<憑依>狂気の酪農家

ある日ー
事故は起きたー。

”牛が娘に憑依してしまった”のだー。

そんな未曽有の危機を前に、父はー?

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牛が、娘に憑依してしまったー。

理由は分からないー

現役女子高生の娘・志奈(しな)に
当然、牛が憑依してしまったのだー。

頭を抱える父の朝義(あさよし)

どうすればいいー?
いや、どうすることもできない。

3日前ー
牛が、突然暴れ出して娘の志奈に
衝突したー。

その直後、牛がまるで煙のようになって
娘の志奈に吸い込まれてー
志奈は、牛に乗っ取られてしまったのだ。

「何を言ってるか分からないと思いますが
 本当なんです」
父の朝義は警察にも相談したー。

だが、警察は取り合ってくれなかったー

当たり前だ。
”娘が牛に憑依されたんです!”なんて急に言われて
”はい、そうですか”なんてことに
なるはずがない。

「----」
落ち込む朝義ー

可愛い娘の志奈が、
まるで牛のようになってしまったー

四つん這いになって、
奇妙な声をあげる志奈ー。

恐らく、志奈に憑依した牛が
いつも通り声を出しているのだろうが、
人間の身体と牛の身体では
同じように音を発しようとしても
異なる音が出るのだろう。

その結果、志奈はとても奇妙な声を出しているー

「志奈…」
朝義が、志奈の方を見る。

だが、志奈は、何も答えないー

うろうろと動き回るだけー。
四つん這いで動き回る娘を見るのは
とてもつらいー。

こんな状態で学校に行かせることもできず、
ひとまず、学校も休ませていたー

志奈のことを、どうにか助けてあげなくてはいけないー

「--はぁ~…」
朝義がため息をつく。

リビングで頭を抱えていた妻の真那子(まなこ)も
朝義に気づくー

「--どうだった?」
真那子が呟く。

「変わらないよ」
朝義が悲しそうに呟くー

志奈の様子は変わらない。
身体が人間なだけで、
中身は牛だ。

どうして、こんなことになってしまったのかー。

病院に連れて行こうにも、
どのように、娘の状況を相談すればいいのかー。

それにー
正直、朝義の農場は、経営の危機を迎えていた。
お金にも、余裕がないのだ。

当然、娘のためなら
何とかしたいという思いもある。

だがー。
”お金がないこと”が、朝義の行動から
積極さを奪い去っていたー。

・・・・・・・・・・・

それからも、志奈は元に戻らないまま。
完全に”牛”と化している娘の志奈を見ては
朝義は戸惑う。

当然、娘はトイレにも行かないー
四つん這いのまま、糞便も出してしまうし
放尿もしてしまうー。

人間相手にこんなことをすることになるなんて、と
朝義は戸惑いを隠せないー。

やがて、服を着たままではー
という妻の提案で、
志奈は牛のように、服も着ずに
日常を過ごすようになったー。

だがーーー
ある日ー

「----!」
朝義は気づいた。

四つん這いで歩く志奈の近くに
白い液体が落ちていることに…・。

「---なんだこれは…?」
朝義は、その液体を確認するー。

謎の液体ー
志奈の身体にまた何か異変が起きているのではないか。
そんな不安を抱える朝義。

その液体のニオイを確認する朝義ー。

「---牛乳?」
朝義が表情を歪める。

志奈はそんな朝義のこともお構いなしで、
四つん這いで歩き続けているー。

「---……」
朝義は表情を歪めたまま、
その白い液体を舐めてみたー

「------!!!」
それは、間違いなく”牛乳”だったー。

しかもーー

「う……うまいっ!」
朝義は叫んだー。

これまで、味わったことのないような”味”がするー
牛乳の真髄にたどり着いたかのようなー
まさに”究極の牛乳”と、言えるかのような、
そんな味だったー

「----」
朝義は、志奈の方を見るー。

そして、性的な目的ではなく
純粋な好奇心で、娘の志奈の胸をーーー
牛のように絞ってみたー

するとー
志奈から白い液体がー
牛乳が出てきたのだ

「な…なんということだ…」
唖然とする朝義ー

娘の志奈は、牛に憑依された影響からかー
牛乳が出るようになってしまったのだったー

・・・・・・・・・・・・・・・・

後日、知り合いの研究施設にお願いして、
娘の志奈から絞り出した液体とは説明せずに、
成分を分析してもらったー

結果ー
紛れもなく、志奈の身体から出ているものは
”牛乳”だった。

しかも通常の牛乳以上の栄養分を含む、
究極の牛乳ー

「---どういうことだ」
朝義は呟くー

牛に憑依されただけではなく、
娘から牛乳まで出るようになってしまったー

いったい…どうすれば…。

途方にくれる朝義。
自分の牧場の経営も、正直、きついー

だがー

「いや、待てよ」
朝義はふと思い立つ。

”娘から絞った牛乳を売り出すことができればー”

その日から、朝義は、娘の志奈から
乳しぼりをして、牛乳を取り出すさ作業を始めたー

志奈が、奇妙な声を出すー

胸から牛乳が出て来るー
それを回収して、売りだせるようにするー

そして、牧場の前で、
”特製牛乳”と名付けて
それの販売を始めたー

志奈の胸から搾る牛乳は、
とても味がよく、とてもよく売れた。

搾ることのできる量は少ないが、
牧場の販売所で販売したところ
とても評判がよく、
もしもこれが大量生産できるようになれば、
朝義の牧場はー、
経営危機を脱することすら
できるかもしれないー

朝義は、”絶望”の中に
チャンスを見出したのだったー。

だがー

「--ねぇ、あの特製牛乳って…?」
妻の真那子が首をかしげる。

”特製牛乳”とはいったい何なのか。

牛に憑依されてしまった娘の志奈から
搾っているものである、ということは
真那子にも伝えていなかったー。

「----」
朝義は答えないー

娘から乳しぼりをして
牛乳を出している、なんて言ったら
真那子は反対するだろうー。

だが、家族を守るためー
牧場を守るためー
何か思い切った秘策が必要である、ということも
また事実ではあった。

「------」
どうにかして”特製牛乳”の生産量を
増やさなくてはいけないー

朝義はそう思ったー
特製牛乳の生産を増やすためには
どうすれば良いのだろうかー。

「---!」
”そうだ”と呟く朝義。

「え」
真那子は、話を上の空であまり聞いてなさそうな
朝義を見て、腹が立ったー
いったい何なのかー
と。

朝義は”牛を、また別の人間に憑依させることができればー”と
思いつくー。

娘の志奈が、牛に憑依されてしまったときの
状況を、自分のできる範囲内で思い出していく朝義ー。
なんとか、志奈のように、牛に憑依された人間を
作り出すことができればー
とっておきの”特製牛乳”を、また作りだすことができる。

そう思いながらー
朝義はさっそく計画を練ったー

娘の志奈を元に戻すーという目的が
いつの間にか、朝義の中で
”経営危機の自分の牧場を立て直す”
ことに変わってしまっていたー。

朝義は、自分の実の妹を牧場に呼んだー

そして、娘の志奈が牛に憑依されたときの
状況を、正確に作り出したー

その結果ー
実の妹にも”別の牛”が憑依したー

「--すまない」
朝義は、妹に対してそう思いながらも、
牛に憑依されて、四つん這いで歩き回る
妹を見つめて、笑みを浮かべたー

これでー

これで、牧場の経営を立て直すことができるー
牧場経営を立て直すことができれば、
家族を支えていくことも可能になるー。

そうだー
全ては家族のためだ。

朝義の娘・志奈と実の妹から
牛乳を搾る朝義。

その牛乳は「おいしい」と評判で
飛ぶように売れたー。

だがー
それは、続かなかったー

「-----!!!」

夫である朝義の態度を不審に思った
妻の真那子は、”特製牛乳”の正体を
突き止めるために、
夜中にこっそりと、牧場内を調べた。

その結果ー

”たどり着いて”しまったー。

真相にー

牛に憑依されて、牛のようになってしまったのは
娘の志奈だけだと思っていたがー
既に志奈だけではなく、朝義の実の妹、
親友ー
挙句の果てに妻である真那子の妹まで、
牛に憑依された状態になり、
牧場内で牛のように扱われていたー

「これは…」
真那子は唖然とするー

そして、確信するー。

夫の朝義が、何らかの方法で
牛を人間に憑依させて
牛に憑依された人間を利用して
何らかの方法で”特製牛乳”を作り出しているー?

とー。

とにかく、何か恐ろしいことが起きているのは
事実だったー。

そしてー

「--真那子…」
背後から声がした。

真那子が振り返ると、
そこには夫の朝義の姿があった。

「あ、、あなた…」
真那子が唖然とする。

そしてー
”牛のような状態”になってしまっている
みんなを指さしながら言う。

「こ、、これは…どういうことっ!」
とー。

朝義は突然、頭を下げた。

「分かってくれー。
 これも、家族のためなんだ」

朝義が、頼み込むように真那子に告げるー

「うちが、やっていくためには、こうするしかないんだ。
 
 ”特製牛乳”はこのまま破綻するしかなかった
 うちが生き残るための”救世主”だー。
 これを売って売って売りまくるしかー
 道はないんだ!」

だがー
真那子は、理解しなかったー

「あなた…自分が何をしているのか、わかってるの!?」

牛に憑依されて、四つん這いになっている
娘や、真那子の妹、朝義の妹を見つめるー。

「---家族のためだよ!」
朝義が狂気的な笑みを浮かべたー

”家族を守りたい”
その一心だった想いは歪み、
いつしか”牧場を守りたい”に変わってしまっていたー

「---真那子!黙っててくれ!な、頼む!」
朝義が頼み込むようにして言うー。

しかし、真那子は言う。

「警察に通報するわ」
とー。

妻として、自分も同罪になるかもしれないー

だが、牛を人間に憑依させてー
こんな風にー

「---真那子!みんなのためなんだ!」」
朝義がなおも叫ぶー

「--最初は偶然だったんだ!
 でも、ほら、今は牛を憑依させる方法を見つけたんだ!

 牛に憑依された人間からは、おいしい牛乳が出るようになるんだ!

 ほら、志奈からも、俺の妹かも、お前の妹からも!!!」

笑う朝義ー

志奈の胸をぎゅっと握って牛乳を出して見せるー

「--そこにいるみんなは、牛なんかじゃない!
 わかってるの!?」
真那子が叫ぶー

「--分かってるさ!でも、牧場のためーー!」
朝義がさらに大声で叫ぶー

「---ふざけないで!!!狂ってる!!!」
真那子がもっと大声で叫ぶー

「-ーーこの、分からず屋ぁあああああああああああ!!!」
朝義がキレたーーー

そしてー
真那子をグーで殴りつける。

「家族のために、牧場を守ろうとしてるのにっ!
 なんで、なんで邪魔をするんだー!」

朝義が真那子を何度も何度も殴りつけてー
そしてー
柱に縛り付けたー

牛を真那子に突撃させるー

「--お前も、牛になるんだぁ!」
朝義はー
ついに、妻にも牛を憑依させてしまったー

・・・・・・・・・・・

牛になった女たちを見つめて
満足そうに微笑む朝義。

全ては、牧場を守り、家族を守るためー

だがー
こんなことをしていて、無事で済むはずがない。

彼の元に、警察がやってくるのは
時間の問題だった。

「あぅぅぅ♡」
妻の真那子の乳しぼりをする朝義ー

家族を守りたいー
そのために、牧場を守りたいー

いつかし、その想いが歪んでしまったー

今や、家族を守りたいという思いから
守りたかった牧場を、
家族を犠牲にして守ってしまっている。

その”矛盾”に彼が気付くのはー
いつになるのだろうかー。

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

1年以上前に、私の中で浮かんで
ネタのストック(非公開)にメモしておいたものなのですが
今回、ようやく書いてみました~!

ちょっと変わった感じのお話ですネ!

お読み下さり、ありがとうございました!!

小説
憑依空間NEO

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