さくらのからだで好き勝手店の中で暴れたオタク男。
オタク男は、さくらのからだを奪ったまま、
そのまま姿を消した。
けれども、オタク男の復讐はまだ終わっていなかった…。
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エロゲーが積まれて、
アニメキャラのフィギュアやポスターがそこら中に
貼られた部屋で、
さくらはメイド服を着て笑みを浮かべていた。
部屋中から、イヤらしいニオイがする。
さくらは体中を濡らして甘い息を漏らしていた。
「はぁ…♡ はぁ…♡ さいこう♡」
さくらはもう、何度目か分からない絶頂を味わい、
放心状態になっていた。
「ちょっと…疲れたぁ…うふふ♡」
乱れきった髪を振り乱しながら
小汚いベットに向かう。
ここはオタク男の部屋。
年頃の女子大生が男の部屋に、
しかも、エロゲーやアニメキャラで埋め尽くされている部屋で
メイド服を着て、ひとり喘ぎまくっているー。
周囲から見たら異様な光景ー。
「---はぁっ♡」
さくらはアニメキャラの抱き枕を抱きしめて、
綺麗な唇で、枕にキスをした。
「この女は僕の思い通り…
そう、おもちゃだ!」
さくらは断言した。
そして笑った。
「---復讐の第2幕を始めよっと!うふふ・・・!!」
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さくらが憑依されてから2日。
尾崎店長に木藤は理由を話し、
尾崎店長は警察に上手く事情を話した。
オタク男は心臓発作で死亡していた。
いやーー
厳密に言えば、からだを捨てて
さくらのもとに移動したと言うべきか。
尾崎店長お得意の、世渡り術で、
心臓発作だったこともあり、あまり大きな問題にならず、
今日からまた営業再開ということになっていた。
木藤はため息をつきながら、午後からのシフトに向かう。
到着すると、風香と我妻が居た。
「---あ、、お疲れさまです」
女子高生バイトの風香が言う。
今日は学校が開校記念日で休みらしく、
午前中のシフトに入っていた。
「---……」
風香が悲しそうな表情を浮かべている。
「---白崎さん」
木藤は心を痛めた。
まだ高校生の風香にとっては、
先輩のさくらが憑依され、あんなことになったという
現実は、酷く心に傷となっただろう。
心のケアも必要かもしれない。
「--俺が必ずなんとかするから」
木藤がそう言うと、
風香が少し涙を浮かべながら「はい…」とつぶやいた。
「---じゃ、後はよろしくお願いします」
バイト上がりの時間の我妻が鞄を整理しながら言う。
「---ああ」
木藤が言うと、我妻が口を開いた。
「--市川さんが憑依されたってのは、
本当っすか?」
我妻の言葉に木藤はうなずく。
すると我妻がつぶやいた。
「--ちょっと見てみたかったな…」
我妻の冗談だとは分っていた。
けれど、木藤にはそれを冗談として受け止めるほどの
精神的余裕がなかった。
「---我妻!」
少し声を荒げると、我妻は「すんません」と頭を下げる。
そして
「さーて!今日もガチャを回すかぁ」とつぶやきながら
店から出て行った。
風香も、それに続いて会釈して店を出て行く。
代わりに、午後シフトの山西 明美がやってきた。
「お疲れ様です」
今日は眼鏡をかけている明美がほほ笑む。
綺麗な程よい長さの髪と、
大人しそうだけれども、可愛らしい清楚なイメージの明美。
木藤は思う。
ーーあのオタク男にこれ以上好きにはさせない、と。
「--聞きましたよ」
明美が言う。
「--さくらのこと…?」
木藤が尋ねると、明美が頷いた。
「---…憑依・・・なんて本当なんですか…?
わたしにはちょっと…」
明美が気味悪そうにつぶやく。
「--あぁ…間違えないよ…」
木藤が言うと、明美は「市川先輩のお芝居ってことは
無いですよね…?」とつぶやいた。
「---いや、白崎さんも見てたし…
さくらがあんなことするわけ…」
木藤が言うと、明美は微笑んだ。
「--そういえば、バイト初めてからずっと思ってたんですけど、
木藤先輩って、市川先輩のこと、名前で呼ぶんですね!」
可愛らしく微笑みながら言う明美。
木藤は顔を赤らめて
「え…いや、ホラ!俺とさくら、古株なほうだし…!
一応去年から…」
「ふふふ…そんなに分かりやすい反応されちゃうと、
私が照れちゃいますよ!」
さらに顔を赤らめる木藤を見て、明美は楽しそうにほほ笑んだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
大学。
一人の女子大生が別の女子大生を、物陰で、壁に
追い詰めて壁ドン状態にしていた。
「---さ…さくらっ…な、、何なの急に!?」
大学生の飯淵鳴海が、恐怖の表情で、
自分を追いつめている相手を見る。
その相手はーー
さくらだった。
「---いいじゃない…お金、貸してよ」
さくらが不気味に笑う。
「--だ…だめよ!
わ、、わたし…毎月お母さんに仕送りしてるの…」
鳴海が必死に言う。
さくらの友人、飯淵鳴海は、早くに父を亡くして母子家庭。
鳴海は必死にバイトしながら、学費も高校時代からの貯金で払い、
さらに親にも仕送りをしていた。
「---親…?
親とわたし、どっちが大事なの?」
ショートパンツに、胸元を強調した皮のジャケット姿で
さくらが鳴海を睨む。
「-----さ、、、さくら…
どうしてそんなこと言うの?」
鳴海が目に涙を浮かべて言う。
「---いいから、金貸せって言ってるのよ!
”復讐”のための資金にするんだから!」
さくらが声を荒げる。
「---い…いやよ!」
鳴海が否定の言葉を叫ぶ。
けれどー。
「---おら!貸せ!」
さくらは乱暴に鳴海の鞄を取り上げると、
財布を取り出し、お金を引き抜いて、
乱暴に鞄と財布を地面に投げ捨てた。
「--ちょっと!!何するのよ!」
鳴海が怒りを込めて叫ぶ。
「---ふふっ、ありがと鳴海!
…あ、そうだ…
このこと誰かに言ったら…」
さくらが鳴海を睨んで、
不気味な笑みを浮かべた。
「---あんたも”この女”と同じになるからーー」
そう言ってさくらは立ち去って行った。
「---ど・・・・・どういう・・・こと?」
鳴海は恐怖を目に浮かべて、その場に立ち尽くした…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
あれから1週間が経った。
さくらの手がかりもないまま。
木藤は苛立っていた。
「あまり思い詰めるなよ。
俺も色々調べてみるから。」
尾崎店長が木藤の肩を叩く。
「はい…」
木藤は浮かない顔で答えた。
さくらのいやらしい笑みや、
いやらしい仕草、
挑発的な表情が目から離れない。
「くそっ…」
だがーー
休憩時間中にさくらからLINEが届いた。
「--さくら?」
木藤は慌ててそのLINEを見る。
内容はーーー
”本当にご迷惑をおかけしましたー。
何日も休んでしまって…。
わたし…1週間記憶が飛んでるんです…
何か熱も出ていて…”
そういう内容だった。
木藤は思う。
”オタク男から解放されたのか?”と。
”わたし…もう、、クビですよね?”
さくらが悲しそうにLINEを送ってきていた。
「--店長」
木藤が、そのLINEを尾崎店長に見せると、
店長は頷いた。
「俺…今日、バイトが上がったらさくらの家を
尋ねてみます。
前に一度、本の貸し借りで訪れたことがあるので。」
さくらの家はそう、遠くはなかった。
親元を離れて一人暮らしをしている。
「---いいけど…
女の子の家に男一人で行くのか?」
尾崎店長が苦笑いしながら言う。
「--お、、俺は何もしませんよ!」
木藤が言うと、
カウンターの方に居た明美がやってきた。
「じゃあ、わたしも一緒に行きます」
微笑む明美。
「--え?い、いいの?」
木藤が言うと、明美が頷く。
「---わたし、市川先輩のこと、尊敬してるんです。
だから、何か力になれればなって!
それに…」
明美がにっこりとして続ける。
「--木藤先輩が、野獣にならないように
見張ってないといけませんからネ!」
微笑む明美に
「だから大丈夫だって!」と木藤は叫んだ。
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夕方。
木藤と明美は、さくらの家を訪れた。
「はいーーー」
さくらの声は元気が無かった。
「---俺だよ!バイトの木藤。
あと、山西さんもいっしょ!」
そう言うと、さくらが少しだけ明るい声になって
家の中へと招き入れてくれた。
「---ど、どうしたんですか?」
さくらが言う。
「--いや…お見舞いだよ…。
それに…店長からも伝言頼まれたからさ」
木藤が言うと、
さくらが不思議そうな顔をする。
「--クビになんかしないから、
今まで通り、これからもよろしく…ってさ」
木藤が、コンビニで適当に買った土産を
差し出しながら言う。
「--え、、、ほ、本当ですか…?
わたし、何日も無断欠勤したのに…」
驚くさくらに、木藤は力強くうなずいた。
横に居る明美も微笑みながら頷く。
けれどーーー
笑顔とは裏腹に明美は別のことを考えていた。
”どうして、市川先輩に憑依してたっていうオタクは、
市川先輩を解放したのかしらー?”
と…。
そして…
”市川さんの演技…?
それとも…?”
明美は少しだけ険しい表情でさくらの方を見つめた。
「---山西さん?」
木藤が不思議そうに明美に問いかけると、
「あ、いえ、何でもないですよ~!」
と明美は笑みを浮かべた。
「---じゃ、というわけだから、明日からよろしく!」
木藤は、さくらの様子を確認して
”本人”だと確信した。
あのオタクはおそらく、
さくらの強い意思に負けたのだろう。
木藤はそう思った。
「---わたし…気を失っていた間…」
さくらがつぶやく。
「---大丈夫。心配するなよ」
木藤はそれだけ言って、微笑んだ。
木藤と明美は、さくらと談笑したあと、
少しして、二人揃って家から出た。
一人残されたさくらが嬉しそうに頭を上げた。
「ありがとうございますー木藤さん…」
と。
だがーーー
からだが突然ビクっとなり、
さくらが不気味な笑みを浮かべたーー。
「----僕は~~中にいるよ!
この女の中になぁ…
うへへへへへへへっ…」
さくらは胸を揉みながら、大笑いし始めた…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日夜。
尾崎店長と
さくら、それに風香が店の閉店作業を行っていた。
「--ちょっと、明日、朝ネットミーティングがあって
早いから、後は頼むね!」
尾崎店長は閉店作業を二人に任せて
そのまま店を後にしようとするー。
「--店長!」
さくらが声をかけた。
「ん?」
店長が振り向く。
「--あの、、ありがとうございます…
わたし、無断欠勤でご迷惑を…」
さくらがそう言いかけると、事情を知る尾崎店長は
微笑んだ…。
「いいよー。気にするな」
そう言うと、尾崎店長は店から出て行った。
残されたのはさくらと風香。
風香は安堵から笑みを浮かべていた。
さくらは、いつものさくらに戻っていた。
あの日、オタク男にさくらが憑依されていたときは
どうなることかと思ったけれど…。
さくらがカウンターの方に戻ってくる。
「---さ、早く片付けちゃいましょ!」
さくらが、レジの方を見て言う。
「---はい!」
風香が返事をすると、さくらが突然
クスクスクスクス…と笑い始めた。
「----?」
「ふふふふふふ・・・
ははははは、、、
あは、、あははははははははははは!」
さくらが突然大笑いを始める。
「い…市川さん…?」
風香が恐ろしいものを見る目でさくらを見た。
さくらがーーー
風香の方を向いたーーー
妖艶な笑みを浮かべてーー。
「僕の…復讐の第2幕…」
さくらは、再びオタク男に乗っ取られていた。
「---ひっ…」
風香が、計算している途中だった小銭を
落として、床に小銭が音を立てて転がる。
「--今度は、風香ちゃん…
あなたが、わたしのようになるの…
この女のように…
復讐に生きる女になるの…
うふふふふ♡」
さくらが風香の方に近づく。
「や…やめて・・・市川さん…やめて…!」
風香が、奥の壁際に追い詰められる。
「お前・・・僕のこと”オタク”って言ったよな?
…そのオタクに好き勝手される屈辱を味あわせてやる…
お前のからだを滅茶苦茶にしてやる!」
さくらはそう言って風香を睨む。
「やめてーーーー!」
叫ぶ風香を無視して、さくらは風香にキスをした。
さくらが白目を剥いてその場に倒れる。
そして風香も…。
少しして、風香が立ち上がった。
髪を邪魔くさそうにかきあげて、
風香は笑みを浮かべた。
「--ふふふ・・・
わたしは…白崎風香…♡」
甘い声で呟く風香。
「このお店…
めっちゃくちゃにぶっ壊してあ・げ・る♡
うふふふ・・・あはははははははっ!」
さっきまで浮かべていた涙で目を濡らしながら
風香は狂ったように笑い始めた…
④へ続く
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明日からは別の作品を書きます!
暴走憑依男Xの続きは2/17からを予定しています。
暴走憑依男X④~誘惑~
おたのしみに…!
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