<皮>人を皮にする妖刀②~対峙~(完)

人を皮にする力を持つ謎の妖刀ー。

その刀で切られた娘たちは、罪人に着られ
乗っ取られてしまったー。

娘たちの豹変の理由を探る父親の運命はー…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーー…!誰だー?」
男がそう言葉を口にするー。

その視線の先には笠を被った男の姿ー。

「ーーククククーお前を”斬らせて”もらうー」
笠を被った男はそう言葉を口にすると、
相手の男は驚いた表情を浮かべるー。

「ー安心しろー。痛みはないし、死にはしないー。
 ただー」

笠の男はそう言葉を口にすると、
笑みを浮かべながら言葉を続けたー。

「ただ、ちょっとその身体が”皮”になるだけだー」
とー。

直後、男の”人を皮にする妖刀”が、
相手の男に襲い掛かったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

同時刻ー。
助六は、千代とお松の尾行を続けたー。

「ーーーー…」
先程、千代とお松は二人で、淫らな行為を楽しんでいたー。
2人とも、そんなことをするような子ではないー。
助六からすれば、”信じられない光景”でしかなかったー。

”ーいったい、どうなっている?”
娘である千代の身と、知り合いである呉服問屋の娘・お松の身を案じる
助六ー。

がー
少し尾行を続けると”信じられない光景”が、目に入ったー。

”お松”が、突然自分の後頭部を触りながら、

「ーーあ~~~~…ず~っと着てると
 なんか、蒸れる感じがするんだよなー」
と、言葉を口にすると、
突然、”顔”を脱ぐかのように、ベリッと、自分の頭を剥がしーー、
”中から”見知らぬ男が出て来たのだー。

「ーー!?!?!?」
あまりの光景に、助六は思わず言葉を失ってしまうー。

”な、な、なんだ…あれはー”
呆然とする助六ー。

”お松”の顔がまるで、”フード”のように後ろに垂れ下がった状態で、
男が首だけを出した状態ー。

「おいおい、誰かに見られてたらどうするんだ?」
そんな”お松”から男が出てきた光景を前に助六の娘・千代が
笑みを浮かべながらそう言葉を口にするー。

”ば…バカなー…な、なんだあれはー…”
助六が戸惑っていると、ガタッ!と、近くの樽にぶつかって
音を立ててしまうー。

「ーーー誰だ!?」
娘の千代が信じられないぐらいに恐ろしい声でそう言葉を口にしたー。

助六は、必死にその場から逃げたー。
我を見失うほど必死に逃げたー。

逃げずにはいられなかったー。
あまりの光景にー。

娘の千代の身に何かが起きているー。
それは分かったー。
そんな千代に何もしてあげられないまま、
気付けば必死に逃げていた自分を、助六は情けなく思いながらも、
どうすることもできなかったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーおぅ助六ー」

翌朝ー。
職人仲間の大五郎が助六の元を訪れたー。

助六は青ざめた表情で、「あぁ…大五郎さんー」と、
やっとの思いでそれだけ言葉を口にするー。

そんな助六の様子を見た大五郎は
少し心配そうに呟くー

「何か、あったのかー?」
とー。

助六は少し考えてから
「あぁ、いえー…そのー」と、そう言葉を口にすると、
大五郎は「やっぱり、何かあったんだなー?」と、そう言いながら
「ーー全部、話してくれー。俺も力になるよ」と、言葉を付け足したー。

「大五郎さんー…すまねぇ」
助六はそう言うと、昨日見た光景ー
自分の娘の千代と、呉服問屋の娘・お松のことを告げたー。

「ーーほぅー…そんなにハッキリ見たのかー」
大五郎はそう呟くと、少し間を置いてから
「ーいや、信じられないが…助六、お前が言うなら本当なんだろうな」と、
そう言葉を口にしたー。

「ーーーーー…俺も、信じられませんよー。
 千代の身に一体何が起こっているのかー」
助六がそう言うと、大五郎は「その話なんだがー」と、そう前置きしてから
言葉を続けたー。

「ー実は、おかしくなった子の一人が、前日、
 町外れの神社を訪れたって話があってなー」
大五郎がそう言葉を口にすると、
助六は少しだけ表情を歪めるー。

「町外れの神社ー…?以前、人斬りが目撃されたって噂もあるところですか?」
助六がそう言うと、大五郎は頷くー。

「それに、様子のおかしくなった娘たちが、
 夜にそこを出入りしてるって話も聞いたー」
大五郎はそこまで言うと、表情を曇らせるー。

町外れの神社は、夜になると人通りがほとんどなくなり、
以前にも人斬りが現れたことがあるほか、
汚職を働く同心が、悪党と密談をするような場所に使ったり
することもある、そんな場所だったー。

「ーーーーそこに、何か関係があるかもしれない、とー…
 そういうことですね?」
助六がそう確認すると、大五郎は静かに頷くー。

「ーーー」
昨夜の千代の姿を思い出しながら、
助六は、その町外れの神社に足を運ぶ決意をするー。

そんな助六を見て、大五郎は口を開くと、
「ー助六、俺も一緒に行くー。
 俺ぁ、子供はいねぇけど、心配する親の気持ちは分かるー。
 助六、お前の力になりてぇんだ」
と、そう言葉を続けたー。

「ーー大五郎さんー。ありがとうございます」
助六はそう言葉を口にすると、
大五郎は「ははー、そんなに気にすんなって」と、
助六の肩をポンポンと叩いたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

夜ー。

「ー千代、どこに行くんだ?」

今日も、夜にどこかへ向かおうとする千代を
呼び止める助六ー。

千代は「父上には関係ありませんわ」と、
愛想なく答えるー。

「ーーー…ーーー」
助六は、千代に食い下がろうとしたものの、
それ以上は何も言わなかったー。

これから助六は、大五郎と合流して
例の神社へと向かうー。
今ここで、事を荒立てることはせず、
”千代の身に何が起きているのか”
それを、探りたかったー。

「ーーーふん」
千代は、不満そうにそのまま立ち去っていくー。

助六は娘の豹変に心を痛めながらも、
そのまま、”神社”に向かって移動する準備を始めるー。

「ーー助六ーこっちだー」
途中で、昼間のうちに約束しておいた場所で
職人仲間の大五郎と合流する助六ー。

「ーーさっき、娘が一人、あの神社の方に向かって行ったー」
大五郎の言葉に、助六は「ーやっぱり、何かありそうですね」と、
そう呟くと、大五郎も「あぁ、俺も同感だー」と、頷いたー。

大五郎が「俺についてこいー」と、そう言葉を口にして
先に神社へと向かうー。
助六も、そんな大五郎の後を追って、
神社の中へと向かうもー、
するとーー
物陰から、女が一人、また一人と姿を現したー

その中には、呉服問屋の娘である”お松”の姿もあるー。

「ーーーー!き、君達はー」
助六がそう言葉を口にすると、
お松は笑ったー

「ーー”俺たち”のことを嗅ぎまわってる職人はお前かー」
と、そう言葉を口にしながらー

「ーー…!」
助六は困惑の表情を浮かべるー。

”お松”は、こんな言葉遣いをする子ではないー。

いやー
周囲にいる女たちも、邪悪な笑みを浮かべながら
まるで男のような言葉を投げかけて来るー。

そしてーーー

娘の”千代”も、姿を現したー。

「ーーー父上ー…くくくーバカな人ー」
と、そう微笑みながらー

「ち、千代ー…こ、ここで一体何をー!?」
助六がそう言うと、
横にいた大五郎が、突然笑いだしたー。

「ーだ、大五郎さんー!?」
助六は困惑した表情を浮かべたまま、
大五郎の方を見つめたー

すると、大五郎は言ったー。

「ー助六ー
 ここにお前を呼んだのはー
 我々のことを嗅ぎまわる邪魔者を始末するためだー」

とー。

「ーーな……何ですってー!?」
助六は驚きの表情を浮かべながら
大五郎を見つめる。

「ま、まさかー…だ、大五郎さんー
 最初から俺を騙してー!」

助六がそう叫ぶと、
大五郎は「いいや、違うー」と言いながら
突然、自分の”顔”を剥がしたーーー

”大五郎”が、まるで着ぐるみのようになって、
中からー笠を被った剣客が姿を現したー

「クククー
 お前と、この男が我らのことを探っていることに
 気付いたのでなー
 まとめて始末するために、この男の”身体”を利用させてもらったー」

剣客の言葉に、助六は「そ、それは一体どういうー?」と、
そう言葉を口にするー。

「ーー…まぁ、言葉だけではなかなか理解できぬだろうー」
そう言葉を口にすると、剣客は「おい」と、千代の方に向かって
声を発すると、千代は笑みを浮かべながら、神社の奥から、
女を引きずり出して来たー。

縛られた女が悲鳴を上げるー。

「ー今からこの妖刀”人崩し”の力をご覧いただこうー」
剣客の男はそう言うと、刀を見つめながら邪悪な笑みを浮かべるー。

そしてーー
縛られた女に向かってその刀を振るったー。

助六は思わず目を逸らすー。

しかしー……
縛られた女の身体から”血”が噴き出したりするようなことは
起こらずー…代わりに、女の身体が真っ二つに割れて、
”皮”のようにペラペラとなってその場に崩れ落ちるー。

「これが、妖刀・人崩しの力よー。
 人を殺さず、”乗っ取るー」

そう説明しながら剣客の男は
たった今、皮にした女を掴むと、
そのままその女を目の前で着て見せたー。

「ーふふふふふふ どうだー?
 素晴らしいだろうー?
 姿形も、声も、元々のそいつ、そのものとなるー」

女の身体を乗っ取った剣客の男が
得意気な表情を浮かべながらそう宣言するー。

そんな光景を前に、助六が呆然としていると、
「ま、まさか千代もー、大五郎さんも、お松ちゃんも、お前がー!?」
と、そう叫ぶー。

「ーククククー そうだよー 今更気付いたのかー?」
横にいた娘の千代が笑いながら言葉を口にするー。

「ーそ、そんなー…き、貴様…!ゆるせねぇ!」
助六が、娘の千代をなんとか助け出そうと、
千代の方めがけて突進していくー。

しかしー

「へへへへーバカな”父上”」
千代はそう言うと、他の女たちが助六を取り押さえるー。

身動きが取れなくなった助六は悔しそうに
「は、離せ!千代を返せ!」と、必死に叫ぶー。

「ーーーこんなことをして、何になるって言うんだ!」
助六がそう叫ぶと、
女の皮を半分脱いだ状態で、剣客の男が笑みを浮かべたー。

「ー俺は今の幕府に不満があるのでなー。
 幕府を転覆させるために、
 罪人をこうして野に解き放ち、混乱を引き起こそうとしているのだー。

 ーーお前に恨みはないが、これも我が目的成就のため」

笠を被った剣客の男がそう言うと、
横にいた千代が笑みを浮かべたー。

「ーー喜んで父上ー。
 最後はわたしが、可愛い可愛い娘のわたしがー、
 その息の根を止めてあげるからー」

千代がそう言いながら笑みを浮かべるとー、
助六は怒りの形相で千代を睨みつけたー。

「千代を今すぐ解放しろ!
 ーー…俺の身体なら好きにしていい!千代だけは!」

助六がそう叫ぶー。

がーー…千代は笑ったー。

「ーー俺はー”小娘の身体”の方が好きなんだよなァー」
と、そう笑みを浮かべながらー

「貴様ァ!この外道め!」
助六が怒りに任せて叫ぶー。

けれども、もうどうすることもできないー。

「ーこの男は”皮”にしなくていいんですか?」
千代が、剣客の男にそう言うと、
「構わんー。秘密を探ろうとしている者を生かしておけば
 後々災いになるやもしれんからなー」と、
剣客の男はそれだけ答えたー。

「ーだ、そうだー
 残念だったなー

 ”父上”」

千代はそれだけ言うと、受け取った小刀を手に、
それを助六の方に向けるー。

「ー大丈夫ー。”わたしの身体”はー、
 ”着物”として、これからも生き続けるからー

 だから、父上は安心して、お眠りくださいませー」

「ーーふ、ふざけるな…!貴様らぁ…!」
もがく助六ー。

けれどー、抵抗むなしく娘の千代に
小刀で刺されてしまった助六はその場でふらふらとした後に
倒れ込んでしまうー。

「クククククー…
 娘の異変など気にせず、普段通り暮らしていれば
 もう少し長生きできたものをー」

剣客の男は、そう言葉を口にすると、
”女を乗っ取った罪人たち”を見て、
笑みを浮かべるー。

「ーー協力、感謝するー。
 お前たちは引き続き、好きなように生きるがいいー」
剣客の男は、それだけ言うと、
そのまま闇の中へと姿を消していくー。

”人を皮にする妖刀”ー、
それを手にした男は、不気味な笑みを浮かべると、
”必ず、幕府を転覆させてやるぞー”と、
そんな言葉を口にしたー。

そしてーーーー

幕府の転覆を目論む男ー

いやーーーー
”刀”はー、”己の所有者”として、宿主とした男の身体で
邪悪な笑みを浮かべると、
目を赤く光らせながら、そのまま姿を消したー。

おわり

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コメント

江戸時代を舞台とした皮モノでした~!

黒幕は剣客の男ではなく…刀のほうなのデス…!
このあとも、大変なことになりそうですネ~…!

お読み下さりありがとうございました~~!!

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皮<人を皮にする妖刀>

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