<皮>人を皮にする妖刀①~異変~

江戸時代ー。
とある”妖刀”を手に暗躍する男がいたー。

その男が手にしている
その刀には”力”があったー。

斬った相手を”殺す”のではなく、
”皮”にしてしまうー…

そんな力がー……

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーー聞いたかいー
 助六(すけろく)さんのところの娘さんの話ー」

江戸時代ー、
街中で、二人の女が何やら話をしているー。

話の話題はー、
近所に住む職人・助六の”娘”の話題のようだー。

「ーーー助六さんのところのー?
 千代(ちよ)ちゃんのことかい?」
女の一人がそう言うと、
「そう!その千代ちゃん!」と、話を持ち掛けたほうの女が言葉を口にしたー。

「ーなんか最近ー、
 様子がおかしいらしいのよー。」

「ーーー……様子がおかしいー?」
もう一人の女が戸惑いながら言葉を口にすると、
最初に話を持ち掛けた方の女は言ったー。

「ーーまるで別人のようになっちゃってー、
 夜になるとどこかに出かけていくんだってー」

とー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

夜ー。

昼間に女たちが話をしていた職人・助六の娘・千代が
周囲を見渡しながら、外へと出かけていくー。

「ーーー……」
その様子を、物陰から一人の男が見つめていたー。

が、千代はそれには気付かなかったのか、
しばらく夜の街を歩いていくとー、
やがて、少し離れた場所で同じ街に住む呉服問屋の娘・お松と、
合流して、何やら話を始めたー。

「ー本当だよー。わたし、お松ちゃんのために、
 お父さんの病気を治す薬を作れる先生を見つけたんだから」

”最近様子のおかしい”千代がそう言葉を口にするー。
お松と呼ばれる子の父親ー、呉服問屋の主人は、
最近体調を崩していて、寝込んでいるー。

その病気を治せる先生を、千代が見つけたというのだー。

お松は、表情を歪めながらも、
「ーー…あ、ありがとうー。今から案内して貰える?」と、
そう言葉を口にするー。

千代は「もちろん」と、そう言葉を口にしながら、
ゆっくりと歩き出すー。

がー、お松に背を向けた千代の口元には
邪悪な笑みが浮かんでいたー。

どんどん人通りの少ない方に歩いていく千代ー。
流石に、お松も不安になったのか、
「あ、あのー千代さんー…どこへ向かってるんですかー?」と、
そう言葉を口にするー。

すると、千代は立ち止まってクスクスと笑い始めたー。

「そろそろこの辺りでいいだろうー」
とー。

「ーーえ…?」
お松が、より一層、不安そうな表情を浮かべると、
千代は邪悪な笑みを浮かべながら振り返ったー。

「バカな女だぜー」
と、そう言葉を口にしながらー。

「ーーえ…ち、千代さんー…?」
お松は戸惑った表情を浮かべながら千代の方を見つめるー。

すると、千代は
「ーお前も”この女”と同じようにーー
 ”着物”になるんだぜー ぐふふふふふふー」と、
邪悪な笑みを浮かべながら自分の胸を揉み始めたー。

「ーーち…千代さんー…?な、なにをしてー…?」
お松は戸惑うー。

千代が何をしているのか、理解できなかったー。

「ーー何をしてぇ?
 決まってんだろー?
 こいつのおっぱい揉んでるんだよー

 他に何があるってんだ?」

ニヤニヤしながら千代がそう言い放つー。

「ーーー…い、いったいー…ど、どういうーこと…?」
お松が呆然としていると、
千代は言ったー。

「ー安心しなよー。今から”身体”で教えてやるぜ」
千代がそう言うと、背後から気配がしたー。

「!!!」
ビクッとしてお松が振り返ると、
そこには背の高い笠を被った男が立っていたー。

「ーーーーーあなたはー」
そこまで言いかけたお松ー。

しかし、男は携えていた刀に手を触れると、
何も語ることなく、お松を真っ二つに切り裂いたー。

「ーー!?!?!?!?」
お松は、あまりの出来事に驚くー。

がー、不思議と痛みはなかったー。

頭からー、足の付け根ぐらいまで
”真っ二つ”にされた気がするー。

「ーーー…??????」

死んではいないー
痛みもないー

けれどー…”身体”が動かないー

”ーーど…どうなってー…?”
お松は戸惑うー。
この状況では、逃げることも
助けを求めることもできないー。

本当に”何もできない”ー
そんな、状況ー。

「ーー案ずるな。死ぬことはない」
笠を被った男は、刀を手にしたままそう言葉を口にすると、
「この剣は、”妖刀”ー」と、そう言葉を口にしたー。

横にいた千代が笑いながら、
その男の言葉を補足するー。

「ーお前は”着物”のように着られる立場になったんだー。
 ”この女”のようにー」

千代は、その場でしゃがみ込んで
”皮”になった状態のお松を見つめながら笑うー。

「ーーー……」
皮になってしまった”お松”に返事をすることはできないー。

が、千代は邪悪な笑みを浮かべると、
「ー安心しなー今からお前も”着られる”体験ができるんだからー」と、
そう言葉を口にしたー。

「ーーへへへー
 その娘ですかいー?」
背後から、さらに別の男の声がすると、
笠を被った剣客が頷いたー。

「ーあぁ、お前の新しい”身体”だー」
剣客がそう言うと、ニヤニヤしながら男が近づいて来てー、
そして”お松”の皮を拾うと
そのまま”お松”を着始めたー

「ーーうへへへへへ…すっげぇ…」
”顔”の部分だけ脱いだ状態のまま、
我慢できなくなったのか、
そのまま、お松を”顔意外”身に着けた男は
ニヤニヤとしながら、身体のあちらこちらを触りながら、
不気味な笑みと、気持ちよさそうな声を漏らすー。

「おいおいおいおいー…
 そのツラで喘ぐなよー気色悪い」

千代が腕組みをしながらそう言うと、
”お松”の顔以外の部分を既に身に着けていた男は
「おっとーこれは失礼ー」と、ニヤニヤしながら
”お松”の顔の部分も完全に身に着けて笑みを浮かべたー。

そしてー、お松を着た男は、
笠を被った剣客の男の方を振り返ると、
「ーー先生、ありがとうございますー」と、そう言葉を口にしたー。

「ーふんー。礼を言われるほどのことではないー。
 全てはこの”刀”の力だー。」

人を皮にする妖刀を手に、剣客がそう言葉を口にすると、
「ー報酬は既に貰っているー。
 あとは、お前たちの好きにするが良いー」と、
それだけ呟いて、そのまま立ち去っていくー

”ククククー”
剣客の男は、一人になると
静かに笑みを浮かべながら”刀”を見つめるー。

妖刀・”人崩し”と呼ばれるその刀は、
斬った相手を”殺す”ことはないー。

変わりに斬った相手を、まるで着物のように
”他人が着ることができる状態”=皮にしてしまう。

皮にされた人間は、それを身に着けた人間に
身体も意識も乗っ取られてしまうのだー。

「ーーーこの力で、一人一人娘たちを暴れさせてー、
 江戸中に大混乱を起こしてくれるー」
笠を被った男は、そう言葉を口にすると笑みを浮かべるー。

彼の目的はー、
”江戸の世を混乱に陥れること”だったー。

そのために、罪を犯した罪人たちに
”皮にした者”の身体を提供し、
その数をどんどん増やしているー。

奴らは、”どのような姿”であろうとも、
どのみち悪事を働くー。

先程の女たちのようにー、
”ごく普通の人々”の中に、”罪人に乗っ取られた人間”を
増やしていくことで、やがて世の中は混乱に陥っていくー。

「ー混乱こそ、快楽ー
 むふふふふふふー…」

笠を被った男は、そう言葉を口にすると、
そのまま闇の中へと消えて行ったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーおはようございますー」
江戸の町では、職人・助六が、
近所の住人たちに対して、
いつものように明るい挨拶を投げかけていたー。

「ーーお、助六ー
 元気にやってるか?」

そこに通りがかったのは、職人仲間の大五郎(だいごろう)ー。

何かと仕事でも世話になっている男だー。

「おぉ、大五郎さんー。
 まぁ、それなりに元気ですよー」
助六は、少し暗い表情を浮かべながらも、
心配させまいと笑顔を振りまくー。

が、大五郎は「聞いたよ、千代ちゃんのこと」と、
助六の娘・千代のことを口にするー

「ーまた、問題を起したんだって?」
とー。

あの後ー
”皮”にされて乗っ取られたままの千代は
夜になると、家を出ていき、悪事を繰り返していたー。
先日も、知り合いの食事処で無銭飲食を起こし、問題を起こしたばかりー。

「ーーーへへー…千代が何を考えているか分からなくてー」
そう言葉を口にすると、助六は自虐的に笑うー。

「俺は職人としては良くても、親としてはダメだったのかもしれませんね」

助六のそんな言葉に、
大五郎は少し周囲を見渡しながら小声で言うー。

「いや、実は千代ちゃんだけじゃねぇんだー」
とー。

「ーどういうことです?」
助六が大五郎の方を見ると、
”似たような事例が、何件も起きてる”と、そう言葉を口にしたー。

「似たような事例ー?」
助六が目を細めるー。

すると、大五郎は言ったー。

「千代ちゃんのように、急に人が変わったようにー、
 悪さをする子が、隣町でも何人も出てるんだー

 俺の知る限りー、
 ”その子が絶対にしないようなこと”をした子もいるー。

 おかしいと思わねぇか?」

大五郎の言葉に、助六は表情を歪めるー。

「ーーーーー…千代の身にも何かが起きているかも
 しれないってことですかー?」

助六が言うと、大五郎は頷くー。

「もちろん、単に千代ちゃんが
 自分の意思で道を踏み外しただけって可能性もあるー」

 ただー…
 俺ぁどうしても気になるんだー。
 最近、何人も何人も”急に様子がおかしくなった”って子の
 話を聞いてるんでな」

大五郎の言葉に、助六は
深刻な表情を浮かべながら、やがて、
「ーわざわざ教えてくれて、ありがとうございます」と、
静かに頷くー。

「ー助六、おめぇも職人である前に父親だー
 千代ちゃんのこと、ホントは心配してるんだろ?」

大五郎は、”いつもと同じように”仕事をしている助六の身を
心配してそう言葉を口にすると、
「ーえ…えぇ、まぁー」と、頷くー。

「ー俺にできることがあれば、力になるからさー。
 娘も大事にしなくちゃな」

大五郎のそんな言葉に、助六は「ありがとうございますー」と
今一度言葉を口にすると、
娘の千代の身を案じて、大きくため息をついたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

夜ー。

「ーーー……」
仕事が終わると、助六は今日もどこかへと出かけていく
千代の姿を確認して、物陰に身を潜めながら、
千代の尾行を開始したー。

「千代ー…」
千代は、どこへ向かおうとしているのだろうかー。

尾行を続けると、やがて千代の前に
呉服問屋の主人の娘・お松が姿を現したー。

”あの子は確かー”
そう思いながら、助六はその様子を見つめるー。

すると、お松は、何やらニヤニヤしながら
千代と話をしているー。

「ーーへへへー今夜も楽しもうぜ」
お松がそう言ったー。

”ーーー…”
助六は、困惑の表情を浮かべるー。

”お松ちゃんー、あんな風に話す子だったかー?”
とー。

がー、続けて自分の娘である千代が
邪悪な言葉を口にしながら、
笑みを浮かべたー。

「ーーまさか”俺たち”のような罪人に
 こんな天国のようなことが起きるなんてなぁ」
とー。

”ち…千代ー?”
自分の娘が、自分のことを”俺”と言ったー。

しかも今、”罪人”と言っただろうかー?

そんなことを思いながら、
助六は歩き出した二人をさらに尾行し始めるー。

がー…
向かった先で見たのは、信じられない光景だったー。

千代と、お松が
抱き合いながらキスをしてー、
喘ぎ狂う欲望の世界ー。

「ーーーー…な…なにが…起こってー…」
あまりの光景に、助六は身体が動かなくなってしまうほどの
衝撃を受けたー。

がー、そうこうしているうちに、ボロい建物の中で
欲望の時間を楽しんでいた千代とお松が、
”お楽しみ”を終えたのか、建物の外に出る準備を始めるような、
そんな会話が聞こえたー。

「ーーー!!」
慌てて身を隠す助六ー。

千代とお松は、助六に気付くことなく、
そのまま男のような口調で話しながら立ち去っていくー。

「ーーーー……」
ゴクリと唾を飲み込む助六は
”娘”の身に何かが起こっていることは間違いない、と、
そう確信するのだったー。

②へ続く

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江戸時代を舞台とした皮モノですネ~!

人を皮にする妖刀を手に暗躍する男と、
皮にされてしまった人々ー。

続きはまた明日デス~!

※今日は私の都合でいつもより早い時間(0時過ぎ)に投稿しました~!☆

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皮<人を皮にする妖刀>

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