失踪したアイドルの代わりに、
容姿が似ていたマネージャーの男が女体化させられて
アイドル活動をすることに…!
戸惑いだらけの彼の運命は…!?
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「--あは…あははははは」
引きつった笑顔を浮かべながら
雅史は、亜希奈としてファンと握手をしているー
社長秘書の麗が、舞台の隅から、
その様子を見つめているー
(おいおい…まじかよ)
雅史は、次々とファンと握手を交わしながらも
戸惑いを隠せずにいた。
まさか、こんなことになるなんてー。
亜希奈が失踪してしまったことも驚きだー
雅史としては、早く亜希奈がどこにいるのかを知りたい。
事件の可能性だってあるし、
自殺の可能性もあるー。
だがー社長や社長の秘書は、
”アイドルとしての亜希奈”を優先したー
謎の女体化薬で、亜希奈とたまたま似ていた雅史が
女体化させられて、亜希奈として振舞うことになってしまったのだー
言わばー亜希奈の影武者ー
「--へへへへ」
いかにもヤバそうなファンの男が
雅史の手をすりすりとして、その手のニオイを
嗅いでいるー
(うぅぅぅ…きもすぎ)
雅史は、”亜希奈はいつもこんな思いで握手してたのかな…?”と思うー
正直、握手会に参加している側は嬉しいのだろうが
握手している側としては、嬉しくないー
雅史がそう感じるだけかもしれないがー
”こんなやつと握手したくない”と思うようなやつが
何人も並んでいるー
大勢の人間と握手することによる汚れも気になるー。
(アイドルって、やっぱ大変だよなぁ…)
事務的に握手をこなしながら、
雅史ははっとするー。
眼鏡の男が、じーっとこちらを見ているー
握手をしながらー
「あ、、、あの…」
雅史が言うと、
眼鏡の男は、そのまま、じーっと雅史を見つめたあとに
「今日もかわいいね」と呟いて立ち去って行ったー
すぐに、次の握手希望者がやってくるー
(ふ~…ばれたかと思った)
雅史は戸惑うー
そして、そのまま握手会は終了したー。
元々”亜希奈の男版”なんて一部で言われていた雅史は、
女体化して”ほぼ亜希奈”と言えるぐらいの雰囲気になった。
だがー
亜希奈そのものの身体を乗っ取ったわけでもないし、
亜希奈そのものになったわけでもない。
見る人が見れば気づく可能性も高いー
現に、何年も一緒に亜希奈と働いてきた雅史は、
”これは亜希奈じゃない”と、見分けることができるー。
鏡を見れば、分かるのだー
確かに、亜希奈に見える。
でも、亜希奈じゃないー。
こんなこと、ずっと続けることはできないー
「--(亜希奈)」
雅史は、本人の前では絶対に、亜希奈、などと呼ばないが、
内心ではそう呼んでいるー
心配しながら電話をかけるが、
亜希奈の応答はない。
一体、どこに行ってしまったのだろうか。
「いつも、本当にありがとうね…」
亜希奈の言葉が気になるー
まるで、自分が、これから消えるような
言い方だったような気がするー
彼女は、アイドルの活動に疲れ果てて、
自殺してしまったのだろうかー。
トイレの前で立ち止まる雅史。
「---…」
雅史は、腕を組んで考える。
アイドル衣装のまま、
亜希奈そっくりの雅史が腕組をして
じーっとトイレを見つめる。
「--おいおい…」
雅史は戸惑う。
今の俺は男子トイレに入るべきなのか。
それとも女子トイレに入るべきなのか。
「---お~!握手会ご苦労だったな」
社長の健次郎がやってくる。
”早くトイレに行きたい”
ちょうどよかった!と言わんばかりに
「社長!俺、どっちに入ればいいですか!?」と叫ぶ。
「---決まってんだろ」
健次郎社長はそう言うと、雅史の頭を掴んで
そのまま女子トイレの方に押したー
「ふぇぇ…お、、俺は男ですよぉ!?」
雅史がそう言うと、
健次郎社長は「今は女だ」と断言した。
「--で、、で、、でも、中身は男ですし!?
他の女性の皆さんが、嫌がるんじゃ!?」
雅史の言葉に、
「知らなきゃ、嫌がらない」
「知らなきゃ、知らない」
と、社長が呟くー
今、ここにいる”亜希奈そっくりの女”が
女体化した雅史だと知るのは、
雅史本人と、健次郎社長と、社長秘書の麗だけだ。
つまり、誰も知らないのだ。
そしてー
知らなければ、周囲の人間からすれば、
そこにいるのは、女でしかないー。
だから、嫌がることなんてない、と
社長は説明した。
「---で、、でもぉ…
っていうか、そういえば、どうやってトイレすればいいんですか?」
雅史が叫ぶー
女として、トイレを利用したことなんてない。
いきなり女体化させられてもー
「---知るかよ。
座ってすればいいんじゃねぇか」
健次郎社長が言う。
確かに、社長に聞いても知ってるはずがない。
「そんなぁ~…投げやりなぁ」
雅史が呟くー
「そうだ!このあと、バラエティ番組の収録もあるから、
トイレ失敗すんなよ」
「ふぇぇぇ…」
”バラエティ番組”も出さされるのか、と絶望すると同時に、
初めての女としてのトイレをいきなり”失敗すんな”と言われてもー
と、雅史は、嘆きの声をあげたー。
・・・・・・・・・・・・
何とか、トイレを終えて
バラエティ番組の収録をする。
「み、、み、、み、、、みみみみみみみみみ」
顔を真っ赤にしている雅史ー
”亜希奈の挨拶をちゃんとやれよ”
社長にそう言われたー
亜希奈の挨拶は知っている。
笑顔で手を振りながら
「みんな~亜希奈だよ~♡」だ。
でも、、
いざ、自分でやるとなると恥ずかしいー
「っみみみみみみみみみみんんんんあぁぁぁ
亜希奈だよぉ♡♡」
やばい感じの発音になってしまったー
出演者たちが不思議そうな顔をしている。
「あ、、あははははは…」
雅史は苦笑いしながら
クイズ系バラエティ番組の収録を進めていくー
「---(やべぇ、分かんねぇ)」
問題の答えが分からないー
頭の良い亜希奈なら、分かるのに。
「亜希奈ちゃん~今日調子悪いねぇ~」
共演者のお笑い芸人が言う。
お笑い芸人や他の出演者たちが
雅史を”いじる”
バラエティ番組の収録をしたことなんてない
雅史は、うつむいて、本気で傷ついてしまうー
「あ…あれ?」
共演者たちが戸惑うー。
バラエティ番組の収録には”失敗”してしまったー。
今日の予定は全て終えて、
とぼとぼと帰宅する雅史ー
「俺…ほんとにこれからずっとこうなのか?」
戸惑う雅史ー。
雅史は、コンビニに立ち寄り、晩御飯を
購入しようとするー
店内に入ると、店員ふたりが何やら
ヒソヒソとしているー
適当に安い弁当とおにぎり、
コーヒー牛乳を購入しようとしているとー
雅史に他のコンビニの客が声をかけてきた。
「も、、もしかして…あの…」
客の言葉に、雅史は「はい?」と首をかしげるー
「アイドルの、亜希奈ちゃんですか?」
おじさんが嬉しそうに言う。
「え?」
他の利用客も雅史の方を見る。
店員が「やっぱり!」と声を上げるー
人が集まって来るー
「亜希奈ちゃんって、鮭弁当食べるんですねぇ~!」
「うぉっ!亜希奈ちゃんに飲まれるコーヒー牛乳幸せそう~!」
人がどんどん増えて行くー
雅史はたまらず「あ、いえ、失礼します」と、
商品を買うのをやめて、コンビニから
外に飛び出したー
「----」
雅史についてきている人間がいるー
カメラを持っているー
週刊誌の記者だー
(くそっ…)
街で、普通の生活をすることすら許されないー
雅史は、アイドルとしての過酷な日常を思い知るー。
”亜希奈も、こんな風に窮屈な思いをしていたのだろうかー”
そう、思わずにはいられないー
だから、亜希奈は姿を消したのだろうか。
・・・・・・・・・・・・・・・
家に帰宅すると、
雅史は買っておいたカップラーメンで
晩御飯を済ませたー
「ふ~~~」
落ち着かないー
女の子の身体ー
でも、雅史は決して、その身体をいじったり
しようとはしなかったー
「-----……」
彼は、恋愛経験もなく、”堅物”と言われるような
人間だった。
亜希奈のマネージャーとして亜希奈と一緒にいる機会が
多かった雅史も、そういうエッチなことは
一切考えたことがない。
そんな彼は、
自分が女体化しても、
エッチなことは絶対にしないー
そういう”鉄の意志”が彼にはあった。
スマホを確認する。
友人からの連絡が入っているー
だがー
”この姿じゃあ…”と、戸惑う。
会うこともできないし、通話することもできない。
一体どうすればいいのだろうか。
「---まさか俺、ずっとこのまま…」
雅史は、嫌な予感を覚える。
健次郎社長なら、そう言いかねないという不安もある。
亜希奈が戻ってこない限り、
雅史はずっと、亜希奈の影武者として
アイドル活動をさせられることに
なってしまうかもしれないー
そんな風に悩みながらもー
雅史は、亜希奈の”影武者”として
アイドル活動を続けたー
もしも亜希奈が帰ってきたときのためー
亜希奈が帰ってくる”居場所”を残しておくためー
”そうだー
亜希奈のためだ”
雅史は思う。
自分は、亜希奈にとって、最高のマネージャーでありたいー
自分が亜希奈として振舞わなければ
亜希奈は失踪した、だとか、引退!だとか、
色々世間が騒ぎ出すだろう。
そうなってしまわないためにもー
「---俺は亜希奈の影武者だ!」
亜希奈の影武者として振舞うことを決意した雅史は、
亜希奈の過去の映像を徹底的に見たりして、
より亜希奈らしいふるまいを身に着けて行ったー
「--さすがだねぇ」
健次郎社長も嬉しそうに言う。
「もう、君こそが、真の亜希奈って言ってもいいかもな!ははは!」
健次郎社長は、
このまま雅史を”本物”にするつもりだろうかー。
ファンたちの前で、踊りながら歌うー。
ものすごく恥ずかしいー
赤面してしまいながらも、なんとか歌を歌い終えるー
ただー
終ってからネットを確認すると、
”ちょっと声変わりした?”
”なんか音痴になったような”
”ってか最近、違和感感じるよね”
などと、書きこまれていたー
「まずい…」
雅史は呟くー
”もっと”
”もっと亜希奈になりきるんだー”
とー。
帰宅して、疲れた様子でお風呂に入る雅史ー。
髪や胸が気になるー
けれどー
雅史は煩悩に負けず、お風呂を済ませるー
入浴や着替え、トイレなどを
避けることはできないー
胸や髪に触れてしまうことも避けられないー
”そういうのは仕方ないよな”と
割り切りながら、雅史は生活している。
社長は笑いながら
”別に亜希奈ちゃんの身体をどうこうするわけじゃないんだし、
少しぐらい色々シちゃってもいいんだぞ”
などと言っていたが、
雅史はそういう気分にはなれなかったー。
「--ま、確かに乗っ取ってるわけじゃないんだけどさ…」
雅史はそう呟くー
パシャー
そんな雅史の家の外にー
週刊誌の記者がいたー
”大人気アイドル 亜希奈 男の家に通い、お泊り 熱愛か”
そんな記事がー
週刊誌に掲載されることになるとは知らずにー
雅史は、いつも通り”雅史の家”で過ごしていたー
③へ続く
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コメント
長期連載すれば、
アイドル活動しながら、徐々に気づかれていく危機~!
みたいなお話をじっくり書けるのですが、
3話構成だと限界がありますネ~汗
でも、いろいろなお話をお届けしていくスタイルは
当初からのスタイルなので、
続けていきたいと思います~!
今日もありがとうございました!

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