<MC>わたしはあなたの親友②~理由~(完)

人を操る力を用いて、
クラスの子に自分のことを”親友”だと思い込ませようとする
生徒会長ー。

生徒会長の彼女が、その子に固執する理由とはー…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーーーーー!!!」

夜ー
自宅で、”親友”の生徒会長・架純と
楽しそうに連絡を取り合っていた千鶴は、
表情を歪めたー。

「ーーー…ま…またー…」
千鶴が呆然としながら、そう呟くー。

”また”だー。
千鶴は、突然我に返ると、
困惑した表情のまま、生徒会長の架純のことを思い出すー。

何事にも興味を持たず、
友達を作る気もない千鶴ー。

当然、人気者である生徒会長の架純にも興味はないー。

なのに、何故ー?

「あの指輪ー…
 やっぱり、わたしに何かしてるー…」

千鶴は、”架純”のことを親友だと思ってしまう直前のことを
頭の中で思い浮かべるー。

架純は、何か指輪のようなものを使っていたー。
それの力で、千鶴は架純のことを親友だと思ってしまいー、
また、抜け出せなくなっていたー。

”わたしが、わたしでなくなる不気味な感覚”ー。

おぞましい恐怖すら覚えるー。

「ーーー…もしも、”ずっと”そのままだったらー…」
千鶴は震えるー。

何故かは分からないけれど、
架純の”洗脳”とも言える力は、
時間と共に元に戻るのかー、
千鶴は2度、我に返っているー。

がー、もしも”ずっと”その状況から
抜け出せない、なんてことになってしまった場合ーー

考えただけでゾッとするー。

”洗脳”とでも言えば良いのだろうかー。
正気を取り戻すまでの時間はー、
確かに、”架純”のことを親友だと思い込んでしまっているー。

その状況が言葉に言い表せないぐらい、恐ろしいー。

「ー大体、なんでわたしなんかとー」
千鶴は不満そうに呟きながら、
スマホを見つめるー。

生徒会長の成田 架純は、そもそも人気者で、
誰からも慕われるような生徒会長だー。

それなのになぜ、
友達を作る気もなく、いつも一人でいるような
千鶴を”親友”に仕立て上げようとするのかー。

その目的が分からないー。

「ーわたしを親友にしたって、成田さんに
 メリットなんて何もないはずなのにー

 …よく分かんない」

千鶴は不満そうになおも呟くー。

千鶴を”親友”にしても、
元々友達の多い架純が何か得をすることはないと思うし、
千鶴と友達になりたい、と思っている可能性は低いー。
そもそも、千鶴と架純にはほとんど接点がなく、
”成田さんから好かれる理由”が、千鶴には思い当たらないー。

と、すれば嫌がらせ目的だろうかー。

けれどー、架純に嫌われるようなことも
千鶴としてはしたつもりはないしー、
嫌がらせ目的だとしても、
”親友”に仕立て上げるという行為が良く分からないー。

「ーーーー」
千鶴はため息をつきながら、
「面倒くさー」と、そう言葉を口にすると、
その翌日ー

架純に直接問いただしたー

「ーえっ…」
架純が驚くー。

「ーわたしに、何をしてるのー?
 この前の指輪、どんな秘密があるの?」
千鶴が不機嫌そうに呟くー。

架純は気まずそうにしながら、
「ー…わ、わたしと千鶴は親友ーーでしょ?」
と、そう言い放つー。

がー、千鶴は「いい加減、面倒臭いんだけどー。
どういうことー?」と、表情を歪めるー。

がー、架純は”どうしてー?”と、
そう呟くと、”また”指輪を手に、
それを千鶴に向けたー。

「ーそ、その指輪!!
 何なの!?」
千鶴がそう叫ぶー。

しかしー
「あなたはわたしの親友ー」
「あなたはわたしのことが大好きー」
「ーあなたは、わたしの親友ー」

架純が、そう呟き始めるー。

「ーーー~~~~っ」
千鶴は自分の感情が”歪んでいく”ことに気付きながら、
「ーーーこ、これはー一体なんなのー!?」と、
なおも聞くー。

がー、やがて、目の前にいる架純のことが愛おしく
なっていくのを感じるー

「ーーーダメーーー…こ、このままじゃー」
千鶴は、自分に言い聞かせるようにしてそう呟くー。

言葉に言い表すことのできない不気味な感覚ー。
自分の考えが捻じ曲げられていきー、
”そのこと”すら認識できなくなる恐怖ー。

「ーーこれは一体、何なのー!?」
千鶴は、架純の腕を掴みながら
指輪の方を見つめるー。

「ーーーーーーっ…」
架純は、”まだ千鶴が正気を保っていること”に
驚いたような表情を浮かべると、
「いいからー…わたしの親友になりなさいー!」と、
声を荒げて、「あなたはわたしの親友なの!!!」と、
言葉を続けたー。

その言葉と同時に、千鶴は「ーー…架純ーー」と、
架純の方を見つめながら瞳を震わせると、
「ーーご…ごめんねー…わたし、どうかしてたー」と、
再び、架純の術中に落ちてしまうのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

千鶴は、”架純の親友”として、
自分が洗脳されたことも認識できないまま、
楽しそうに日々を過ごしていくー。

がーーー
1週間が過ぎようとしていたその日ーー

千鶴は”また”正気を取り戻したー

「ーか…架純はー親友なんかじゃないー…」
自宅で、表情を歪める千鶴ー。

”架純”いやー、”成田さん”は、親友なんかじゃないー

そのことを、思い出すー。

「ーーー…」
千鶴は、カレンダーを見つめるー。

次第に”長く”なっているー。
本当のことを思い出すことができるまでの時間が、
少しずつ、少しずつ長くなっているー。

これ以上、架純に洗脳されるようなことがあればー、
本当に、自分を見失ってしまうかもしれないー。

そう考えた千鶴は危機感を抱きながら
”あの指輪に何か秘密があるはずー”と、
小さく言葉を口にするー。

そしてーーー
”あること”を思いつくのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー。

「ーーねぇねぇ架純~!来週、どこか遊びに行く~?」

千鶴は、”また”架純の親友として
楽しそうに話をしていたー。

「ーふふふー
 ー来週は、他の子と遊びに行く約束をしててー」

架純がそう言葉を口にすると、
千鶴は「そっか~!残念!」と、少し残念そうに笑うー。

「ーーー」
そんな千鶴の顔を見つめながら、架純は内心で少しだけ
笑みを浮かべるー。

”親友”として振る舞う千鶴に満足するかのようにー。

しかしーー
それはーーー

”千鶴の罠”だったー。

千鶴は昨日、既に正気を取り戻しているー。
がー、”あえて”まだ洗脳されているフリをしていたー。

全ては”元凶”の可能性が高い、指輪を奪い取るためにー。

「ーーあっ!」
千鶴がわざとらしく持っていた教科書と筆箱を落とすー。

筆箱の中身が床に散乱したのを見て、
架純は「も~~」と、笑いながら、
「大丈夫ー?」と、千鶴の落とした筆箱の中身をしまい始めるー。

それを見て、千鶴は咄嗟に動いたー。
架純に突然タックルして、架純がいつも指輪を取り出すポケットから
指輪を奪い取ろうとするー。

「ーーち、ち、千鶴ー!?」
驚きの声を上げる架純ー。

やがて、千鶴は架純から指輪を奪い取ることに成功すると、
驚いた表情を浮かべる架純に対して言い放ったー

「ーこれは何なの!答えて!」
とー。

「ーーー…ま、まさかまたーー正気にー…?」
架純が悔しそうな表情を浮かべるー。

それを見て、千鶴は、
この指輪で”何かをしている”ことを確信するー

「ーこれは何?
 わたしに何をしたの?
 わたしを”親友”にして、何を企んでいるの???」

千鶴が怒りの形相で言葉を投げかけるー。

すると、架純は表情を歪めたまま、
「ーーーそれを返してー」と、そう言葉を口にしたー。

あくまでも、”答えるつもりはない”ようだー。

がー、そんな架純を前に、千鶴は
架純の想定外の行動に出たー

これまで何度も”洗脳”された経験からーー
千鶴は”この指輪をはめることで力を使うことができる”のだと
確信していたー。

「ーーや、やめなさい!それはー!」
架純が慌てた様子で叫ぶー。

がー、
千鶴は指輪を身に着けると、架純に向かって
言葉を投げかけたー。

「ー成田さんーー…
 これからわたしがする質問全てに、正直に答えなさいー」
とー。

「ーーぐ…… はーーー…はいー」
架純は震えながらも、逆らうことができないのか
そんな言葉を、苦しそうに吐き出すー。

「ーーーー…す、すごいー…
 こういうことだったんだねー…」
千鶴は指輪を見つめながら、
その力を実感するー。

今の架純の態度を見る限りー、
自分も”こう”なっていたのだろうー。

「ーこの指輪は、何?」
千鶴が指輪の力を使いながら、架純にそう聞くー。

「ーその指輪は、人を洗脳して思いのままにする力を持った指輪ーー」
架純が悔しそうにしながら、そう言葉を口にするー。

「ー完全に操り人形にすることもできれば、
 思想の一部だけを変えて、あとはいつも通り本人の自由に
 することもできるのー」

架純の言葉に、千鶴は「わたしは後者ってことね」と、呟くー。

千鶴の場合、”架純のことを親友だと思わされた”以外は
自分の意思で行動できていたー。
完全に操られていたわけではないー。

「ーーー…じゃあ、どうして、わたしを親友にしようとしたの?

 わたし、成田さんに興味ないし、
 友達になろうとも思ってないんだけどー」

千鶴がそう言うと、架純は悔しそうに言葉を口にしたー。

「ーーー…村中さん”だけ”ー、
 どうしても指輪の力が効かなかったからーー」

とー。

「ーーえっ…?」
千鶴は表情を歪めながら、
「どういうことか、詳しく話して」と、
さらに指輪の力を使い、架純への洗脳を強めていくー。

「ーわたしが人気者なのはー…
 先生のことも、同級生のことも、先輩も後輩も
 その指輪の力で、わたしに好意的な感情を抱くように
 洗脳してるからー」

架純のその言葉に、
千鶴は驚くー。

「ーわたしは、本当は優等生なんかじゃないー。
 中学の時までは、いつも一人で孤立してたしー、
 卑屈な考えばっかりしてるしー

 それにー、成績も良くないー。
 みんなを洗脳して”そう思わせていた”けど、
 今もテストは得意教科でも50点が限界ー」

架純はそう言葉を口にするー。

”人気者の優等生”は、指輪の力で作り出された
”偽りの姿”ー。

「ーーーーーでも、村中さんー
 あなたにだけは、”なぜか”通じなかったー。

 教室で全体に指輪の力を使っても、
 あなただけはー…
 わたしに懐かなかったー。

 だから、あなただけは個別に洗脳する必要があると思って
 そうしたのー。

 それでもあなたは、すぐ正気に戻っちゃったけどー」

架純がそう呟くー。

千鶴に執着していたのは”千鶴だけ”完全に支配されなかったからー。
だから、唯一架純に好意的な感情をいつまでも抱かない千鶴を
なんとか支配して、親友に仕立て上げようとしたー。

「ーーーーーー」
架純から全てを聞いた千鶴は、表情を歪めるー。

「ーなんで、わたしには完全に効果がなかったの?」
千鶴の言葉に、架純は首を横に振るー。

「それは、分からないー。」
架純はそこまで言うと、千鶴は大きくため息をついて、
指輪を見つめるー。

「ーーーー」
千鶴が完全に洗脳されなかった理由は分からないー

千鶴はー
小さい頃に高熱を出して、死にかけたことがあってー、
それ以降、感情を見せなくなり、何事にも無関心になったー

その時に、脳に何らかのダメージを受けていて、
”普通とは違う”状態になっているために、
人の脳に作用して、他人を操る指輪の効果が
十分に発揮されなかったのかもしれないー。

「ーこれ、わたしが処分しておくからー
 もうわたしに関わらないで。面倒臭いし」

千鶴がそう言うと、架純は「うんー」と、そう言葉を口にして、
そのまま悲しそうな表情を浮かべたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

千鶴は、その日のうちに指輪を処分したー。

架純は、その後も”クラスの人気者”ー。

しかし、千鶴は別に”何も”しなかったー。
架純に洗脳されたクラスメイトたちに何かをするつもりもなく、
その真実を周囲に教える気もなく、
架純は今まで通り”偽りの人気者”状態のままー。

別に、架純も含めて周囲がどうなろうと、千鶴には興味のないことー。
”わたしはあなたの親友”とか、そういう面倒臭いことを
言って来なければ、別にどうでもいいー。

「ーーーー」
千鶴は面倒臭そうにあくびをしながら、
そんな教室の光景を見つめるとー、
”あ、今日のお昼ご飯買ってくるの忘れちゃったー…
 面倒臭ー…”
と、心の中でそんなことを呟くのだったー。

おわり

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コメント

真相を知ったけれど、何もしないエンドでした~!★

主人公の子の性格が違ったら、
指輪をそのまま自分のものにして私利私欲のために使うエンドだったり、
生徒会長を懲らしめて、周りの子を元に戻すエンドだったり、
色々と違う結末になったかもしれませんネ~!

お読み下さりありがとうございました!★

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