<憑依>告らせ屋①~その気にさせる~

他人に憑依して、
男をその気にさせて
告白させてー

”外見しか見ていないんだね”と
真実を暴露する男がいたー

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「-ーー真那子(まなこ)…好きだ…
 結婚しよう」

男が、ロマンチックな夜景が見える
高級レストランで、真那子という女性に
プロポーズをしていた。

「----」
真那子は夜景を見つめながらほほ笑んで
涙を浮かべるー

感動的なプロポーズシーン

…には、ならなかった。

真那子は目に涙を浮かべながら
笑っているー

「あっはははははははは
 あ~~~おかしい~」

大人しい性格の真那子が
突然普段とは違う様子で笑い出したことに
男は驚くー。

「え…」
驚く男に真那子は告げた。

「あんた、”外見”しか見ていないんだね?
 くくく…」

真那子は挑発的な視線を男に送るー

「中身は”男”なのにー
 くくく…あ~おかしい!
 人間なんて、外見しか見てないものね???

 はははははは」

笑う真那子ー

「ど…どういうことだ?」
男が唖然とするー

”その表情がたまらないー
 これだから、憑依はやめられないー”

真那子の中には男がいるー

真那子は、男に憑依されていたー
通称”告らせ屋”の異名を持つ
憑依人にー。

彼は、女性に憑依して
相手をその気にさせてー
告白させたり、プロポーズさせたりして、
楽しんでいるー

その気になった男がー
”自分は確実に成功する”と思い込んでいる男が
振られて”絶望”するのを見て、楽しんでいるー

「---お、、お前・・・まさか、男なのか!?」
真那子にプロポーズした男が驚いて言う。

「---あははっ!そう来るか!」
真那子は笑いながら叫ぶ。

「--あの…お客様」
高級レストランの店員が、真那子たちに声をかける。

「ほかのお客様のご迷惑になりますので…」

”静かにしてほしい”と言うお願いだ。

「--あ~はいはい、
 俺はもう出ていきますからねぇ~」
真那子が笑うー。

「--半年間ー
 楽しかったよぉ♡」
真那子の言葉に、相手の男は、
困惑するー

そしてー
真那子が「うっ…」と軽くうめいて、
机に伏せるようにして倒れたー

「--え…!?
 お、、おい、真那子!?真那子!?」

唖然とする周囲ー。

真那子は、目を覚ましたー

「--真那子!?
 よかったぁ…」

「---…ど、、、どなたですか?」
真那子がおびえた様子で言うー

「--ま、、まな…こ?」
男は信じられないという様子で
真那子を見つめる。

真那子は周囲を見渡すー

「--こ、、ここは…」

自分のスマホに目をやりー
真那子は知らないうちに
”半年”が経過していたことを知るー

「ひっ…いやあああああああ!」
真那子は錯乱したーーー

・・・・・・・・・・・・・・・・・

人間は、愚かだー。

人間は、しょせん、外見しか見ていないー

たとえ、中身が男だったとしてもー
たとえ、言動が全て”偽り”であったとしてもー
相手は心を許し、そして惹かれー
最後には告白するー

この絆は本物であると信じてー

本物の絆など、そこには存在しないのにー

絆はーーー
脆いものだー。

そうー
脆く、そして、儚いーーー

男は、目を瞑るー。

”あっはははははははは…
 わたしのかち~~~!”

女が笑っているー

「---ど…どういう…意味…?」

男が唖然とするー

”ゲームは、わたしのかち!”

女が、男を見下すようにして見つめるー

「---ゲーム…?」
男は震えているー

”--そう。あんたにどのぐらいで
 告白してもらるのか。
 それを友達と賭けてたの”

「--そ…そんなーーー」

”---あんたは外見しか見ていないー
 いえ、あんただけじゃないか。
 人間なんて みーんな、そう!”

「---……」
男は震えながら目に涙を浮かべるー

”--じゃあねー”

目を瞑っていた告らせ屋は目を開くー

彼が見ていた光景は、
彼が、振られた側の過去なのかー
それとも、彼が女に憑依して振った過去なのかー

それは、彼にしかわからないー

彼は、夜の街を見つめながら呟くー

「--人間は、愚かだー…
 そうーーー
 愚かだー…」

とー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

とある高校ー

男子高校生の楠山 武雄(くすやま たけお)は
幼馴染の女子生徒・岸辺 純奈(きしべ すみな)に
呼び出されていたー

純奈に告白される武雄ー

「--えっ…」
武雄は思わず驚いてしまう。

実は、武雄も、高校に入学したころから
純奈のことが気になっていたー。

その純奈に告白されるなんてー

「---……ほ、、本当に…?」
武雄が震えながら言うと、
純奈はほほ笑んだ。

「--幼馴染から、彼女にレベルアップしたいなって!」
純奈の言葉に
武雄は頷くー

純奈は可愛くて、ゲームが好きで、
ゲーム好きの武雄からしてみれば理想の存在だったー

「--じゃあ…レベルアップさせちゃおうかな?」
武雄が恥ずかしながら言うと、
純奈は嬉しそうに
「純奈は彼女にレベルアップ~♪」とほほ笑んだ。

・・・

”--人間は、外見しか見ていないー”

彼女は、廊下を歩きながら、ほほ笑むー

”人間は、愚かだー”

彼女は、憑依されているー
”告らせ屋”にー

鏡で自分の顔を見つめるー

「---ふふふふ…♡」

憑依されている彼女は、顔を赤らめながら、ほほ笑んだー

・・・・・・・・・・・・・・・

「----」

それから3週間ー

武雄は、少し不安を感じていたー

純奈が妙に積極的な気がするのだ。

まるでーーー
”人が変わった”かのようにー

「どうしたんだ?浮かない顔して」
友人の雄太郎(ゆうたろう)が声をかけてくる。

「いや…」
武雄が言うと、
雄太郎は笑った。

「あ、彼女と喧嘩でもしたのか~?」

とー。

「いや、喧嘩はしてないよ」
武雄が答える。

武雄は教室の隅っこで、
楽しそうに話をしている彼女の純奈と
その親友・藤野 菜々美(ふじの ななみ)の
様子を見つめるー

そうだー
心配する必要はない。
純奈は、純奈だー。

自分が告白されるなんて思ってもみなかったー。
それが、告白されるなんてー。
その現実に、まだびっくりしているのかもしれない。

「じゃあなんだよ~」
雄太郎の言葉に
武雄は、自分が感じている不安を伝えたー。

「そっかー…
 でも、それは、あれじゃね?
 純奈ちゃんもさ、今まで幼馴染の関係だったお前と
 急に恋人同士になって、うまく距離感が
 つかめないんじゃないかな?

 だって、ほら、お前ら小学校時代からの付き合いだろ?
 今までずっと幼馴染モードだったわけだからさ、
 純奈ちゃんだって、戸惑ってるんだよ」

雄太郎の言葉には、説得力があったー。

「そっか、そうだよな」
武雄がうなずく。

「別に喧嘩したわけじゃないなら、
 堂々としてろよ。
 な?」

雄太郎に励まされて、
武雄は頷いた。

・・・・・・・・・・・・・・・

図書委員会として活動している武雄は、
放課後の図書室に足を運んでいたー。

図書当番なのだ。

「--あ、先輩」
先に図書室に到着していた1年生の浜崎 美乃梨(はまざき みのり)が
声をかけてくる。
大人しそうな、眼鏡をかけた可愛らしい子だ。

「あ、ごめんごめん。ちょっと
 放課後の先生の言葉が伸びちゃってー」

そう言うと、美乃梨は「大丈夫ですよ」とほほ笑んだー。

美乃梨が、武雄のほうを見つめるー。

「---ん?」
武雄が不思議そうにしていると
美乃梨は顔を赤らめて「あ、いえ、ごめんなさい」と
目をそらしたー。

武雄は、図書当番の担当が、この美乃梨と被ることが多い。
そのため、美乃梨とはある程度親しかった。

最も、武雄は美乃梨のことを恋愛的な目で
見たことはあまりなかったが、
それなりに親しくはなっていたー

「ーーあ~先輩も、結構いろいろと読むんですね」
美乃梨が笑う。

「--そうそう!あの本なんかさ~」

「--あ!わたしもそれ読みます~!」

美乃梨が話に乗るー
なんとなく、盛り上がるふたり。

「あ、ごめんなさい、長々とお話してしまって」

図書当番の時間が終わりー
帰りの準備をする中、
美乃梨がそう呟いた。

「あぁ、いや、大丈夫だよ。
 気にしないで」

武雄はそう言いながら図書室の片付けを終える。

「あ、図書室の鍵はわたしが職員室に
 戻しておきますから」
美乃梨が笑いながら言う。

「ありがとう。じゃ」
武雄はそう言うと、一足先に図書室から
立ち去って行ったー

そんな武雄の後ろ姿を見ながら、
美乃梨は意味深な笑みを浮かべたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

男子をその気にさせて
告白させるー。

その気になれば、簡単なことだー

いくらでもテクニックはあるー
この可愛い身体があればー

「---うふふふ…♡」

身体を乗っ取って、
相手を誘惑して、
告白、あるいはプロポーズさせる…
そして、それをこっぴどく振ってやるー。

その気になった男がー
天国から地獄に落ちる瞬間ー
”自分の告白は必ず成功するだろう”と
も思い込んだ男が、それを打ち崩される瞬間ー

それは、何よりも美しいー。

「ククク…まぁ、今回は
 あえて”夢”を少しの間、見せてやるけどな」
表情を歪めて、憑依された彼女はほほ笑むー。

現実は、ドラマとは違うー
現実は、ファンタジー世界とは違うー。

そんなに、思い通りに物語は進まないのだ。

現実と言う名の物語は、
何よりも冷たく、
そして、残酷だー。

足を組みながら、少女は悪い笑みを浮かべるー

ふと、”告らせ屋”は時々思うー。
自分は、何のためにこんなことをしているのだろうー、と。

憑依を使った裏の仕事を引き受けているとき以外は、
こうして、男をその気にさせて、そして、
振っているー。

どうしてー
どうして、こんなことを、自分は続けているのだろうー。

「---…まぁ、そんなことはどうでもいいか」
少女はそう言うと、
胸を触り始めるー

「さぁて…この女の身体をたっぷり可愛がってやるとするか」

自分の部屋でー
少女が自分の身体をもてあそび、
気持ちよさそうに、笑みを浮かべるー

少女の両親は、夢にも思わないだろうー
自分たちの娘が、男に憑依されて、
自分の部屋でエッチなことをさせられているなんてー

・・・・・・・・・・・・・・・・

「おはよ~!」
彼女の純奈が武雄に声をかける。

「あ、おはよう」
武雄が笑いながら返事をする。

「--どうしたの~?
 なんか眠そう~」
純奈が武雄が眠そうな表情をしていることに気づくと、
武雄は「純奈だって眠そうじゃないか~」と苦笑いした。

純奈は笑う

「昨日、ゲームやってたらムキになっちゃって~」

とー。

「はは…あんまり夜更かししてると
 可愛い見た目が台無しになっちゃうぞ~」
武雄がからかうようにして言うー。

「---あ、先輩!おはようございます」
そこに、図書委員で一緒の後輩・美乃梨がやってきた。

「---あ、浜崎さん」
武雄が言うと、美乃梨はほほ笑んだ。

「--」
美乃梨がちらっと、彼女の純奈のほうを見ると、
わざとらしく武雄と親しげに話し始めた。

純奈はにこにこしながら
黙ってその様子を見つめている。

「---あ、ごめんなさい」
図書委員の後輩・美乃梨がそう言うと、
純奈は「え、別に謝らなくても大丈夫だよ~」とほほ笑んだ。

にこにこしながら純奈と、美乃梨が
見つめ合っているー

「---ひっ!?」
武雄は、二人からなんとなく殺気が
放たれている気がして、思わずびびってしまったー

教室に到着する武雄。
親友の雄太郎が笑いながら言う。

「--お前、モテモテじゃん!」

とー

「ち、ちがっ!図書委員の浜崎さんは
 ただの後輩だよ」

顔を赤くしながら言う武雄。

「どうだかな。」

雄太郎はそう言うと、武雄の
頭を掴みながら

「いいよなぁ、お前は
 俺なんか、菜々美ちゃんに告白される夢を
 毎晩毎晩見てるんだぜ~!」

と、嫉妬した様子で呟いた。

「--毎晩!?
 菜々美ちゃんのこと好きすぎだろ」
武雄が苦笑いしながら、
そう言うと、雄太郎は「うるせー!」と騒いだー。

・・・・・

夜ー

「んえええええっ♡ えへへへえ♡」
少女の貯金を勝手に使って
買った大人のおもちゃを使いながら
気持ちよさそうに声を出しているーーー。

「--あぁぁ…あいつの顔…♡
 この女の中身が男だってことも知らずにぃぃぃ♡」

身体を激しく震わせながら、彼女は笑うー

振る瞬間を
思い浮かべながらー

②へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・

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男子をその気にさせて、
振ることに快感を感じている憑依人のお話デス~!

次回もお楽しみに~!

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憑依<告らせ屋>

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