<憑依>ポゼッションストーム③~想い~(完)

巨大竜巻が連続して発生し、
人類は壊滅状態ー。

そんな中、憑依された娘とその父親の運命はー?

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーー」
車を走らせる陽平ー。

しかし、その後部座席にいたおじいさんは、
怒りの形相を浮かべていたー。

”よくもわしらのジャマをしたなー…”

車にたくさんの食料を詰め込んでいたおじいさんたちー。

しかしー
あの食糧はーー”他の生存者から略奪したもの”だったー。

それを”男に憑依された結花”に奪われたー。
このおじいさんたちは純粋な被害者ではないー。

”略奪者が、他の略奪者から食料を奪われた”
それだけの話ー。

憑依された結花が、このおじいさんたちから食料を奪った後に
”「しかしー、あのジジイとババアも
 どうやってこんな食料を集めたんだかー」”
と、違和感を抱いたのは、間違いではないー。

おじいさんたちが抱えていた食料は、おじいさんたちが略奪したものだったのだからー。

しかもーーー
おじいさんと一緒にいたおばあさんは”妻”ではないー。
無害な老夫婦を装い、生存者から金品と食料を奪い取っていた
悪の協力者ー。

”こんな状況じゃ、誰だっておかしくなるー
 そう、このわしもなー”

おじいさんはそう思いながら”車だけでも奪おうと”、
運転中の陽平の首を、背後から忍び寄って、突然絞め始めたー

「ーがっ…!?な、なにをする!?」
陽平が叫ぶー。

「ー悪いが、死んでくれっ!」
おじいさんがそう叫ぶー。

首を絞められた陽平の車の運転は乱れてー、
車が激しく左右に揺れ始めるーーー

・・・・・・・・・・・・・・・・・

同時刻ー
巨大竜巻の異常発生により急遽設立された”世界竜巻災害対策センター”では
ある兆候が探知されていたー。

「ーこの地域ーまずいなー」
男がそう呟くー。

「ーー急激に積乱雲が発達していて、
 それがまとまってきているー」
別の男がモニターを見つめながらそう呟くー。

「ー巨大竜巻が連続して発生する危険があるー」
そう呟きながら、男がモニターを見つめるー。

既にその地域には、巨大竜巻が一つ、二つと発生し始めているー。

そしてーー
その地域はー、
ちょうど陽平や結花たちが今いる地域だった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーさてとーー」
街の方を見つめていた結花は、
おじいさんたちから奪った食料を詰め込んだ車に乗り込もうとするー。

がー、その時だったー

「ーー!?」
背後から突然胸を触られて、結花が振り返ると、
そこには、ニヤニヤと笑みを浮かべた不気味な男の姿があったー

突然触られたことに顔を赤らめながら、
結花は「ー触ってんじゃねぇ!」と、声を荒げて、男の急所を蹴り飛ばすー。

男が悲鳴を上げながら
その場をのたうちまわるのを見て、結花は笑みを浮かべると、
「ーククククー、食料目当てか、この身体目当てか知らないけど
 残念でしたー」と、言いながら
そのまま男を無視して車に乗り込むー。

車に乗り込んだ結花は笑うー

そして、ふとミラーに移る自分の顔を見つめるー。

”俺は、死なねぇー
 どんな姿になったって、絶対に死なねぇー”

男は、これまでも盗み出した憑依薬の力で得た、
憑依能力を使って生き延びて来たー。

”こんなクソみたいな人生のまま、終わってたまるかよー”

彼の人生は散々だったー。
大学卒業後、ブラック企業でパワハラを受けて精神を病んでしまい
退職ー。
それから、やっとの思いで這い上がって就職した企業は
業績の悪化により倒産したー。
その末にたどり着いたのが、ある研究機関ー。
そこではー
将来的には医療用に使う用途で”憑依薬”の開発も進められていた。

そこでの研究にやりがいを感じ、
ようやく”充実した人生”を手にしたばかりだった彼ー。

しかし、巨大竜巻の連続発生により世界は崩壊したー。

彼の勤務する研究施設にも巨大竜巻が接近ー

”こんなところで死にたくねぇ!”と、そう叫んだ彼が、
咄嗟に思いついたのが、”開発中の憑依薬を飲む”という行動だったー。

賭けだったー。

しかし、それに成功した彼は自分の身体を捨て、
身体を次から次へと乗り換え、何とか生き延びて来たー。

「ーー乗っ取られたやつがどうなろうと関係ねぇ」
結花はそう呟きながら鏡を見つめるー。

「ーどんな身体になろうと、生き延びてやるー」
そう言葉を口にした結花ー。

しかしー…

「ーー!?!?」
いつの間にか後部座席に乗り込んでいたさっきの変態男が、
笑みを浮かべながら、結花の腕を掴んだー。

「ーお前…!」
結花が表情を歪めるー。

男は笑みを浮かべながら
「この車は俺が貰うぜー」と、そう言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーぐ…」

大通りを走行しながら、後部座席のおじいさんに
首を絞められている陽平は、表情を歪めていたー。

「ーー!!」
さらにー、陽平はあることに気付くー。

バックミラーに大型の竜巻が写っているー。

”また”竜巻が発生したのだー。

「くっー」
陽平は、必死に事故を起こさないようにしながら
車を左右に揺らすー。

「ーわしは全てを奪われたー
 だから、もう怖い物はないんじゃー
 奪って、奪って、奪ってー…奪いまくるんじゃ」

笑うおじいさんー。

彼はー
巨大竜巻が各地に発生した直後ー
息子夫婦と孫娘、さらには妻を全員一気に失ったー。

全員が竜巻に飲み込まれて自分だけが助かってしまったのだー。

そのことを涙目で叫ぶおじいさんー。

”ーーーこの人もー”
陽平は目を閉じるー。

世界は、変わったー。
世界各地に出現した巨大竜巻によって、秩序は失われたー

このおじいさんのように、
元々は”普通の人”だったのに、狂ってしまった人間を
何人も何人も、陽平は見て来たー。

「ーーそれでもー…俺は死ねないー!」
陽平はそう叫ぶと、さらに車を左右に揺らすー。

ハンドルを何度も何度も切るうちに、
おじいさんの身体が揺られて、
陽平の首から手が離れるー。

「ーーぐ…くそっ…!」
おじいさんが表情を歪めるー。

がーーー
その時だったー。

強風で、しっかり閉まっていなかった後部座席の扉が開きー、
おじいさんの身体が外へと投げ飛ばされるー。

「ーー!」
陽平は、一瞬、驚きの表情を歪めるー。

しかし、もう彼を助けることはできないー。

陽平は少しだけ同情しながら、
そのまま車を走らせたー。

だがー
竜巻が次々と上空から発生し、
東西南北、全てから竜巻が迫りつつあったー。

「くそっ……!逃げ場がー…!」
全速力で走れば北西の方向からは何とか逃げられるかもしれないー。

しかし、かなり危険な状態ー。
陽平が舌打ちをしながら、大通りを突破して、街中の広場にたどり着いた
その時だったー。

「ーーー…!!!!」
表情を歪めながら座り込んでいる、娘の結花の姿が目に入ったー。

陽平は車を飛び降りて、「結花!」と、叫びながら
結花の方に駆け寄るー。

「ーーあん?」
結花は表情を歪めるー。

男に車を奪われて、車から放り出された結花は、
竜巻に包囲されて、途方に暮れていたー。
しかも、車から突き落とされた際に足を骨折したのか
歩くこともできない状態になっていたー。

が、身体を乗り換えようにも
近くに他の人間も見当たらずー、
”最後の賭け”に出ようとしているその矢先だったー。

結花に憑依している男が勤務していた研究施設で開発中だった憑依薬は、
”長く魂の状態のまま留まること”はできないー。
それ故に”次の身体”をすぐに見つけないといけないー。

今まではなんとか、”身体を渡り歩きつつ”生きて来たー。

だがーー

既に人間の数も減り、竜巻に包囲された状態のこの場所には
周囲に人がいなかったー

”次の身体が見つかるか分からない”
そんな状況ー。

しかし、もう竜巻から逃げることはできないー。
仕方がなく、結花の身体を捨てて、
近くに別の人間の身体がないかどうか、探そうと、そう考えていたのだー。

「ーー結花!…結花!よかったー!」
父・陽平は涙目で結花に駆け寄るー。

「ーーーーわたし、もう歩けないよ」
結花は自虐的に笑いながら、自分の足を指差すー。

がー、
結花に憑依している男は、父親の出現に
”俺の運もまだ捨てたもんじゃねぇ”と、心の中で笑ったー。

何故ならーー
結花から、陽平の身体に”移動”すればー、
陽平の身体を奪い、あの車で逃亡できるチャンスがあるー。

それに、車で移動できれば、この近辺に残っている
他の人間を見つけることができるかもしれないー。

例え、”新しい身体”がすぐに死亡しそうになっても、
1回、”別の身体”に憑依すればまた霊体の状態で少し移動できるー。

憑依⇒すぐにダメになる⇒憑依⇒すぐにダメになるを
繰り返すことさえできれば、遠くに移動することも可能だー。

”身体がないまま一定時間彷徨う”か、
”憑依した状態のまま死ぬ”かー、
それらさえ回避すれば、彼は無限に生きることができるー。

ニヤリと笑みを浮かべて、結花は父である陽平に
”身体を移動しようと”そう画策するー。

がーーー

父の陽平は、目に涙を浮かべながら
「ーーごめんなー…結花ー」と、そう言葉を口にして、
結花の方を真っすぐ見つめたー

「ーーく…くくー謝ったりしなくていいよー
 お父さんは十分頑張ったー。

 ほらー、わたしなんかのこと構ってたら
 お父さんも竜巻に巻き込まれちゃうよー?」

強風で髪を揺らしながら、結花が笑うー。
その制服は既にずぶ濡れだー。

「ーーーー結花のことを置いて逃げるわけないだろー」
陽平がそう言葉を口にするー。

「ーーーーーくっ…くくくく…」
結花に憑依している男は、思わず笑みを浮かべるー。

どうせ、このあと陽平の身体を使うんだー。
もう、隠す必要などないー。

「ーバカなやつー
 娘を置いて逃げれば助かるのにー

 今までだって”もう助かりようのない人”を諦めて逃げてきたはずだろー
 娘のことなんて、捨ててー」

結花がそう言うと、
陽平は、その場で結花を抱きしめたー。

「守れなくて、ごめんー
 最後まで守り抜くって約束したのにー

 本当に、本当にごめんー」

父の陽平に抱きしめられながら、結花は
少しだけ驚いたような表情を浮かべるー

「ーーバ…バカだろー?
 ーーひ、一人で逃げれば自分は助かるんだぞ!?
 娘と一緒に死んで何になる!?」

結花がそう叫ぶと、
陽平は、結花のそんな言葉遣いも気にせず、
悲しそうに言ったー。

「ーーー結花のことも、紀恵のことも、命より大事なんだー
 置いていけるわけないー」

陽平は、涙目で結花の方を見つめるー。

「ーーーー…!」
結花は、表情を歪めながら
父・陽平の方を見つめるー

”コイツー…ーーバカすぎるだろー
 自分だけ逃げれば、逃げ切れるのにー
 
 俺には、理解できねぇー”

結花に憑依している男は、心の中でそう呟くー。

だがーーー

”ーーーー…”
結花の手を見つめながら、結花に憑依している男は思うー。

”温かい気持ちになるのはー、何で何だろうなー…”

”結花の身体”の影響だろうかー。

今まで多くの身体に憑依し、生き延びてきた男ー。
だが、世界中に巨大竜巻が連続発生という極限状態の中、
人の温かみのようなものを感じる機会はなかったー。
どの身体でもー。

竜巻がさらに迫って来るー。

結花に憑依している男は、それを見て表情を歪めるー。

”チッーお前のせいで車で走っても、もう逃げ切れねぇじゃねぇかー”

完全に竜巻に包囲されたー。
もう、逃げ切ることはできないー。
周囲に人の姿はなくー、
仮に結花の身体を捨てても、”次の身体”が見つからずに
霊体のまま消滅するのがオチだー。

元々”研究所”で勤務していて開発中だった憑依薬のことは
良く知っているー。
周囲に人がいないこの状況ー。
今、結花の身体を捨ててもー
”ー次の身体を手に入れるまで、持たない”ことぐらいは分かるー。

「はぁー…」
結花は、大きくため息をつくー

「結花ー…本当にすまなかったー」
陽平は、結花を今一度抱きしめると、
竜巻が迫る中、そう言葉を口にするー。

「ーーーーー」
結花は歯ぎしりをしながらも、父・陽平の方を見つめるー。

「ーーー…ずっと一緒だー。大丈夫ー。怖くないー」
観念した陽平は、最後の瞬間まで娘を安心させようと
そう言葉を口にするー。

「ーーーーー」
結花は、そんな陽平の方を見つめながら優しく微笑むと、

「ーお父さん今までありがとうー
 ーーー大好きだよ」

と、そう優しく言葉を口にしたー。

竜巻が二人を飲み込んでいくー
その、想いと共にー。

最後の瞬間ー
言葉を発したのは、結花本人の意識だったのかー、
それとも結花に憑依している男だったのかー。

その答えを知る手段は、もう、ないー。

おわり

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コメント

巨大竜巻が大量発生して
崩壊状態にある世界のお話でした~!

世界のその後は、
巨大竜巻の発生が止まらない状況が続き、
人々は最後まで抗い続けて…
そんな状況の設定デス~!

お読み下さりありがとうございました~!☆

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