男ははまっていたー。
とある「サンドボックス型」と呼ばれるゲームに。
そんなある日、男は、
人の脳に憑依する力を手に入れた。
そしてーー女性の脳に憑依した彼は、、
脳の中身を”マインクラフト”の如く、作り変えていくー。
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俺は綿貫 勲(わたぬき いさお)
俺は、1年前までー。
大手企業に勤めるサラリーマンだった。
しかし、そんな俺は今では無職である。
何故か?
とあるゲームと出会ったからだ。
そのゲームの名は
「マインクラフト」
俺の部屋には大中小、様々なマインクラフトがある。
携帯ゲーム機用、据置ゲーム機用。
全ての機種で発売されたマインクラフトを全て購入した。
「こんなに面白いゲームがこの世にあるのか!」
俺はそう思った。
そして、のめり込んだ。
飯も食わず、
風呂にも入らず、
仕事にもいかず。
俺は24時間マインクラフトにのめり込んだのだ。
ある日ー、
会社からクビを告げられた。
だが、そんなことはもうどうでもいい。
この世はブロックで出来ているのだ。
会社なんて二の次やで。
彼女には泣かれた。
だが、彼女なんてもういらない。
専門大学に通う彼女、藤村 雅美(ふじむら まさみ)。
俺はあいつとも別れた。
いや…”モノづくり”の邪魔だ。
まさみーいや、ごみはもう俺には必要ない。
俺はひたすらにマインクラフトをプレイし続けた。
髭も伸びた。髪も長くなった。
だがー、それもどうでもいい。
マインクラフトを初めて1年。
既にプレイ時間は5000時間を超えている。
だが、まだ足らぬ―。
そんなある日のことだった。
寝ていた俺は
”マインクラフトの神様”と出会ったのだ。
”おぉ…勲よ…”
神は俺を下の名前で呼んだ。
いきなりなれなれしい奴だな。
だが、俺は5分後、
神に感謝することになる。
神は言った。
”マインクラフトを、愛してくれてありがとうー”と。
そして俺に力を授けたのだ。
その力とはー
”人の脳の中に憑依する能力”
そして
”人の脳の中でマインクラフトをプレイする能力”
どういうことか?
つまり、人の脳の中の記憶や中身を
ブロックに見立てて、俺が破壊したり組み立てたりできるということだ。
神はこれを
”ココロクラフト”と呼んだ。
言葉で説明しても分からないだろう。
百聞は一見にしかず、だ。
俺は、専門学生の元彼女、
藤村 雅美に会うため、専門学校に向かった。
浮浪者みたいな格好だが、
なんとかなるだろう。
風呂なんて入っている場合ではないのだ!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
俺は専門学校に登校する彼女を見つけた。
「----」
神に言われたとおり、精神を統一して、
俺は自分の体を霊体化させた。
そして、彼女に憑依するー。
「うっ!?」
彼女が悲鳴をあげたー。
だが、すぐに何事もなかったかのように
雅美はキョロキョロして歩き出した。
俺はあたりを見回す。
「これがー人間の脳の中か。」
目の前に巨大なスクリーンのようなものがあり、
そこに雅美が見ている映像が映し出されているー。
左側には水槽のようなものの中で
色々な言葉が浮かんでいる。
どうやら雅美の思考のようだ。
そしてー
色々なブロックが積まれていた。
「理性」「趣味」「食事」「恋愛」「恐怖」「悩み」
「勉強」「愛嬌」 などなど…
色々な文字が書かれたブロックがある。
そして近くには無地のブロックも。
「---これを…いじくれば、彼女を自由に
作ることができるってことか?」
近くにツルハシのようなものが落ちていた。
「これでブロックを壊せってか?」
よし。
試してみよう。
俺は「友情」と書かれたブロックの前に立つ。
スクリーンには雅美が友達と楽しそうに会話している
場面が映し出されている。
よし…。
俺は「友情」と書かれたブロックを力強く破壊した。
するとーーー
「---」
雅美の表情から突然笑顔が消えた。
「--どうしたの?」
急に真顔になった雅美を心配する友人。
そして、雅美は言った。
「ごめんーー。
なんか急にしらけちゃった…」
雅美がつまらなそうに言う。
友人は首をかしげる。
”何か悪いことしたかな”とでも言いたげに。
しかし、事実は違う。
雅美は「友情」を破壊され、
全ての友情を感じられなくなってしまったのだ。
「うへぁ!すげぇ」
俺は叫んだ。
一瞬にして雅美がこれまで培ってきた友情が消えたのだ。
「ん?」
俺はとあるブロックを見つけた。
知らない男の顔だ。
”彼氏”と書いてある。
なんだよ、雅美のやつ、もう新しい彼氏が出来たのか。
”私には綿貫くんしかいない”なんて調子のいいこと言ってたくせに!!
…ま、俺がマイクラにはまったせいかもしれないけどよ。
これは気にイラネェな!
俺は彼氏の書かれたブロックを粉々に破壊してやった。
そして…新しいブロックに、俺は今の友人の似顔絵を描いてやった。
自慢じゃないが、俺は似顔絵は上手い。
「ぷふふふふっ…」
俺は笑いながら友人の顔を書いたブロックの上に、
”彼氏”と書いてやった。
相手は女の子なのになー。
すると、雅美に異変が起きた。
「ね、、ねぇ!青葉!…」
顔を赤らめてさっきの友人に話しかける雅美。
「---わたし……やっぱり……青葉のこと…」
雅美がもじもじしながら顔を赤らめて言葉を話している
「な…何よ?」
友人が不気味そうに尋ねる。
すると雅美は勢いよく青葉にキスをした。
「やっぱりわたし、あなたのこと好きみたい!
私を抱いて!」
プッ…
何やってんだか。
俺は笑った。
大学校内であんなことしちゃうなんてな。
すげぇぜ。ココロクラフト。
友人の悲鳴がスピーカーから聞こえてくる。
彼女の脳内への音声だー。
「さてさて…次はぁ!」
俺は無地のブロックに”食欲”と書き込む。
そしてそのブロックを10個作って積み重ねてやった。
「そーら雅美!お腹すくだろう!喰え喰え!ははは!」
俺は雅美の脳内で一人面白そうに笑った。
雅美は、酷い空腹感に襲われていた。
「なんか、今日、変だなぁ…」
雅美がつぶやく。
どうにも今日、自分がちょっとおかしい気がするのだ。
「---あぁ、オナカスイタ!」
ちょうど、昼休憩の時間。
雅美は食堂に行き、カレーライスを注文した。
「はぁ…普段減食してるのに…
今日はなんだか、我慢できない」
そしてー
無意識のうちに雅美はラーメンやそば、定食などなど、
次々にあらゆるものを注文した。
「うっ…も、、、もう食べられない」
周囲が、雅美を見て唖然としている。
「あれーーあの子、去年のミスコンテスト準優勝の…?」
「どうしたんだろう?やけ食いかな」
雅美はついにその場で吐いてしまった。
「---うっ…うっ…
どうしちゃったの私・・・・・・
もう食べられないのに…おなかがすいてる!」
雅美が恐怖に震える。
雅美が吐いたのを見て、食堂のおばさんが慌てて
雑巾を持って駆け付けた。
だがーーー。
”俺”はその様子を見ていた。
そして
「暴力」と無地のブロックに書き、それを設置した。
3個。
「---触らないで!」
雅美が近付いてきた食堂のおばさんを殴り飛ばす。
「ひっ!」
飛ばされたおばさんが恐怖に表情をゆがめる。
「ちょ、ちょっと、雅美!」
友人の青葉がそれに気づき、雅美を止めようとした。
だがー
「どいて!わたし、お腹すいてるの!」
雅美がそう叫んで、
ラーメンの続きを食べようとし始めた。
「雅美!ねぇ!おかしいよ!どうしたの!?
吐くまで食べたりなんかして!?
ね、ねぇ…どうしたのよ!?」
青葉がしつこく食い下がる。
ザクッ…
俺はそれを見て”理性”のブロックをぶち壊した。
さぁ雅美!
理性をなくして暴れろ!本能のまま生きろ!
俺はーー雅美の視界を見る。
「---邪魔よ!」
雅美はラーメンのどんぶりを青葉に投げつけた。
「きゃあっ!」
顔面にどんぶりが直撃した青葉が倒れる。
「---ふふ、おなかすいた!
もっと、もっとよ!」
雅美が食堂の仕切りを飛び越えて
奥へと入っていく。
そこには調理中のカレーやラーメンが。
他の食堂スタッフたちが混乱している。
「---ねぇ、おなかすいたの!
食べるわよ」
傲慢な様子で言う雅美。
俺が”傲慢” ”横暴” ”自己中”と書いたブロックを配置したためだ。
そしてーさらに続ける。
”不安” ”恐怖” そういったブロックを破壊してやった。
くへへ!ココロクラフト凄いぜ!
マイクラの如く、人の脳を自分で作りかえられるなんてなぁ!
俺は汚いひげを振り乱しながら笑う。
「---えへへへ!カレー!」
理性を、、不安を、、恐怖をも失った雅美が
顔をカレーの器に突っ込んでペロペロと舐めはじめた。
もはや彼女に”恥”も無い。
俺が壊してやったのだ。
「--かれぇ、おいしい!あははははははは!」
カレーだからけになった顔をペロペロなめながら笑う雅美。
「---ま…まさみ…」
青葉も唖然としている。
俺は続けた。
”エロ” ”エロ” ”エロ” ”エロ”
”エロ”と書いたブロックを配置しまくった。
「ふへへへ!狂え!狂え!雅美ぃ!」
俺は雅美の脳内でタップダンスを踊りながら
大笑いした。
「狂え!狂え!狂え!狂え!」
調子に乗ってリンボーダンスをし始める俺。
「あははぁ…♡」
雅美が突然自分の胸を弄び始めた。
「なんか急にえっちな気分になっちゃった」
うっとりとした顔で周囲を見渡す雅美。
そして雅美は、
食堂のおじさんに襲い掛かった。
「あは♡
おじさん!わたしとえっちしよ!
いいえ、しなさい♡」
強引な様子でもがくおじさんを
雅美はわし掴みにし、
乱暴におじさんの服を引きちぎっていく。
「えへへへへへへへ♡」
雅美の顔はスケベそのものだった。
さっきまで、まともな女子大生だったのに。
俺は、なおも雅美の脳の中でダンスを踊りながら
その様子を見届けた。
ついでに”エロ”ブロックをさらに増やしてやった。
「---むぐっ!」
雅美がおじさんのソレを勢いよく咥えた。
「ちょっと!やめなさいよ!」
青葉が無理やりそれを引きはがす。
すると雅美は怒った様子で青葉に襲い掛かった。
「あおはぁ~!私の彼氏~」
青葉を押し倒すと、青葉に猛烈なキスをくらわせた。
「うふぅ!!!さいこぉ♡」
体を反り返らせてそう叫ぶ雅美にーー
もう”雅美のオモカゲ”などなかったー。
雅美は自分のスカートをなびかせながら、
青葉の胸に自分の頭を押し付けた。
「むぐぅ…♡」
そして顔をあげた雅美は興奮しきっていた…。
「青葉のおっきな胸…さいこう♡」
パチン!
青葉が雅美にビンタを喰らわせたー。
「---最低!アンタなんかもう知らない!」
青葉が怒り心頭、という様子で走り去る。
ざわめく周囲。
次の獲物を探してイヤらしい目付きでまわりを見る雅美。
ふぉっ!
俺は何となくもうどうでも良くなった。
マイクラでもよくあるだろう。
作っていたものがどうでも良くなることが。
俺は、それになった。
「うおおおおおおおおおおおおおお!」
俺は脳の中で雄叫びをあげると
雅美の脳にあるブロックというブロックを
ツルハシで全て壊し始めた。
大量のブロックが音を立てて崩れていく。
「うひひひひひひひひひひ!
雅美ーーーーーーーーーーー!」
俺は元カノの名を叫びながら
ブロックを壊しまくったーーーー
そして、全部のブロックが壊れたーーーー。
雅美はーーー
白目を剥き、口をだらしなく開き、泡を吹きながら、
その場で倒れ、ピクピクと痙攣している。
体の痙攣は次第に強くなっていくーーー。
「ひっ…ひいいいい!」
周囲の大学生たちがパニックを起こすー。
まもなく雅美はーー
動かなくなったーーー
「ゲーム・セットォ!」
そう叫んで両手を上げる俺。
俺は雅美から幽体離脱した。
ココロクラフト。
凄すぎだぜ!
マインクラフトの神様、ありがとう!
死んだ雅美に目もくれず、
俺は次の獲物を求めて歩き始めた
俺は、希望の光に包まれたーーー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
とあるボロアパート。
近隣住民からの通報を受けて、
警察官2名が、とある部屋に乗り込んだー。
そこにはーーー。
”マインクラフト”のゲームを抱えたまま
息絶えている
髭や髪の毛をぼうぼうに生やした男が倒れていたー。
「・・・・ゲームをやり続けて死ぬとはな」
警官の一人が言う。
身元はすぐに判明したー。
”綿貫 勲”
1年前に大手企業をやめて以降、
部屋に引きこもってゲームばかりやっていたのだという。
食事もほぼとらず、ついに栄養失調で死んでしまったようだ。
彼はー
最後に”マインクラフトの神”と会う夢を見たのだー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
とある専門学校。
「---…綿貫くん」
専門学生の雅美は、
1年前まで彼氏だった男の死亡を
スマホのニュースで知った。
何故、あんなになってしまったのだろう…と
雅美は少し寂しい気持ちになった。
けれども、もう1年前のこと。
雅美は、今日も頑張らなきゃ!とつぶやき、
元・彼氏の死亡のニュースを頭の片隅に追いやったのだった・・・
”ゲームセット”していたのは、俺だったのだ。
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
夢オチ!? でした(笑)
そのまま終わらせれば続編も作れそうなので
迷ったのですが、迷った末に夢オチにしました。
部屋でゲームやり続けて、彼は逝ってしまったようです^^
(神と出会った時点で死んでいたようです)
コメント
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まさに夢落ち!?って感想でしたw
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> まさに夢落ち!?って感想でしたw
最後の部分がなんとなく書きたかったので…(笑)
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ある意味走馬燈かもしれない
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> ある意味走馬燈かもしれない
マインクラフトをプレイし続ければ
神に会えるかもしれませんね!?