「洗脳」から、思わぬ事態に…?

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「あいつ、いっつも暗くて気持ち悪いよね~!
 ネガティブの塊って感じー」

女子高生・辻川 晴菜(つじかわ はるな)が、
教室の隅に男子生徒を見つめながら
周囲の友達と一緒に笑っているー

辻川 晴菜ー。
クラスの女子グループの中心的存在で、
明るく、友達も多く、成績も優秀、スポーツも出来る、と
色々なスキルを持ち合わせている子だー。

父親は、会社を経営していて、裕福な家庭で育った
お嬢様でもあり、
それ故に、わがままな一面などが目立ってしまうのが”傷”
と言えるー。

そんな晴菜は、
ネガティブオーラを振りまく男子生徒・後藤 稔(ごとう みのる)を
見つめながら、今日も陰口を叩いているのだったー。

稔は、クラスの中でもいつも端っこにいるような男子で、
非常に暗く、周囲にネガティブなオーラを振りまいているー。
友達も、当然少ないー。

ただ、彼がそうなってしまったのにも理由があってー
中学時代のいじめや、劣悪な家庭環境なども
その原因になっていたー。

「--なんか湿気がありそう~」
笑う晴菜ー。

「---」
稔は、聞こえていないふりをするー。

晴菜は、直接話をすれば、優しいー。
以前、稔が眼鏡をなくしてしまった時には
放課後、わざわざ1時間も残って一緒に探してくれたー。

だがー
お嬢様育ち、という境遇故なのだろうかー
言葉が非常にきつく、
他人を傷つける、ということが想像できないー

デリカシーのない女子生徒なのだー

そんな晴菜に対して稔は
イライラを蓄積させていたー

「--僕の気持ちなんて、分からない癖にー」
稔は、そんな風に思いながら、やがて、
晴菜に対して”お仕置き”をしようと考え始めていたー。

ネガティブな僕の気持ちを、少しでもわからせてやるー、
とー。

そんなある日のことだったー。

「ーー洗脳?」
稔が表情を歪めるー

「そうー
 ”洗脳”ー
 してみたくはない?」

高貴な感じの、マスクとサングラスの女が、
稔に声を掛けてきたのだー。

聞けば、”あなたの嫌いな子に仕返しをするチャンス”なのだというー。

この”力”を使えばー
相手を洗脳することが出来るー。

稔の心を見透かしたかのように、その女は
”この力で、あなたの嫌いなあの子をネガティブにすることもできるのよ”と
囁いたー

怪しい女に、怪しい力ー。

だが、稔は、ちょうど今日も晴菜から
傷つく言葉を言われていたー

心の中に溜め込んでいた怒りが爆発した稔は、
その女から”力”を受け取ったー

「--僕はーーー
 辻川さんにお仕置きする!」

とー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

「---ーーー」
稔は、教室の中心で友達と談笑している
晴菜の方をじっと見つめていたー。

晴菜は絶対に、こちらを見るー。
そう、思いながらー。

”僕を笑うために、辻川さんは絶対にこっちを見るー”

とー。

他人を洗脳する力を手に入れた稔はー
晴菜を”ネガティブ”にするつもりだったー

稔は、晴菜を好き放題したりだとか
そういうことをするつもりは一切ないー

ただー
ネガティブな人間の気持ちも、少しは分かってほしいー、と
それだけの願いで、晴菜を洗脳しようとしていたー

命令はひとつー

”何事もマイナスに考えろ”
という命令だけー。

操り人形にしたりー
エッチなことをさせるつもりはないー

「---!」
稔の方を、晴菜が見つめたー

晴菜は、いつものように、友達の方を見て
”あいつ、ホント、ネガティブでー”と言い始めたー

稔は、そんな晴菜を睨むー
晴菜と稔の目が合うー

”何事に対しても、マイナス思考で考えろー”

稔は、そう念じたー。
晴菜の身体が一瞬ビクンと震えた気がしたー。

これで、晴菜も少しはネガティブな人間の
気持ちが分かるのではないかー。

稔は、そんな風に”期待”したー。

洗脳の効果はすぐに表れたー。

「---あ、、ごめん…なんか…ごめんね」
晴菜が、友達に対して、やたらと謝罪の言葉を
口にしているー

何かあると、すぐに謝るようになったのだー

”すぐに自分が悪い”と
考えてしまうネガティブ思考が出てきたのだろうー。

「---」
稔は、そんな晴菜の様子を教室の隅から”観察”を続けたー。

「---あいつネガティブできもいよね~!」
周囲の女子が、晴菜に対して、そう言うと
晴菜は苦笑いしながら
「でも、わたしの方がもっとネガティブできもいかも…」と返事をしたー

稔は思わず心の中で笑ってしまうー

”あの高飛車な辻川さんがあんなことを言うなんて…
 洗脳ってすごいや…”

とー。

「---え?」
周囲が戸惑っているー

「ごめんね。わたしといても、つまらないよね。
 もう放っておいて」と、だけ言うと、自分の座席に戻って
”寝たふり”を始めてしまったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

”大満足”

稔は、晴菜の”ネガティブな振る舞い”を見れて
大満足しながら、帰宅したー。

「--まぁ、お仕置きのために1週間ぐらいしたら
 元に戻してあげようかな」
そんな風に呟きながら笑う稔ー

今日も、家の中では両親の喧嘩の声が聞こえるー
いつも、これだー。
稔がネガティブになった原因のひとつは、
明らかに”両親”のこの喧嘩にあるー。

稔はため息をつくと
「僕だってネガティブになりたくてなったんじゃないんだ」と、
一人、呟いたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

「---ねぇ、どうしちゃったんだろう?」
教室に入ると、クラスメイトたちが
ざわめいていたー

稔は「何だろう?」と思いながら
クラスメイトの視線が集まる方を見つめるとー
そこには、知らない女子生徒がいたー

髪の毛はボサボサで、
虚ろな目ー。
肌は荒れていてー
かなり地味な雰囲気の女子ー。

「---!」
一瞬、”転入生かな”などと思いながら
稔がさりげなくその顔を見るとー

晴菜だったー。

洗脳されて
”すべてをネガティブ”に考えるようになってしまった晴菜は、
自分が化粧をすることに罪悪感を感じたー

”こんなブスのわたしがこういうことしても、キモいだけだよね”と
そう、考えてしまいー
何のメイクもせず、髪もボサボサのまま
学校にやってきていたのだったー

「--どうせわたしなんて…ブスで陰険な女だし、
 わたしなんかと関わらないほうがいいよ」

笑いながらクラスメイトにそう言い放つ晴菜ー。

普段とはまるで別人のような雰囲気に
クラスメイトたちは戸惑っているー

「--(すっげぇ…)」
稔は内心でそう思ったー。

そしてー
”僕の辛い気持ちも、少しは分かってよね”と
内心で呟くと、すっかりネガティブになった晴菜の様子を
ニヤニヤしながら見つめていたー。

晴菜の”ネガティブ”は授業中にも発揮されたー

「--分かりませんー」
いつも、先生からの質問に即答する晴菜ー。

その表情は自信に満ち溢れていたー。

しかし、今日は違うー。
暗い表情で「たぶん違うと思うので…」などと呟いているー

体育の授業中ではー
ネガティブが災いしたのか、ミスを連発ー
「わたしのせいで、ごめんなさい…」と、晴菜は座り込んで
泣き出してしまったー。

そのまま保健室行きになってしまった晴菜ー

「--わぁぁ…僕以上にネガティブだ…」
稔はそんな風に呟きながら
”1週間後、元に戻したとき、辻川さんどういう反応するんだろう…?”と
興味津々な様子で呟いたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日からー

一部の生徒による、晴菜いじめがはじまったー。

”人間は愚か”
稔はそんな風に思いながら、
その光景を見つめたー

洗脳してから、たった三日ー

3日目には、もう、晴菜をイジメだしているー
晴菜と仲良くしていたようなやつらもだー。

「はぁ」
人間は愚かだと、ため息をつく稔ー。

晴菜は泣きながら保健室に逃げ込みー
その後、学校にも登校してこなくなってしまったー。

”不登校”になってしまったのだー。

稔は「ちょっとヤバいな」と、呟くー。

さすがに洗脳の効果が出過ぎているー
”何事にもマイナス思考に”なんて
命令しちゃったから、当然と言えば当然だったかもしれないー。

「--それにしてもー」
稔はクラスの教室を見つめるー

つい数日前までクラスの中心的人物の一人だった晴菜が、
孤立し、休むまでになってしまったー。

「すごい変化だなぁ…」
そんな風に思いながら、稔は、少しだけ笑みを浮かべたー。

晴菜が次に学校にやってきたら、洗脳を解除して
元通りにしようー。

クラスメイトたちは、ネガティブになった晴菜を
いじめるだろうけれど、元の晴菜に戻れば、
きっと、またすぐにクラスの中心に食い込むだろうー。

稔はそんな風に考えていたー

しかしーーー
翌日も、その次の日もー、
次の週も、晴菜は一切学校に来なかったー

”不登校”になってしまったのだー

「--やばい…」
稔は少しだけ焦りを覚えるー。

よく考えたら、それはそうだー

”何事もネガティブに考えろ”と洗脳したのだー。

全てのことをネガティブに考えてしまう今の晴菜が
学校に来れるわけがないー。

「--もう十分だから」
稔はそう呟いて、晴菜の家を訪れたー。

晴菜の家は知らなかったが、
先生に「プリント類を届けてきます」と自ら申し出て
晴菜の家を教えてもらったー。

緊張しながら、晴菜の家を訪れる稔ー。

「---…」
すると、母親らしき人物が出て来たー。

裕福な家庭だけあって、
すごく立派な家だー。

プリント類を届けに来ただけなのに、
豪邸の中に招待され、お茶とお菓子まで
出してくれたー。

「--少し、お待ちください」
母親らしき人物がそう言うと、
しばらくしてから、晴菜本人が出て来たー。

「---!?」
稔は驚いてしまうー

髪はボサボサー
顔はやつれ切っていて、
パジャマ姿のままの晴菜が姿を現したのだー

一言で表現するならば、
まるで”別人”-。

「---辻川……さん?」
稔は驚きながら言うと、
晴菜は泣きながら
「どうせ、、わたしに、、仕返ししにきたんでしょ?」
と、震えながら言うー

「--わたしなんて、、ゴミクズだもん…
 ごめんね‥・!ごめんね!
 嫌がらせしてごめんね…!

 わたしなんて、生きて価値ないもん!」

「---!」
稔は、晴菜の腕を見て唖然としたー。

リストカットのあとのようなものがたくさんあるー。

稔はすぐに晴菜を再洗脳するかたちで、
元に戻そうとしたー

しかしー
晴菜は泣き叫びながら、走り去ってしまうー。

「--あ、ちょっと!」
豪邸の廊下に飛び出そうとすると、
母親らしき人物が再びやってきてー
「ごめんなさい…晴菜は最近、いつもああで」と、
稔に声を掛けたー。

そのまま晴菜に会うことができないままー
稔は晴菜の家の外に出たー。

「--どうしよう…想像以上に洗脳が効きすぎてるー」
焦る稔ー

そしてー
その翌日ー、
晴菜は自殺してしまったー。

”わたしなんて生きてる価値ない”
と、遺言を残してー

「------」
稔は、愕然としたー。

自分の罪になることは、ないー
洗脳など、誰にも分からないはずだからー

でもーー

稔は、頭を抱えて、蹲ったー

”僕に洗脳の力をくれたあの人はいったい誰だったんだろう…?”
そんな風に思いながらもー
その答えは見つからないー

もしかしたら、自分の心の闇が生み出した幻覚だったのかもー

いやー
よく考えたら、辻川さんの母親に似ていたようなーー

だがー
もう、そんなことを考えても、仕方がなかったー。

「僕…僕…人を殺しちゃった……どうしよう…どうしよう…」
稔は自分のしたことに押しつぶされそうになって、
一人、叫び声をあげたー。

おわり

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コメント

4/1はエイプリルフールの小説を書こうと決めていたので、
今日は合間の1話完結のお話でした~!

来月も皆様にお楽しみ頂けるように頑張ります!
今日もありがとうございました~!

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