クラスメイトの一人を”洗脳”し、
”わたしはあなたの親友”だと語りー、
その子の友達として過ごす彼女ー。
その彼女の目的とはー…?
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成田 架純(なりた かすみ)は、
男女問わず、信頼されている生徒会長ー。
先生たちからの評判も良く、
その評判通り、真面目で優しい性格の持ち主だー。
ある日ー、
架純のクラスメイトである
村中 千鶴(むらなか ちづる)は、
そんな架純に呼び出されたー。
千鶴は、普段から何事にも興味を示さない、
冷めた性格の持ち主で、
クラスの人気者である”架純”に対しても、
正直、興味はないー。
架純と友達になれることを
とても喜んでいる子もいるしー、
中には架純と話をすることができただけで、
喜んでいるような子もいるけれどー、
千鶴は、そんなことに興味はなかったし、
誰とも親しくなるつもりはなかったー。
そんな彼女が、架純から呼び出されたのだー。
”ーわたし、なんかしたっけー?”
面倒臭そうにしながら、
呼び出された生徒会室に向かうと、
そこには、既に架純が待ち構えていたー。
可愛らしい容姿に、人気も才能も持ち合わせている架純ー。
けれどー、千鶴からすれば
そんなこと、別にどうでもいいー。
”持ってる”人間は、それでいいし、
自分のように”持ってない”人間はそれなりに生きていくだけだー。
「成田さんー…何か用ー?」
千鶴が、それだけ言葉を口にすると、
架純は「村中さんー…急に呼び出してごめんねー」と、
申し訳なさそうに言葉を口にしたー。
生徒会長の千鶴はそのようなタイプではないものの、
急に呼び出されたということは
”もしかしたらいじめでも始まるのかもしれない”と、
そう予想していた千鶴ー。
が、架純の笑顔を見る限り、
そういうことではなさそうだったー。
「ーーー…突然だけど、村中さんってわたしのことどう思ってるー?」
架純が突然、そんな言葉を口にするー。
「ーーーえ?ーーー…ホントに突然だねー…何それ?」
千鶴は少し困惑しながらそう言葉を口にすると、
架純は笑いながら、
「”わたしがどう見えるか”村中さんに聞くのが一番
素直な答え貰えるかなって思ってー」と、
急に変な質問をした理由を口にするー。
クラスのみんなに聞いても、
”嫌われたくない”とか”社交辞令”とかで、
”本音の答え”が返ってこないのではないかと、
架純はそんなことを思っている様子だったー。
「ー…村中さんなら、思ったこと素直に言ってくれそうだし、
厳しいこともズバズバ言ってくれそうな気がするからー」
架純がそう言葉を付け加えると、
千鶴は少しだけ笑いながら
「まぁ、確かにー」と、頷くー。
「ーーー…それでー、わたしのこと、どう思ってるー?
周囲から見てわたし、嫌な感じだったり、偉そうな感じだったり、
そういうの、ないかなー?」
架純が、少し不安そうにしながらそう言葉を口にすると、
千鶴は少しだけ溜息をついたー。
「ー別に何もー」
と、そう言葉を呟きながらー。
「ーなにも?」
架純が少し意外そうな表情を浮かべるー。
そんな反応に、千鶴は頷くと、
「ーそう。何もー。わたし、他の人に興味ないしー、
成田さんにも興味ないからー
普段、成田さんがどうしてるかもあまり見てないしー。
だからー、成田さんのことどう思ってるかー、の質問の答えは
”何とも思ってない”って感じー」
と、そう”答え”を口にしたー。
「ーそっかー」
架純は少しだけ笑顔を浮かべると、
千鶴は「じゃ、わたしは帰るからー」と、人気者の架純に対しても、
”自分をよく見せよう”とするような素振りを一切見せないまま
そのまま立ち去ろうとするー。
だがーーー
「ーーーーー」
架純は、ポケットから”指輪”を取り出すと、
それを静かに指にはめたー。
その指輪はーー…
”他人を洗脳する力”を持つ、特殊な指輪ー。
死んだ祖母の家から発掘されたー、
不思議な力を持つ指輪ー。
千鶴の答えに腹が立ったのか、
架純はそれを指にはめると、
「ーー村中さんー!」と、立ち去ろうとしている千鶴に
向かって声をかけたー。
「ーー?
なに? まだ何か話、あるのー?」
少し面倒臭そうにそう呟く千鶴ー。
しかしー、その時だったー。
架純は”指輪”の力で、特殊な力を目から放つと、
「あなたは、わたしの親友ー」と、そう言葉を口にするー。
「ーーー…ぁ…」
千鶴の目が、とろんとしたような目になって、
架純はそれを確認すると笑みを浮かべるー。
「ーあなたは、わたしの親友ー
わたしは、あなたの親友ー
わかったー?」
架純が指輪の力を使いながら、繰り返し繰り返し、
”刻み付ける”ように、そんな言葉を続けるー。
「ーーわたしはー……成田さんの親友ー……
成田さんの親友は…わたしー」
千鶴は、虚ろな目のまま、そんな言葉を口にするー
そんな様子を、満足そうに見つめながら
生徒会長の架純は、さらに言葉を続けたー。
「ーーねぇ、”成田さん”じゃなくて、
”架純”でいいよー?
わたしも、あなたのこと”千鶴”って呼ぶからー」
架純がそう囁くと、
千鶴は「うんーー…架純ー」と、嬉しそうに
そんな言葉を口にしたー。
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翌日ー。
何にも興味を示さなかった千鶴は
嬉しそうに架純と雑談をしていたー。
「ーねぇねぇ、千鶴ー。
去年、わたしがあげた誕生日プレゼント、まだ持ってるー?」
生徒会長の架純が”洗脳”の効果がちゃんと出ているかどうかを
”試す”ために、そんな言葉を口にするー。
昨日、千鶴を洗脳したあとに
”お守り”を”これは、わたしからの去年の誕生日プレゼント”と
刻み付けて、それを渡したー。
「ーーーーうん!これでしょ!いつも大切に持ってる!
架純とわたしの絆の証だもんね!」
千鶴が嬉しそうに言うと、
架純は内心で笑みを浮かべながら、
表では優しい表情で微笑むー。
「ふふー。ずっと大切にしてくれて嬉しいー」
架純はそれだけ言葉を口にすると、
「ーわたしと千鶴は、これからもず~っと、ずっと、
友達だからねー」と、
囁くようにして、言葉を口にしたー。
「ーうん!」
嬉しそうに微笑む千鶴ー。
そんな千鶴との話を終えると、
架純は満足そうに、いつも良く話している友達のところに
歩いて行って、いつも通りの雑談をし始めるー。
その架純の後ろ姿を、微笑ましそうに見つめる千鶴ー。
がー、千鶴はふと、”違和感”を覚えるー。
”ーー……あれ?わたしー…?”
架純のことを”親友”だと思い込まされてしまった千鶴ー。
しかし、それでも千鶴の根本的な性格は変わらないー。
何事も面倒臭いと、全てを避けようとする性格はそのままだし、
友達と群れるつもりがない性格もそのままー
それなのにー
それなのに、どうして”架純”とは仲良くなったんだろうー?
と、そんなことを考えるー。
けれど、考えれば考えるほど、
”架純との楽しい思い出”が頭の中に浮かんできてしまって、
その疑問は打ち消されてしまうー。
最初から”疑問”など、感じていなかったかのようにー。
「ーーー架純は、わたしの親友ー」
ボソッと呟く千鶴ー。
そんな千鶴の姿を、友達と話しながら
チラッと確認した架純は、満足そうに笑みを浮かべたー。
がーーー
その日の夜ー。
家でのんびりしている際に、千鶴はハッとした様子で、
表情を歪めたー。
「ーーえ…わ、わたしー…」
千鶴は、表情を歪めるー。
”架純は、親友ーー”
その洗脳が、突然、解けかかったのだー。
「ーーー…え…?な、なんでー…?
なんでわたしが成田さんのことー?」
表情を歪める千鶴ー。
生徒会長の成田 架純ー。
彼女は”親友”などではないー。
正直、千鶴からはどうでもいい存在だー。
いや、架純だけではないー。
他のどのクラスメイトも千鶴からすれば
”わたしの人生の背景”でしかないー。
千鶴の人生という名の物語からすれば
”ただのモブキャラたち”なのだー。
それなのに、どうして架純のことを
昨日から、”親友”だと思っていたのかー。
千鶴は表情を歪めながら
”昨日”の出来事を思い出すー。
架純のことを急に”親友”だと思い込んでしまったのはー
確か、昨日、放課後に架純から呼び出されたあとー。
「ーーー…あのとき、何かされたー…?」
千鶴は困惑の表情を浮かべるー。
あの時、”架純”に何かされたのかもしれないー。
そう思いつつ、千鶴は表情を歪めると、
すぐに”え…、でもー…”と、考え込むー。
生徒会長の架純が”何かをして”まで、
千鶴を友達に仕立て上げる必要など、
何もないのだー。
「ーーーー……わたしなんかと友達になってー
どうするつもりだったのー?」
戸惑う千鶴ー。
生徒会長・架純の周りには友達がたくさんいるー。
千鶴などと友達にならずとも、
友達には”不自由”はないはずなのだー。
友達が誰もいないのなら分かるしー、
架純自身に、千鶴に執着する理由が何かあるなら別だけれどー、
千鶴からすれば、”架純に執着される思い当たる理由”もない。
当然、深い因縁のようなものもないー。
高校生になって初めて出会った
”同じクラスだけど、特に深い接点はない相手”でしかないのだー。
「ーーーー…」
千鶴は、どうして自分がついさっきまで”成田さん”のことを
親友だと思っていたのか、その理由が分からず困惑しながらも
大きくため息を吐き出すと、
面倒臭そうに、架純から”去年の誕生日プレゼント”だと思い込まされて
渡されたお守りを、そのままゴミ箱へと
投げ捨てるのだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー。
先生と楽しそうに話をしていた生徒会長の架純が
学校にやってきた千鶴に気付くと、
「千鶴ー。おはよー!」と、楽しそうに声を掛けて来たー。
がーー
「ーー”成田さん”おはようー」
千鶴は愛想なく、挨拶だけサッと済ませると、
そのまま”これ以上話す気はない”と言わんばかりに
架純の横を通り過ぎていくー。
「ーー!?」
その反応に架純は表情を歪めるー。
”どうしてー!?確かに洗脳したはずなのにー”
そう思いつつ、架純はすぐに千鶴の後を追って
千鶴に駆け寄ると、
「ーど、どうしたの”千鶴”ー?
なんだか、今日は機嫌、悪くないー?」と、
困ったような笑顔を浮かべながら
そう言葉を口にしたー。
「ーー別にー
いつもこうだけどー」
千鶴がそれだけ言うと、架純は
「ーわ、わたしたち、”親友”だよねー?」と、
そんな言葉を口にしたー。
「ーーーーー…」
千鶴は、そんな架純の目を見つめながら
少しだけ表情を歪めると、
「一昨日、わたしに何かしたの?」と、不満そうに
言葉を口にしたー。
「ーーえ…」
架純はドキッとした表情を浮かべるー。
「ーー昨日のわたし、何か変だったー。
成田さんのこと、親友だと思い込んでたしー。
ーーおととい、わたしを呼びだした時、
何かしたでしょ?」
千鶴が問い詰めるような口調でそう言うと、
架純は露骨に動揺した様子を見せながら
「え…???え…???
な、何のことかなぁ~?」と、そう言葉を口にしたー。
”ーーーーチッーどうしてー?”
誤魔化しながらも、架純は内心で怒りを覚えながら
言葉を口にするー。
そしてーーー
誤魔化す仕草をしながら、再びポケットから指輪を取り出すと、
それを指にはめるー。
「ーーー!!」
千鶴がそれに気づくー。
が、架純の方が千鶴の反応よりも早かったー。
「ーーあなたはわたしの親友ーーー」
「あなたはわたしの親友ーー」
洗脳が解けてしまった千鶴に対し、
再び、執拗に洗脳を行う架純ー。
「ーーーぅ……そ…それーーな…何なのー?」
なおも抵抗する千鶴ー。
がー、架純は
「知る必要なんてないー」と、真顔で言うと、
「ーーあなたはわたしの親友ー」
「あなたはわたしの親友ー」と、さらに言葉を続けるー。
「ーーーー…~~~~~」
千鶴は、”架純は、わたしのー”と、術に支配されながらも
声を上げたー。
「ーわ、わたしなんかを親友にしてーー
ど、どうするつもりなのー?」
とー。
しかしー
架純はそれを無視して続けたー。
”あなたは、わたしの親友”
だとー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーごめんねー架純ー さっきは変なこと言ってー」
再び支配されてしまった千鶴は、
また、”架純”を親友だと思いながら、嬉しそうに微笑むー。
「ううんー。千鶴も、きっと疲れてたんだよー」
架純はそう言葉を口にすると、内心で邪悪な笑みを浮かべたー…
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
いったい、何が目的で
親友に仕立て上げようとしているのかは…
明日の更新を待ってくださいネ~!★
今日もありがとうございました~!!
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