<入れ替わり>10年後の再会~空白の十年・正義の男編~

不良生徒と優等生が入れ替わってしまったー

10年後、入れ替えられてしまった彼女は、警察官となり、
”自分の身体”を逮捕したー。

”空白の10年”
身体を奪われた側のー
不良生徒の亮吾になってしまった香奈美の10年を解き明かすー

※「10年後の再会」の番外編デス!
 先に本編をお読み下さい!
本編はこちらからどうぞ

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「---悔しいか?悔しいだろ!?はははははっ!
 でもさぁ~入れ替わりは犯罪じゃないんだよなぁ~!これが!
 ぎゃははははははは!」

香奈美の身体を奪った亮吾は、
そう言い放ったー

香奈美の優しそうな顔を、極限まで歪めてー
亮吾になった香奈美をあざ笑ったー

「---わたしが香奈美なの!」
亮吾(香奈美)は、何度も、何度も、
自分の両親にそう訴えたー

だがー
信じてもらうことはできなかったー。

両親は”娘の豹変”-
香奈美になった亮吾の対応で精いっぱいで
他のことを考える余裕なんてなかったー

「---家にいるわたし…
 様子が全然違うでしょ!?」
亮吾(香奈美)が、帰宅した父親に向かって
必死にそう叫ぶー

「----」
父親が、振り返って亮吾(香奈美)の方を見るー

香奈美の様子がまるで別人のようになってしまっているー
そのことは、香奈美の母親も父親も理解しているー

でもー
それでもー
”入れ替わり”なんて、あるはずがないー
あるはずがないのだー。

「---お前が、娘をたぶらかしたのか?」
父親が言うー

「違う!わたしは…わたしは…」
亮吾(香奈美)が、その場に泣き崩れるー。

泣き崩れる強面の男子高校生ー
異様な光景に、香奈美の父親は戸惑うー。

「----」

でもー
父は、”信じる”道を選ばなかったー

この時ー
香奈美の父親が、亮吾になった香奈美を信じていればー
道は変わったのかもしれないー。

亮吾(香奈美)は、亮吾として、亮吾の家に帰るー。
冷え切った家族仲ー。
亮吾が、悪の道に堕ちたのはー
こういう家庭環境も影響しているのだろうかー。

「----」
男としての身体に戸惑いながらもー
亮吾(香奈美)はそんなことを考える暇はなかったー

香奈美の身体で毎日毎日やりたい放題をし、
欲望のままにエッチをしている亮吾とは違いー
亮吾になった香奈美は、とにかく”自分の身体を取り戻す”
ことばかりを考えていたー

学校は既に”退学”になっているー
香奈美(亮吾)と接触するのは難しいー。

考えに考え抜いた結果ー。

「---ーーー来てくれてありがとう」
亮吾(香奈美)が、ファミレスに呼び出した生徒ー

それはー
香奈美の親友だった澄子ー。

澄子は戸惑いながらも、亮吾(香奈美)のいるテーブルに座るー

亮吾として、”香奈美について話がある”と、
澄子を呼び出したのだったー

澄子は戸惑いながらも、
指定された場所が”ファミレス”であったことー、
そして、香奈美がまるで別人のように学校で悪さを繰り返していることから、
亮吾(香奈美)の呼び出しに応じたのだったー

「---退学になったあんたが…何の用?」
澄子が言うー。

亮吾(香奈美)はーー
「わたしが…香奈美だと言ったら、信じる?」
と、澄子の方を見ながら呟くー

澄子はーー
少し考えたあとに首を振ったー

「信じるわけないでしょ」
とー。

「----そっか」
亮吾(香奈美)は半分諦めたような表情で
そう呟いたー

自分が澄子の立場だったらどうだろうか。
例え、親友が豹変して、
今まで不良生徒だった男が
”わたしが香奈美なの”と言ったら、
信じるだろうか?

いやー。
現実は漫画やアニメの世界じゃない。
だからー
自分で経験しない限り
”入れ替わりなんてありえない”という答えに
たどり着くのは自然のことだし、
きっと、反対の立場ならそうするー

「わた、、、いえ…香奈美には気を付けて」
亮吾(香奈美)はそう呟くー

澄子は表情を歪めるー
”もしかしたら、本当に入れ替わっているのかもしれないー”
そんな風に思いながらも、澄子は確証を持つことはできずー
亮吾の今までの素行から、
信用することもできず、”入れ替わり”を信じることは
できなかったー。

「----ーーで、何の用なの?」
澄子が戸惑いながら尋ねると、
亮吾(香奈美)は答えたー

”香奈美の様子を、定期的に教えてほしい”
とー。

亮吾は、既に退学になっているー
だから、亮吾の身体で学校に行くことはできないー
香奈美自身の両親も、亮吾の身体になってしまった香奈美の
話を聞き入れようとしてくれないー

でもー
それでも、”元・自分の身体”である
香奈美の様子を探らないわけにはいかなかったー。

「----」
澄子は最初”なんであんたのためにわたしが…!”と
拒否しようとしたが、
亮吾(香奈美)のとても悲しそうな表情を見てー

澄子は「仕方ないわね…」と、呟いてー
香奈美(亮吾)に何か大きな出来事があったときだけ、
教えてくれるー、
という約束をしてくれたー。

澄子から、香奈美になった亮吾の様子を聞きながら
なんとか、身体を取り戻す方法を探っていきたいー

そう考えていた矢先だったー

3日後ー
澄子から、初めての連絡が届いたー

”香奈美、今日、退学になったよ”

とー

「----そんな…」
亮吾(香奈美)は、頭を抱えたー

これで、もう…
自分の身体が今、何をしているのかを、知るすべはないー。

「---こうなったら…」
亮吾(香奈美)はそれでも行動を起こすー
絶望している時間はないー。

香奈美(亮吾)が退学になったとは言え、
香奈美(亮吾)は、家にはいるはずだー。

やはり、なんとかして、家族に接近する必要があるー

入れ替わりを信じてもらえないならー
信じてもらえないなりにー

澄子だって”入れ替わり”は信じてくれなかったけど、
協力してくれたー

なんとかー
なんとか、方法をー。

自分が香奈美だと訴えつつもー
信じてもらうことのできない日々は続くー

なんとかー
なんとかしなくちゃー

そう思っているうちにー

「---香奈美は、もういないよ」
香奈美の父親は、ある日、亮吾になった香奈美にそう告げたー

「--どうして、あんなになってしまったんだか。
 ……お前か?お前が香奈美をたぶらかしたのか?!」
父親が疲れ果てた様子で言うー

「いやー、もういい。二度と俺の前に姿を現すなー」
実の父にそう言われてー
絶望する亮吾(香奈美)-

香奈美になった亮吾は、
両親に散々暴力を振るった挙句ー
姿を消してしまったのだー。

亮吾(香奈美)は、絶望の日々を過ごしたー
家で、廃人のように部屋の窓の外を見つめるー

亮吾の親は、亮吾(香奈美)をほったらかしだー。

「------もう、つかれたー」
髭が生えー
髪は伸びー
がっちりとしていた亮吾の身体は
やせ細っていくー

やがてー
まるでホームレスかのように、
髭面になって、髪もボサボサになった亮吾(香奈美)の元に
LINEが届いたー

澄子からー。

”明後日、文化祭なんだけど、あんたも来る?”
とー。

「----」
亮吾(香奈美)は、虚ろな目でそれを見つめながらー

”行くー”
とだけ、返事を送ったー

澄子は、入れ替わりを信じてくれているのだろうかー
それとも”もしかしたら”と、思いつつ接してくれているのだろうかー
あるいは、亮吾に対する憐みかー

その真意は分からないー
けれどー。
なんとなく、行こうと思ったー

何もかも、亮吾に奪われてしまった香奈美に残されているのは、
この亮吾の身体だけなのだからー。

文化祭に足を運ぶー

楽しそうにしている元・同級生たちー。
入れ替わりなんてなければー
香奈美は今頃、あの輪の中にいたのだろうー。

そう思っただけで、亮吾(香奈美)の目から
涙が溢れて来るー
やせ細って、髪もボサボサになった亮吾(香奈美)-

流石に、髭だけは剃っては来たものの、
既に、見る影もない状態になっていたー

「--あらら…まるで別人みたい」
背後から澄子の声がしたー

「--……澄子…」
下の名前で呼んでしまって亮吾(香奈美)ははっとするー。

「----」
澄子は亮吾(香奈美)の方をしばらく見つめると、
「ま、とにかく、文化祭、楽しみなよ」と
少しだけほほ笑んだー

”亮吾”も”香奈美”も変わったー
澄子は、当然そのことを理解しているー
”入れ替わった”というのは、本当なのかもしれない、とも思っているー

でも、それでもー
やはり、入れ替わりは受け入れられなかった-

亮吾(香奈美)は、澄子に連れられて文化祭を堪能したー
無意識のうちにー
その表情には笑みがこぼれていたー

「---あんたさぁ」
文化祭の終わりが近づき、澄子が椅子に座りながら言うー

「----入れ替わったとか、やっぱわたしは信じられない」
澄子はそう呟くと、
亮吾(香奈美)は悲しそうに、「そうだよね」と呟いたー

でもー、
と、澄子は続けるー

「あんたは、変わったね。本当に別人みたいー
 ふるまいだけ見てると、確かに香奈美みたいな振る舞いにも見えるよ」

澄子はそれだけ言うと、立ち上がって
”入れ替わりは信じられないけどー
 もし、本当に、もし本当にあんたが香奈美ならー
 諦めちゃだめ”
と、まっすぐ亮吾(香奈美)を見つめながら告げたー

「-----…」
亮吾(香奈美)は
100パーセント信じてもらえていないことに悲しみながらもー
澄子の方を見て、頷いたー

そうだー
諦めるなんて、わたしらしくないー

「---悔しいか?悔しいだろ!?はははははっ!
 でもさぁ~入れ替わりは犯罪じゃないんだよなぁ~!これが!
 ぎゃははははははは!」

亮吾の言葉を思い出すー

亮吾(香奈美)は、この時決意したー

”なら、わたしが犯罪だと、証明してみせるからー”

とー。

その日からー
亮吾(香奈美)は、警察官を目指すことだけに、
全力を注ぐようになったー

警察官になってー
”元・自分”を捕まえて、
償わせるー

”生きる理由”を見つけてー

・・・・・・・・・・・・・・・・

”生きる目的”を見つけたー

もう、女々しいことは、やめたー。

亮吾として、生きるー。

亮吾として警察官になってー
元・自分を逮捕するー

どうするつもりなのかどうかー。
それは、分からないー。

けれどー

亮吾の親は驚いていたー

けれど、亮吾(香奈美)は止まらなかったー

必死に勉強してー
必死にお金を稼いでー
必死にトレーニングをしてー

ついに、警察官への道を切り開くことに成功したー。

亮吾(香奈美)は、警察官になったのだったー。

入れ替わってから数年ー
既に”男”として生きることに、香奈美は
すっかり慣れていたー。

間違えて女子トイレに入ることもなく、
当たり前のように男子トイレに入り、
当たり前のように済ませるー。

先輩と共に事件を調査してー
時には、柄の悪い男たちを相手にすることもあるー

亮吾(香奈美)は、充実していたー。
香奈美としての人生を歩むことはできなかったけれどー。
こんな未来も、自分にはあったのだと、
あの時”絶望”しなくてよかった、と-
前向きにー

刑事として、街の平和を守っていたー

「----すごいよね。本当にー」
親友だった澄子とは、今でも時々会うー。

澄子は”目の前にいる亮吾”を
香奈美だと分かっているのだろうかー
それともー

「----”捕まえないといけない人”がいるからさ」
亮吾(香奈美)が、コーヒーを飲みながら言うー

味覚も変わったー
口調も変わったー

澄子が険しい表情で言うー

「…香奈美のこと?」
とー。

澄子の言葉に、亮吾(香奈美)は頷いたー

澄子は高校卒業後も、度々亮吾と会っていて、
亮吾のことを支えてくれていたー

澄子はー
亮吾=香奈美を信じたわけではないー

けれど、
中身が誰であれ、
今の亮吾は、高校を退学になるまでとは違いー
真面目に、本当に一生懸命頑張っているー

だからこそー

「-----ーーーわたし、応援してるからー」
澄子が、亮吾(香奈美)の手を握ってほほ笑んだー

ドキッとしてしまう亮吾(香奈美ー)

”え…いや、、わ、、わたし、そんなんじゃ”
慌てて自分の感情を押し殺して
亮吾(香奈美)は「ありがとなー」とほほ笑んだー

何年もー
何年もー
亮吾の身体でー
男として生きていると
だんだんわからなくなってくるー

自分が、女なのかー
自分が、男なのかー。

自分がー
香奈美なのかー

自分がー
亮吾なのかー

「---大丈夫?」
心配そうにしている澄子ー

亮吾(香奈美)は「あ、、あぁ…大丈夫」と答えたー。

それからも警察官としての仕事をこなしながら、
亮吾(香奈美)は、”自分の身体”の行方を必死に
探っていたー

そして、
9年が経過したタイミングでー
”リサ”と名乗る、裏社会で暗躍する女のうわさを聞いたー

亮吾(香奈美)は、その”リサ”の情報を調べー
リサに接近していくにつれてー
”リサ”を名乗る女はー
香奈美ー

自分の身体なのだと確信していたー

そして、さらに1年後ー。ついに、リサの正体にたどり着くー。
リサは、香奈美(亮吾)だー

99.9パーセント間違いないー

しかしー
亮吾(香奈美)は迷っていたー

10年ー
亮吾として生きたー

既に、合計して、25年以上の人生ー
そのうちの10年を、亮吾として生きたのだー

今更、香奈美に戻ってー
どうする?

今更、元の身体を逮捕して、どうするー?

亮吾(香奈美)は戸惑うー

”元・自分”と、
10年ぶりに再会するー

それをすることでー

今のこの、
”亮吾”としての人生が壊れてしまうかもしれないー

元に戻ればー
自分は刑事として生きることはできないー

そしてー

「-----」
夜のレストランー
亮吾(香奈美)は、親友の澄子を呼び出していたー

入れ替わってから10年ー
澄子は、今や亮吾(香奈美)の”恋人”になっていたー

澄子は”入れ替わり”を、信じたわけではないー

けれどー
”今の、亮吾ー…
 心を入れ替えて、真面目にやってるあなたが好きなの”
と、澄子は言ったー

もう、中身なんてどうだっていいー

澄子は、目の前にいる亮吾(香奈美)が好きなのだからー

付き合い始めてから数年ー
亮吾(香奈美)は、夜のレストランに、澄子を
呼び出していたー

「-----澄子…俺さ」
亮吾(香奈美)は、すっかり男の口調で、口を開くー

澄子が、亮吾(香奈美)の方を見て、やさしく微笑んだー

「----行ってらっしゃいー
 必ず、、帰ってきてねー」

澄子は、何も聞かなかったー

けれどー
亮吾(香奈美)が、
香奈美(亮吾)との戦いに向かうー

そんな風に直感で感じ取ったー

「----」
亮吾(香奈美)は、決意の表情で頷くー。

「-------必ず」
亮吾(香奈美)は、”自分の身体”と対決することを決意したー

たとえー
今のー

この亮吾としての生活を終えることになったとしてもー

亮吾(香奈美)は、信頼できる上司に全てを話したー。
上司は、最初は信じてくれなかったがー
あまりの熱意に、亮吾(香奈美)の言葉を信じたー

この数年、刑事として亮吾は必死に、真面目に働いてきたー

その、日ごろの態度から”亮吾は嘘をつかない”と
上司も判断したのだったー

それが、あまりにも現実離れした話であってもー

亮吾(香奈美)は、リサと名乗る女ー…香奈美(亮吾)をおびき出す連絡を入れたー

舞台は整ったー
あとはーーー

亮吾(香奈美)は笑みを浮かべるー

”あれから10年ー
 自分の身体との再会が10年後になるなんてねー”

そう思いながらー
亮吾(香奈美)は、
”10年ぶりの再会”となる、最後の戦いの場に、歩を進めるのだったー。

”10年後の再会”本編①に続くー

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コメント

10年後の再会の”空白期間”を埋めるお話でした~!
2話分追加しただけで10年分書ききるのはやっぱり厳しいので、
書け足ですが、こんな感じデス~!

このあと、10年後の再会本編の①に続いていく感じですネ~!

お読み下さり、ありがとうございました!

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