<融合>暴走合体男

彼は、”他人と融合する力”を持っていたー。

その力を使って、
欲望のままに”融合”する男の物語ー。

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「ーーーー…優衣(ゆい)ー…」
病室で、心配そうに友達を見つめながらそう呟く、梓(あずさ)ー

彼女は、今日、親友である優衣のお見舞いにやってきていたー。

「ーーー…えへへへー… へへへへへっ…」
優衣と呼ばれた子は、ニヤニヤしながら、
梓の方を見つめるー。

がー、その目はどこか虚ろで、何かがおかしいー。
まるで正気を失っているかのように、へらへらと笑い続けているー。

「ーーー…ーー…優衣ー…また来るからねー」
梓は、優衣の手を握ると、
それでもほとんど反応を示さずに、へらへらと笑い続けている優衣を
見て、心を痛めるー。

”どうして、こんなことにー”
同じ高校に通う親友の優衣は、数日前に
放課後の校舎内で、笑いながら廊下を這いずっているところを
発見されたー。

発見した生徒は最初は”悪ふざけ”でもしているのかと思って
声を掛けたものの、優衣の様子がおかしかったために先生を呼びー、
先生が駆け付けても、優衣はへらへらと笑うだけで、
会話が成立せず、やがて、異様な様子から病院に運び込まれたー。

運び込まれた病院で、脳の検査が行われー、
その結果、脳に”謎のゆがみ”が生じていることが分かったー。

が、その原因は不明でー、
治療する方法も見つからず、優衣が元に戻るかどうかも
分からないー。
そんな状況だったー。

「ーー優衣がどうしてあんなことにー」
梓はそう思いながら、”クラスの人気者”だった優衣の姿を思い出すー。

がー、梓は知らなかったー。
優衣がおかしくなった元凶は
”すぐ近く”にいることをー。

「ーーー」
朝ー、学校に来る前に優衣のお見舞いをしていた梓は
ため息をつきながら、”どうだった?”と、心配そうに聞いてきた
友達の一人・夏美(なつみ)に、優衣の様子を伝えるー。

夏美も悲しそうに「優衣ちゃんー、どうしちゃったんだろうー」と、
そう言葉を口にするー。

「ーーーー」
そんな会話を聞きながら、ニヤリと笑う男がいたー。

彼はおかしくなってしまった優衣や、その親友・梓の
クラスメイトー、
荒井 丈介(あらい じょうすけ)ー。

高校生になっても、”悪ガキ”のような振る舞いが
抜けない男子生徒で、
悪戯ばかりして周囲を困らせていた男子生徒だー。

彼は、1か月前に、
救急搬送されたことがあったー。

”優衣”のような、”急におかしくなってしまった”わけではなく、
理科の授業中に、実験で使っていた液体を
「これ、美味しそうな色してるよな」と、自分で飲んでしまったことによる、
”自業自得の事故”だー。

それによって、
生死の淵をさ迷いかけた彼ー。

だがー、その代償として彼は手に入れたー。
”他人と融合する力”をー。

彼は、1週間の入院中、病院内で自分にぶつかってきた子供と
偶然”融合”してしまい、自分の力に気付いたー。

「ーな、な、な、なんだこれ!?」
子供と融合してしまい、”自分”と”その子供”の中間ぐらいの背丈になった丈介は
困惑しながら「ど、どうすりゃいいんだー!?」と、一瞬、パニックになったー。

だがー、やがて、
”自分を暖める”と、その状態が解除されることに気付いた丈介は、
子供との融合を解除して、笑みを浮かべたー。

そしてー、それ以降、彼は
欲望のままに、その力を使って楽しんでいるー。

「ーえへへへへー…
俺、ずっとお前のことが好きだったんだー
お前と”融合”したいー」

数日前の放課後ー。
丈介は、優衣にそう迫ったー

「な、何言ってるの?来ないで!」
優衣の言葉に、丈介はずぶっ、と優衣の首筋に手を突っ込むー。

ドロドロとした丈介が、優衣にどんどん溶け込んでいくー。

「ーーぅ…ぁ…」
苦しそうに声を上げる優衣と、笑みを浮かべる丈介ー。
やがて、二人が溶け合うように融合すると、
”いじわるそうな顔立ち”に変わった優衣が邪悪な笑みを浮かべたー。

融合すると、
”融合相手”に、丈介の要素が混ざったような容姿になるー。

どのような”要素”が出て来るかはその時によって違うことも、
融合を繰り返した末に気付いたー。

優衣と融合した丈介はー、
顔が少し意地悪な雰囲気に変わったことを鏡で確認すると、
「悪い優衣ちゃんって感じで興奮するなー」と、そう呟いたー

声が少し低くなったりー、
背が少し高くなったり、
他にも色々な部分が変化しているー。

「ーへへー融合完了♡」
優衣と融合した丈介はそう言葉を口にすると、
そのまま融合した自分の身体を楽しみ尽くしたー。

そして、優衣との融合を解除ー、
しかし、融合された側の人間は、融合された際に
脳機能を破壊されてしまい、
まともな社会生活を送れなくなってしまうー。

「ーーーえへへへへへー」
優衣がおかしくなってしまったのも、そのせいだー。

「ーーー」
丈介はそのことを思い出しながら
チラッと、優衣の親友・梓の方を見つめたー。

「ーー次は、梓ちゃんとも融合してみてぇなぁ」
そう言葉を口にすると、
”今日の放課後、融合するか”と、ニヤッと笑みを浮かべたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

放課後ー。

丈介は、梓に声を掛けるー。

「なぁ、俺、お前の友達が何でああなったか、知ってるんだー」
とー。

「えっ…?」
梓は不審げな表情を浮かべながらも、親友・優衣のことを
心配している気持ちが勝りー、
丈介の言葉に耳を傾けてしまうー。

「ーー……”犯人”も知ってるんだー
こういう話してるの聞かれると、俺も狙われるかもしれねぇ
だから、旧E組の教室で話しできるか?」

丈介が言うー。

旧E組の教室とは、数年前に生徒数が減り、D組までに減ったことで
空いた教室のことだー。

「ーーわかったー」
梓がそう言いながら丈介に従って移動するー。

がー、旧E組の教室には入ると同時に、丈介は
笑みを浮かべたー。

「ーなぁなぁ、俺と融合しようぜー」
とー。

「ーー????」
梓は首を傾げるー。

「ーお前もさー、あいつと同じで可愛いよなー
その声もエロイしーへへー
見てるだけで融合したくなっちまうぜー」

丈介の言葉に、梓は”気色悪い”と言いたげな表情を浮かべながら
「何を言ってるのー?」と、そう言葉を発するー。

「へへーそのエロイ身体と融合したいって言ってるんだよ」
丈介がそこまで言うと、
「ゆ、優衣の話はー!?」と、梓が声を上げるー。

「ーん?あぁ、だからあいつに何が起きたか教えてやるよー
お前の身体でなー」

丈介はそう言うと、逃げようとする梓を掴むと、
そのまま、自分に吸収するかのように”融合”していくー

「ーーひっ!?!?あっ… えっ…?」
梓が目に涙を浮かべながら、ズブズブと丈介と混ざり始めているのに
気付くー。

「ーうへへへへー
この融合するときの感触ぅ~~
たまんねぇぜ!」
笑いながら、梓と一つになっていく丈介ー。

やがてーー、梓との融合を終えた丈介は、
身体を確認するー。

「ーーくへへへへ~…
んだよー、可愛い顔がちょっとブスになっちまったなー
へへーあ、俺が不細工だからかー?」

梓はニヤニヤしながらそう言うと、
スカートを見つめるー。

「って、俺の棒、ついたままじゃんー
こりゃ、融合の相性が悪かったなー」
梓と融合した丈介は不満そうに呟くー。

”男のアレ”が、相手が女子でも、
融合した相手によって
ある場合と、ない場合があるー。

この前の優衣の場合は、”ない”状態だったが、
梓の場合は”ある”状態ー。

”ふたなりって言うんだったっけなー?
こりゃ、相性バツだな”

梓と融合した丈介はニヤリと笑うと、
そのまま融合を解除しようと、ストーブの前に移動するー。

”暖めると”融合は解除されるー。

ドロッとして、二人が元に戻るも、
梓は虚ろな目で涎を口からこぼしながら
そのまま座り込んでいるー。

「ーへっ、ハズレかー残念」
”融合”する相手には、丈介の言う”相性”があるー。

いい感じに融合できる相手もいるし、
あまりいい感じに融合できない相手もいるー。

どんな風に”融合”するかは組み合わせによって決まるようで、
例えば今、丈介が再び梓と融合したとしても、
同じ状態になり、融合後の姿が変わることはないー。

ガタッ…

「ー!?」
突然、物音が聞こえて丈介が振り返ると、
怯えた表情を浮かべている女子の姿が見えたー。

梓の友人で、梓と共に
かつて丈介に融合されたせいでおかしくなってしまった優衣のことを
心配していた友達の夏美ー。

夏美は、梓が丈介と共にこの教室に入っていく姿を目撃して
何となく心配になって二人を尾行していたのだー。

「あぁ…見られちゃったかー?へへ」
丈介がそう言いながら、涎を垂らしながら座り込んでいる状態の梓の方を見つめるー。

「ーーあ…梓に…な、何をー?」
夏美が震えながら言うと、
「ーへへへへーお前の友達は俺と”融合”したんだよー」と、
そう言葉を口にするー。

「まぁ、”相性”が合わなかったからすぐ解除したけど」
ニヤッと笑う丈介ー。

その言葉に、夏美は咄嗟に逃げ出すー。

「ーーチッ」
丈介は舌打ちをするー。

”融合”の現場を見られたのは誤算だったー。
慌てて梓の後を追いかけるも、梓は思いのほか、
逃げ足が速かったー。

「ーー…っ!」
丈介が周囲を見渡すー。

梓を見失ってしまったー。

「チッ!逃げられたかー」
丈介は苛立ちの表情を浮かべながら
そう言葉を口にするー。

しかしー、丈介はニヤリと笑うー。

「ーへへーまぁ、誰も信じやしないさー。
俺が他人と”融合できる”なんてことー」
丈介はそれだけ言葉を口にすると、
見失った夏美を追いかけるのをやめて、
そのまま大きく息を吐き出したー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー。

学校にやってくると、
クラスメイトたちの白い視線が丈介に向かって
注がれたー。

「ーーな、なんだよ」
丈介が言うと、生徒会の書記を務める真面目な女子生徒・久美(くみ)が
近付いて来たー。

「ーーー…ねぇ、どういうことー?」
久美がそう言葉を口にすると、
「どういうことって?」と、丈介はニヤニヤしながら答えたー。

「ーーー優衣ちゃんも、梓ちゃんも、おかしくなっちゃったのは、
荒井くんのせいなの?」
丈介の方を見つめながら、久美がそう言葉を口にするー。

その言葉に、丈介はうすら笑みを浮かべながら
「何で俺がー。誰がそんなこと言ってるんだよ?」と、そう言葉を返すー。

聞かなくても分かっているー。
昨日、”融合”を目撃した夏美が何か言ったのだろうー。

それでも、丈介は”どうせ融合なんて誰も信じやしない”と、笑みを浮かべながら、
久美の追及をやり過ごそうとするー。

がー、丈介は元々、周囲から孤立している悪ガキタイプの男子ー。
久美はしつこく”梓ちゃんに何をしたの!?” ”このままじゃ済まさないから!”などと
追及を続けて来るー。

そしてーー

「あ~~~~~!!!うるせぇなぁ!」
丈介は、カッとなって久美の頭を掴むと、
もがく久美を無視して、そのまま”融合”し始めるー。

どよめくクラスメイトたちー。

やがて、悲鳴が上がり始めるー。

「ーーごちゃごちゃうるせぇなお前らーー」
頭だけ、既に丈介の腹部に吸い込まれるような形で
融合している状態の久美が、じたばたともがく中ー、
丈介はそのまま久美と融合ー、
久美の悪人顔バージョンのような姿になると、
悲鳴が上がる教室を見つめながら、笑みを浮かべたー。

「ーーへへー
そうだー…コソコソ隠れて融合する必要なんかねぇー」

融合したことで、少し低くなった久美の声で喋りながら、
近くで唖然としている夏美を見つけると、
夏美の頭も掴むー。

「ーお前とも、融合するかぁ」
ニヤリと笑う久美と融合した丈介ー。
そのまま夏美を丸飲みするかのように融合すると、
久美と夏美が混じったような容姿に変わるー。

「ーへへへへへへーーー
この力があれば、俺はいくらでもー」

邪悪な笑みを浮かべると、丈介は手当たり次第、
周囲のクラスメイトと融合し始めるー。

「ーへへへへへっ!はははははっ!うひゃひゃひゃひゃ!!!」

もう隠れる必要なんてないー。

丈介は逃げ遅れたクラスメイトたちと融合を繰り返すと、
もはや、誰と誰と誰が融合しているのかも分からないような容姿で、
そのまま隣のクラスに向かって歩き始めるー。

「えへー…へへへー気持ちイイー」
丈介はそう言葉を口にすると、隣のクラスの生徒たちとも
手当たり次第”融合”を始めるのだったー

おわり

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コメント

1話完結の融合モノでした~!★

融合モノは、たま~にしか書かないので、
レア(?)なのデス…!

お読み下さりありがとうございました~!!

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小説

コメント

  1. I love precure より:

    作品中で「暖める」と「温める」のように表現が違っていました。
    意図しているんであれば良いのですが、少し気になりました。

    • 無名 より:

      ありがとうございます~~!☆
      意図したものではなく、変換ミスがそのままになってしまっていただけですネ~…!

      早速、直しておきました!!