<女体化>影武者アイドル①~亜希奈~

人気アイドル・亜希奈ー。

超売れっ子のアイドルが、
突如として、姿を消したー

”たまたま似てた”そんな理由でマネージャーの男が
女体化させられた挙句、亜希奈の影武者として
アイドル活動をすることにー

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「-みんな!ありがと~!」
超人気アイドル・亜希奈ー

現役女子大生の亜希奈は、
人気絶頂のアイドルで、
歌にバラエティ番組に、最近ではドラマにも出演したり、と
各所で引っ張りだことなっていたー。

「---はぁ~疲れた」
亜希奈が、仕事を終えると、
疲れた様子でそう呟いたー

「---お疲れ様でした」
同年代の男…
マネージャーである、久保田 雅史(くぼた まさし)が
そう呟くと、亜希奈は、「ありがと」、と、だけ呟いた。

雅史は”男版亜希奈”とよくネタにされていたー
性別も違うし、よく見れば違うところもたくさんあるのだが、
どことなく雰囲気も顔立ちも亜希奈に似ているのだー
それが、気に入ったのか、亜希奈本人も
所属事務所も、雅史をマネージャーとして
亜希奈の側に置き続けているー

そんなこんなで、
亜希奈と雅史は、5年以上の付き合いだー
付き合い、と言っても、あくまでもアイドルとマネージャーの付き合い。

亜希奈は、人気絶頂でありながら、
それに驕ることは、決してしない。

誰に対しても、配慮を忘れないし、
有頂天になったり、天狗になったりすることもない。
周囲への配慮を忘れないアイドルだー

正義感も強く、
芸能界の薄汚れた一面を知りながらもなお、
亜希奈は亜希奈であろうと、し続けているー

「------ねぇ」
亜希奈が呟く。

「はい…」
雅史が返事をすると、
亜希奈は雅史の方を見たー

「いつも、本当にありがとうね…」
亜希奈がそれだけ呟いて、雅史の方を見て笑ったー。

「--え」
雅史がドキッとしてしまうー

亜希奈とは、あくまでも”ビジネス上”の関係ー
お互いに強い信頼関係はあるが、
プライベートな関係も感情も、一切存在しないー

少なくともー
表向きは。

雅史は、亜希奈に対して多少の好意を抱いているー。
”恋愛感情”では、ないと思う。
”人間として”魅力を感じているのだー。

だが、それは、あくまでも内側だけの話。
雅史は、それを表に出すことはしなかったし、
亜希奈自身はどう思っているのかもわからないー

「---いえ。これが仕事ですから」
雅史はそう呟くと、
亜希奈は「そうだね」と優しく微笑んだー

亜希奈は、普段もよく笑うしー
普段もよくねぎらってくれるが、
今日は、いつもとなんだか”違う”気がしたー。

「----」
雅史は、そんな風に思いながら、
いつものように、亜希奈と別れたー

そしてーーー

亜希奈はー
その日を最後に”失踪”したー。

「--おい!どうするんだ!!!」
所属事務所の社長・矢川 健次郎(やがわ けんじろう)が
怒りの形相で叫ぶー

”亜希奈のおかげで”
最近、急成長をしているアイドル事務所ー
スターロード・プロダクション。

スターになる道を切り開くー。
そんな思いから、つけられた名前なのだと言う。

「---お前!マネージャーだろ!」
健次郎が叫ぶー

「亜希奈と連絡は取れていないのかっ!」
健次郎の言葉に、雅史は「申し訳ありません」と頭を下げるー

昨夜、家に送り届けた時は、ふつうだったー。
だが、そのあとから連絡が取れないー。

連絡しても出ないし、
さっき家に確認に行ったが、
家にもいなかったー

「---…」
雅史は、昨日、別れる直前の亜希奈のことを思い出すー

なんだかー

「いつも、本当にありがとうね…」

そのまま消えてしまいそうなー
儚く、そして、悲しいほほ笑みだったー

もしかすると、亜希奈はーー

最近、亜希奈は、疲れている様子だった。
まさかとは思うが、自殺ー?

雅史は、嫌な予感を覚えるー。

だが、同時に亜希奈は、
これからやりたいことをたくさん語っていたー
自殺をするとは思えないー。

”もしも、わたしが急にどこか遠くに、旅に出ちゃったら、どうする?”

”あ~あ、アイドルじゃなくて、一人の女子大生として生きてみたかったなぁ~”

亜希奈が最近口にしていた言葉を思い出すー。

「----」
アイドルとしての生活に嫌気がさしてしまったのだろうかー。

亜希奈が、この道に入ったのはー
”家庭の複雑な事情”がきっかけであったと
雅史は聞いている。
その”複雑な事情”が何なのか、詮索はしなかったし、
亜希奈自身も、それを語ることはなかったー

だがー
何科ー

「おい!久保田!」
社長・健次郎が大声で叫ぶ。

「はっ」
雅史が返事をすると、
亜希奈の今日のスケジュールを詳細に聞いてきたー。

雅史はひとつひとつ、丁寧にー
一つたりとも間違えることなく、
説明していく。

「----」
このあと午後から握手会の予定があるー

「くそっ!くそっ!」
今更キャンセルなどできないー
社長の健次郎は、頭を抱えるー

キャンセルとなれば、スターロード・プロダクションに
莫大な損害が生じてしまうー
それだけは、絶対に避けなくてはならないー

「----」
社長秘書の麗(れい)が、社長の健次郎に耳打ちをするー

「ん???あぁ~、そうだな へへへ」
健次郎が笑いながら、返事をすると、
再び「おい!」と叫ぶー

雅史が「はい!」と叫ぶと、
「お前、亜希奈になれ」と叫んだー

「--!?!?!?!?!?!?!?!?」
雅史が思わず表情を歪めるー。

正直、意味が分からなかった。

「え、、、え、、、??いくらなんでもそれは」
雅史が反論するー

流石に無理すぎるー。
”亜希奈と顔立ちと雰囲気が似ている”
”男版亜希奈”
などと言われることもあるとは言え、
流石にそれは、無理だ。

「--無理じゃねぇよ!やるんだよ!」
健次郎社長が叫ぶー

「いやいやいやいや!」
雅史は反論する。

「俺に女装しろって言うんですか?
 さすがに無理ですよ!
 ばれますって」
雅史があきれ顔で反論を続けるー

いくら顔立ちが似ていても、
ファンは特に敏感だろうし、
声も違うー

どう考えても無理だー

「---ははははは!」
健次郎社長が笑うー

「んなこた分かってるよ!」
そう呟くと、健次郎社長は続けたー

「--女装じゃない、女になるんだよ」
健次郎社長の言葉に、
雅史は「へ!?」と思わず叫んでしまったー。

今度こそ、本当に理解できないー
性転換手術でも受けさせるつもりか?

いや、午後の握手会までに性転換手術を終えることなんて
絶対にできない。
無理だ。

亜希奈がいなくなってしまったことで、
健次郎社長はおかしくなってしまったのだろうか。

「---麗!」
社長秘書の麗は、その言葉に反応して、
社長室の隣の部屋に向かうー

とてもスタイルの良い美女で、
妖艶な雰囲気の女性秘書だー。
理想的な”美女”のような、そんな感じの女性だー。

「---ーーー」
麗が戻って来るー。

そして、健次郎社長が何かを受けとるー。

受け取ったのは、”注射器”-。

「それは!?」
雅史が叫ぶー

「--女になる薬だ」

「はぁ!?」
雅史が叫ぶ。

「--な、、なんですか!?それ!?
 そんなもの…あるわけが!?
 ってか、それ、何なんですか!?」
雅史が慌てて叫ぶと、
健次郎社長がニヤニヤしながら呟いた。

「社会にはな、表になっていないことが
 たくさんあるんだ。
 これも、その一つだ。
 ”女体化薬”
 注射することで、女になることができる。

 君に注射すれば、
 亜希奈に似ている君はきっと、
 亜希奈の”影武者”になれるー」

「--ふぇっ!?」
雅史が間抜けな声を出すー

「--亜希奈がみつかるまで、
 君が影武者として
 亜希奈を演じるんだ。
 5年も亜希奈と一緒にいた君なら、
 できるだろう?」

健次郎社長の言葉に、
雅史は「い、、いや…でも!」と叫ぶー

「できるさ。君なら」
健次郎社長は、雅史の返事を聞かずに、
注射したー

そしてー
みるみるうちに、身体が変化していくー

「うっ…?うああああああああ!」
叫ぶ雅史ー

髪の質が変わりー
髪が伸びてー
顔立ちが女性らしくなりー
胸が膨らみー
アソコが変わりー
肌のつやが変わるー

「ああああああああああ!!!」
途中から、女の声になりー
声も亜希奈そっくりにーーー

そしてーーー

「おおおお!」
健次郎社長が叫ぶー

雅史の姿はーー
亜希奈そっくりになったー

「94点!」
健次郎社長が嬉しそうに言うー

「あ…ああああ!?」
自分の手を見つめてー
さらには胸の膨らみを見つめるー

「--ほぼほぼ、亜希奈ちゃんだ」
健次郎社長はニヤニヤしているー

「ちょ、、ちょ、ちょっと、社長ぉ!?!?」
雅史は叫ぶ。

それほど大きな事務所ではないため、
社長は決して雲の上の存在ではない。
健次郎社長と雅史も、何度も会話したことがあるし、
フレンドリーな関係でもあった。

そんな事務所の救世主が亜希奈だった。

亜希奈を、失うわけにはいかないのだ。

「---お、、俺、戻れるんですか!?」
雅史が叫ぶ。

「--いや?戻れないけど?」
健次郎社長が笑う。

「おおおおおおおおおい!?!?」
雅史は思わず叫んだー

何を真顔で当たり前のように「戻れないけど?」だ!
俺の人生はどうなるー!?!?

雅史はそんな風に思いながらも
健次郎社長の言葉を待った。

「---でも、よく考えてみろ。
 久保田。
 亜希奈を演じているとき以外…
 プライベートでは、その身体はお前のものだ。

 つまりー
 どういうことか、わかるかな?」

健次郎社長はニヤニヤと笑みを浮かべたー

「揉み放題なんだぞぉ?えへへへへへへ」
健次郎社長が、胸を揉むような仕草をする。

「-----」

確かに、女体化した自分の風貌は、可愛い気がするー

でも、それでもー

「---」
雅史は、表情を曇らせていた。

「とにかく!」
健次郎社長が言う。

「--お前には亜希奈の代わりを演じてもらう。
 久保田!期待しているぞ」

健次郎社長の言葉に、
戸惑いながらも、雅史は頷いたー

「--では、握手会の準備に入りましょう」
社長秘書の麗が、何事もなかったかのように
冷静に話を進めるー

自分の胸ー
自分の髪ー
肌の感じー

何もかもが、違和感だらけー。

「-まず、この服に着替えてください」

キラキラしたいかにもアイドルな感じの衣装。

「--っ、えぇぇ!?」
雅史が悲鳴にも似た叫び声をあげるー

とてもじゃないがーー
恥ずかしい

「--い、、いえいえいえいえいえ、俺は男ですよ!?
 そんな服、恥ずかしすぎてー!」

そこまで言うと、
麗が、何かを再生した。

「--い、、いえいえいえいえいえ、俺は男ですよ!?
 そんな服、恥ずかしすぎてー!」

麗が持っていたボイスレコーダーから
たった今、雅史が発した言葉が再生される。

「ふぇっ!?」
雅史が思わず間抜けな声を出す。

「心配無用です。
 どこからどう見ても、女の子です。」

麗が冷静に言う。

「----そ、、、そうは言っても…
 こ、、心は男ですし!」

雅史の言葉に、
秘書の麗はさらに続ける。

「-ーーー心も女になりなさい!」

麗の威圧するような言葉に、
雅史は「ふぇぇ…」と呟きながら
アイドルの衣装に着替えたー

着替える最中もドキドキしっぱなしー
着替えたあともドキドキしっぱなしー

こんなんで握手会ができるなんて思えないー

「--ーーおぉぉぉぉ~!まさに亜希奈ちゃんだ!」
社長の健次郎がやってくる。

「96点にアップだ!よし、完璧!
 ファンと握手してこい!」
社長が嬉しそうに言う。

「とほほ…」
女体化して亜希奈そっくりになった雅史は、
亜希奈としてアイドル活動をすることになってしまったー…

②へ続く

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コメント

人気アイドルの影武者としての活動スタート…!
ばれずに、亜希奈ちゃんとして振舞うことはできるのでしょうか~?

本物がどこに行ってしまったのかも、明日以降のお話をお楽しみに~デス!

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