<憑依>憑依孔明①~天才軍師~

三国志の天才軍師 諸葛亮孔明。

彼は、病に蝕まれて最後の時を
迎えようとしていたー

そんな彼が、現代の女子高生に憑依してしまいー?

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三国時代ー。

蜀・魏・呉の
三国が天下を狙い、争った時代ー

その戦いも、終盤に差し掛かっていた。

234年ー
五丈原と呼ばれる地で
三国の一つ・蜀の天才軍師
諸葛孔明は、病に蝕まれて
最後の時を迎えようとしていたー。

蜀の先代・劉備元徳より
託された夢を果たすために
魏との戦いを繰り広げてきた
諸葛孔明。

その知略により、
圧倒的戦力差のある魏を幾度も
退け、そして、立ち向かってきたー

だが、そんな孔明も、
病には勝てなかった。

次第に蝕まれていく身体。

彼は最後の時を悟る。

自らの後継者として
姜維(きょうい)なる人物を育てた。

だがー
それでも、孔明にとっての不安要素は多い。

蜀の現皇帝・劉禅(りゅうぜん)には
不安が残るー

周囲には家臣がいるものの、
蜀を支えた将軍たちは既にこの世にいない。
勇猛な武将はいるものの
魏延(ぎえん)ら、孔明の死後には
何をしでかすか分からない不安要素もある。

魏の天才軍師・司馬懿(しばい)は
未だ健在であり、孔明の死後、この司馬懿の
知略をしのげるものは、蜀にはいない。

「私は、まだ死ぬわけにはいかない」
孔明は、最後の秘術に出たー。

伝承でしか知らない秘術。

それはー”他人の身体に憑依する”
という秘術ー。

これが実際に成功するのかは分からないー

だが、この秘術を使い、
若き武将に憑依することで、
孔明は病魔に蝕まれた自らの身体を捨ててー
他人の身体を乗っ取り
生き延びることができるー

他人の身体を奪う、ということに
気乗りはしなかったが、
それでも、蜀の命運を救うためには、
これしかなかったー。

孔明は、儀式を行うために
陣地の祭壇前に閉じこもり
術の準備を始めた。

この術が成功すれば
魏にも立ち向かうことができる。
魏の天才軍師・司馬懿に打ち勝つことができる。

「----」
孔明は、蜀の天下統一のため
術を唱えていたー

あとーーわずか。
術を唱え終わるー

本当に、他人に憑依できるのかどうか。

全てを見通す力を持つ孔明でさえも、
それは分からなかった。

本当に、本当に、術は成功するのだろうかー。

しかしー

「敵襲!敵襲!」
蜀の武将の一人である、
孔明が、自分の死後に謀反を起こすと考えている
武将・魏延が、敵の襲来を知らせに孔明のいる場所に
入ってきた。

ガタッ

蝋燭が倒れる。

「あっ!」
魏延が声を上げる。

「-----転!」

最後の一言をちょうど唱え終わる孔明ー

この禁断の秘術は本物だったー

しかしー
最後の瞬間で、
魏延が蝋燭を倒してしまったー

それによりー

異常事態が起きたー

光に包まれてーーー
孔明はその光の中に飲み込まれていくー

憑依の秘術が-
成功のその瞬間に、失敗したー
魏延が蝋燭を倒したことによってー

激しい光に飲み込まれる孔明ー

「こ…これは…!?」
孔明は、光に飲み込まれる。

激しい渦に飲み込まれるー

その衝撃の最中、意識を失った孔明ー

孔明の意識は、闇に飲まれるのだったー

・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

「---ねぇ…
 ねぇってば」

声が聞こえるー

女の声ー

孔明が目を覚ますとーー
そこはーー
見知らぬ場所だったー

「---…私は…??」

孔明が周囲を見渡すー

謎の緑色の板ー
机が並んだ謎の場所ー

窓の外に広がる木々ー

周囲にいたのは
不思議な格好をした若い男女たちー

「---ここは…?」
孔明はそう呟いて
自分の声が変わっていることに気づくー。

「---なぁに寝ぼけてるの!」
隣にいた少女が言う。

孔明は”なんだこの口の利き方は?”と一瞬思うー

孔明の時代で、このぐらいの年ごろの少女が
孔明にこんな口の利き方をすることはまずあり得ないのだ。

しかも、なんだこの女の格好は?

「--」
孔明は周囲を見渡して戸惑う。

憑依する先は
蜀の若き武将だったはずー

だがー

”女?”
孔明は内心で驚くー

自分の身体に胸のふくらみがあるー
髪が長いー

そもそも、なんだこの格好は?

セーラー服に戸惑う孔明。

「ーーー姜維はどこだ?」
孔明はーー
少女の身体でそう呟いた。

「は?きょう…?誰?」
横にいた少女は戸惑う。

「--私は…だれの身体に?」
孔明が戸惑っていると、
隣にいた少女は答えた。

「--は?ちょっと、寝ぼけすぎでしょ~?」
笑う少女。

「--希美(のぞみ)!ほら、もう昼休み半分過ぎたよ!」

希美ー?

「--のぞみ?」

諸葛孔明はー
儀式成功の直前に魏延が蝋燭を倒したことにより、
別世界ーー
時を超えて、約1800年以上先のー
現代の日本の女子高生・上原 希美(かみはら のぞみ)に
憑依してしまったのだー

「---…!」
立ち上がる希美。

「--ちょ!?どうしたの!?」
横にいる友人・富原 辻江(とみはら つじえ)が驚くー。

「---こうしてはおれぬ!」
希美が叫んだ。

「-!?」
周囲が驚く。

孔明が儀式を終える直前に魏延が駆け込んできて
”敵襲”と叫んでいたのを思い出す。

「--司馬懿の軍勢が迫っておる。
 お主は魏延と姜維を呼んできてくれ」
可愛らしい声で言う希美。

隣にいる辻江が驚く。

「ちょっ!?ちょ!?何言ってるの?」

「--急ぐのだ!」
叫ぶ希美。

「--ちょ!?何言ってんの?ねぇ!?」

無礼な女だー
誰だこのモノは?

孔明はそう思いながら教室の外に出たー

しかしー

そこにはー
見たこともない廊下が広がっていたー

「ここは…いったい…」
希美が唖然としていると、
ふと、廊下に貼られた文化祭の
ポスターが目に入るー

日時ー
2020年ー 

「---!?!?!?」
希美は表情を歪めた。

「2020…!?!?!?」

希美に憑依してしまった孔明は
驚く。

自分のいた時代は234年のはずー

「まさか…」

希美は驚きを隠せないー

”まさか、こんなことが起こるとは…
 とんでもないことに…なりましたね…”

孔明は内心でそう呟く。

234年から、2020年にー

なるほどー。

「--なるほど…
 私は…時空を超えた…というわけですか」
希美が呟くー

友人の辻江のことを家臣だと思っていた
孔明は命令口調で話していたが、
すぐにそれを改めた。

「いや、これは失礼しました」

「へ?」
辻江は混乱しきっている。

「---ちょっと、お人払いを」

辻江は戸惑いながらも、
人のいないところで、と判断して、
希美と共に生徒会室に向かう。

希美は生徒会副会長なのだー。

「---えぇぇぇぇぇ!?!?!?!?」
辻江が声を上げた

「---信じられないと思いますが
 私は234年、蜀という国から来ました…
 諸葛孔明と言います」

希美が自分の身体に手を当てて頭を下げる。

「--い、、いやいやいや、ないでしょ?
 希美?さすがに悪ふざけが過ぎるよ」

辻江が言う。

希美に憑依している孔明は
”まぁ、信じてもらえないのも無理はありませんね”
と、思うー

だがー
希美は三国時代のことを細かく語りだした。

「え!?嘘!?マジ!?」
辻江が叫ぶ。

辻江はー
歴史オタクだった。

希美の口から
歴史に残ってないようなことまで
語られて驚くー

希美は歴史嫌いだった。

その希美の口から
こんな詳しいエピソードが語られるはずがない。

「ーーーほ、本当に孔明…??」
辻江が唖然とする。

「ええ」
希美がほほ笑んだー

”こ、、、この笑み…!
 孔明だッ”

歴史オタクの辻江はなぜか勝手に納得したー

「---こ、、孔明さまとは知らず、失礼しましたー!」
歴史上の偉大な人物を前に
唐突に頭を下げる辻江。

「いえいえいえ、お構いなく」
希美はそう言いながら
辻江に頭を上げるように促した。

元々孔明は、物腰が低めだし、
この時代がどういう時代か分からないから
平伏を促すようなことはしなかった。

「---見たところ、歴史に詳しいとお見受けします。
 私に、この時代までのこと、聞かせていただけますか?」

希美が言うと、
辻江はほほ笑んだ。

「あ、はい!喜んで!
 あ、でも、中国のことは三国時代ぐらいしか」

辻江は、”ここは日本なので”と付け加えた。

「日本?」
希美が一瞬首を傾げた。

だが、希美に憑依している孔明は
すぐに別の国だと気づいて、その先を促した。

「---残念ですが、蜀は孔明様が亡くなったあとに滅びます」
辻江が呟くー

中身が諸葛孔明だと信じ切った辻江は、
敬語で話していた。

「---そう…ですか」
希美は悲しそうに呟くー

自分の後を継いだであろう姜維は最後まで
戦ったらしいー
だが、皇帝・劉禅が降伏してしまったのだという。

「---魏は、そのあとすぐに晋という勢力に変わります。
 司馬懿の一族に乗っ取られる感じですね」

辻江が説明する。

「司馬懿…」
希美は呟く。
やはり、あの天才軍師は、偉大だったー。
実際にはその子が、晋の皇帝になったようだったが。

「---で…呉もそのあとに滅ぼされてー
 最後にはその晋が天下を統一した感じ…です」

辻江がそう言うと、
希美は少しだけ悲しそうな顔をした。

「---……そう…ですか」
希美は、天井を見つめるー

「---……」
辻江は気まずそうにしている。

「あ、、あの、なんか、すみません」
”過去から来た人に、自分の守ろうとしていたものが
 既に壊れている”なんて言ったら、
やっぱりショックだろうなぁ、と思いつつ
辻江は頭を下げた。

「あぁ、いえ、大丈夫ですよ」
希美が言う。

同級生の女子高生2人が
敬語で話しているという
傍から見たら少しおかしな光景が
広がっているー

「---…私にも、分かってはいましたからー」
希美は少しだけ悲しそうな表情をする。

天才軍師である諸葛孔明には分かっていたー

自分亡きあとの運命がー
描けないわけがない。
蜀が滅びゆく光景がー
彼には見えていた。

けれど、それを認めるわけにはいかなかったー
出来る限りのことを託してー
現実から目を背けていたー

「---…そ、、その、それで、
 なんで希美の身体に…?」
辻江が聞くと、
希美は答えた。

「ノゾミ?…面白い名ですね」
希美が笑う。
さっきも聞いたが、改めて聞くと
孔明からしてみれば、
面白い名前だった。

「あぁ、、え~っと、国が違いますからね」
辻江が言うと、
希美に憑依している孔明は少しだけ笑った。

そしてー
自分がこの時代に飛ばされて
希美に憑依してしまった理由を
推測して、答えた。

「なるほど…」
辻江が頷く。

そして、時間を見る。

「あ、もう、昼休みが終わっちゃいます」
辻江が希美に対して言う。

「---希美の身体から出ていくことは……」

「---それが、私にも方法が分からないのです」
希美は首を振った。

辻江は”そ、そうですよねー”と言いながら
どうさせるべきか考えた。

他のみんなに”希美は諸葛孔明に憑依されてるから”なんて
言ったら大爆笑されてしまうのがオチだ。
絶対に信じてもらえない。

では、どうするべきかー。

「--え…え~っと…
 学問!学問ってありましたよね、三国志の時代にも!

 ここは学問を学ぶ場所で、学校って言います!」

辻江が早口で言う。
とりあえず、孔明に希美のふりをしてもらうしかない。

「なるほど…私にこのコのふりをしろと、
 そうおっしゃるのですね」
孔明らしい穏やかな口調で言う希美。

「そうです!さっすが孔明さん!」
辻江が叫んだー

やっぱり天才軍師は飲み込みが早いー

「--ささ、教室に戻りましょー!
 あ、みんなの前では希美に話しかける風に
 話しかけますから、
 ご無礼をお許しくださいね!」
辻江がそう言いながら生徒会室から
外に出ていくー

”やれやれ…大変なことになりましたね…”

希美に憑依した孔明は
そう呟きながら教室へと向かうのだったー

②へ続く

・・・・・・・・・・・・・・

コメント

ツイッターで少し前に話題になっていた
孔明が現代に転生する漫画を見たフォロワー様と
お話ししているときに
憑依で書けたりします~?と言われたので
書いてみることにしました(笑)

内容自体は、私は↑を見たことがないので、
孔明が現代に来る以外は全然違うと思いますー!

次回もお楽しみに~!

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憑依<憑依孔明>

コメント

  1. 11 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    足フェチの憑依 皮小説もっと見たい

  2. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    > 足フェチの憑依 皮小説もっと見たい

    足フェチの憑依と
    皮小説!!

    覚えておきますネ!
    ありがとうございます!!