他人に憑依して、
男をその気にさせて
告白させてー
”外見しか見ていないんだね”と
真実を暴露する男がいたー
-------------------------
「-ーー真那子(まなこ)…好きだ…
結婚しよう」
男が、ロマンチックな夜景が見える
高級レストランで、真那子という女性に
プロポーズをしていた。
「----」
真那子は夜景を見つめながらほほ笑んで
涙を浮かべるー
感動的なプロポーズシーン
…には、ならなかった。
真那子は目に涙を浮かべながら
笑っているー
「あっはははははははは
あ~~~おかしい~」
大人しい性格の真那子が
突然普段とは違う様子で笑い出したことに
男は驚くー。
「え…」
驚く男に真那子は告げた。
「あんた、”外見”しか見ていないんだね?
くくく…」
真那子は挑発的な視線を男に送るー
「中身は”男”なのにー
くくく…あ~おかしい!
人間なんて、外見しか見てないものね???
はははははは」
笑う真那子ー
「ど…どういうことだ?」
男が唖然とするー
”その表情がたまらないー
これだから、憑依はやめられないー”
真那子の中には男がいるー
真那子は、男に憑依されていたー
通称”告らせ屋”の異名を持つ
憑依人にー。
彼は、女性に憑依して
相手をその気にさせてー
告白させたり、プロポーズさせたりして、
楽しんでいるー
その気になった男がー
”自分は確実に成功する”と思い込んでいる男が
振られて”絶望”するのを見て、楽しんでいるー
「---お、、お前・・・まさか、男なのか!?」
真那子にプロポーズした男が驚いて言う。
「---あははっ!そう来るか!」
真那子は笑いながら叫ぶ。
「--あの…お客様」
高級レストランの店員が、真那子たちに声をかける。
「ほかのお客様のご迷惑になりますので…」
”静かにしてほしい”と言うお願いだ。
「--あ~はいはい、
俺はもう出ていきますからねぇ~」
真那子が笑うー。
「--半年間ー
楽しかったよぉ♡」
真那子の言葉に、相手の男は、
困惑するー
そしてー
真那子が「うっ…」と軽くうめいて、
机に伏せるようにして倒れたー
「--え…!?
お、、おい、真那子!?真那子!?」
唖然とする周囲ー。
真那子は、目を覚ましたー
「--真那子!?
よかったぁ…」
「---…ど、、、どなたですか?」
真那子がおびえた様子で言うー
「--ま、、まな…こ?」
男は信じられないという様子で
真那子を見つめる。
真那子は周囲を見渡すー
「--こ、、ここは…」
自分のスマホに目をやりー
真那子は知らないうちに
”半年”が経過していたことを知るー
「ひっ…いやあああああああ!」
真那子は錯乱したーーー
・・・・・・・・・・・・・・・・・
人間は、愚かだー。
人間は、しょせん、外見しか見ていないー
たとえ、中身が男だったとしてもー
たとえ、言動が全て”偽り”であったとしてもー
相手は心を許し、そして惹かれー
最後には告白するー
この絆は本物であると信じてー
本物の絆など、そこには存在しないのにー
絆はーーー
脆いものだー。
そうー
脆く、そして、儚いーーー
男は、目を瞑るー。
”あっはははははははは…
わたしのかち~~~!”
女が笑っているー
「---ど…どういう…意味…?」
男が唖然とするー
”ゲームは、わたしのかち!”
女が、男を見下すようにして見つめるー
「---ゲーム…?」
男は震えているー
”--そう。あんたにどのぐらいで
告白してもらるのか。
それを友達と賭けてたの”
「--そ…そんなーーー」
”---あんたは外見しか見ていないー
いえ、あんただけじゃないか。
人間なんて みーんな、そう!”
「---……」
男は震えながら目に涙を浮かべるー
”--じゃあねー”
目を瞑っていた告らせ屋は目を開くー
彼が見ていた光景は、
彼が、振られた側の過去なのかー
それとも、彼が女に憑依して振った過去なのかー
それは、彼にしかわからないー
彼は、夜の街を見つめながら呟くー
「--人間は、愚かだー…
そうーーー
愚かだー…」
とー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
とある高校ー
男子高校生の楠山 武雄(くすやま たけお)は
幼馴染の女子生徒・岸辺 純奈(きしべ すみな)に
呼び出されていたー
純奈に告白される武雄ー
「--えっ…」
武雄は思わず驚いてしまう。
実は、武雄も、高校に入学したころから
純奈のことが気になっていたー。
その純奈に告白されるなんてー
「---……ほ、、本当に…?」
武雄が震えながら言うと、
純奈はほほ笑んだ。
「--幼馴染から、彼女にレベルアップしたいなって!」
純奈の言葉に
武雄は頷くー
純奈は可愛くて、ゲームが好きで、
ゲーム好きの武雄からしてみれば理想の存在だったー
「--じゃあ…レベルアップさせちゃおうかな?」
武雄が恥ずかしながら言うと、
純奈は嬉しそうに
「純奈は彼女にレベルアップ~♪」とほほ笑んだ。
・・・
”--人間は、外見しか見ていないー”
彼女は、廊下を歩きながら、ほほ笑むー
”人間は、愚かだー”
彼女は、憑依されているー
”告らせ屋”にー
鏡で自分の顔を見つめるー
「---ふふふふ…♡」
憑依されている彼女は、顔を赤らめながら、ほほ笑んだー
・・・・・・・・・・・・・・・
「----」
それから3週間ー
武雄は、少し不安を感じていたー
純奈が妙に積極的な気がするのだ。
まるでーーー
”人が変わった”かのようにー
「どうしたんだ?浮かない顔して」
友人の雄太郎(ゆうたろう)が声をかけてくる。
「いや…」
武雄が言うと、
雄太郎は笑った。
「あ、彼女と喧嘩でもしたのか~?」
とー。
「いや、喧嘩はしてないよ」
武雄が答える。
武雄は教室の隅っこで、
楽しそうに話をしている彼女の純奈と
その親友・藤野 菜々美(ふじの ななみ)の
様子を見つめるー
そうだー
心配する必要はない。
純奈は、純奈だー。
自分が告白されるなんて思ってもみなかったー。
それが、告白されるなんてー。
その現実に、まだびっくりしているのかもしれない。
「じゃあなんだよ~」
雄太郎の言葉に
武雄は、自分が感じている不安を伝えたー。
「そっかー…
でも、それは、あれじゃね?
純奈ちゃんもさ、今まで幼馴染の関係だったお前と
急に恋人同士になって、うまく距離感が
つかめないんじゃないかな?
だって、ほら、お前ら小学校時代からの付き合いだろ?
今までずっと幼馴染モードだったわけだからさ、
純奈ちゃんだって、戸惑ってるんだよ」
雄太郎の言葉には、説得力があったー。
「そっか、そうだよな」
武雄がうなずく。
「別に喧嘩したわけじゃないなら、
堂々としてろよ。
な?」
雄太郎に励まされて、
武雄は頷いた。
・・・・・・・・・・・・・・・
図書委員会として活動している武雄は、
放課後の図書室に足を運んでいたー。
図書当番なのだ。
「--あ、先輩」
先に図書室に到着していた1年生の浜崎 美乃梨(はまざき みのり)が
声をかけてくる。
大人しそうな、眼鏡をかけた可愛らしい子だ。
「あ、ごめんごめん。ちょっと
放課後の先生の言葉が伸びちゃってー」
そう言うと、美乃梨は「大丈夫ですよ」とほほ笑んだー。
美乃梨が、武雄のほうを見つめるー。
「---ん?」
武雄が不思議そうにしていると
美乃梨は顔を赤らめて「あ、いえ、ごめんなさい」と
目をそらしたー。
武雄は、図書当番の担当が、この美乃梨と被ることが多い。
そのため、美乃梨とはある程度親しかった。
最も、武雄は美乃梨のことを恋愛的な目で
見たことはあまりなかったが、
それなりに親しくはなっていたー
「ーーあ~先輩も、結構いろいろと読むんですね」
美乃梨が笑う。
「--そうそう!あの本なんかさ~」
「--あ!わたしもそれ読みます~!」
美乃梨が話に乗るー
なんとなく、盛り上がるふたり。
「あ、ごめんなさい、長々とお話してしまって」
図書当番の時間が終わりー
帰りの準備をする中、
美乃梨がそう呟いた。
「あぁ、いや、大丈夫だよ。
気にしないで」
武雄はそう言いながら図書室の片付けを終える。
「あ、図書室の鍵はわたしが職員室に
戻しておきますから」
美乃梨が笑いながら言う。
「ありがとう。じゃ」
武雄はそう言うと、一足先に図書室から
立ち去って行ったー
そんな武雄の後ろ姿を見ながら、
美乃梨は意味深な笑みを浮かべたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
男子をその気にさせて
告白させるー。
その気になれば、簡単なことだー
いくらでもテクニックはあるー
この可愛い身体があればー
「---うふふふ…♡」
身体を乗っ取って、
相手を誘惑して、
告白、あるいはプロポーズさせる…
そして、それをこっぴどく振ってやるー。
その気になった男がー
天国から地獄に落ちる瞬間ー
”自分の告白は必ず成功するだろう”と
も思い込んだ男が、それを打ち崩される瞬間ー
それは、何よりも美しいー。
「ククク…まぁ、今回は
あえて”夢”を少しの間、見せてやるけどな」
表情を歪めて、憑依された彼女はほほ笑むー。
現実は、ドラマとは違うー
現実は、ファンタジー世界とは違うー。
そんなに、思い通りに物語は進まないのだ。
現実と言う名の物語は、
何よりも冷たく、
そして、残酷だー。
足を組みながら、少女は悪い笑みを浮かべるー
ふと、”告らせ屋”は時々思うー。
自分は、何のためにこんなことをしているのだろうー、と。
憑依を使った裏の仕事を引き受けているとき以外は、
こうして、男をその気にさせて、そして、
振っているー。
どうしてー
どうして、こんなことを、自分は続けているのだろうー。
「---…まぁ、そんなことはどうでもいいか」
少女はそう言うと、
胸を触り始めるー
「さぁて…この女の身体をたっぷり可愛がってやるとするか」
自分の部屋でー
少女が自分の身体をもてあそび、
気持ちよさそうに、笑みを浮かべるー
少女の両親は、夢にも思わないだろうー
自分たちの娘が、男に憑依されて、
自分の部屋でエッチなことをさせられているなんてー
・・・・・・・・・・・・・・・・
「おはよ~!」
彼女の純奈が武雄に声をかける。
「あ、おはよう」
武雄が笑いながら返事をする。
「--どうしたの~?
なんか眠そう~」
純奈が武雄が眠そうな表情をしていることに気づくと、
武雄は「純奈だって眠そうじゃないか~」と苦笑いした。
純奈は笑う
「昨日、ゲームやってたらムキになっちゃって~」
とー。
「はは…あんまり夜更かししてると
可愛い見た目が台無しになっちゃうぞ~」
武雄がからかうようにして言うー。
「---あ、先輩!おはようございます」
そこに、図書委員で一緒の後輩・美乃梨がやってきた。
「---あ、浜崎さん」
武雄が言うと、美乃梨はほほ笑んだ。
「--」
美乃梨がちらっと、彼女の純奈のほうを見ると、
わざとらしく武雄と親しげに話し始めた。
純奈はにこにこしながら
黙ってその様子を見つめている。
「---あ、ごめんなさい」
図書委員の後輩・美乃梨がそう言うと、
純奈は「え、別に謝らなくても大丈夫だよ~」とほほ笑んだ。
にこにこしながら純奈と、美乃梨が
見つめ合っているー
「---ひっ!?」
武雄は、二人からなんとなく殺気が
放たれている気がして、思わずびびってしまったー
教室に到着する武雄。
親友の雄太郎が笑いながら言う。
「--お前、モテモテじゃん!」
とー
「ち、ちがっ!図書委員の浜崎さんは
ただの後輩だよ」
顔を赤くしながら言う武雄。
「どうだかな。」
雄太郎はそう言うと、武雄の
頭を掴みながら
「いいよなぁ、お前は
俺なんか、菜々美ちゃんに告白される夢を
毎晩毎晩見てるんだぜ~!」
と、嫉妬した様子で呟いた。
「--毎晩!?
菜々美ちゃんのこと好きすぎだろ」
武雄が苦笑いしながら、
そう言うと、雄太郎は「うるせー!」と騒いだー。
・・・・・
夜ー
「んえええええっ♡ えへへへえ♡」
少女の貯金を勝手に使って
買った大人のおもちゃを使いながら
気持ちよさそうに声を出しているーーー。
「--あぁぁ…あいつの顔…♡
この女の中身が男だってことも知らずにぃぃぃ♡」
身体を激しく震わせながら、彼女は笑うー
振る瞬間を
思い浮かべながらー
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
男子をその気にさせて、
振ることに快感を感じている憑依人のお話デス~!
次回もお楽しみに~!
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