<憑依>生き返った彼氏~亡霊編~後編

結果的に幼馴染の身体を奪った状態のままに
なってしまった彼ー…。

彼の提案で、二人はそれぞれ元の形に戻ろうと
奔走することにー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーー全部、元通りにするためにはー」
幼馴染の加奈に憑依している状態の伸明はそう言葉を口にすると、
伸明の彼女・茉莉に憑依している状態の加奈は、
「まず、西崎くんがーーー…」と、そう言いかけてから、
少しだけ気まずそうな表情を浮かべるー。

「ーーーいいさー気にしなくていいー」
加奈に憑依している伸明が、寂しそうな表情を浮かべながらも、
少しだけ笑うと、
「西崎くんが、”わたし”の身体から出て行って成仏するー」
と、茉莉に憑依している加奈がそう言葉を口にするー。

「ーそう。そうしたら、福山さんの身体はまた”空いている状態”に
 なるから、福山さんが自分の身体に戻って、茉莉の身体を
 解放するー」

加奈に憑依している伸明はそう言うと、
茉莉に憑依している加奈は頷くー。

「そうすれば、死んだ俺はちゃんとーー
 そのーー何て言えばいいんだー?

 え~っと
 ちゃんと、死ねるしー、
 福山さんは自分の身体に戻れるし、
 茉莉もちゃんと意識を取り戻すことができるー」

そこまで言葉を口にすると、
茉莉に憑依している加奈が、
戸惑いながら言葉を口にするー。

「ー本当に、それでいいの?」
とー。

「ーーー……」
加奈に憑依している伸明は、少しだけ苦笑いすると、
「ー俺だって、本当は死にたくないけどさー」と、そう言葉を口にするー

「まだやりたいことだっていっぱいあったしー
 確かに、福山さんの身体があればー
 この先またー、”違う形”にはなっちゃうけど、人生の続きをすることはできるー」

加奈に憑依している伸明はそこまで言うと、
茉莉に憑依している加奈は「だったらー…わたしの身体をあげるからー」と、
静かにそう言葉を口にするー。

「ーーー吉井さんはー…わたしの人生がどうなっても構わないって
 言ったから、許せないしー…
 だからーーーこれでいいんじゃないかなー?」

茉莉に憑依している加奈が不満そうにそう言葉を口にしているーー

しかし、加奈に憑依している伸明は首を縦には振らなかったー。

「ーそれじゃー、福山さんも、
 俺さえいれば福山さんがどうなっても構わないーって、
 そう言った茉莉と同じになっちゃうだろー?」

そう、諭すような口調で言うー。

「ーーわたしはー…わたしは、ただー」
”仕返し”だからと、茉莉に憑依している加奈は、そう言おうとするー。

「ーーはは、別に福山さんを責めるつもりじゃないよー
 ただ、やっぱり、どんな人間だったとしても、
 身体の持ち主は、その本人だと思うからー。

 他人が勝手にその身体を使っちゃいけないんだー」

加奈に憑依している伸明がそう言うと、
茉莉に憑依している加奈は、少し間を置いてから頷くと、
「西崎くんはやっぱり、誰にでも優しいねー」と、
そう言葉を口にするー。

恋愛感情はないー。
けれど、幼馴染として、”誰にでも優しい”とは思うし、
”幼馴染として”いい人だとは思うー。

それ以上に発展することは、これまでも、この先もないけれどー、
幼馴染として、とても尊敬できる相手だとは思っているー。

「ーーーーまぁ、そのせいで、茉莉がワガママ言うように
 なっちゃったのかもしれないけどなー」
苦笑いしながら、加奈の身体でそう呟くと伸明ー。

茉莉に憑依している加奈は
「ー西崎くんが、ちゃんとーーその、成仏できるように、
 わたしも頑張るー」と、意を決したように、
そう言葉を口にしてくれたー。

そしてーーー
茉莉に憑依している加奈は、心の中で
”ごめんね”と、そう言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

二人はー、”元に戻るための方法”を探っていくー。

けれど、”他人の身体に憑依してしまう”という状況自体が、
そもそも”レアケース”すぎて、
元に戻る方法を調べようにも、そんな情報は
なかなか見つからなかったー。

そんなある日ー。

「ーーー…そういえば、西崎くんはどうしてわたしの身体で、
 おしゃれにしてるのー?」
ふと、茉莉に憑依している加奈がそう言葉を口にすると、
加奈の身体で、出かける前には可愛い服装を選んだり、
おしゃれに気を配ったりしているのを見て、
少しだけ違和感を覚えたのだー。

本当に”成仏するつもり”なら、
そんなことする必要はないのではないかー、と。

そんな指摘を受けて、加奈に憑依している伸明は
少しだけ笑うと、
「あぁ、いやー、これはー」と、照れ臭そうに笑うー。

「ー正直俺は全然、”女”としてのおしゃれとか、
 可愛くなりたい!とか、ーー
 なんていうかなー…?男だから、あまりよく分からないけどー

 でも、ほらー、この身体はー…
 福山さんから借りてるものだからー。
 だからみっともない服装はできないなーって

 図書館の本だって借りたら綺麗に使うだろ?
 それと同じだよー」

加奈に憑依している伸明はそれだけ言うと、
「俺の憑依先が茉莉でも、他の子でも、そうするしー
 別に理由なんてないよー。
 借りたものは、綺麗に使ってちゃんと返すってだけー」

”当然”と言わんばかりにそう言い放つ
加奈に憑依した伸明を見て、
茉莉に憑依している加奈は”ごめん”と、静かにそう呟いたー

「はは、疑っちゃうのも分かるし、いいよー」
加奈に憑依している伸明はそれだけ言うと、
茉莉に憑依している加奈は少しだけ寂しそうに頷いてから、
改めて”一緒に元に戻る方法を見つけようね”と、
そう言葉を口にしたー。

そしてー、
それから数日ー。
加奈に憑依している伸明は、”事故現場”に足を運んだ際に、
自分が加奈の身体から抜けるようなー、
意識が薄れるような感触を覚えたー。

「ーーーーー」
加奈として、今日も”借り物だから、ちゃんとしていないといけない”と
加奈らしい落ち着いた雰囲気かつ、おしゃれな格好で
この場所にやってきていた加奈に憑依している伸明は、
”自分が今感じた感覚”に少しだけ驚きつつも、
”自分が死んだ現場”の周辺を見回すー。

あの日、伸明はここで”暴走車”に轢かれて
その命を散らせたー。

その場所で、加奈の身体から抜け出すような、
そんな感触を覚えたー。

「ーーーー」
”ここ”なら、福山さんの身体から抜け出すことができるかもしれないー。

そして、全て”元通り”にすることができるかもしれないー。

そう思った、加奈に憑依している伸明は
ふと、”自分が轢かれて倒れていた場所”とされている場所を見つめるー。

そして、そこに立ち、加奈の身体から抜けて成仏するイメージを浮かべるとー
強く、加奈の身体から抜けるような、そんな感触を感じたー。

「ーーーこれならー…」
このまま、この場に立って”それ”を続ければ
加奈の身体から抜け出すことができるー。

抜け出したあと、どうなるのかは分からないけれど、
きっと、”死者の魂”は、死んだその場所で
”元の形に戻ることができる”のだと、
伸明はそう確信したー。

その日のうちに、茉莉に憑依している加奈に連絡すると、
”方法が見つかったと思うー”と、そう言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー。

幼馴染・加奈に憑依してしまった状態の伸明と、
伸明の彼女・茉莉に憑依してしまった状態の加奈は、
伸明が死亡した事故現場にやってきていたー。

複雑そうな表情を浮かべる茉莉に憑依した加奈ー。

が、加奈に憑依している伸明は笑うー。

「茉莉が意識を取り戻したあとー、
 もしも、茉莉に何か言われたらー
 これを見せてー」

と、加奈に憑依している伸明は
”加奈が自分の身体に戻ったあと”正気を取り戻すであろう
彼女の茉莉に対して書いた手紙が入った封筒を差し出したー。

「ーー茉莉を叱ってー、福山さんと争わないようにってこととー
 後は別れの言葉が書いてあるー」
加奈に憑依している伸明はそう言葉を口にすると、
それを茉莉に憑依している加奈に差し出すー。

伸明が成仏して、加奈が加奈自身の身体に戻れば、
茉莉が正気を取り戻すー。

しかし、茉莉の性格のことだー。
加奈に憑依されていたと知れば
自分自身が招いた行動であっても不満を漏らす可能性もあるー。

素直に”福山さんのことを何も考えなくてごめんなさい”と、
加奈のことを何も考えず、彼氏の伸明さえ生き返ればいい、というような
言動をとったことを謝る可能性もあるー

けどー、”加奈に憑依されていた”茉莉がどっちの行動を起こすか分からないし、
もし、茉莉が加奈に文句を言い始めたら止めたいけれど、
伸明はこのあと、成仏してしまうのだから、
茉莉がどういう行動を起こすかを確認することは出来ないし、
仮に茉莉が問題行動を起こそうとしても、それを止めることも出来ないー。

だからー、先に”手紙”を書いておいたー。

「ーーー…福山さんも、色々複雑だとは思うしー、
 茉莉と無理に仲良くする必要はないけどー、
 けどー…俺が成仏して、福山さんが元の身体を取り戻して
 全て元通りってことで、穏便に済ませて貰えるとー…
 俺も安心して成仏できるからー

 だからー…茉莉に代わって
 もう一度謝らせてほしいー

 福山さんの身体をこんな風に、しばらく奪う形に
 なってしまって、本当にすまなかったー」

加奈の身体で謝罪する伸明ー。

茉莉の身体で、加奈は少しだけ表情を曇らせると、
「ーーーーわかったー。安心してー」と、
そう言葉を口にしたー。

「ーーありがとうー。本当に、ありがとうー」
加奈の身体で伸明はそう言葉を口にすると、
安堵の表情を浮かべるー。

そしてーーー…
自分が事故に遭ったその場所に立つと、
加奈の身体から抜けるイメージをし始めたー。

本当は、こんなに早く自分の人生が終わるなんて
思ってもみなかったし、正直、今でもそれは
受け入れることが出来ていないー。

でも、それでもー、
受け入れなくてはならないー。

もう、自分は死んでしまったのだからー、
いつまでも、他人の身体を奪っているわけにはいかないー。

加奈に憑依している伸明に手招きされて、
茉莉に憑依している加奈も隣にやってくるー。

「ーーー…ーーー…ーーーっ」
隣にいた、茉莉に憑依している加奈も、
茉莉の身体から魂が抜ける感触を感じるー。

「ーー福山さんもー…感じてるかー?」
加奈に憑依している伸明が言うと、
「ーーうんー…なんか、魂が抜けそうー」と、
そう言葉を口にするー。

その言葉に、”これでみんな元に戻れるはず”と、安堵の表情を
浮かべると、加奈の身体から、伸明はふっと抜け出して、
そのままその場に、加奈の身体が倒れ込んだー

そしてーーー…

伸明は無事に加奈の身体から抜け出しー、
自分の意識が薄れていくのを感じたー。

伸明は、安堵の表情で、
”これで、福山さんも茉莉も元通りだー”と、
そう思いながら、薄れゆく意識の中ー
浮遊している自分の”下側”を見つめたー。

するとーーー

「ーーーー!!!」
伸明は、その光景を見て、そのまま”成仏”してしまったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーー」
”加奈”の身体が倒れたのを見て、
自分も”魂が抜ける感触”を感じていた茉莉に憑依している加奈はー、
スッ、と、その場所から移動したー。

途端に、茉莉の身体から抜けるような感覚が薄れていきー
加奈は、茉莉の身体に憑依したまま、
伸明が死んだ現場から少し後ずさるー

「ーーーごめんねー」
今一度、そう言葉を口にする茉莉に憑依した加奈ー。

「ーわたしはーーー…西崎くんと違ってーー…
 そこまで、優しくないからー…

 わたしの身体を、どうでもいいみたいな振る舞いをした
 吉井さんを、わたしは許せないからー」

茉莉に憑依している加奈は、そう呟いたー

茉莉はどうしてもーー
”死んだ彼氏さえ生き返れば、加奈がどうなってもいい”と
言わんばかりの振る舞いをした茉莉が許せなかったー。

茉莉のせいで、伸明は成仏できず、
加奈は、加奈の身体から追い出されてしまったのだからー。

だから、どうしてもーーー
許せなかったー。

抜け殻になった加奈の身体から
少し離れた場所で「友達が急に倒れてー」と、
電話する茉莉に憑依した加奈ー。

”茉莉への仕返しー”
どうしても、加奈はそれをしないと気が済まなかったー

たとえ、器が小さいと言われたとしてもー
許せなかったー

「ーわたしは、吉井さんの身体で生きていくからー」
茉莉に憑依している加奈は、
このまま、茉莉の身体を返さないつもりだと、
小さく言葉を口にしながら、
そのまま立ち去っていくのだったー。

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

”生き返った彼氏”の後日談でした~~!★

当時のコメントで
”このあと3人がどうなるのか気になる~”と頂いていたので
こうして書いてみました~!★★

お読み下さりありがとうございました~!★!

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憑依<生き返った彼氏>

コメント

  1. 匿名 より:

    加奈は最初から身体を返すつもりがなかったんですかね?

    これなら伸明は変にこだわらずに加奈の身体で生きていけばよかったような気がしますよね。加奈の身体が死んだ(あるいは植物状態?)ので、加奈の両親とかも悲しむでしょうし。

    茉莉はやっぱり自業自得なので、人生奪われても余り可哀想には思えないですけどね。

    それにしても、加奈も執念深い性格ですね。まあ、恨むのももっともではありますが。

    • 無名 より:

      感想ありがとうございます~~~!★

      加奈は、憑依した時点で
      茉莉に対して強い恨みを持っていたので、
      もう身体を返すつもりはありませんでした~!★

      伸明くんは…善人過ぎましたネ~…!笑