<入れ替わり>バカップルと俺~新たな試練編~(前編)

駅で、電車でー
平気でイチャイチャしていたカップルの女と
入れ替わってしまった男ー。

”バカップルと俺”
その後の物語ー

※「バカップルと俺」の後日談デス!
本編は⇒こちらからご覧ください!

※先に本編を読んで下さいネ~!

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人間は理性のある恋をするべきー。

そう考えていた男子大学生の花輪 行彦は、
ある日、電車の中で平気でイチャイチャしている
カップルを見つけたー。

彼はそんな光景を見ながら
”電車の中の環境を汚染している公害”だと
心の中であきれ果てていたー。

がー
最悪なことに、行彦から見れば”バカップル”だった
カップルの女ー、香織と入れ替わってしまいー、
行彦になった香織と、バカップルの彼氏・省吾に挟まれるような形で
騒動に巻き込まれてしまうー

しかもー
入れ替わって行彦になった香織は、
それでも全く協力する素振りを見せず、
挙句の果てに警察沙汰になってしまいー、

香織になった行彦は
”俺の人生に傷をつけられた”と、
元々自分の身体や人生にも執着はなかったことから
”行彦(香織)を切り捨てる”ことを決意ー

そのまま香織のフリをして、
”元・自分の身体”が警察に連行されていくのを見つめながらー
自分は”香織として”生きていくことを決意したー

もちろん”無傷で自分の身体に戻れる”なら、
行彦にとってはそれが一番だったー。

しかし、それが叶わぬ夢になってしまった以上ー
”前科持ちの行彦”に戻るぐらいなら、
香織の身体のまま、香織として人生を生きていく方が
行彦にとっては遥かに楽だったし、マシだったのだー。

変態前科持ち男になってしまった自分の身体なんてもういらないし、
そんなものを返されても困るー。

そう思い、彼は香織として、
あれから数週間が経過した今も、”今まで通り”マイペースに
生活を続けていたー

「ーいよいよ明日届くのかぁ…」
香織(行彦)は、ジャージ姿で自宅を歩きながら
短くなった髪を揺らしー、嬉しそうにそう呟いたー

プラモデル作りが趣味の行彦は、
香織の身体になったあとも、その趣味を継続ー
自由気ままに過ごしていたー

長かった髪は”邪魔”という理由で短くして、
服装も、家ではラフな格好にしているー。

ジャージならあまり性別を感じることもないし、
色々と彼にとっては楽だったー

彼氏の省吾も振ったし、
女としての生活にも慣れて来たし、
行彦の望む平穏な生活はすっかり取り戻されていたー

「ーートイレは男の方が楽だったなー」
香織(行彦)はそんなことを呟きながら、
トイレに向かい、そしてトイレを済ませて戻ってくるー。

女の身体になっても、特に興味がないのか、
一度も、特に”何も”していないー

もちろんお風呂に入ったり、トイレに行ったり、
着替えたりはするが
それは”必要だから”するだけで、
下心からではないー

お風呂に入らなければ不潔になるし、
トイレに行かなければ漏らすしかなくなるし、
着替えをしなければ臭くなるー。

当然のことだー。

入れ替わった時には焦ったもののー、
結果的に、行彦は、
”香織として”平穏な生活を取り戻していたのだったー

だがーー
平穏を望む行彦の日常は、
再び”壊される”ことになったー。

♪~~~

インターホンが鳴らされて、何気なく「はい」と
応答した香織(行彦)ー。

だが、インターホンのモニターに表示されている顔を見て
香織(行彦)は思わず「ゲッ!」と声を上げたー。

そこに映っていたのはー
香織の彼氏であった省吾ー。

つまり、行彦からすれば
”公害”のような存在だったバカップルの彼氏のほうだー。

香織と入れ替わったあと、
香織(行彦)は早々に”面倒臭い省吾”を振ったー。

振ったあとに連絡先なども全てブロック・削除して、
大学でも会わないようにして安心していたー

がー

こうして、省吾がついに”元カノ”となった
香織(行彦)の家にやってきたのだー。

”どうしてだよ香織ー…!どうして!
 俺が振られるようなことしたか?
 どうしてー!”

「ーーーご、ごめんね。
 ちょっと彼氏とか面倒臭くなっちゃってー」

なるべく角を立てないようにそう言い放つ香織(行彦)ー

”あのバカップルぶり”から、
面倒なやつであることは明らかだー。
出来る限り、”余計に関わりたくない”のだー。

「ーーその、省吾が悪いんじゃなくて
 わたしの気持ちの問題ー。
 代わりの彼氏を作ったりもしないしーー」

香織(行彦)はそう言いながら
”入れ替わる前”香織は、一人称が”自分の名前”
だったことを思い出すー

そうー
香織は一人称が”わたし”ではなく”香織”で、
入れ替わった当時、それが誤解を招いていたー。

行彦の身体で「香織!」と言えば、
誰も一人称の意味の香織だとは思わず、
香織の名前を呼んでいるとしか思わないー。

あの日ー入れ替わって
自分の身体が犯罪者にされてしまい、
仕方なく香織の身体で生きていくことに決めて以降、
香織(行彦)は、一人称を”わたし”に変えたー。

どうしても”香織”を一人称にして
「香織、うれしい~!」とかそういうことは言えなかったー

初日の夜に部屋で一人で練習した際に、
吐きそうになったためーどうしても、彼には言えなかったー。

まぁ、それはさておきー

”こいつをどうにかしないとなー”
香織(行彦)がそんなことを思いながら
インターホンの画面のほうを見つめると、
突然、省吾が、髪の毛を取ったー

「は?」
香織(行彦)は思わず声を上げるー。

「見ろ!香織!俺の頭を!
 今の俺は、ハゲだ!」

省吾は、完全に”ハゲて”しまった頭を
インターホン越しに晒すと、かつらを手に、
涙を流しながら呟いたー

「俺には、香織しかいないんだー!
 香織に突然振られて、ハゲた俺の気持ちが分かるか!

 ご飯も喉を通らないし、
 夜も、3時間ぐらい寝られない日も多くなった!

 香織、何でだ!?何で俺を振ったんだー!?
 俺が何をした!?
 こんなに香織のことを愛してるのにー!」

省吾の言葉に、
”おいおい、ホントこいつ勘弁してくれよ”
と、心の中でうんざりしながら香織(行彦)は
返事に戸惑うー。

こういうタイプの奴は、
ストーカー化する可能性があるー。

しかし、香織(行彦)としては、
こんな奴と付き合い続ける理由はないー

「ーー香織、仲直りのキスをしようー
 そして、1からまた、やり直そう」

省吾がインターホン越しに気持ち悪いことを口にするー

香織(行彦)は戸惑った末に
「あ、あのねー…わたしねー、
 趣味が出来たから、彼氏とか、今、考えられないのー」
と、女子大生っぽい口調にしながら、そう言い放つー。

「ーーーし、趣味ー?
 お、俺以外に趣味がー!?」

省吾の言葉に、
入れ替わる前の香織は”趣味・省吾♡”だったことを悟るー。

香織(行彦)は
「ホント、公害カップルだなー」と思いながらも
「ーーー…うんー…だから、しばらくは彼氏とか考えられないー」
と、穏やかな口調で言うー。

出来る限り、刺激せずに、早くこいつを遠ざけたいー。

そんな風に、思いながらー。

「ーーーわたし、省吾以外の誰とも付き合わないし、
 別に省吾だから振ったんじゃなくて
 ”彼氏”自体が今は必要なくなっちゃったの。
 だから、許して」

香織(行彦)は、それだけ言うと、インターホンを切って
プラモデル作りに没頭しようとするー。

しかしー

”わかったーなら、毎日来るよー”

省吾が、インターホン越しにそう言い放ったー

「ーーーは…?」
香織(行彦)は思わず表情を歪めるー

”こいつー、俺の話聞いてなかったのか?
 趣味が出来たから彼氏はいらないって言ってるじゃないか”

うんざりしながら返答しようとすると、
省吾はさらに続けたー。

”俺、毎日来るよー。
 香織の趣味がまた「省吾」になるように、
 俺、毎日来るからー”

省吾の言葉に、
香織(行彦)は「ふ、ふざけー…」と、思わず言いかけてしまったものの、
何度か咳をしてから、
「ーそ、そのー…何度来られても気持ちは変わらないから」と、
言い放つー

”ーー俺は、前の香織の方が好きだったなー
 自分のこと”香織はね~”って言ってる頃の香織が”

省吾がふとそう呟くー。

「ーーっっ…じ、じゃあー、今のわたしが嫌いなんでしょ?
 だったらー、諦めてよ」

香織(行彦)は少しうんざりした様子で言うー。
こんな面倒臭い彼氏に、面倒臭い彼女のカップルー。
本当だったら絶対に関わりたくなかったー

”いや、今の香織も好きだ。愛してる”

堂々とそう言い放つ省吾ー

「(本当に面倒臭いなこのバカップルー)」
香織(行彦)はイライラしながら
髪を掻きむしり続けると、
「ー今、忙しいからとにかく帰って!」と、
強引にインターホンの電源を切ったー

ピンポンピンポン連打してくると思ったが
流石にそこまでバカではなかったようで、
インターホンをそれ以上鳴らしてくることはなかったー

「ーーーはぁぁぁぁ…面倒臭すぎるー
 俺はただ普通に暮らしたいだけなのに、
 あのチンパンジーカップルめ」

省吾と香織が、電車内でイチャイチャしているのを見た時、
行彦は理性を持たずにイチャイチャしている二人を見つめながら
”俺はチンパンジー専用車両に間違えて乗ってしまったのか?”と
首を傾げたぐらいだったー。

本当に、面倒臭い、と、思わず大きなため息をつくー。

だがー
行彦にとっての”面倒くさい”出来事は、
まだ始まったばかりだったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

大学での1日を終えて帰ろうとしていた
香織(行彦)は表情を歪めたー。

大学生活自体は順調ー。

と、言うのも、香織は”彼氏の省吾”しか
見ていなかったために、
あまり周囲と接点がなく、
”急に香織の様子が変わっても”
「あれ?彼氏と別れたんだ」程度の感想しか
抱かない子が多かったのだー。

その点は、”香織として生活していく上では”
とても楽だった部分とも言えるし、
ある意味、”不幸中の幸い”のような感じにもなっているー。

しかしー
今ー

”更なる面倒ごと”が起きようとしていたー

「ーーー!!!」
香織(行彦)は表情を歪めながら
”その先にいる”人物のほうを見つめたー

大学の正門付近にー
”香織の身体を返して”とプラカードを掲げた
男が立っているー

そう、行彦の身体になった省吾だー。

あの日ー
警察に連行されたはずだが、
恐らく出てきていたのだろうー。

「ーーげぇっ…」
思わず”もう絶対関わりたくない”という気持ちが
変な声となって表に出てしまう香織(行彦)

そのままUターンして、裏門から大学を飛び出そうとしたがー
残念なことにー

「ーーーーあ~~~~~~!みつけた!」
行彦(香織)が大声で叫ぶー

どよめく周囲ー。

香織と行彦は大学生同士ではあるものの、
”通う大学は違う”

だからー、あの日、電車内で省吾とイチャイチャしているのを見るまで
全く接点のなかった人間だったし、
今だって基本的にはそうだー。

”香織の通う大学に、行彦を知る人間はいないー”

見知らぬ男子大学生である行彦(香織)が
突然大声で叫び、香織(行彦)の方に近付いていく光景にー、
周囲は騒然としていたー

”声がでけぇよ…”
香織(行彦)はそう思いながら心の中で100回ぐらい
連続でため息をついた気持ちになりながら
行彦(香織)が近づいてくるのを待ったー。

「ーー香織の身体、返して!」
相変わらず一人称が”自分の名前”の香織ー

それを、行彦の身体でやられると、
かなり分かりにくいし、周囲にはまるで意味が伝わらないー

「はぁ~~~~~」
香織(行彦)は大きくため息をつくと、
面倒臭そうにこう呟いたー

「ーどちら様ですか?」
とー。

もう、関わりたくないー。

このバカップルとは、とにかくもうこれ以上関わりたくないー。
省吾にも、香織にも、関わりたくないー。

頼むから、どこかに行ってくれー。

そう思いながら香織(行彦)はわめく行彦(香織)を無視して
大学の外に向かって歩き出したー

<後編>へ続く

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コメント

今年の春に書いた作品の後日談ですネ~!
私自身も、この世界に触れるのが久しぶりなので
懐かしい気持ちデス~!

土曜日の作品のみ、都合上、続きは
また来週の土曜日になってしまいますが
(※土曜日のみ、当日書く時間がなく、予約投稿のため
 色々な都合でそうなっています…)
続きも、楽しみにしていて下さいネ~!

コメント

  1. 匿名 より:

    続きが気になってたので、この続編はかなり嬉しいです!
    やっぱり、省吾はストーカーになっちゃいましたね。そして、相変わらず香織は頭が悪いです。懲りずにまた暴走して襲いかかって、警察に再び連行されるような未来しか想像出来ませんねー。
    後編がとても楽しみです。

    • 無名 より:

      コメントありがとうございます~!☆

      続編を望む声も頂いていたので実現しました~!☆

      相変わらずの二人を前に、
      どんな結末を迎えるのか楽しみにしていてくださいネ~!