<憑依>生き返った彼氏①~驚きの出来事~

事故に遭い、命を落としてしまった彼氏ー。

しかし、彼は葬式の最中に生き返ったー…

”他人の身体”に憑依してー…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「じゃあ、また明日ー」

彼氏の西崎 伸明(にしざき のぶあき)が、
そう言葉を口にしながら、
少しだけ心配そうな表情を浮かべるー。

「ーー…あまり、無理するなよー?」

伸明のそんな言葉に、
同じ大学に通う彼女・吉井 茉莉(よしい まり)は、
「ーーうんー。ありがとうー」と、
そう言葉を口にするー。

茉莉は、先日まで風邪で寝込んでいて、
今は病み上がりー。
まだ本調子ではなく、そのことを伸明は心配していたのだー。

伸明と茉莉は、高校時代からの知り合いで
大学もたまたま同じだったことから意気投合ー、
大学生になってから付き合い始めて、既に1年以上が経過しているー。

「ーーははー、今日は早めに寝た方がいいぞー?」
伸明のその言葉に、茉莉は「なんか、お兄ちゃんみたいな言い方ー」と
苦笑いすると、
「でも、ありがとうー。今日は早めに寝るねー」と、
そう言葉を口にして、そのまま伸明に手を振って、
その日は伸明と別れたー。

そんなーー
そんなことを言っていたのにー…

人のことを心配しておきながらー

その日の夜ー
茉莉は信じられない連絡を受けたー。

それはー…
伸明が交通事故に巻き込まれて”死亡”したー、と、
そんな連絡だったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーーーー」

今日は、死んだ伸明の葬式の日ー。

「ーーーーわたしのこと、心配しておきながら
 自分が死んじゃうなんてー…バカー…」

茉莉は悲しそうにしながら、伸明の遺影に向かって
そう言葉を口にするー。

事故の原因は、
信号無視の暴走車ー。

とーー…言っても、その暴走車の運転手自身、
運転中に急病により意識を失ったことによるもので、
運転手が意識を失ったことで、車は暴走ー
赤信号を無視して交差点に突っ込み、
横断歩道を渡っている最中だった伸明がそれをよけきれずに
巻き込まれて死亡ー、
車は付近のガードレールを突き破って壁に激突して停車ー、
運転手自身も意識を取り戻すことなく、そのまま死亡してしまったー。

聞けば、運転手の健康状態には元々問題はなく、
被害者側の伸明も、加害者となってしまった運転手も
誰も責めることはできないー、
そんな、不運な事故だったー

「ーーーー…あ…あの子ー…」
ふと、茉莉は葬式の会場に見覚えのある子の姿を見つけるー。

福山 加奈(ふくやま かな)ー。

高校時代のクラスメイトで、伸明とは”幼馴染”だった子だー。
大人しい性格で、いつも読書をしているような、
そんな子だったと思うー。

「ーーー福山さんー」
そんな加奈に、茉莉が声を掛けると、
加奈は一瞬、考えるような表情を浮かべたものの、
すぐに「あーー…!吉井さんー!?」と、そう声を上げたー。

高校卒業後、お互いに会う機会はなかったためー
”忘れられているかも”と、心配していたものの、
一応、ちゃんと覚えてくれてはいたようだー。

「ーー久しぶりー…元気だった?」
茉莉がそう声を掛けると、加奈は「うんー」と、頷くー。

そして、寂しそうに伸明の遺影が飾られているほうを見つめるー。

「ーー福山さんー…伸明と幼馴染だったんだもんねー」
茉莉はそう言葉を口にしながら、
「ーあ」と、”福山さん、わたしと伸明が付き合ってたこと知ってるかなー?”と、
ふと、思うー。

伸明の幼馴染の加奈からすれば、
”なんで、吉井さんがここにいるんだろうー?”と思われているかもしれないー。

そう思いつつ、大学に入ってから付き合い始めたことを
言おうとすると、
「ーーーー西崎くんから聞いてるよー付き合ってたんでしょ?」と、
加奈の方から言葉を口にしたー。

「ーあ、うんー。聞いてたんだー?」
茉莉がそう言うと、加奈は頷くー。

伸明が幼馴染の加奈と時々、連絡を取っていることは知っていたー。
伸明側から、そう伝えられていて、
”俺と福山さんには恋愛感情はないから、安心して”と、
連絡のやり取りもいつでも確認したければしていい、と、そう言われていたー。

実際に伸明と加奈は”幼馴染”でしかなく、お互いに恋愛感情は存在していないし、
茉莉自身もそのことは何も心配していなかったー。

「ーー…でもまさか、こんなことになるなんてー」
寂しそうに言葉を口にする加奈ー。

「ーーー……そうだよねー…
 わたしもまさか…一人ぼっちにされるとは思わなかったなぁ…」
茉莉も、寂しそうに彼氏である伸明の写真の方を見つめるー。

彼女であった茉莉にとっても、幼馴染の加奈にとっても、
伸明の死はあまりにも突然で、悲しいことだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

式の本番が始まりー、
時間が過ぎていくー。

がーーー
その最中のことだったー。

突然、伸明の遺体が入っている棺からー
”光”のようなものが飛び出したーーー

ような気がしたー

「ーーー…?」
茉莉は、瞬きをしながら表情を歪めると、
もう一度、棺の方を確認するー。

が、特に異常はないー。

”ーーー気のせいだよねー”

棺から突然、光のようなものが飛び出すー
そんなことはあるはずがないー。

茉莉は首を横に振ると、
”疲れてるのかなー”と、そう思いながら
ため息をついたー。

しかしー
その直後ーーー

「ーーうっ…」
隣に座っていた、伸明の幼馴染・加奈が
小さく声を漏らしたのが聞こえたー。

「ーーー?」
茉莉が不思議そうに加奈の方を見つめるー。

加奈は、手を握ったり、開いたりしながら、
少しだけ笑みを浮かべているーー

そんな加奈のことが心配になって、
茉莉は「ー大丈夫?」と声を掛けると、
加奈は「え?あぁ、うんー大丈夫ー」と、
小声でそう言葉を口にしたー。

しかしー
その後も加奈は自分の手を見つめたり、
自分の髪を不思議そうに触ったりー、
”意味深な行動”を繰り返しているのが見えたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

葬式がひと段落して、
トイレに足を運んでいた茉莉が、
手を洗っていると、
そこに、伸明の幼馴染・加奈が入って来るー。

「ーーあ…福山さんー」
茉莉がそう反応すると、加奈は
周囲をキョロキョロしながら
「ちょっといいかな?」と、そう言葉を口にするー。

「え?あ、うんー」
茉莉は手を洗い終えると、そんな加奈についていき、
「どうかした?」と、不思議そうに言葉を口にしたー。

すると、加奈は信じられない言葉を口にしたー。

「ーー…茉莉ー…信じられないと思うけどー」
加奈のその言葉に、茉莉は首を傾げるー。

加奈から”茉莉”と呼び捨てにされたことはないー。
そもそも、高校時代もそこまで親しい間柄じゃなかったし、
いつも”吉井さん”としか呼ばれたことはないー。

そう思いながら、加奈の方を見つめると、
加奈は信じられない言葉を口にしたー。

「ーーお…俺ー…伸明なんだー」
とー。

「ーーー……はい?」
茉莉は思わず変な声を出してしまうー。

加奈はそわそわしながら、周囲を見渡して
他に人がいないことを確認すると、
「ーお、俺ーー…さっきー…福山さんに乗り移ってー…」
と、加奈が自分の身体を不思議そうに触りながら
言葉を口にするー。

「ーえ…?え…?ど、どういうことー…?」
混乱の表情を浮かべる茉莉ー。

「ーふ、福山さんー…だ、大丈夫ー?」
茉莉はあくまでも”加奈がおかしくなった”と、
そう思っているようだー。

「いや、いや、違うんだー福山さんが
 おかしくなったんじゃなくてー

 本当に、俺が福山さんの中に入っちゃったんだー」

加奈がそう言い張るー。

「ーー……え……?え?
 そ、そんなことあるわけー」

茉莉の言葉に、加奈はさらに続けるー。

さっき、気付いたら式の最中で、
自分が、会場の宙を浮遊していたことーー

どうしていいのか分からず、加奈に近付いたら
そのまま加奈の身体に吸い込まれるようにして、
加奈に乗り移ってしまったことー…

それらを説明するー。

「ーーーー………~~~~~~…」
茉莉は困惑しながらも、加奈の方を見つめると、
「あー、あの…ふ、福山さんー
 わたしを元気づけようとしてくれてるのかもしれないけどー…
 そ、そういうのは、いいよー」と、
そう言葉を口にするー。

”加奈”とは、高校時代同級生だったけれど、
正直、そこまで話をしたことはないー。

ひたすら真面目そうなイメージだったものの、
もしかしたら、こういう、少し変わったことをする子だったのかもしれない、
と、そう思いつつ、茉莉はそのまま立ち去ろうとするー。

がー

「茉莉!」
加奈は、茉莉の腕を掴むー。

茉莉は一瞬ビクッとすると、
加奈は「ー俺と茉莉が付き合い始めたあの日ー」と、
そう言葉を口にするー。

加奈は、茉莉と伸明が付き合い始めた日のことー、
二人でデートした時のことー、
二人で誕生日を祝った時のことー、

”二人しか知らないはず”の色々な出来事を口にし始めるー。

「ーーー………う…嘘ー……
 ほ、ホントにー…伸明なのー?」
茉莉は困惑した様子で言うと、
加奈は「そ、そうなんだよー!俺なんだ!」と、
そう言葉を口にするー。

「ーーーーーー…う、ううんー…
 そ、そんなことあるはずがー…」

茉莉は、なおも”信じられない”という表情を浮かべながら
”加奈”と”伸明”は幼馴染であることを改めて思い出すー。

茉莉と伸明が付き合い始めたことー
茉莉と伸明のデートの時のことー、
誕生日の時のことー

それを、伸明が加奈に伝えていれば、
加奈が今、伸明と茉莉しか知らないはずの二人の思い出を
口にしたことも、別に不自然ではないー

…と、そこまで考えて、茉莉は表情を歪めるー

”そんなことをしても、伸明に何のメリットもないし、する必要がないー”
とー。

伸明が、彼女の茉莉と付き合い始めた日のこと、
誕生日のときのこと、デートの時のことー
そういったことを、生前に、幼馴染の加奈に伝えておく必要など、全くないのだー。

ないとは思うけれど、仮に二人が浮気をしていたとしても、
茉莉との日常を細かく加奈に伝える必要などないー。

つまり、そんなことするはずがないー。

と、なるとー…

「ーほ…ホントにー…伸明なの?」
茉莉がそう言うと、加奈は静かに頷くー。

「ーーー…そ、そんなー…ど、どうしてー…?
 どうして、福山さんの身体にー?」
戸惑いながら茉莉が言うと、加奈は表情を歪めながら
「そ、それがー俺にも分からなくてー…」と、戸惑いの表情を浮かべるー。

「ーーただーーー…どうせなら、茉莉ともう一度、話したかったー」
申し訳なさそうな表情を浮かべる加奈ー。

茉莉は困惑しながらも、
「で、でもーー…ほ、ホントに伸明なら、よかったー」
と、少しだけ嬉しそうな表情を浮かべるー。

最初は”加奈本人”が演技をしているのかと思っていたけれどー、
二人しか知らないはずのことを知っているしー、
何より、話していると”身体は加奈”なのに、”伸明”と話しているような
感覚に陥るー。

間違いなく、今、目の前にいるのは加奈ではなく、
加奈に乗り移った伸明だと、茉莉はそう確信したー。

しかしー…
加奈は暗い表情を浮かべたー。

「ーーよくはないよー…俺が本当に生き返れたなら
 たしかに俺も嬉しいけどー…」

加奈はそこまで言うと、自分の身体に触れながら呟くー。

「でも…これは福山さんの身体だー…
 俺の身体じゃないー
 このままいるわけにはいかないー」

加奈はそう言葉を口にしながら、茉莉の方を
悲しそうに見つめるー。

「ーえ……で、でもーー…
 そ、それじゃ、伸明はー…」

茉莉が戸惑いながら呟くー。

加奈に身体を返すー。
確かに、伸明の言おうとしていることは分かるー。

しかし、そうしたら伸明は
今度こそ、”本当の死”を迎えることになってしまうー。

「ーーー……仕方ないよー…
 俺は、死んだんだからー…」

加奈が心底悲しそうに呟くー。

「ーー……で、で、でもー…!
 伸明は何も悪くないじゃない!
 だったら、福山さんの身体でー」

茉莉がそう叫ぶー。

しかしー、加奈は首を横に振ったー。

「ーー…ダメだよー。
 さっきも言ったけど、これは福山さんの身体だー
 俺が奪うわけにはいかないー」

その言葉に、茉莉は悲しそうにしながら
目に涙を浮かべるー。

「ごめんなー」
加奈の身体のまま、茉莉を抱きしめる伸明ー。

女子同士が抱き合っているようにしか見えない
その景色が、しばらく続くー。

少しすると、加奈は「元気でなー」と、
そう言葉を口にすると、
「ー俺の遺体に近付けば、元に戻れるかもしれないー」と、
そのまま、伸明自身の遺体がある方に向かって歩いていくー。

「ま、待ってー…!し、死にに行かなくたっていいじゃん!」
茉莉は目に涙を浮かべながら叫ぶー。

がーー、加奈に憑依してしまった伸明は
そのまま自分の遺体の前に近付くと、
大きくため息を吐き出したー。

「ーーーー今までありがとうー…」
そう言葉を口にすると、加奈は悲しそうに微笑むー。

”今度こそ、俺は消えるー”
伸明は、そう思いながら自分の身体に戻るイメージをしつつ、
”茉莉ー、もう一度話せてよかったよー”と、
心の中で呟くのだったー。

②へ続く

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コメント

死んだはずの彼氏が、急に葬式の最中に
他人の身体で生き帰ってしまった…そんなお話デス~!

…①で終わりみたいな終わり方ですケド、
もう1話あるので、明日も楽しんでくださいネ~!

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憑依<生き返った彼氏>

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