”優等生”として
先生からも同級生からも信頼される女子生徒ー。
しかし、そんな彼女が
不良生徒に身体を入れ替えられてしまうー…
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「---ずっと、探したー」
ビルの屋上ー
都会の賑やかな光が、輝くその場所で、
彼は、そう呟いたー
「----」
ビルの屋上に立っていたラバースーツ姿の女が振り返るー。
「---ー誰?」
とー。
綺麗で、真面目そうな雰囲気の顔立ちの女はー
”密売”などを行っている悪女だー。
「---忘れたのか?」
屋上にやってきた男の方は、警察官だー。
20代中盤~後半ー
鋭い目つきの男性刑事が、
ラバースーツの女の方を見るー
女の名前は、島崎 香奈美(しまざき かなみ)-
女の色気を利用して、裏社会で暗躍している悪女だー。
そしてー男の名前は
水原 亮吾(みずはら りょうご)-
若手の警察官だー。
特にーこの、
”香奈美”の追跡には、全力を捧げていて、
先輩刑事も、その熱意には圧倒されるぐらいだった。
都会のビルが、色とりどりの光を放つー
二人がいる屋上にも、その光が差し込むー。
「ーーー忘れた?誰だったかしら?」
香奈美がクスリと、挑発的に笑うー
自信に満ち溢れた表情ー
ラバースーツ姿の香奈美は、
腰に手を当てて、
”いつでも逃げられる”と言わんばかりの態度だー。
「---誰?…
20代後半で、もう耄碌(もうろく)したの?」
亮吾が、違和感のある口調でしゃべったー
「---水原 亮吾ー」
亮吾が言うー
「---!」
ラバースーツの女・香奈美が表情を歪めたー
「--”元、自分の身体”を見ても
思い出せないなんて…ね?」
亮吾が銃を取り出したー
香奈美が「お、、お前は…まさか」と、呟くー
香奈美は女としての振る舞いをやめて、
叫ぶー
「お前はーーー
島崎 香奈美!」
とー。
裏社会で暗躍するラバースーツの女・香奈美ー
そして、香奈美を追う熱血刑事・亮吾ー
二人の身体は、入れ替わっているー
そう、
”10年前”にー。
香奈美の身体の中には、亮吾がー
亮吾の身体の中には、香奈美がいるー
10年ぶりに再会したふたりー。
亮吾(香奈美)はずっと、追っていたー
”自分の身体”をー。
そしてーー
ついに、見つけたー
”10年後の再会”-
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
10年前ー
女子高生・島崎 香奈美は、
今日も、いつものように、学校に登校していたー
比較的おとなしい性格で、細かな気配りもできる優しい性格ー。
生徒会書記としても、活躍している子だー。
「---おはよ~!香奈美!」
友達の澄子(すみこ)が香奈美に声をかけると、
香奈美は穏やかな表情で「おはよう」と答えたー
雑談をする二人ー。
そんな、香奈美には”ある悩み”があったー。
香奈美自身の悩みではないー。
小学時代から一緒の幼馴染である男子生徒・
井宮 恭太(いみや きょうた)に関係する悩みだー。
恭太はー
気弱な性格の持ち主でー
小さいころから、香奈美は、恭太のことをよく助けたり、
守ったりしていたー
本当は、とても優しくて、一生懸命な性格なのだけれども、
どうしてもいじめの対象になりやすいー
そしてー
高校に入学してからと言うものの
”最悪の相手”に目をつけられてしまったー
それが、クラスの不良生徒・
水原 亮吾ー。
中学時代から、相当なワルで、
何度も問題を起こしているーと、言われている生徒だ。
高校でも、素行が非常に悪く、
そんな亮吾に、恭太は目をつけられてしまったー
「ーーま~た、あの子の心配?」
友人の澄子が、苦笑いしながら聞くー
「うん…」
香奈美は、困り果てた様子で呟くー
亮吾から、恭太は嫌がらせを受けているー
いや、それだけではない。
暴力も振るわれているー
なんとか助けようと、香奈美も先生に相談したり、
恭太をかばったり、亮吾本人にやめるように言ったり
しているのだが、なかなか解決に至らないー
先生たちもことなかれ主義者…というべきだろうか。
亮吾のことを恐れてしまって、
あまり乗り気な対応をしてくれないー
”証拠がない”
だとか、そういうことばかり言っているー。
その日の昼休みも、そうだったー
胸倉を掴まれている恭太を見て、
香奈美は咄嗟に割って入ったー
「や、、やめなよ!」
恭太を守るようにして立ちはだかる香奈美ー
「あ~~~????邪魔すんじゃねぇよ」
亮吾が鋭い目つきで香奈美を見つめるー
因縁のふたりー
そう言うべきだろうか。
香奈美と亮吾の対立は、クラス内でも有名だったー。
「--テメェ…
女だからって、殴られないと思ってるんじゃねぇか?」
亮吾が香奈美を睨むー
「-------」
香奈美は無言で亮吾を睨み返すー
香奈美だって、怖いー。
正直、暴力を振るわれたら一たまりもないし、
どうすることもできないー。
でもー
それでも、香奈美は許せなかったー
クラスメイトをーー
いや、大事な幼馴染をいじめる不良生徒・亮吾をー。
「---あんま調子に乗ってると、そのカワイイ顔、
スクラップにしてやるからな」
それだけ言うと、亮吾は立ち去って行ったー
「はぁぁぁ…よかったぁ…」
香奈美は足を震わせながら恭太の方を見たー
「だいじょうぶだった?」
香奈美が恭太に手を差し伸べるー
恭太は「ありがとう…」と申し訳なさそうに呟いたー
廊下を歩く二人ー
「---これ以上は、島崎さんも危ないよ…」
恭太が悲しそうに呟くー
香奈美が助けてくれるのは本当にうれしいー
でも、これ以上、亮吾を不機嫌にするようなことがあれば、
香奈美だって、亮吾に殴られてしまうかもしれないー
香奈美は、華奢な感じで、
とても喧嘩できるようなタイプじゃないし、
そもそも、暴力とかそういうことも大嫌いなタイプー
亮吾に殴られたら、ひとたまりもないー
「---だいじょうぶ」
香奈美は、そう呟くと、恭太の方を見た。
「何があっても、他のみんなが、水原くんのこと怖がって
助けてくれなくても、
わたしだけは、恭太の味方だからー」
香奈美の言葉に、恭太は嬉しそうに、けれども
悲しそうに呟くー
「僕…小さいころからずっとずっと、香奈美ちゃんに
助けてもらってばかりで…
全然何も恩返しできてない…」
とー。
悔しそうに拳を握りしめる恭太ー。
本当だったら、自分が香奈美を守ってあげたいー
そんな風に思いながらも、どうすることもできない自分の無力さを呪うー。
「---ふふ、そんなこと気にしないの」
香奈美が、恭太の頭を優しく撫でるー。
「--恭太は、恭太のままでいいんだよー」
そう呟くと、香奈美は、にっこりとほほ笑んだー。
それからもー
しばらくその状況が続くー。
亮吾も、香奈美を脅すような発言をしながらも
実際に香奈美に暴力を振るうことはなかったー。
亮吾は”頭がいい”
だからこそ、この高校にも入学できたし、
”明らかに停学処分になる”ような行為を避けているー
影で悪さをしたり、
影で暴力を振るったりー
先生たちが”動き出さないギリギリのライン”を攻めているー
だからこそ、厄介だったー。
恭太への嫌がらせは止まずー
香奈美が恭太を守る日々は続きー
けれども、香奈美がいるおかげで、
恭太も頑張ることができたー。
そんな、ある日ー。
”それ”は起きたー
先生の一人が、
立ち上がったのだー
”これで、恭太は助かる…”
香奈美は、そう思ったー
先生は、亮吾を生徒指導室に呼び出し、
臆することなく、説教したー
そして、その最中に亮吾は、その先生に殴りかかりー
亮吾は”退学処分”になったー。
「----喜んでいいことなのかは分からないけど、
よかったね…」
夕暮れの校舎前で、
香奈美は、恭太の方を見てほほ笑むー
水原 亮吾が退学になったー
これで、もう、
恭太がいじめられることは、ないー。
「うんー」
恭太は嬉しそうに微笑むー。
「---おつかれさま」
”亮吾からのいじめに耐えた”
恭太に対して、香奈美は優しく微笑んだー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
しかしー
それが”悪夢”の始まりだったー
先生が介入し、
強引に解決させたことー
それは、今まで保たれていた
”バランス”を破壊してしまうことでもあったー。
今まではー
亮吾が恭太をいじめ、
香奈美が恭太を助けー
亮吾が引き下がっていくー。
その、繰り返しだった。
亮吾も、流石に香奈美には手を出さず、
”それ以上”何かが起こることはなかったー
だがー
”退学”になった亮吾は”それ以上”に進んだー
「許さねぇ 許せねぇ 許さねぇ 許せねぇ」
退学処分になった亮吾は、血走った目で
スマホをいじり続けるー
女への復讐
復讐
復讐
スマホで、復讐方法を検索し続ける亮吾ー
暴力を振るって滅茶苦茶にしてやるのもいいー
だが、もっとー
それ以上に地獄をーーー
「-----------!!!」
亮吾は、見つけてしまったー
”入れ替わり薬”
をーーーー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
亮吾が退学になってから1か月が経過したー。
いじめを受けていた恭太は平穏を取り戻した。
クラスメイトたちもそうだ。
なんとなく、亮吾に対してびくびくするような雰囲気のあった教室は、
すっかり平穏な空気を取り戻し、
穏やかな日常が取り戻されていたー
「---ふ~ん、そうなんだ~」
香奈美が、恭太と雑談しながら頷くー
その近くには、香奈美の親友の澄子もいるー。
「--じゃあ、今度見せてもらおうかな~」
穏やかな日々ー
恭太にも、すっかり笑顔が戻るー
恭太は、ふとカレンダーを見るー
もうじきー
香奈美の誕生日ー
恭太は、香奈美のことを好きになっていたー。
小さいころから、ずっと自分を助けてくれる香奈美ー
今までは、同学年だけど、”お姉ちゃん”のような感じだった。
でもー
最近は違うー
好きという感情を香奈美に対して抱いてしまったー
香奈美がどう思っているのかは分からないー
正直、恭太からすれば、異性に告白するー、というのは
断崖絶壁から紐なしでバンジージャンプをするぐらい、
勇気のいることだー
でも、それでもー
それでも、恭太は、香奈美に告白したいと思い始めていたー
香奈美の誕生日にー
勝負してみたいー
恭太は、そんな風に思うー
だがー
この日が、運命の日ー
この日から続く”10年の戦い”
10年後の再会の日まで続くー
”狂気”のはじまりー
「---井宮くん」
放課後ー。
下校しようとしている恭太を、香奈美の親友・澄子が呼び止めたー
「え…?」
恭太が振り返るー。
香奈美以外の女子から話しかけられるなんて、
ほとんどないことだからだー
「ちょっと、いいかな?」
澄子が、恭太の方を見て、そう呟いたー。
同時刻ー
下校中の香奈美は、いつものように、
家に向かって歩いていたー
しかしー
「---!!!」
香奈美の背後から、突然、人影が迫りー
香奈美は、口をふさがれたー
”えっ?”
状況を理解できないまま、近くの路地に引きずり込まれて
壁に叩きつけられた香奈美ー
「へへへへ」
香奈美を路地に引きずり込んだのはー
退学になった不良生徒・亮吾ー
「----!」
香奈美が、状況を理解した直後ー
亮吾は、香奈美にキスをしたーーー
「--!?!?!?!?」
香奈美が驚いて目を見開くー
そして、その直後、亮吾が白目になって
その場に崩れ落ちるー
”え、、、なに・・・?”
そう思った直後ー
香奈美は、激しいめまいのようなものを感じて、
その場に倒れたー
「-------」
何時間経過したのだろうかー。
周囲が暗くなっているー
目を覚ました香奈美は、立ち上がったー
そしてー
”自分の身体の異変”に気付くー
「え…?」
手が自分のものじゃないー?
いや、手だけじゃないー
身体もー?
服装もー?
胸がない??
え…!?!?!?
香奈美が慌てて路地から飛び出してー
近くの曲がり角の鏡を見るとー
そこにはー
香奈美の姿ではなく、
退学になった不良生徒・亮吾の姿が映っていたー
「え……」
口から出たのは、亮吾の声ー
この日ー
全ては始まったー
”10年後の再会”のその日まで続くー
壮絶な、人生がー。
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
入れ替わってから10年ー
自分の身体との再会…
その10年を②、で描きます~!
(全3話じゃなくて、もっと長期間の方が、丁寧に描けてよかったかも、と
今更思い始めている私でした~笑)

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