憑依空間がまもなく1周年を迎えます!
記念として、初期の作品「暴走憑依男」のリメイク作品を
書いていきます!
元作品を知っていても、知らなくても、また1から書いていくので
お楽しみください!
とあるお店にやってきたオタク男。
「店員に笑われた」ことで、逆上し、自分をバカにした
女子大生バイトに憑依。復讐を開始します…。
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冬ー。
大学の帰りに、
二人の女子大生が談笑していた。
「--いいよね~さくらは。毎日すごく楽しそうじゃない?」
女子大生の飯淵 鳴海(いいぶち なるみ)が笑いながら訪ねる。
「--え?そ、そうかな…」
鳴海と一緒に歩いている女子大生の市川さくらが控えめにほほ笑む。
何故だかいつも夜会巻きと呼ばれるヘアースタイルがトレードマークの
さくらは、明るく誰にでも表裏なく、心優しい性格なので
大学内でも慕われていた。
容姿も、大学内のコンテスト上位に入賞するぐらいで、
男子からの人気は特に高かった。
「特にバイトの話するとき、楽しそうだよね~!」
鳴海がからかうようにして言うと、
さくらは顔を少し赤らめて微笑んだ。
「ちょ、、ちょっと、からかわないでよ…」
さくらは、ゲームやカードなどを売るお店でアルバイトをしていた。
そのバイト先のバイト仲間、同じ大学生の
木藤孝雄に、さくらは好意を抱いていた。
「---赤くなっちゃって!」
鳴海が笑いながら、さくらを茶化す。
いつもの日常ー
いつもの光景ー。
これが、これからも続くはずだったーーー。
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土曜日。
「お疲れ様です」
バイト、木藤 孝雄(きどう たかお)がバイト先の
店に到着する。
イケメンっぽい雰囲気だが、気取った感じのしない
爽やかな好青年と言う感じだ。
大学入学後すぐにバイトを始め、
人の入れ替わりも激しかったため、今では一番の
古株バイトの木藤は、尾崎店長の信頼も厚い人物だった。
午前中シフトだった二人のアルバイト、
白崎 風香(しらさき ふうか)と、
我妻 純也(あがつま じゅんや)が木藤とあいさつを交わす。
「---そういや、来月のバレンタインデー、
なんか企画でもやろうかと思ってるんだけど、
何かいいアイデアはないかな?」
尾崎店長が尋ねると、
3人のスタッフが色々なアイデアを出した。
そうこうしているうちに、バレンタインのチョコの話になった。
「--私の高校、チョコ禁止なんですよ…」
女子高校生バイトの風香が笑いながら言う。
大人しい雰囲気で、真面目な感じの風香。
いつも一生懸命で、先輩バイトたちからは
可愛がられている。
「--俺はチョコなんかどうでもいいっすね…
愛より蝉が欲しいんで」
男子大学生バイトの我妻は、ひねくれた性格かつ、
天然な性格で、たまに爆弾発言もする。
「蝉…?」
木藤が尋ねると、
風香が「今、人気の課金アプリですよ!」と笑う。
「---俺、バイトの給料、全部
課金につぎ込むんで」
我妻の言葉に木藤は苦笑いした。
そうこうしているうちに、
今日の午後のバイトの残り二人、
市川さくらと山西明美(やまにしあけみ)がやってきた。
店長は午後から出張、
風香と我妻は上がりで帰って行った。
「--今日もよろしくお願いします」
さくらが優しく微笑むと、木藤は「よろしく…」と言いながら
顔を少し赤らめた。
その時だった。
店内に”問題客”がやってきた。
いかにもオタクという感じの
小太りで、メガネをした男。
冬なのに汗をポタポタと落とし
「ハッ、ハッ」と息を吐き出している。
お世辞にも良い印象はない。
しかも、このオタク男、度々店で迷惑行為を
働いていて、店では厄介な客として認定されていた。
「また来ましたね…」
女子大生バイトの山西 明美が言う。
明美は最近採用されたバイトで一番の新人だ。
少し小柄でショートとセミロングの中間ぐらいの
綺麗な髪が特徴的だ。
コンタクトをしている日とメガネをしている日があって、
バイトの我妻はその変化をいつも楽しみにしていた。
「えへへ~これ可愛いなぁ」
オタク男がエロゲーコーナーで一人で
大声で独り言をしゃべっている。
「うは~~おっぱいでけーー!」
エロゲーコーナーは仕切られているとはいえ、
すぐ近くに子供が行くこともある。
あまりそういうことを呟かれると困るのだ。
「…アイツ、困ったヤツだな」
木藤が言う。
「注意しましょうか?」
さくらがそう尋ねると、木藤は俺が行くよ、と言って
オタク男のもとに向かった。
「--あの、お客様」
木藤が言うと、オタク男が振り返る。
両手にエロゲーを大量に持っていた。
「--申し訳ございませんが、あまりそういった内容を
大声でお話しされると…」
そう言うと、オタク男は、木藤を睨んでいった。
「----僕の勝手だろ!」
怒った様子で、ズカズカと歩いていくオタク男。
オタク男はそのままカウンターにエロゲーを10個
叩きつけて、横暴な様子で、購入の意思を示した。
さくらが少し引いた表情で会計を始める。
「---きみ、可愛いなぁ…」
オタク男が呟く。
「---よ、、良かったら、、、僕と…
僕と付き合って欲しいなぁ…」
オタク男がぼそぼそと続けた。
「---お会計が29750円になります」
さくらはその話題に触れないようにして会計を進めた。
オタク男は舌打ちして、そのままお金を支払い、
店の外へと消えた。
「---あ~~~……気持ち悪かったぁ…」
さくらがつぶやく。
「--ーどうしたんだ?」
戻ってきた木藤が尋ねると、さくらは
「あのオタクのお客さんに付き合って欲しいって
言われて…鳥肌たっちゃいました」
とほほ笑む。
「---おいおい、アイツマジかよ!
あのなりでいきなり告白なんてな」
木藤がそう言うと、さくらも
「本当に、びっくりですよ!」と
笑った。
ーーだが、次の瞬間、さくらから笑みが消えた。
「---」
オタク男がカウンターに置いていった忘れ物の傘を
取りに戻ってきていた。
無言でさくらを睨みつけるオタク男。
「----あ…」
さくらは恐怖に凍りついた。
今の言葉を聞かれたのではないかと。
だが、オタク男は何も言わずに立ち去って行った。
木藤もさくらも、一瞬クレームになるんじゃないかと
焦ったが、とりあえず問題にならず、ホッと胸をなで下した。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
夜。
オタク男は、
エロゲーのポスターだらけの部屋で、
エロ動画を見ながら怒りを爆発させていた。
「あのバイトの女―――!!!!
ゼッタイに許さない!!!
僕を…僕を…笑いやがって!」
オタク男は怒りに満ちた表情で、机からあるものを
取り出した。
”憑依薬”
オタク男は不気味な笑みを浮かべたーー。
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翌日。
今日も店長は出張。
木藤と、さくら、そして女子高生の風香の
3人でレジをやっていた。
ちょうど、昨日のオタク男の告白の件で
盛り上がっていた
その時だったー。
「----今、僕の話をしてるんですか」
オタク男がカウンターの前に来ていた。
「--え?あ?いえ…」
さくらが慌てた様子で否定する。
「--やべっ」
木藤が小声で言う。
「---あっ…」
風香も目を逸らす。
「--許せないよなぁ、僕のこと侮辱して…」
オタク男が怒りをにじませる。
「---も、、申し訳ございません・・・
お客様に不愉快な思いをさせるつもりは…」
さくらが言うと、
オタク男が突然、カウンター越しにさくらの頭をつかんだ。
「ひっ…!?な、、なんですか…や、やめ…」
オタク男は有無を言わさず、さくらにキスをした。
「---ひうっ!!!」
さくらがうめき声をあげる。
「---なっ…おい!」
木藤がすかさず止めに入るも、
オタク男はそのまま力無く、店内の床に倒れた。
そして、さくらも。
力無く横たわるさくら…。
白目を剥いて、からだがビク ビクと痙攣している。
目からは涙があふれていた。
「お、、おい!さくら…?」
木藤が呼びかけるも返事はない。
「--し、白崎さん!救急車を!」
その時だったー。
さくらの手が、木藤の腕をつかんだ。
「---さくら?」
慌てて振り返ると、さくらが意識を取り戻していた。
「---く…ふふ・・・ふふふ」
さくらが笑いながら立ち上がる。
「ふふふ…ふふふふふ…」
笑うさくらを唖然とした表情で見つめる木藤と風香。
「あは、、、あははははははっ!!
あはははははははは~~~~
やった!ついにやった!」
さくらが表情を歪めて笑う。
「---な、、ど、どうしたんだよ?」
木藤が尋ねるも、さくらは木藤を無視して、
奥にある自分の鞄を探り始めた。
「--女の子なら持ってるよなぁ…」
ニヤニヤしながらそう言うと、
さくらは乱暴に鞄の中身を事務所の机に
ぶちまけて、そこから手鏡を取り出す。
「あはぁ…♡
本当に、、本当にこの女になってる!!
くくく…あはははははは!」
「い…市川さん」
背後から風香が声をかける。
その言葉にさくらは笑みを浮かべながら振り返る。
「---僕のこと笑ったよな?」
さくらが悔しそうな表情で木藤と風香の二人に告げる。
「---え…な、、何を言って…」
風香がおびえた様子でさくらの方を見る。
「--絶対許さない!
僕はお前ら全員に復讐してやる!」
さくらが心底悔しそうに、目に涙を浮かべながら言う。
「--お、、おい!さくら!どういうことだよ?
何を言って…」
木藤が呼びかけると、さくらはイヤらしく笑う。
「---ふふふ、この女がそんなに心配かよ?」
さくらの言葉に木藤は「この女・・・?」と首をかしげる。
「そうだよ!僕のことを気持ち悪いって言ってた女が
今や僕の思い通りに動いてる!!
どうだ?たまんねぇだろ!ぐふふふふっ…」
さくらが汚しく笑う。
「---お前!まさか!」
木藤が叫ぶとさくらは嬉しそうに言った。
「ピンポーン!
この子のからだは僕が貰ったよ!
どうだよ?このからだ!すごいだろ!
僕、興奮しちゃうなぁ…デュフフフフ…」
さくらがよだれを垂らしながら、
自分の胸を触り始める。
「おいおい…何のドッキリだよ…
洒落にならないぞ!」
木藤が言う。
「--や、やめてくださいよ!そんな
気持ち悪い人のまねするの!」
風香が言う。
「---気持ち悪い?」
さくらが風香を睨みつけた。
いつもの優しいさくらじゃない…!
そう思った風香は身を震わせた。
「---今、何ていった…?」
さくらが低い声で風香の髪を引っ張りながら言った。
「---や…やめて…市川さん!」
風香が目に涙を浮かべて必死の形相で言う。
パチン!
さくらが風香の頬を思いっきりビンタした。
風香はその場に泣き崩れてしまう。
「---どうだ!僕がこいつを支配してる!
この女はもう、僕のおもちゃだ!
僕の思うが儘に動き、僕の意思のままに動く!
くふふ・・・ゾクゾクする…ゾクゾクするぜ!!
あははははははは~っ!」
さくらが大声で笑う。
客が騒然とし始めているのに気付き、
木藤は慌てて客を外に誘導して、
店を一時閉店とし、シャッターを閉める。
シャッターを閉め終えて振り返ると、
さくらはショーケースの上に座り、足を組んで
木藤の方を見下すようにして見ていた。
さくらの綺麗な足があらわになる。
「---」
木藤は一瞬、それに見とれてしまったが
すぐに正気を取り戻した。
オタク男は倒れたままだ。
「--ーな、何が目的だ…」
木藤は尋ねる。
さくらはクスクスクス…と笑いながら木藤を見つめる。
「復讐ーーー。
僕を笑ったお前たちへの復讐だよ!」
さくらが言う。
「それにしても…あぁ…おっぱいでけぇなぁ…」
さくらが胸を揉みながら笑う。
「あぁん♡ あん♡ うふぅ♡」
さくらが嫌そうな顔をしていた言葉をーー
今のさくらは平然と言ってのけたー。
そしてーー
さくらは喉をコホン コホンと何度か鳴らして
再び微笑んだ。
「わたしは市川さくらーー。 うふふ♡」
さくらに成りきるオタク男。
「--ふざけるな!」
木藤が叫ぶと、
さくらは自分の髪を乱暴に引きちぎるようにしてほどく。
髪がフサッと垂れ下がり、いつも見ない、
ストレートヘアー姿になったさくらが笑う。
「---さくら、今からこのお店に復讐しま~す♡」
顔を赤らめながら満面の笑みで
囁いたさくらは、ショーケースから飛び降り、
木藤の方へと歩んで行った…。
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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今日は憑依のところまでです!
明日は…やりたい放題タイムになりそうですね!
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