葬式の最中に、
突如として幼馴染に憑依する形で生き返った彼氏ー。
しかし、本人はそのことを喜んでおらずー…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「今まで、ありがとうー」
幼馴染・加奈に憑依してしまった伸明は
それだけ言葉を口にすると、
自分の遺体が入っている棺に近付くー。
そうすれば、自分の身体に戻りー、
加奈に身体を返すことができるー。
そんな、気がしたー。
目を閉じて、気持ちを落ち着ける加奈ー
”ごめんなー福山さんー。
短時間とは言え、勝手に身体を使うような感じに
なっちゃってー”
心の中でそう呟きながら、
成仏するイメージを浮かべる伸明ー。
「ーーーー」
加奈の身体から、力が抜けていくのを感じるー。
「ーーー!」
その光景を見ていた伸明の彼女・茉莉は少し驚くー。
伸明の遺体が入っている棺に、
微かな光が見えたのだー
「ーーー…そ、そんなー」
茉莉は”このままじゃ、伸明が逝っちゃうー…”と、
そんなことを心の中で思うー。
そしてーー
咄嗟に走り出すー。
”ーーーーー”
一方、加奈に憑依した状態の伸明は、
自分が加奈から抜けていくのを感じたー。
”死んだ俺が、生きている人の人生を奪うわけにはいかないー”
伸明は、そんな風に思っていたー。
もちろん、伸明自身も死にたいわけではないし、
消えたいわけではないー。
”この世界”にいられるのであれば、いたいー。
けれどー…
”他人の身体を奪って”そんなことをするつもりは毛頭なかったー。
乗っ取った身体が幼馴染の福山 加奈だからではないー。
仮に、見ず知らずの相手の身体だったとしてもー、
同じことをしただろうー。
まだ、死にたくないー
怖いー
悲しいー
辛いー
悔しいー
当然、伸明にそんな感情はあるー。
でも、彼は”生きている他人の身体を乗っ取って、
生きていく”なんてことはできなかったー。
すぅ、と力が抜けていくー
これでーーー
そう思ったその時だったー
「ーー!?!?!?!?」
突然、身体に強い衝撃を感じて、
加奈の身体が吹き飛ばされるー。
それと同時に、加奈の身体から離脱する直前だった伸明の霊も、
そのまま加奈の身体から抜け出せずに、留まってしまうー。
「ーー…!?」
加奈が目を開くと、
そこには、伸明の彼女である茉莉の姿ー。
「ーま、茉莉ー…?な、何をー?」
吹き飛ばされた加奈が声を上げるー。
どうやら、駆け寄ってきた茉莉に突き飛ばされるか、
タックルでもされたようだー。
「ーーー行かないで…!!
せっかく、せっかくこうしてまた会えたのにー!」
茉莉が目に涙を浮かべながら言うー。
がー、加奈に憑依している伸明は困惑の表情を浮かべながら
「ーーー…ごめんー…でも、ダメなんだー…分かってくれー」と、
そう言葉を口にするー。
「ーー…そんなに…そんなに急がなくたっていいじゃんー…
少しの間だけでもー」
悲しそうに言葉を吐き出す茉莉ー。
けれど、それでも加奈に憑依している伸明は首を縦には
振らなかったー。
「ーーーーーダメだよー…
福山さんの身体、勝手に使ってる状態なんだからー…
1秒でも早く返さないとー」
悲しそうに呟く加奈ー。
「ーーー茉莉が、福山さんの立場だったらどうするー?
急に意識を奪われて、こんな風に身体を勝手に動かされるような状態ー…
茉莉だって、嫌だろー?
それに意識を取り戻した時に、何時間も、何日も経過してたら
怖いだろー…?
ーーだから、早く福山さんに身体を返さないとー」
加奈の身体で、そう諭すように言う伸明ー。
「ーーーそれは…それは……分かってるけどー…
で、でも、福山さんだって、話せば、伸明に少しぐらい身体を
貸してくれるはずだよ!」
茉莉がそう反論するー。
「ーーそれは…どうかなー……?
自分の身体を貸すってー……そう簡単に”いいよ”なんて言えるとは
思わないけどー」
加奈は戸惑いながら言うー。
確かに、伸明と加奈は幼馴染で、
それなりに繋がりもあったー。
しかしー、”お前の身体を貸してくれ”となれば話は別ー。
憑依されている間に、悪い事をさせられたり、
Hなことをさせられたり、
そういうリスクは十分にあるし、
加奈だって”うん、いいよ”とはなかなか言えないだろうー。
「ーとにかく、俺はこの身体にいちゃいけないー。
だからーー」
加奈はそう言うと、再び伸明の遺体が入っている
棺の方に近付いていくー。
がーーー
その前に、茉莉が立ちはだかったー。
「だめー…行かせないー」
そんな茉莉の行動に、
加奈に憑依している伸明は困惑の表情を浮かべるー。
「ー茉莉ー…頼むよー分かってくれー
俺を、”身体泥棒”にしないでくれー」
加奈が困惑しながらそう言うと、
茉莉は「ーダメー…絶対にダメー」と、
言葉を続けるー。
「茉莉ーーー…」
加奈は戸惑いながら
茉莉に”このこと”を伝えたことを少し後悔し始めるー。
加奈に憑依してしまった伸明は、
”茉莉に感謝の気持ち”だけでも伝えて、
この世から去ろうと、そう考えていたー。
感謝の気持ちを、一言でも伝えたかった‐。
だがー、茉莉がここまで
”行かないで”と言ってくるとは、思わなかったー
いやー…
”残される側の気持ちも、もっとよく考えて行動を起こすべきだったのかもしれない”と、
加奈に憑依している伸明は、少し後悔するー。
”感謝の気持ちを伝えてから、あの世に逝きたい”というのは
結局、”俺”の方の都合ー、自己満足で、
残される茉莉からすれば、”余計に辛い”ことだったかもしれないー。
”ーー…もっとよく考えるべきだったかー…”
加奈に憑依している伸明は、反省しながら
戸惑いの表情を浮かべつつ、茉莉を見るー。
「ーーごめんなー…
福山さんに憑依できちゃったあとも、
何も言わずに、この身体から抜けるべきだったー。
余計に、茉莉を辛い気持ちにしちゃったよなー
ごめんー」
加奈は心底悲しそうな表情を浮かべると、
茉莉に謝罪の言葉を口にするー。
「ーでも、俺は死んだんだー。
福山さんの人生を奪う資格なんて俺にはないしー
こんな風にいつまでも、他人の身体を使ってたらー
俺、”悪霊”みたいじゃないかー…
だからー、そろそろ行かなきゃー。な?」
加奈はそれだけ言うと、微笑みながら
寂しそうに棺の方に向かうー。
しかしー
「ーー!?」
加奈は、腕を掴まれて驚いて振り返るー。
「ー行かせないー」
彼女の茉莉は、なおもそう言葉を口にしたー。
「ーー…ま、茉莉ー…」
加奈に憑依している伸明もさすがに戸惑うー。
茉莉がここまで食い下がって来るとは思わなかったー。
「ーーそんな風に、カッコつけて、死んだら全部終わりなんだよー?
福山さんの身体から抜けたら、伸明、消えちゃうんだよー?
消えたら全部終わりなんだよー?
何も分からなくなっちゃうー」
茉莉はそう言うと、
「ーこんな風に、自分の身体じゃなくても、
生き返ることができたんだからー!
わたしも、福山さんもまだ20になったばかりだしー、
この先、何十年も人生があるんだからー…!
せっかく手に入れたその何十年を捨てないでー!」
と、そう言葉を付け加えるー。
「ーーお、おいおいー…茉莉ーー
ふ、福山さんのことはどうするんだよー?」
加奈が戸惑うー。
このまま、伸明が加奈の身体に憑依し続ければー
”福山 加奈”が、代わりに死んだような、そんな状況になってしまうー。
そんなこと、絶対にできないー。
「ーーわ、わたし、別に福山さんと親しくないしー…!
ふ、福山さんだって、何も分からないままなんだから、
別に苦しむことなんてー」
茉莉がそう言いかけると、
加奈は「茉莉っ…!」と、表情を歪めるー。
「何てこと言うんだー…
福山さんの人生はどうでもいいってことかー?」
加奈が少し呆れたような表情を浮かべるー。
「ーわ、わたしは、福山さんより、伸明にこの世界にいてほしいの!
伸明も、そんな綺麗事考えないで、
福山さんの身体使っちゃえばいいの!」
茉莉のその言葉に、加奈は呆然とするー。
「ーー…そーーーそれは、ダメだろー… 絶対に、ダメだろー…!」
加奈に憑依している伸明が言うー。
しかし、それでも茉莉は引き下がらなかったー。
「わたし、福山さんのことあまり良く知らないもん!
福山さんと、伸明、どっちかしか生きられないなら、
わたしは伸明を選ぶよ!」
茉莉が涙目で言うー。
「ーーーーーだから…ダメなんだってー…
死んだのは俺で、福山さんは生きてるんだからー!」
加奈に憑依した伸明は、
絶対に加奈の身体で生きるつもりはないようで、
そう言葉を口にするー。
「ーーでも、福山さんの身体を使えば
生きられるでしょ!
ーー身体の違いとかは、わたしがサポートするし、
すぐ慣れると思うから、
だから、わたしと一緒に頑張ろうよ!」
茉莉が頼み込むようにして言うー。
「ーー…そういう問題じゃないんだよー…
福山さんの人生を奪う気は俺にはー」
加奈が戸惑いながら言うと、
茉莉は突然、親族や関係者らが集まっている
葬式会場の一室に向かって叫んだー
「ーー伸明の遺体に、この子が何かしようとしてますー!」
とー。
「ーー!?」
加奈が驚くー。
すると、駆け付けた伸明の親族が、
加奈を伸明の遺体から遠ざけようとし始めたー。
「ち、ちがっ!ちょっと、ちょっと待ってくれ!」
加奈は必死に叫ぶー。
がー、加奈に憑依した伸明は、伸明の遺体に近付くことが
できなくなってしまうー。
それでも、加奈は何とか伸明の遺体に近付き、
”身体を返そう”としたものの、茉莉の妨害もあってー、
ついに後日ー、伸明は加奈の身体から自分の遺体に戻ることが
できないまま、伸明の遺体は火葬されてしまったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーなんてことをー…」
加奈に憑依している伸明は、自分の遺体が火葬されてしまったからか、
加奈の身体から出ることができなくなってしまったー。
「ー…ーーもう、諦めてわたしと一緒にまたーー」
茉莉がそう言うと、
加奈は”君とは関わりたくない”と、そう言葉を口にするー。
「ーこの身体は、福山さんの身体だったんだぞ!
それなのにー…
ーーー”好きな人が生き返るなら、他の誰を犠牲にしても構わない”っていう
君の考えが、俺には理解できない」
加奈は頭を抱えながらそう呟くー
「くそっー…福山さんに、俺は身体を返せないー…
福山さんの人生を奪ってしまったー」
加奈は悲しそうに頭を抱えて、そのまま
茉莉の方に見向きもしなくなってしまったー。
茉莉はムッとしながらも「ま、また来るからねー」と、
そう声をかけて、いったん、加奈の家から立ち去るー。
「ーーーはぁ」
茉莉はため息をつきながら自分の家に帰宅するー。
「ーーでも…今はきっと混乱してるだけだよねー。
気持ちが落ち着けば、きっとー」
そんなことを思う茉莉ー。
気持ちが落ち着けば、伸明もきっと、加奈の身体で生きる決意を
してくれるー、
とー。
「ーふふー福山さんには悪いけど、
伸明が生き返って本当によかったー…!
…女同士になっちゃったのは、ちょっとアレだけどー」
茉莉は嬉しそうにそう呟きながら、
家の中の家事を始めるー
がーーー
その背後に、
”いた”ーー
伸明の身体が火葬され、
完全に加奈の身体に定着してしまった伸明ー。
その結果ー
”自分の身体”から追い出されて行き場を失った加奈の霊がーー
いたーー
”ーーー…許さないー”
加奈の霊は、茉莉の背後でそう呟くと、
さらに続けたー
”ー吉井さんのせいで、わたし、身体がなくなっちゃったー
ーーだったらーーわたしが、吉井さんの身体、貰うねー”
とー。
何も気付かず、家事をしていた茉莉ー。
そこにー
加奈の霊体が入り込むーー
「ひっ!?!?!?」
ビクッと震えて、持っていた食器を落とす茉莉ー。
「ーーーーーぁ…」
しばらくすると、茉莉は少しだけ笑みを浮かべながら
静かに言葉を口にしたー。
「ーーわたしの身体、吉井さんのせいで取られちゃったからー…
わたしは代わりに、吉井さんの身体、貰うねー」
とー。
乗っ取られてしまった茉莉は、
そのままゆっくりと歩き出すと、
静かに笑みを浮かべたー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
乗っ取られる側のことを、どうでもいい扱いしていたら、
最後には自分自身が乗っ取られてしまう結末でした~!…★!
お読み下さりありがとうございました~!!★

コメント
これは自分勝手すぎる茉莉の因果応報としか言いようがないですね。
この後3人がどうなるのか気になります。
感想ありがとうございます~!★★!
自業自得な結末ですネ~…!
続き…!★
続きも、いつか書けるかもしれません~!★!