<憑依>憑依孔明②~現代~

現代の女子高生に憑依してしまった
天才軍師・孔明ー

現代の光景を前に
さすがの彼も…?

--------------------–

教室に戻った希美は
キョロキョロとしているー

「--あそこに、座るんです!」
辻江が小声で言った。

希美の座席を指さす辻江。

「ありがとうございます」
希美が言う。

「--ちょ!ちょ!」
辻江が希美に近づいて小声で言う。

「--他の子の前でその話し方はダメです。
 ほら、今は女子高生なんですから!」
辻江の言葉に
希美は首を傾げる。

「じょしこうせい…ですか?」

「--そ、そうです!とにかく、フレンドリーに!
 えっと、、ほら、、あのコたちみたいに!」

辻江は、教室の端のほうで
話している騒がしいギャルっぽい生徒たちのほうを
指さした。

「え~マジィ~?ウケる~!あははははは!」
「でしょ~!笑っちゃう~!」

「----…」
希美が唖然としてそれを見ている。

「---な、、なるほど」
希美は”理解できないもの”を目にしたという
感じの表情で辻江のほうを見た。

「--わ、、わかった~~!
 わたし、がんばるぅ~!」

希美がピースしながら言う。

「---あ、、、あははははは」
辻江は、”そんなこと希美はしません”と思いながらも
上手く説明する手段がなく、
そのまま座席についたー

そして、授業が始まるー

天才軍師の孔明にとって
授業はお手のものだったー。

「--この物語から、読み取れる主人公の
 思いは、どんなものがある?」

国語の先生が言う。

「--そうですね」
希美が立ち上がった。

そしてー
歩き出す。

「この主人公、私の見立ててでは、
 おそらくは、こう考えているでしょうー」

孔明に憑依された希美は、
あまりにも的確に、
そして主人公の信条を読み取って見せた。」

さらには、普通の人が分からないような部分まで
べらべらと喋っていく希美ー

周囲はーー
ドン引きしていた。

「--つまり、ここから察するに
 彼はこうするべきであったとー」

希美が、ふと教室の辻江のほうを見る。

辻江が”×”のポーズを作っていた。

”もういいよ”
と、口パクしている。

「---あ…失礼しました」
希美が頭を下げる。

国語の先生も驚いているー

あまりにも完璧すぎるー
と、いうよりも、天才的な想像力ー
国語の先生は驚きを隠せなかったー

・・・・・・

「さっきのは、やりすぎ」
辻江が言う。

「---そ、、そうでしたね。失礼しました」
希美が頭を下げる。

「--めっ!」
辻江が周囲を見ながら言う。

「人前では、お互い普通の話し方!」

そう言われて希美は
顔を赤くしながら
「う、うん…」と答えた。

この短い時間でも、
孔明は女子がどんな風に話すのか
周囲を観察して、理解していた。

だがー
理解はできても
恥ずかしい、という気持ちが出てきてしまう。

「--が、、がんばる」
希美が顔を真っ赤にしながら、そう呟いたー

6時間目が終わりー
放課後になるー

「---……とりあえず…家に帰るんですけど」
辻江が言う。

「--大丈夫ですか?」
辻江は心配そうだ。

乗っ取られている希美のことも、
乗っ取っている孔明のことも心配だ。

とてもじゃないが、普通にふるまえるようには見えない。

「--ええ…こう見えて、周囲を観察するすべには
 長けていますから」

その言葉に、少し辻江は安心しながらも、
「LINEで相談に乗りますから」と呟いた。

「らいん?」
希美が首を傾げる。

辻江は苦笑いすると、スマホを取り出して
LINEを実際にやり取りして見せた。

「--これは…」
希美に憑依している孔明は驚いたー。

さっきから周囲でおかしなものを持っている子が
多いとは思っていたものの、
こんなものがあるなんてー

「--あ、そうそう、これ、孔明さんがいた
 三国時代のゲームです」

三国志のアプリを見せる辻江。

「ぷっ…」
希美が突然震えだす。

「--ぷっ…くくくく、ははははは」
笑う希美。

辻江は「え、、ど、どうしたんですか?」と
困った様子で言う。

「いえ、失礼しました。
 あまりにも司馬懿が似てないので
 笑ってしまって」

孔明はー
”三国志の武将たちの本当の姿”を知っているー

だから、そのあまりにも違い過ぎる姿に
笑ってしまった。

「あぁ…そうですよね~!
 本物の司馬懿さん知ってるんですもんねー!」
歴史オタクの辻江は興奮しながら言った。

「--えぇ。司馬懿には苦しめられましたからね」

司馬懿とは、孔明のライバル的存在で、
敵対していた魏に所属していた軍師だ。
最後まで、孔明は司馬懿を倒すことはできなかったー。

その時だったー
別の女子生徒が希美と辻江に話しかけてきた

生徒会副会長の毛利 麗子(もうり れいこ)-。

「---希美ちゃん、大丈夫?」

麗子はー
5時間目、6時間目と希美の様子が
おかしいことに気づいて
心配してくれているようだった。

「あ、、、あぁぁ、えっと、、うん、大丈夫だよね!希美!」
辻江が慌てて言う。

希美は「ええ、、、あ、、、、あ、!うん!だいじょうぶ!」と
慣れない口調で答えたー

「--ーー」
麗子は、希美のほうを不思議そうな表情で見ている。

「--だ、大丈夫だから、心配しないで!」
辻江が苦笑いするー

麗子は現実主義なコだ。
希美に諸葛孔明が憑依しているなんて言っても
ほぼ確実に信じてくれないし
頭がおかしい認定されるのは間違いない

「かえろ!」
辻江が言うと、
希美が頷いたー

立ち去って行く2人を見つめる麗子ー

麗子の口元が歪むー

「--孔明…お前も来ていたのか」
麗子がそう呟いたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「-ーーーひえっ!?!?」
希美は思わず叫んだ。

下校中ー
車を見た希美の第1声ー

「--車です。
 孔明さんの時代は馬でしたもんね」

「く、車!?」
希美は放心状態になる

なんてスピードだ。
なんて乗り物だー

これが、
これが、あの時代にあったならばー

「--……わ、、私の想像をはるかに超えてますね」
希美は驚きを隠せない。

なんだこの世界はーーー
234年から来た孔明にとってあ
驚きの連続。

ヘリコプターを見た希美は
「と、鳥…!?」と叫ぶ。

「あれは、ヘリコプターですね。
 今の時代は、空も飛べるんです」

「--ほぉぉ…」
希美は、目を輝かせているー

孔明にとってはどれも
興味深いものばかりだったー

そしてー
電車に乗る。

「---ひぃぃぃぃぃっ!?」
希美は、なぜか必死に棒にしがみついている。

電車特有の動きが
希美に憑依している孔明にとっては
驚きだったのだー

苦笑いする辻江ー。

そして、二人は別れる道までやってきた。

「-あ、希美ちゃんの家はこの先なので」
辻江が言うと、
希美は「道には迷いませんよ」と笑ったー

「---でも、孔明さんで良かった。
 希美に憑依したのが変な男の人だったら
 エッチなことされちゃいそうですからね。

 孔明さんならそんな心配なさそうですし」

辻江が言う。

「ええ。まぁ」
希美はそう答えた。

そして、少し雑談をしたあとに別れる二人ー

だがー
「----…私も一応男ですから…
 その…まぁ、、ちょっとは…」
希美は自分の身体を見て
顔を赤らめた。

天才軍師とて、一人の男ではあったー

・・・・・・・・・・・・・

帰宅後ー

希美のスマホに辻江から連絡が入る。

”部屋に到着できたみたいですね!
 よかったです!
 まず、いつまでも制服じゃアレですから
 着替えてください”

「--着替え!?!?」
希美は顔を真っ赤にするー

「--こ、、これは…さすがに…」
希美に憑依している孔明は苦笑いするー

これは試練だー
煩悩に負けてはいけないー

希美は、慣れない手つきで
制服を脱ぐー
目を瞑りながらー。

そして、なんとか着替え終えた希美は
目を開いたー

「ふぅぅぅぅぅ…
 なんか、違和感がすごいですね…」
希美はそう呟くと、
周囲を見渡したー

希美の部屋には女子らしいものから、
ゲーム機までいろいろなものがあったー

「--ん?」
希美が目に入ったものー

それはー
”無双”と呼ばれるゲームソフト。
三国時代を舞台としたアクションゲームだ。

「これは、いったい?」

”無双とは、なんでしょう?”
希美がLINEで辻江に尋ねると
辻江は”あ、やってみます?無双”と
面白そうに返事が返ってきたー

言われたとおりにゲーム機をいじる希美。

テレビに映像が表示されて驚くー

「こ、、これはいったい!?」
希美に憑依している孔明にとって
人智を超えた存在ー

あまりの驚きの連続にさすがの孔明も
驚きを隠せない。

(こ、、これが未来の世界ですか…)

孔明はこの世界のものを調べたくなりながらも
人の身体を乗っ取っている以上、
勝手なことはできない、と大人しくゲームとやらを
見てみることにした。

三国時代のアクションゲームが始まる。

「ぷっ…」
希美は思わず笑ってしまう。

希美に憑依している孔明は
本当の三国時代を知っている。

「この場所はこんな場所じゃありませんでしたよ」

「これは……本人が見たら怒りますね」

苦笑いしながら遊ぶ。

手元の機械をいじると
画面が動く。

希美はまるで子供のように目を輝かせながら
ゲームを遊んでいたー

しばらく遊んでいると
辻江から連絡が入った

”あ、お風呂、入ってくださいね”

「お風呂?」
希美がゲームをやめて、
唖然とする。

「……この身体で……身体を洗えと?」

裸になって身体を洗うー
孔明は、頭を抱えた。

”大丈夫ですよ!孔明さんなら
 何もしないでしょうし”

辻江の孔明に対する絶対の信頼ー。
希美に憑依している孔明は
やれやれと思いながら
お風呂のほうに向かうー

「---………
 彼女を失望させるわけにはいきませんね」

希美はそう呟くと、
辻江を失望させないように、目を瞑り、
そして、お風呂の自動音声に飛び上がるほど驚き、
現代のお風呂のシステムに驚き、飛び上がりながら
なんとか入浴を終えた。

「ふー…ふー…」
希美は冷や汗をかきながら部屋へと戻る。

「……」
234年の時代から飛ばされてきた孔明にとって
今日1日は刺激的すぎたー

2020年の未来の人間に憑依してしまったことー
男ではなく女に憑依してしまったことー
三国時代の結末を知ることになってしまったことー
現代の技術ー

「---…ふぅ…さすがの私も
 こんなことは計算できませんでした…」

それだけ呟くと、
”ベットで寝るんですよ~?わかります~?
 私はあと2時間ぐらい起きてるんで何かあれば
 連絡してくださいね”
と辻江から連絡が入った。

スマホを見つめながら
希美は呟く。

「これが、私の時代にあれば……
 伝令も必要なかったでしょうね」

とー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

辻江が迎えに来てくれた。

希美に憑依している孔明は
メイクも何もかも分からず困惑しているー

「あ~~あ…う~ん…
 ちょっとお邪魔します!」

玄関から出てきた希美の姿を見た
辻江は希美の家に上がって、
希美の身だしなみを整えると、
「これでよし!」と呟いて
再び外に出る。

「--ところで、孔明さん、
 希美は今、どうなってるんですか?」
辻江が言う。

友人の希美のことを心配しているのだ。

「ええ…それが…
 この時代に来てしまったのは
 ちょっとしたトラブルでー」

儀式の成功直前に
ちょっとしたトラブルがあって
孔明はこの時代に飛ばされてしまった。

こればっかりは孔明の計算外だ。

どうやったら戻れるのか。
それも、分からなかった。

「…なるほど~…う~ん」
辻江は心配そうに呟いた。

・・・・・・・・・・・・・・・

学校に到着すると、希美は
ある部屋に興味を示した。

図書室だったー

「-----」
希美が図書室のほうをじっと見ている。

「あぁ、それは図書室です。
 本…、孔明さんの時代にもありましたよね」

「ええ」

希美は思う。

”ここに、元に戻るための手掛かりがあるかもしれない”

そんな風に思いながらー

「--あ、でも、今はまだ使える時間じゃないんで!」
そう言われて、希美は辻江に連れられて
そのまま教室向かう。

その途中、ギャルのような恰好の生徒とすれ違う。

希美がちらちらとその生徒を見る。

「--あれは…なんです?南蛮の部族?」
希美が呟く。

「あ、、あれは…」
辻江は、孔明にギャルなんて教える必要はないかなぁ、と
勝手に判断して、
「あれは、、えーっと、まぁ、はい、いろいろ」と
誤魔化したー。

教室に到着する。
黒板消しを掃除する機械の音にびっくりする希美ー

クラスメイトが希美のほうを見るー

”いろいろ、不思議な世界ですね…”
希美に憑依している孔明は呟くー。

自分が元の世界に戻る方法はあるのだろうか。
仮に元の世界に戻ったところで、
自分は病気で死ぬー。
そしてー
辻江の言うことが本当であれば、
蜀は、滅びる運命だー。

元の時代に戻る意味はあるのだろうか。
この不思議な現代でーー
このまま希美としてーーー

一瞬、孔明はそんな風に思ったー

「--いいえ…私は」
希美は一人、そう呟くと首を振った。

・・・・・・・・・・・・・・

昼休みー

辻江に案内されて図書室に入る。

術系統の本や、誰も興味がなさそうな本を
読み漁る希美。

帰るための手掛かりが
どこかにないか、それを必死に探っていたー

その時だった。

「----」

背後から肩を叩かれるー。

一瞬、辻江かと思って振り返る希美。

しかし、辻江は、図書室の反対側で別の本を眺めていたー。

希美の肩を叩いたのは
生徒会副会長・麗子。

「---あ、、、ど、、どうも」
希美はどうこたえていいか分からず、
適当にそう答えた。

「--諸葛亮」
麗子がそう呟いた。

「---!?」
希美に諸葛亮孔明が憑依していることを
知っているのは辻江だけのはずだ。

希美は表情を歪めた。

そんな希美の反応を見て
麗子は笑った。

「--ふふふ…私は司馬懿だ」

麗子がそう耳打ちをしたー

司馬懿ー
孔明が三国時代で敵対していた国・魏の
軍師だった男ー。

希美は驚いて、麗子のほうを見つめたー。

③へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・

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次回が最終回デス~!
今日もありがとうございましたー!

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憑依<憑依孔明>

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