電車内で平気でイチャイチャしているバカップルを見つけた
男子大学生ー。
彼は”環境汚染”などと思いながらその様子を不快そうに
見つめていたものの、やがて、そのカップルの女と入れ替わってしまい…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーーーー」
男子大学生の花輪 行彦(はなわ ゆきひこ)は、
表情を歪めていたー。
同じ電車で、イチャイチャしているカップルがいたからだー。
乗客が少ないとは言え、電車の中で至近距離で見つめ合ったり、
明らかに抱き合っていたり、
キスをしたりー
身体に触れあったりー
”公害”ー
行彦はそう思ったー
公共の場で見たくもないイチャイチャを見せつけられるー
それは、行彦からしてみれば
環境汚染の何物でもなく、公害と同じだったー
周囲の景観という名の環境を汚染しているー。
見たくなければ見なければいいー
そう言われるかもしれないし、
行彦もそうしているー
だがー
目の前の”環境汚染”は、
”サウンド”つきなのだー。
甘い声や、少し感じているような声ー
”好きだよ”という男の声ー
そんなものまで聞こえてくるー。
”くそっ…環境汚染カップルめー”
行彦はそんな風に思いながら、
次の駅が自分の目的地であることを思い出し、
”ようやく解放される”と心の中で思ったー。
人間は理性のある生き物だ。
チンパンジーやゴリラ、オランウータンとは違うー。
チンパンジーであれば、外でイチャついていても仕方がない。
だが、我々は人間だ。
ホモサピエンスという理性ある生き物だ。
行彦は、”人間は理性のある恋をするべき”
そう考えていたー。
人前でキスしたり、イチャつくなど言語同断ー
ネットで顔面をクリエイトしてイチャついている写真を載せるなど、
言語同断ー。
その堅物すぎる考え故に、行彦には生まれてから今まで
彼女がいたことは一度もなかったが、
それでも、こんな”歩く公害”みたいなカップルになるよりマシだー、
と、行彦は気にも留めていないー。
「ーー大好きだよー、省吾(しょうご)ー」
「ー俺もだよ、香織(かおり)ー」
見つめ合って微笑む二人ー
”うがあああああああああああああああ!!!!!”
行彦は、頭を掻きむしりながら、もがき苦しみ始めるー
”くそっ!俺はいつからチンパンジー専用車両に乗り込んでしまったんだ!
こんなことなら、臭いおっさんのいる前の車両に居座ってた方がマシだったー”
そんな風に思いながら、行彦は頭を掻きむしり続けるー。
”なんなんだこいつらー?
電車の車内で何をイチャイチャしているー?
これが噂のバカップルってやつかー。
いや、そもそもこいつらは人間なのかー?
欲望のままに、電車内でイチャイチャするなら
チンパンジーと同じではないか?
な~にが省吾!香織だ!
省チンと香パンジーめ!”
行彦が頭の中で怒りを爆発させていると
「あっ!!!!!」
とっくに電車は目的の駅についていて、今、まさに電車の扉が閉まろうとしている
最中だったー
「うっ…おおおおおおおおお!!!!降ります!」
ほとんど誰もいないのにそう叫んだ行彦は、
なんとか電車から降りることに成功するとー、
「くそっ!…あのチンパンジーどものせいで、次の駅まで行っちまうところだった」と
不機嫌そうに歩き出すー。
今日は何だか疲れたー
見たくもないC級昼ドラを見せつけられた気分だー、
と思いながら、何だかイライラするし、
売店でお菓子を1000円札で買ってやろう、と思いながら
駅を歩くー。
階段を下りて、曲がり角を曲がったその時だったー
「ーーー!!!!!!!」
「ーーーー!?!?!?」
曲がり角を曲がったすぐ先でー
行彦と同じ駅で降りていた例のカップルが
イチャイチャしていてー
行彦は、カップルの彼女のほうと
盛大に衝突してー
そのまま二人とも転倒してしまったー
「ーーっっ…」
転倒した行彦は頭を押さえながら
「ー危ないじゃないか!」と、大声で叫ぶー。
「ー曲がり角のすぐ先でイチャイチャしてるんじゃねぇよ!」
怒りの形相で叫ぶ行彦ー
香織ー、とか言ってただろうか、
その彼氏の祥吾が、行彦の言葉に戸惑っているー
だがー
「ーーー…って… え?」
行彦は表情を歪めたー。
今、自分で叫んだ言葉が、いつもの自分の声よりも明らかに高い声ー
いやー
そもそも”男”の声ではない声で発されたのだー。
「ーーー……か、香織ー?」
不安そうにする彼氏の省吾ー
「ーーえ…な、なにこれー…?」
背後では、行彦の声が聞こえたー。
「ーー!?」
行彦が背後を振り返るとー
そこにはー”自分”がいたのだー。
周囲の人たちが”大丈夫ですか?”と、
行彦と香織が正面衝突したことで、
心配そうに二人を見つめているー。
「ーーえ…な、なんで、なんで香織が目の前にいるのー!?」
行彦がそう叫んだー
”ーーえ…?な、なんだこの展開はー…?”
行彦は困惑するー。
目の前に自分がいるー
そして、自分がー女になっている!?
そして、目の前にいる自分が
”なんで香織が目の前にいるのー?”と、呟いているー
これは、まさかーーーーーー!!!
香織になってしまった行彦は、呆然としながら
香織の身体で呟いたー
「ーーーこの女…一人称が”自分の名前”の女かよー…」
香織(行彦)は、
本当に気にするべきところを差し置いて
そう呟いたー
目の前にいる”自分の身体”を見て
”なんで香織が目の前にいるの?”と呟いているということはー
この女は普段、自分の一人称が”香織”なのだろうー。
香織(行彦)は
”これはマジで公害だー”と、思いながらも、
”ってなんで俺がこんなバカップルの女になってるんだ!?”と
ようやく本来戸惑うべき場所に気付くー。
「ーー香織…なんでそこにいるのー…?」
行彦になった香織は行彦の身体でそう呟くー。
単純に”わたし、なんでそこにいるの?”という意味だったが、
行彦の身体で言うと、
”香織がなんでそこにいるんだ?”と聞こえてしまうー
「し、知り合い?」
案の定、誤解したカップルの彼氏・省吾が困惑するとー
「か、香織!香織なの!」
と、行彦(香織)が叫ぶー
一人称が”自分の名前”なせいで、
入れ替わった状態において、
非常に間際らしいことになってしまっている行彦(香織)ー
”わたし!わたしなの!”という意味が、
彼氏の省吾には”香織?香織なの?”に聞こえてしまうー。
「ーーーな…なんなんだ君は!?」
省吾が言うと、香織(行彦)は口を開こうとするー。
だがー、省吾がそれよりも先に香織(行彦)の手を掴むと、
「いこう、香織ー」と、
そのまま香織(行彦)を無理やり引っ張るようにして
慌てて立ち去ってしまったー
(えっ!?ちょ!?)
香織(行彦)は困惑しながら、省吾を振り払おうとするー。
だがー
”女の身体”になってしまった行彦は、
省吾の手を振り払うことが出来ずー、
そのまま連れていかれてしまったー
”ちょっと待て!?こんなバカップルの女になりたくねぇ!?!?”
香織(行彦)の心の中の叫びもむなしく、
そのまま連れていかれてしまうー。
行彦(香織)が何やら叫んでいたが、
周囲の利用客が”ヤバい男”だと判断したのか
「おい!落ち着け!」と、止められている様子だったー。
”おいおい…俺の身体であんま変なことしないでくれよー”
本当はすぐにでも引き返して、
香織と自分の身体を元に戻したかったが、
省吾の引っ張る力に逆らうことが出来ず、
香織(行彦)はそのまま駅から離れることになってしまったー。
「ーーはぁ…はぁ…なんなんだあの男はー…?
香織の知り合い?」
省吾の言葉に香織(行彦)は、
戸惑いの表情を浮かべながら
「う、ううん…知らない人…」と、答えたー。
あまり、こういうチンパンジーのようなカップルとは
関わりたくないー。
「まぁいいやー…ほらー」
省吾が嬉しそうに指を指すー。
やってきたのは海岸沿いー。
どうやら今日は二人でデートに来たようだったー。
「ーーー綺麗だよな、海ってー」
省吾が海を見つめながら言うと、
香織(行彦)のほうを見つめたー。
「ーでも、香織の方が海よりも綺麗だー」
真顔で言う省吾ー
「ーーーーーーーーぷっ」
香織(行彦)は、思わず吹き出してしまうー。
”真顔でそんなくせぇセリフ吐くなよ!
で、何だ?この女は”省吾…嬉しい♡”とでもいうのか?”
香織(行彦)がそんな風に思っているとー
突然省吾は、香織(行彦)を抱きしめて
キスをし始めたー。
見晴らしの良い海辺ということで、
泳ぐ季節ではないものの、
周囲にはデートと思われる客や
一人で黄昏ている客、
今にもそのまま海に向かっていきそうな客ー
色々な人が訪れているー。
そんな中で、省吾はいきなり堂々とキスを始めたのだー。
「ーー(こいつ、馬鹿なのかー!?公共の場を環境汚染するのか!?!?)」
香織(行彦)は慌てて
「ーちょっ…こ、ここ…人前だろ!」
と、叫んでしまうー。
入れ替わっていることを悟られると面倒臭そうだし、
ここまで彼女を溺愛しているような彼氏が相手であれば、
尚更だー。
できれば、入れ替わっていることを悟られることなく、
元通りになりたいー。
だが、省吾が堅物の行彦からすれば
信じがたい行動に出たために、咄嗟に素が出てしまったー
「ーーははは…そんなこと言っちゃってー」
しかし、省吾は香織(行彦)の言葉を間に受けず、
そのまま思いっきりキスをしてきたー。
女子の身体だからだろうかー。
それとも省吾がゴリラ並みのパワーの持ち主なのか
分からなかったが
振り払うこともできず、
顔を真っ赤にしてしまう香織(行彦)ー
”こ、こいつ絶対おかしいだろ?恥ずかしくねぇのか!?!?”
もがきながらキスをされる香織(行彦)ー
しかもー
省吾はさらに香織(行彦)の胸に手を触れて来たー
「んっ……」
今までに感じたことのない何とも言えない感覚に陥ってしまう
香織(行彦)ー
女として胸を揉まれた経験など、当然行彦にはあるはずがないー。
そんなに派手に触られたわけではないがー
”胸がある”ということ自体、行彦にとっては前代未聞な状況で、
それに触れられたー、という状況は、
言葉にしがたい何とも言えない感覚だったー
「ーーー香織…大好きだよ…」
省吾がイケメンっぽい声で呟くー
”こ、こんなことされて、この子は嬉しいのか!?!?!?”
香織(行彦)は理解できない
異文化と交流したような気持ちになるー
男女で抱き合って甘い言葉を投げ合って何が楽しいのだろうかー。
しかも、それを公衆の面前で晒すなど、言語道断ー。
行彦からすれば、全裸の写真をネットに流されているのと同じぐらい
恥に値する行為であり、屈辱だったー
「ーーうわっ!すごくね」
「ーーイチャイチャしてるぞ」
男性二人組が、省吾と香織(行彦)に気付いて、
小声ながらもそう話しているのが聞こえて来たー
香織(行彦)は顔を真っ赤にして
「ちょ…み、見られてるからっ!」と、
今度は香織っぽい口調で言葉を口にしたー。
しかしー…
省吾はお構いなしに、ちゅっちゅっと何度も
キスを繰り返しているー。
「ーーーー香織は世界一だ…えへへへへへへ」
”キモすぎるー”
香織(行彦)は純粋にそう思ったー
この香織という子からすれば嬉しいのかもしれないー。
だが、度を越したイチャイチャは、第3者から見ればー
時に恐怖となるー
と、行彦は思うー。
「ーーあ、いた!香織の身体を返して!」
その時だったー
駅の混乱からようやく抜け出して後を追ってきた
行彦(香織)が、海辺にやってきて
抱き合っている省吾と香織(行彦)に対してそう言い放ったー
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
イチャイチャカップルと入れ替わってしまった行彦…!
大変なことになりそうですネ~!
お読み下さりありがとうございました~!
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