<憑依>告らせ屋③~告白~(完)

告らせ屋ー

少女に潜むその男が、
ついに本性を現すときが来たー。

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夕日差し込む図書室に、美乃梨の笑い声が響くー。

普段おとなしい感じの美乃梨の突然の笑いに
武雄が驚くー。

「--え…お、、おい?」

放課後の図書室ー
美乃梨は武雄に告白したー。

そして、武雄は美乃梨を振った。
武雄には、幼馴染であり、彼女の純奈がいる。
だからー、
美乃梨と付き合うわけにはいかなかったし、
純奈を悲しませるわけにはいかなかったー

笑い終えると、美乃梨は表情を歪めながら武雄のほうを見たー

「あ~~~あ…振られちゃいました」

笑い終えて、どことなくすっきりした表情の美乃梨。

「---こうなるってわかってたんですけどね!
 彼女さんがいるのも知ってましたし、
 この前、彼女さんに怒られちゃいましたし…。

 その時は、わたし、ついつい口答えしちゃいましたけど、
 本当は分かってたんです。
 先輩に振り向いてはもらえないだろうなぁ…って。

 でも、わたし、実はこう見えて負けず嫌いなんで、
 負けは負けでも、勝負して負けようって」

美乃梨は、吹っ切れたような表情でそう言うと、
武雄のほうを見た。

「--あ、ごめんなさい。
 なんだか、いろいろな意味で気持ちが
 すっきりしてー。

 でも、なんか、こう、すっきりしました。」

美乃梨はそう言うと、
優しく微笑んだー。

「--これからは、一人の後輩としてー
 よろしくお願いします」

そこまで言うと、
美乃梨は思い出したかのように付け加えた。

「あ!彼女さんにも、今度謝りにいかなくちゃ、
 ですね!
 
 あ、あと、振られたあとにもしつこく迫ったり
 略奪しようとしたりなんてしないので
 安心してください!
 
 ダメなものはダメ、ちゃんとわかってますから!」

美乃梨の言葉に、
武雄は、「ごめんな」と今一度静かに呟くと、
「今日は、俺が最後の戸締りしておくよ」
と、美乃梨に優しく告げたー。

・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

「あぁ~また、例の夢を見ちゃったぜ~!
 もう、これは正夢にするしかねぇな~!」

友人の雄太郎が騒いでいる。

今日は雨だー
朝から雨が降り続いている。

「夢…?また菜々美ちゃんかよ」
武雄が失笑する。

「おう!もちろんだぜ!」
雄太郎は、もはや隠そうともしていなかった。

「お前の頭はお花畑…
 ってか、菜々美畑だな」

武雄がそう冗談を言っていると、
彼女の純奈が近づいてきた。

「武雄…放課後、話せる?
 今日は図書委員、ないでしょ?」

純奈の言葉に、武雄は「あ、うん、いいよ」と答えた。

純奈の手には、打撲のようなものが
少し前からあるー。

本人は、大丈夫大丈夫、としか言わないが、
何かあったのかもしれないー

・・・・・・・・・・・

放課後ー

「-----純奈…」
武雄が、純奈に呼び出された場所にやってきたー

雨が強くなり、
廊下の窓から雨音が聞こえるー。

「---……さっき、あの子に会ったよ」
手の打撲を見つめながら、純奈がほほ笑むー。

「-……振ったんだってね」
純奈が言う。

あの子、とは図書委員の後輩、美乃梨のことだろう。

「---まぁ、ほら、俺には純奈がいるし、
 当たり前だろ?」

武雄が言うとー
純奈が近づいてきたー

まるで、誘惑するかのような仕草ー
武雄には、そんな風に思えたー

純奈の様子が、最近はどことなくおかしいー。

何か、違和感を感じるー

武雄のほうをじーっと見つめると
純奈が突然ーーー

頭を下げたー

「ごめん!!!!」

「---え?」
武雄が唖然とするーー

「わたし、最近変だったよね?
 たぶん武雄にも心配かけちゃったよね??」

純奈はそう言うと、顔を上げて
恥ずかしそうに微笑む。

「--そ、、その…、なんていうの??
 あの…、うん…嫉妬?
 武雄が、図書委員の後輩の子とばっか
 仲良くしてるように見えて…

 ほら、、わたし、彼氏とか初めてで
 距離感とかあんま分からなくて
 なんか、挙動不審になっちゃったっていうか…

 嫉妬に狂ってたっていうか…」

純奈はそう呟いた。

「--ーーー」
武雄は思わず笑ったー

「なんだ、、そういうことだったのかー」
武雄は、どことなく安心していたー

純奈の様子がおかしいー
武雄はそのことをとても心配していたー

だがー、
純奈の様子がおかしいー
人が変わったように感じるのは、
単なる嫉妬だったようだー

「---嫉妬とかするの初めてで、
 どうしたらいいか分からなくてー」

雨音が響き渡る廊下で、
武雄は静かにほほ笑むー。

「大丈夫だってー
 俺、浮気とか絶対しないしー
 俺には純奈しかいなしいー

 …って、恥ずかしいこと言わせないでくれよ!」

武雄が顔を赤くしながら言うと、
純奈は久しぶりに心から笑ったー。

「--ありがとう。
 せっかく彼女にレベルアップしたのに
 嫉妬のせいで、幼馴染にレベルダウン
 しちゃうところだったよ~」

苦笑いする純奈。

「あ、そうそう、美乃梨ちゃんとも和解したから安心してね!」

そう付け加える純奈。

武雄は、気になっていた純奈の打撲のことを聞くー

「--あ?これ?」
純奈は顔を赤らめた。

「--その…美乃梨ちゃんとばっかり
 仲良くしているように見えて、
 家で壁をドーン!ってしたら、壁さんのほうが
 私の手より強くて」

純奈は、嫉妬で自分の部屋の壁に
パンチをして、手が返り討ちにあったのだと、恥ずかしそうに笑うー

「なんだ…、そんな嫉妬するなら
 もっと早く言ってくれればよかったのに」
武雄が言うと、
純奈は「今度からそうするね~!」と笑顔で答えたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「あっ♡ あっ♡ あっ♡ あぁぁ♡」

身体から潮を吹きながら
大声で喘ぐ少女ー

告らせ屋に乗っ取られている彼女はーー
乱れ切った格好で、
顔を真っ赤にして、
気持ちよさそうに、あおむけに倒れたー。

「---この身体も、そろそろお別れだからなぁ…」
少女が呟くー

そろそろ、エンディングの時がやってくるー

だから、今日は最後のエッチかもしれないー
たっぷり、たっぷり、この身体を愛でてやるー

「はぁ…♡ はぁ…♡」
息切れしながら立ち上がる少女。

「まだまだ…第2ラウンドも行っちゃおうかなぁ…へへへへへ」

下心丸出しの表情を浮かべながら
少女は笑みを浮かべたー

・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

「--勝負のときは来た」
友人・雄太郎がそう呟いたー

「---あ?」
武雄が首を傾げる。

「--俺は今日の放課後、菜々美ちゃんに告白する!」
堂々と宣言する雄太郎ー。

「--ま~だ、言ってるのかよ。
 夢の通りうまく行くとは思うなよ」
武雄があきれた様子で言うと、
「むっふっふ」と雄太郎が笑う。

「お前は知らないだろうけどなぁ、実は最近
 生徒会の活動で、俺、菜々美ちゃんと結構話すんだぜぇ!」
笑う雄太郎。

そういや、一応雄太郎は生徒会だったー

その様子を教室の反対側から
純奈と親友の菜々美が見つめていたー

「丸聞こえ…」
純奈が苦笑いするー

菜々美が、笑みを浮かべたー

”さぁ…早く告白して来い…”

菜々美はゾクゾクしながら笑うー
”男子をその気にさせて、振る瞬間が、楽しみだー”

菜々美はペロリと自分の唇を舐めたー

・・・・・・・・・・・・・・・

放課後ー

生徒会室に呼び出された菜々美は、
生徒会室に向かうー

その途中、女子トイレに立ち寄り、
菜々美は鏡を見つめたー

「--いい身体だったよ…くくくくくく」

告らせ屋が憑依していたのは、
図書委員の後輩、美乃梨でも
武雄の彼女の純奈でもなかったー。

純奈の親友の菜々美ー。
彼女に憑依していたー。

「--お待たせ」
菜々美が、生徒会室に入るー

既に、雄太郎がそこには待っていたー

雄太郎は確信していたー
菜々美への告白は成功するとー。

生徒会活動を始めてから
菜々美と親しくなったー
菜々美に彼女の有無を聞かれたこともあるし、
彼氏いないアピールをされたこともあるー

そのせいか、最近は
菜々美に告白する夢ばっかり見ていたー

放課後に生徒会室に呼ばれた時も
とても嬉しそうにしていた菜々美ー

雄太郎は勝利を確信するー。

自分は告白に成功することを信じて疑わない雄太郎は、
菜々美に告白した。

「俺、藤野さんのことが好きなんだ」

雄太郎はドキドキしながら言う。
菜々美はにっこりとほほ笑んだー。

そしてーーー
菜々美は手を差し出した。

雄太郎は返事をYesだと勘違いしたー。

差し出された菜々美の手を握る雄太郎。

”よろしくお願いします”という返事であると
雄太郎は勝手に勘違いしたー。

しかしー

「---ば~~~~~~か!!!!」
菜々美は突然声を荒げると、雄太郎の手を引っ張り、
そのまま教室の端に突き飛ばした。

「--!?え、、、えっ!?」

唖然とする雄太郎。

「あっはははははは♡」
菜々美が普段の様子とは全然違う態度で
笑い出す。

「--お前、遊ばれていただけなんだよ!
 くくく、
 おれの、いや、わたしの夢を毎日見ていた??
 はははっ!単純でいいねぇ!
 お前ほどその気にさせるのが簡単なやつ
 いなかったよ!
 あっははははは♡」

普段は穏やかな感じでしゃべる菜々美が
別人のような喋り方をしている。

「え…え…?」
倒れたまま雄太郎は困った表情を浮かべる。

「中身は”男”なのにー
 くくく…あぁぁ…この瞬間、最高!
 どうせみんな、外見しか見てないものね???

 はははははは」

菜々美が髪の毛をぐしゃぐしゃにしながら笑う。

「---お、、男!?」
雄太郎が声を荒げる。

「---あぁぁぁ…いい顔だぁ…!
 絶対告白に成功すると思って振られた男の顔ーーー
 あぁ…いいよいいよいいよぉ!」

菜々美がゾクゾクしながら叫ぶー。

「---な、、な、、なんなんだ…!?
 ふ、、藤野さん!?」

雄太郎は何が起こってるのか理解できず
混乱するー

振られたー?
いや、それだけならまだしもー?

中身が男ー?
何を言っている?

それに、菜々美のこの態度は?

菜々美は雄太郎のほうを指さした。

「楽しかったぜェ!恋愛ごっこ!」
菜々美がゲラゲラ笑うと、
さらに一言つけ加えた。

「あ、そうそう!この女、お前のこと
 何とも思ってないからな!
 はははっ!残念でした~~~!!!

 あばよっ!」

菜々美はそう言うと、うっ…と声をあげて
そのまま倒れてしまった。

「え…!?え…!?ええええ?」

ほどなくして、菜々美が目を覚ますー

「--あ、、、、あれ…?」
菜々美は1か月ちょっと憑依され続けていたー

ぼーっと周囲を見渡す。

やがてー
1か月経過していることに菜々美が気付いて
悲鳴を上げー
同じ空き教室に二人きりの雄太郎が先生に
疑われる羽目になってしまったー

・・・・・・・・・・・・・・・・

”--そう。あんたにどのぐらいで
 告白してもらるのか。
 それを友達と賭けてたの”

かつてー
男が言われた言葉を思い出すー。

相手をその気にさせて、振るー。

何のためにこんなことを続けているのかー
それは、彼自身にも分からない。

告らせ屋、という異名で呼ばれるようになり
数々の女性に憑依し、相手をその気にさせて
そして、絶望に突き落とすー

それを繰り返したその先に、
何があるのかー。

「----…」
告らせ屋は次のおもちゃを見つけて笑みを浮かべるー。

人間は、愚かだー。

彼は思うー
自分も、含めてー

自分は、振られたときのショックが
いまだに忘れられないのかもしれないー

復讐かー?
それとも、弱い自分の心をごまかすために
憑依を続けているのかー。

「--…」
男は考えるのをやめたー

せっかく手に入れたこの力。

余計なことを考えずに、
憑依を楽しもう。

告らせ屋は、次のターゲットの女性に憑依するー

「ぁっ!?」

女性が声を上げて
にやりと笑みを浮かべるー。

また、新たな告らせゲームが始まったのだったー

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

皆様も騙されないように
気を付けてくださいネ~笑

お読み下さりありがとうございましたー!

憑依<告らせ屋>
憑依空間NEO

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