告らせ屋ー
少女に潜むその男が、
ついに本性を現すときが来たー。
--------------------
夕日差し込む図書室に、美乃梨の笑い声が響くー。
普段おとなしい感じの美乃梨の突然の笑いに
武雄が驚くー。
「--え…お、、おい?」
放課後の図書室ー
美乃梨は武雄に告白したー。
そして、武雄は美乃梨を振った。
武雄には、幼馴染であり、彼女の純奈がいる。
だからー、
美乃梨と付き合うわけにはいかなかったし、
純奈を悲しませるわけにはいかなかったー
笑い終えると、美乃梨は表情を歪めながら武雄のほうを見たー
「あ~~~あ…振られちゃいました」
笑い終えて、どことなくすっきりした表情の美乃梨。
「---こうなるってわかってたんですけどね!
彼女さんがいるのも知ってましたし、
この前、彼女さんに怒られちゃいましたし…。
その時は、わたし、ついつい口答えしちゃいましたけど、
本当は分かってたんです。
先輩に振り向いてはもらえないだろうなぁ…って。
でも、わたし、実はこう見えて負けず嫌いなんで、
負けは負けでも、勝負して負けようって」
美乃梨は、吹っ切れたような表情でそう言うと、
武雄のほうを見た。
「--あ、ごめんなさい。
なんだか、いろいろな意味で気持ちが
すっきりしてー。
でも、なんか、こう、すっきりしました。」
美乃梨はそう言うと、
優しく微笑んだー。
「--これからは、一人の後輩としてー
よろしくお願いします」
そこまで言うと、
美乃梨は思い出したかのように付け加えた。
「あ!彼女さんにも、今度謝りにいかなくちゃ、
ですね!
あ、あと、振られたあとにもしつこく迫ったり
略奪しようとしたりなんてしないので
安心してください!
ダメなものはダメ、ちゃんとわかってますから!」
美乃梨の言葉に、
武雄は、「ごめんな」と今一度静かに呟くと、
「今日は、俺が最後の戸締りしておくよ」
と、美乃梨に優しく告げたー。
・・・・・・・・・・・・・
翌日ー
「あぁ~また、例の夢を見ちゃったぜ~!
もう、これは正夢にするしかねぇな~!」
友人の雄太郎が騒いでいる。
今日は雨だー
朝から雨が降り続いている。
「夢…?また菜々美ちゃんかよ」
武雄が失笑する。
「おう!もちろんだぜ!」
雄太郎は、もはや隠そうともしていなかった。
「お前の頭はお花畑…
ってか、菜々美畑だな」
武雄がそう冗談を言っていると、
彼女の純奈が近づいてきた。
「武雄…放課後、話せる?
今日は図書委員、ないでしょ?」
純奈の言葉に、武雄は「あ、うん、いいよ」と答えた。
純奈の手には、打撲のようなものが
少し前からあるー。
本人は、大丈夫大丈夫、としか言わないが、
何かあったのかもしれないー
・・・・・・・・・・・
放課後ー
「-----純奈…」
武雄が、純奈に呼び出された場所にやってきたー
雨が強くなり、
廊下の窓から雨音が聞こえるー。
「---……さっき、あの子に会ったよ」
手の打撲を見つめながら、純奈がほほ笑むー。
「-……振ったんだってね」
純奈が言う。
あの子、とは図書委員の後輩、美乃梨のことだろう。
「---まぁ、ほら、俺には純奈がいるし、
当たり前だろ?」
武雄が言うとー
純奈が近づいてきたー
まるで、誘惑するかのような仕草ー
武雄には、そんな風に思えたー
純奈の様子が、最近はどことなくおかしいー。
何か、違和感を感じるー
武雄のほうをじーっと見つめると
純奈が突然ーーー
頭を下げたー
「ごめん!!!!」
「---え?」
武雄が唖然とするーー
「わたし、最近変だったよね?
たぶん武雄にも心配かけちゃったよね??」
純奈はそう言うと、顔を上げて
恥ずかしそうに微笑む。
「--そ、、その…、なんていうの??
あの…、うん…嫉妬?
武雄が、図書委員の後輩の子とばっか
仲良くしてるように見えて…
ほら、、わたし、彼氏とか初めてで
距離感とかあんま分からなくて
なんか、挙動不審になっちゃったっていうか…
嫉妬に狂ってたっていうか…」
純奈はそう呟いた。
「--ーーー」
武雄は思わず笑ったー
「なんだ、、そういうことだったのかー」
武雄は、どことなく安心していたー
純奈の様子がおかしいー
武雄はそのことをとても心配していたー
だがー、
純奈の様子がおかしいー
人が変わったように感じるのは、
単なる嫉妬だったようだー
「---嫉妬とかするの初めてで、
どうしたらいいか分からなくてー」
雨音が響き渡る廊下で、
武雄は静かにほほ笑むー。
「大丈夫だってー
俺、浮気とか絶対しないしー
俺には純奈しかいなしいー
…って、恥ずかしいこと言わせないでくれよ!」
武雄が顔を赤くしながら言うと、
純奈は久しぶりに心から笑ったー。
「--ありがとう。
せっかく彼女にレベルアップしたのに
嫉妬のせいで、幼馴染にレベルダウン
しちゃうところだったよ~」
苦笑いする純奈。
「あ、そうそう、美乃梨ちゃんとも和解したから安心してね!」
そう付け加える純奈。
武雄は、気になっていた純奈の打撲のことを聞くー
「--あ?これ?」
純奈は顔を赤らめた。
「--その…美乃梨ちゃんとばっかり
仲良くしているように見えて、
家で壁をドーン!ってしたら、壁さんのほうが
私の手より強くて」
純奈は、嫉妬で自分の部屋の壁に
パンチをして、手が返り討ちにあったのだと、恥ずかしそうに笑うー
「なんだ…、そんな嫉妬するなら
もっと早く言ってくれればよかったのに」
武雄が言うと、
純奈は「今度からそうするね~!」と笑顔で答えたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「あっ♡ あっ♡ あっ♡ あぁぁ♡」
身体から潮を吹きながら
大声で喘ぐ少女ー
告らせ屋に乗っ取られている彼女はーー
乱れ切った格好で、
顔を真っ赤にして、
気持ちよさそうに、あおむけに倒れたー。
「---この身体も、そろそろお別れだからなぁ…」
少女が呟くー
そろそろ、エンディングの時がやってくるー
だから、今日は最後のエッチかもしれないー
たっぷり、たっぷり、この身体を愛でてやるー
「はぁ…♡ はぁ…♡」
息切れしながら立ち上がる少女。
「まだまだ…第2ラウンドも行っちゃおうかなぁ…へへへへへ」
下心丸出しの表情を浮かべながら
少女は笑みを浮かべたー
・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー
「--勝負のときは来た」
友人・雄太郎がそう呟いたー
「---あ?」
武雄が首を傾げる。
「--俺は今日の放課後、菜々美ちゃんに告白する!」
堂々と宣言する雄太郎ー。
「--ま~だ、言ってるのかよ。
夢の通りうまく行くとは思うなよ」
武雄があきれた様子で言うと、
「むっふっふ」と雄太郎が笑う。
「お前は知らないだろうけどなぁ、実は最近
生徒会の活動で、俺、菜々美ちゃんと結構話すんだぜぇ!」
笑う雄太郎。
そういや、一応雄太郎は生徒会だったー
その様子を教室の反対側から
純奈と親友の菜々美が見つめていたー
「丸聞こえ…」
純奈が苦笑いするー
菜々美が、笑みを浮かべたー
”さぁ…早く告白して来い…”
菜々美はゾクゾクしながら笑うー
”男子をその気にさせて、振る瞬間が、楽しみだー”
菜々美はペロリと自分の唇を舐めたー
・・・・・・・・・・・・・・・
放課後ー
生徒会室に呼び出された菜々美は、
生徒会室に向かうー
その途中、女子トイレに立ち寄り、
菜々美は鏡を見つめたー
「--いい身体だったよ…くくくくくく」
告らせ屋が憑依していたのは、
図書委員の後輩、美乃梨でも
武雄の彼女の純奈でもなかったー。
純奈の親友の菜々美ー。
彼女に憑依していたー。
「--お待たせ」
菜々美が、生徒会室に入るー
既に、雄太郎がそこには待っていたー
雄太郎は確信していたー
菜々美への告白は成功するとー。
生徒会活動を始めてから
菜々美と親しくなったー
菜々美に彼女の有無を聞かれたこともあるし、
彼氏いないアピールをされたこともあるー
そのせいか、最近は
菜々美に告白する夢ばっかり見ていたー
放課後に生徒会室に呼ばれた時も
とても嬉しそうにしていた菜々美ー
雄太郎は勝利を確信するー。
自分は告白に成功することを信じて疑わない雄太郎は、
菜々美に告白した。
「俺、藤野さんのことが好きなんだ」
雄太郎はドキドキしながら言う。
菜々美はにっこりとほほ笑んだー。
そしてーーー
菜々美は手を差し出した。
雄太郎は返事をYesだと勘違いしたー。
差し出された菜々美の手を握る雄太郎。
”よろしくお願いします”という返事であると
雄太郎は勝手に勘違いしたー。
しかしー
「---ば~~~~~~か!!!!」
菜々美は突然声を荒げると、雄太郎の手を引っ張り、
そのまま教室の端に突き飛ばした。
「--!?え、、、えっ!?」
唖然とする雄太郎。
「あっはははははは♡」
菜々美が普段の様子とは全然違う態度で
笑い出す。
「--お前、遊ばれていただけなんだよ!
くくく、
おれの、いや、わたしの夢を毎日見ていた??
はははっ!単純でいいねぇ!
お前ほどその気にさせるのが簡単なやつ
いなかったよ!
あっははははは♡」
普段は穏やかな感じでしゃべる菜々美が
別人のような喋り方をしている。
「え…え…?」
倒れたまま雄太郎は困った表情を浮かべる。
「中身は”男”なのにー
くくく…あぁぁ…この瞬間、最高!
どうせみんな、外見しか見てないものね???
はははははは」
菜々美が髪の毛をぐしゃぐしゃにしながら笑う。
「---お、、男!?」
雄太郎が声を荒げる。
「---あぁぁぁ…いい顔だぁ…!
絶対告白に成功すると思って振られた男の顔ーーー
あぁ…いいよいいよいいよぉ!」
菜々美がゾクゾクしながら叫ぶー。
「---な、、な、、なんなんだ…!?
ふ、、藤野さん!?」
雄太郎は何が起こってるのか理解できず
混乱するー
振られたー?
いや、それだけならまだしもー?
中身が男ー?
何を言っている?
それに、菜々美のこの態度は?
菜々美は雄太郎のほうを指さした。
「楽しかったぜェ!恋愛ごっこ!」
菜々美がゲラゲラ笑うと、
さらに一言つけ加えた。
「あ、そうそう!この女、お前のこと
何とも思ってないからな!
はははっ!残念でした~~~!!!
あばよっ!」
菜々美はそう言うと、うっ…と声をあげて
そのまま倒れてしまった。
「え…!?え…!?ええええ?」
ほどなくして、菜々美が目を覚ますー
「--あ、、、、あれ…?」
菜々美は1か月ちょっと憑依され続けていたー
ぼーっと周囲を見渡す。
やがてー
1か月経過していることに菜々美が気付いて
悲鳴を上げー
同じ空き教室に二人きりの雄太郎が先生に
疑われる羽目になってしまったー
・・・・・・・・・・・・・・・・
”--そう。あんたにどのぐらいで
告白してもらるのか。
それを友達と賭けてたの”
かつてー
男が言われた言葉を思い出すー。
相手をその気にさせて、振るー。
何のためにこんなことを続けているのかー
それは、彼自身にも分からない。
告らせ屋、という異名で呼ばれるようになり
数々の女性に憑依し、相手をその気にさせて
そして、絶望に突き落とすー
それを繰り返したその先に、
何があるのかー。
「----…」
告らせ屋は次のおもちゃを見つけて笑みを浮かべるー。
人間は、愚かだー。
彼は思うー
自分も、含めてー
自分は、振られたときのショックが
いまだに忘れられないのかもしれないー
復讐かー?
それとも、弱い自分の心をごまかすために
憑依を続けているのかー。
「--…」
男は考えるのをやめたー
せっかく手に入れたこの力。
余計なことを考えずに、
憑依を楽しもう。
告らせ屋は、次のターゲットの女性に憑依するー
「ぁっ!?」
女性が声を上げて
にやりと笑みを浮かべるー。
また、新たな告らせゲームが始まったのだったー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
皆様も騙されないように
気を付けてくださいネ~笑
お読み下さりありがとうございましたー!
コメント