<入れ替わり>バカップルと俺②~耐え難い時間~

イチャイチャカップルの彼女のほうと
入れ替わってしまった堅物の男子大学生ー。

彼の耐え難い”地獄”が始まるー

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海辺と、抱き着かれてキスをされていた
香織(行彦)は、
表情を曇らせたー。

「ーーあ、いた!香織の身体を返して!」

入れ替わった相手ー
行彦になった香織が、駅での混乱から抜け出して、
ようやく省吾と香織になった行彦に追いついたのだー

”まるで、俺が身体を好きで入れ替えたような言い草だなー”

そう思いながら、言葉を口にしようとすると、
彼氏の省吾が口を開いたー

「ーさっきから何なんだ君は」
省吾の言葉に、行彦(香織)は叫ぶー

「ーー省吾! 香織!信じて!」
行彦(香織)が叫ぶー

「ーーー…?」
省吾は表情を歪めたー。

香織(行彦)はそんなやり取りと見つめながら
”この子…バカだろー…”と呟くー

香織は一人称が”香織”のようだー。
自分の名前を一人称に使っているー。

堅物の行彦からすれば、
ちょっと面倒臭い感じがするし、
そういう子もあまり得意ではなかったが
別にそれは個人の自由だし、
行彦にとっても、どうでもいいことだー。

だが、入れ替わった状態になっても
一人称が”香織”のままだと、
正直、とても分かりにくく、間際らしいー

にもかかわらず、自分のことを”香織”と言っているこの子には、
唖然としたー

”ーー省吾! 香織!信じて!”

そう言われた彼氏の省吾は困惑していたー

知らない男が
”省吾”、”香織” 俺を信じてくれー! と言っているようなー
そんな意味に受け取ったのだー

何を信じろと言うのかー?

省吾は真顔で考え込むー。

一方、行彦になってしまった香織からすれば
”省吾!わたしを信じて!”という意味で言葉を発したー

だが、それは全く通じていなかったー

「ーーあ、あのー実はー」
見かねた香織(行彦)が面倒臭いけど、隠し通すことは
無理だと悟り、
事情を説明しようとするー。

しかしー

「ー大丈夫だ香織ー心配しなくていい!
 この変質者は俺が追い払うからー」

そう言うと、省吾は笑みを浮かべたー

「ーいや、だから、そのー」
香織(行彦)は”俺の話を聞けよ!”と思いながら
言葉を続けようとするー

「ーーあんた!香織の身体を奪って、何がしたいの!?」
行彦(香織)が、香織(行彦)のほうを見つめながら叫ぶー。

「ーーいったいお前は何を言ってるんだ!?」
省吾が怒りの口調で反論するー

「ー俺が香織の身体を奪うー!?
 っていうか、あんた誰だ?元カレかー?
 違うだろ!?
 なんなんだ?」

省吾の言葉に、行彦(香織)は「だから香織だってば!」と叫ぶー

”全く会話が成り立ってねぇ…なんだこいつらー”
思わず呆れてしまう香織(行彦)ー

”あんた!香織の身体を奪って、何がしたいの!?”は、
行彦になった香織が、香織になった行彦に
”わたしの身体を奪って何がしたいの!?”と聞いた言葉だー。

しかし、省吾は自分が、”香織”を一人称の意味で使っていると思わず、
自分が言われていると勘違いして、彼氏である自分が
”香織の身体を奪って何がしたいの!?”と見知らぬ男に
言われたと勘違いして、怒っているー

「違うよ!香織、こっちの人に言ってるの!」
行彦(香織)がなおも叫ぶー。

「ー意味わかんないやつだな!いい加減にしてくれよ!
 香織、この男、知り合いかー?」

省吾が、香織(行彦)のほうを見て叫ぶー。

「ーーえ…あ、知り合いっていうかー…
 実はー

「ーーこっちです!」
その時だったー

事情を説明する間もなく、
口論を聞きつけた周囲の住人が、
この浜辺の管理者に連絡したのだろうかー。

係員のような人がやってきて、
行彦(香織)が取り押さえられるー。

「ーーち、違うんだってば!香織なんだってば!」
行彦(香織)の言葉は理解されず、そのまま連れ去られていくー

「あっ!ちょっと待って!」
香織(行彦)は、”おいおい、このままじゃ俺が不審者扱いだぞ!”と、
心の中で焦りを感じながら事情を説明するー

だがー

「ーもう大丈夫だよ。香織ー」
彼氏の省吾が急に香織(行彦)をその場で抱きしめて
頭を撫で始めたー

”おいこの野郎!邪魔するなよ!”
心の中でそう叫びながらも
「ちょ、ちょっと離して!」と声を出すー

けれど、途中からキスされてしまって
その声は上手く発音できなかったー

”っていうか、ファーストキスが
 知らない女の身体で、知らない男とか、
 あり得ないだろー”

香織(行彦)はもがきながらそんなことを考えるー

そもそも、どうしてこんなことになったのかー。
そうだー
全てはこいつらのせいだー。

このバカップルが電車内で環境汚染を繰り広げた挙句ー、
人が歩きそうな曲がり角でイチャついていたせいだー。

そう思うと、だんだん腹が立っていた香織(行彦)はー
「人が見てるんだから、いい加減にして!」
と、香織っぽい口調で叫んだー。

省吾は少し驚いた様子を見せながらも
「ー恥ずかしがることないじゃないかー」と笑みを浮かべて
再び香織(行彦)を抱きしめたー

”くそっ!こいつら、いったい普段どんな風に
 過ごしてるんだよー!?
 家の中でもずっとこんな風に抱き合ってんのか!?
 それとも、家の中ではずっとアレしてるのか?

 汚ねぇ 汚すぎるー”

堅物の行彦からすれば、信じがたいほど
不純なカップルー。
正直、もう関わりたくないし、
早く帰りたいー。

休日の今日は少し買い物しようと、
この街までやってきたが
もはやその気力もなくなってしまったー

とにかく、早く帰りたいー

「ーーーー!」
そう思っていると、香織(行彦)から
突然身体を話した彼氏の省吾ー。

「ーーーえ?」
香織(行彦)が戸惑うと、
省吾は「ちょっとトイレ」と、苦笑いしながら
そのままトイレの方に向かったー

「唐突すぎるだろ」
香織(行彦)はうんざりしながらも、
”今がチャンス!”と、省吾がトイレの方に向かったのを確認して、
そのまま浜辺の事務所の方に向かったー

「だ~か~ら~!香織、この男の人に身体を奪われて!」
行彦(香織)が、海辺の管理スタッフに向かって
怒りの形相で声を上げているー。

事務所に遅れてやってきた香織(行彦)は、
「ーす、すみません!彼がお騒がせしました!」と、
強引に事務所の管理スタッフたちに頭を下げると、
「???」になっているスタッフたちを他所に、
「ーとにかく、外で話そう」と、
行彦(香織)に小声で言い放ってー
そのまま行彦(香織)を外に連れ出したー

海辺の管理事務所から外に出て、
再び海辺に戻ると、
行彦(香織)が不満そうに叫んだー

「ー香織、訴えますから!」
とー。

「ーーはぁ」
香織(行彦)は面倒臭そうにため息をつくー

最悪だー。
面倒臭すぎるー。

そう思いながらも
「ーあのさ…俺、別に君の身体になりたくてなったわけじゃないんだけど」
とー、ため息をつきながら言うー。

「ーはぁ?あんた、香織のこと狙ってたんでしょ!?
 香織、可愛いし! 
 そ~やって香織になってエッチなことしようとしてたんでしょ!」

行彦(香織)が叫ぶー。

「ーーーーはぁ…」
もはやため息しか出ないー。

「ー悪いけどー俺、君に興味ないからー…」
香織(行彦)がそう言うと、
「…はぁ?し、失礼すぎでしょ!」と逆ギレし始める行彦(香織)ー

”何を言っても文句を言われるとか最悪だろー”

そう思いながらも
「君に、っていうか、女の人に興味ないっていうかー
 恋愛に興味ないっていうかー
 その…男女間の交わりとか、汚いって思ってるっていうかー
 そんな感じでー」
と、面倒臭いので、全部説明したー

「ーーえっ!?じゃあ童貞!?」
行彦(香織)の言葉に
”うるせぇやつだな本当にこの野郎ー”と、
心の中で思いながらも
「ーいや、マジで恋愛とか興味ないんだよ。エッチなこともー
 だから君の身体になりたくもないし、正直面倒臭いから早く戻りたいし、
 女の人の身体になったからってやりたいこともないし、
 ただ面倒臭い。マジで帰りたい」
と、香織の口で言い放ったー。

「ーーーーー」
口をぽかんと開けたままの行彦(香織)ー

「まぁ、平気で人前でイチャイチャする君たちに
 理解してもらおうとは思ってないよ。
 でも、マジで君の身体に微塵も興味ないから、
 早く元に戻ろう」

香織(行彦)が、冷静にそう言い放つと
行彦(香織)は「香織がまるで別人みたい…」と、
呆然とした様子で呟きながら
「ーっていうか、あんた!メチャクチャ失礼なんだけど!?
 興味ないってなに!?」
と、叫び始めるー

「ーいやいやいやいやいや、なんなんだよー。
 エッチなことするなって言ったり、興味ないって失礼って
 言ったりー
 俺はいったいなんて言えばいいんだよ…」

あきれ顔で呟く香織(行彦)ー
香織の身体になってからも、行彦は一切香織の身体に
触れようとせず、髪も触ってないし、自分からは胸も触っていないー

とにかく、早く元に戻りたいー。

「ーーーう~ん…香織を不快にさせないように、
 でも、変なことはしちゃだめ!
 とにかく、香織に気を使って!」

入れ替わった状態で、自分の一人称を自分の名前で言われると
本当に面倒臭いー。

だが、この女はこういう状況でも
特に臨機応変という言葉は知らないようだー。

「はいはいー
 で…どうやったら元に戻れるのかな?」

香織(行彦)が言うと、
行彦(香織)は「香織、そんなこと知らないもん!」と叫ぶー

周囲を通った客が、二人のほうを見つめるー

「ーおい、俺の身体でそういう大声出すのはちょっとー」
香織(行彦)はそう言うと、
”まぁ、最初はぶつかったら元に戻ったんだし、もう1回ぶつかればいいのかな”
と、二人でぶつかってみることを提案したー。

しかしー

「え~~~!?香織、痛いのはやだ~!」
行彦(香織)がそれを否定したー

「ーーはぁ!?」
香織(行彦)は”我儘な女だな!俺だったら絶対関わりたくねぇ”と、
心の中でうんざりしながらー
「じゃあ、握手して念じてみるとか?」と、戸惑いの声を上げるー

「ー香織、触りたくない~~!」
行彦(香織)が叫ぶー。

「ーーー…………」
行彦(香織)はイライラしながら頭を抱えると、
「とにかく!元に戻るために我慢してくれよ!」と、声を上げるー。

「ー君だって、俺の身体なんか嫌だろ?
 俺だって君の身体なんて嫌だ!
 だから、痛いのとか、そういうのは我慢してくれ!」

香織(行彦)が可愛らしい声のままそう叫ぶと、
行彦(香織)は「ー香織の身体が嫌だ!?失礼じゃない?」と、
また文句を言ってきたー

「またそこに戻るのかよ」と、呆れながらも、
香織(行彦)はようやく行彦(香織)を説得してー、
”順番に元に戻れそうなこと”を試していくことにしたー

「まずお互いの手を握って念じてみようかー…
 これで戻れるなら、ぶつかって痛い思いをしたりする
 必要はなくなるしー」

香織(行彦)の言葉に、
行彦(香織)は頷き、二人で手を握ってみるー

その時だったー

「お、お前!俺の香織に何をしてるんだ!?」
トイレに行っていた香織の彼氏・省吾が
香織(行彦)がいなくなってることに気付き、
探し回って、二人を発見してしまったー。

「ーーーあ」
香織(行彦)が表情を歪めると、
省吾は叫んだー

「ー俺の香織から、離れろ!
 この変態野郎!」

行彦(香織)のほうを指差しながら
そう叫ぶ省吾ー

”もうやだー…こいつらと関わりたくねぇ”
香織(行彦)は心の中でうんざりしながら
大きくため息をついたー

③へ続く

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コメント

面倒臭いカップルに絡まれて(?)しまった彼の災難な時間は
続きます~☆
続きはまた明日~!

コメント

  1. 匿名 より:

    香織は頭が悪い上に自意識と自信過剰すぎですね。というかわがまますぎて本気でうざいです。
    香織みたいな女にべた惚れしてる省吾ははっきりいって、趣味が悪いというか、女を見る目がないですね。

    • 無名 より:

      コメントありがとうございます~!☆

      色々な意味でキツイカップルとの入れ替わりですネ~笑
      そういう二人なので、仲良しなのかもしれません~☆