入れ替わりが当たり前のように行われている時代ー。
そんな人々の”入れ活”をサポートする
入れ替わり相談所ー。
その物語の最後に待つ結末は…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー
”入れ替わり相談所”に涼子がやって来るその日ー。
所長の幸則は戸惑いの表情を浮かべていたー。
「美月ちゃんから連絡はー?」
幸則が確認すると、若手の男性相談員・勝平が
「いや、特にないですね」と、言葉を口にするー。
「どうしちゃったのかしらー?」
エリート相談員の園香も不思議そうに首を傾げるー。
昨日、美月から”涼子の血液検査”をお願いされた園香は、
表情を歪めるー
「あれだけ必死にわたしにお願いしてきてたあの子が
何の連絡もなく、今日、ここに来ないなんて
信じられないわねー」
園香のその言葉に、
所長の幸則は表情を歪めるー。
目の前に、この時代のスマホの代わりになる
空中に浮かぶ画面のようなものを表示すると、
幸則はそれを操作して、再び美月に連絡を入れるー。
が、美月からの応答はないままだったー。
「ーーー何かあったんじゃなければいいけどー」
幸則はそう言いながら立ち上がるー。
しかしー
ちょうどそのタイミングで、美月が呼んでおいた
涼子(津田)がやって来るー。
「ーー…あー」
園香が涼子(津田)に気付くと、
涼子(津田)は「あれ~?美月は?」と、
ニヤニヤしながら中に入って来るー。
「ーそれがー、今日はまだ出社してなくてねー。」
幸則はそう言いながら、自分が代わりにと、
そう言いかけながら
「ー血液検査の準備を」と、園香に小声で伝えるー。
”涼子”は3年前の違法入れ替わりにより、身体を奪われているー。
それを疑った美月は
”血液検査”によって、涼子が”誰かと入れ替わっていないかどうか”を
確認しようとしていたー。
入れ替わりを一度でも経験した身体は、
血液中に”ある成分”が検出されるー。
人体にとって無毒ではあるものの、
それ故に血液検査を行えば”その人間”が入れ替わり経験者かどうかが分かるー。
涼子の場合”公的な入れ替わり歴”がないため、
もしもその”ある成分”が検出された場合、
涼子は”違法入れ替わり”で身体を奪われているーー
あるいは、自分自身の意思で誰かと”違法入れ替わり”をしたことになるー。
それを確認しようとしているのだー。
「ーーそれで、入れ替わり相手の話だけどー」
幸則がそう言いながら、園香が血液検査の準備を終えるまで
時間を稼ぐー。
園香はすぐに準備を終えると、相談室に入ってきて、
涼子(津田)の手を強引に掴み、血液検査のための
注射器を手にしたー。
「ーー!?!?」
驚きの表情を浮かべる涼子(津田)ー。
がー、抵抗むなしく園香に血液を採取されてしまうと、
涼子(津田)は、険しい表情を浮かべたー。
「ーーー結果はすぐに出るから、時間を稼いでて」
園香が、所長の幸則にそう言うと、
幸則は「分かったー」と、頷くー。
園香が部屋を出ていくのを見ると、
注射を打たれた場所を抑えながら、涼子(津田)は
少しだけ笑みを浮かべたー。
「ーーこんなことしてていいの?」
とー。
「ーーーどういうことだい?」
所長の幸則が言うと、涼子(津田)は笑ったー。
「ーー美月ーー、
昨日の夜、男に捕まってどこかへ連れてかれたのを見たのー」
涼子(津田)の言葉に、幸則は「え…?」と、表情を歪めるー。
「ど、どういうことだー?」
幸則がそう言うと、涼子(津田)は足を組んで開き直ったような
態度をしながら言うー。
「ー少し尾行してみたんだけどー…
どうやら”美月”の元カレみたいねー。」
涼子(津田)がそう言うと、
幸則は表情を歪めるー。
”美月”の”身体”の元カレー。
今の美月ではなく、まだ”本人”が中身だった頃の元カレが
この前、この入れ替わり相談所を客として偶然訪れているー。
その男の姿を思い浮かべながら
幸則が険しい表情を浮かべていると、
やがて、涼子(津田)が口を開いたー。
「ーわたし、美月が連れ込まれた場所も知ってるけど、
知りたいー?」
とー。
幸則は表情を歪めるー。
それと同時に、園香が部屋に戻ってきて
「検査の結果がー…!」と、声を上げるー。
「ーやっぱり、この子”入れ替わり”の反応が出てるー!」
園香が言うと、幸則は険しい表情で、
涼子(津田)を見つめるー。
”涼子”は、公的な入れ替わり記録がなかったー。
つまり、誰かと入れ替わった経験はないー。
しかし、入れ替わり反応が出ているー。
それは、”法律の範囲内の入れ替わりを超えた入れ替わりー…
”違法入れ替わり”の被害に遭ったか、あるいは涼子が違法入れ替わりに
手を染めたことを意味しているー。
「ーーーで?どうするの?」
涼子(津田)は不敵な笑みを浮かべながら、
幸則の方を見つめるー。
幸則は、涼子自身のことを心配しながらも
「ー美月ちゃんは、どこに?」と、
そう言葉を口にするー。
「ーーーー」
涼子(津田)は笑みを浮かべながら「ー何でだろうな」と
ボソッと呟くと、
「まぁいいわー。教えてあげるー」と、
そう言葉を口にしたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーークククー
今日から、俺が美月だー」
その頃ー
廃工場のような場所では、”違法入れ替わり”により、
身体を手に入れた美月の元カレ・修平が嬉しそうに笑みを浮かべていたー。
「ーーわ、わたしの身体を返して!」
修平になってしまった美月がそう言うと、
美月(修平)は笑みを浮かべたー。
「ーお前だって、元々”この身体”の持ち主じゃなかったんだろぉ?
だったら、お互い様さー」
美月(修平)はニヤニヤしながら自分の手を撫でまわすと、
吐き捨てるように、そう言葉を口にしたー。
「ーー…わ、わたしはちゃんと公的な入れ替わりで、
その身体を貰ったの!
あなたがやってることは、違法入れ替わり!
許されることじゃない!」
修平(美月)がそう言うと、
美月(修平)は笑いながら
「ーそんなこと関係ねぇよー」と、言い放つー。
「ー大体、この女は元々俺のものなんだからー」
美月(修平)のその言葉に、修平(美月)は
「あなたのものなんかじゃない!」と、そう反論するー。
「ーうるせぇ!俺の元カノの身体を勝手に使いやがって!」
美月(修平)はそう言い放つと、
修平(美月)を乱暴に蹴り飛ばしたー。
「ーーさて…とー。
”違法入れ替わり”で騒がれると面倒だからー
”元俺”の身体ごと死んでもらうぞー」
美月(修平)がそう言い放ちながら
廃工場に火をつけようとその準備をし始めるー。
「ーーーく…バカなことはやめなさい!」
修平(美月)が叫ぶー。
しかし、美月(修平)が止まる様子はないー。
修平(美月)の頭の中には”死”の予感まで
浮かび始めるー。
だが、その時だったー。
「そこまでだ!」
入れ替わり相談所の所長・幸則の声と共に、
幸則や、相談所の面々が入って来るー
「ーー!!!」
美月(修平)が驚いた表情を浮かべながら振り返るー。
そして、そこにはこの場所を教えた
”涼子(津田)”の姿もあったー。
すぐに美月(修平)は拘束されー、
そのまま”通報”されるー。
違法入れ替わりが起きた際には、警察が身柄を確保後に
元の身体の持ち主が分かれば、身体は無事に返却されるー。
「ーみ、皆さんー…どうしてー?」
修平(美月)がそう言うと、
エリート相談員の園香が「あの子が教えてくれたのよ」と、
涼子(津田)のほうを指さしたー。
「涼子ー」
修平(美月)が涼子(津田)のほうを見つめるー。
だがー、
園香はこうも言葉を口にしたー
「ーあの子の中身はもう”涼子”じゃないー」
とー。
そうー。
血液検査の結果”違法入れ替わり”を示唆する結果が出たことを、
園香は修平(美月)に伝えたー。
「ーーえ………」
修平(美月)は呆然としながら涼子(津田)のほうを見つめるー。
「ーーだ、だったらどうしてー?」
修平(美月)は言葉を口にするー。
”だったらどうしてわたしを助けるような真似をしたのー?”
そんな疑問が浮かんでくるー。
入れ替わり相談所の面々に、美月のことを伝えたのは
涼子なのだというー。
涼子の行動の真意が分からず、修平(美月)は混乱するー。
がー、涼子(津田)は少しだけ自虐的に笑うとー
「ーこの身体がー…美月を見捨てようとすると、
疼いて疼いて、仕方がなくてー」と、それだけ言葉を口にしたー。
”美月”の身体が、元カレ・修平と再会した時に反応したのと同じー。
元の身体の持ち主の”本当に強い思い”は、身体に残るー。
涼子(津田)は、涼子の身体が美月を見捨てることを許さなかったのだと
そう言葉を口にしたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
後日ー
違法入れ替わりを行った罪として、修平は逮捕されたー。
当然、逮捕された際に
美月と修平の身体は元に戻されたー。
そして、元に戻ったあと、
美月は改めて涼子(津田)と話をしたー。
「ー”涼子”はどこ?」
美月がそう言うと、涼子(津田)は表情を歪めるー。
「ーーーーーー」
美月は、元カレと共に逮捕された際に、
”涼子”のことは言わなかったー。
涼子も”違法入れ替わり”をされたのであれば
警察に伝えれば、涼子(津田)も逮捕されたはずだー。
だがー、自分を助けてくれたこともあり、
その時は警察には伝えずー、
今、こうして直接話を聞いているー。
「ーーーーーー」
涼子(津田)は表情を歪めながら
ようやく口を開こうとするー。
「ーー”もういない”のねー」
美月は、涼子(津田)が口を開くよりも先に口を開いたー。
「ー!」
少し驚く涼子(津田)ー。
「ーーー…」
美月は悔しそうな表情をしながら、
「ーだって、涼子が別の身体になったなら、絶対わたしに
連絡して来るはずだからー」と、そう言葉を口にするー。
涼子が自ら違法入れ替わりに手を染めるとは考えられないー。
だとすれば、今、涼子の身体を使っている人物が、
違法入れ替わりの犯人だろうー。
と、なれば涼子は”別の身体”と入れ替えられているはずー。
しかし、美月に何も言ってこないということはー、
それはもうーーー…
”涼子がこの世界にいないのだと”
美月はそう解釈していたー。
「ーーーー…ーーーー」
涼子(津田)は沈黙するー。
美月は立ち上がると、
「ーーわたし、あなたのことは許しませんー」
と、そう言葉を口にするー。
「ーーーー…」
涼子(津田)は少しだけニヤリと笑みを浮かべるー。
「ーでも、助けてくれたことはありがとうございましたー」
美月のそんな言葉に、
涼子(津田)は「ーこの身体が疼いて仕方ないからーそうしただけ」と、
そう言葉を口にするー。
美月は険しい表情を浮かべながらも、
「ーそれと」と、言葉を続けるー。
「ーあなたの入れ替わり相談は”お断り”します」
ハッキリとした強い口調ー。
「ーーー……何故?この身体、体調悪いし、早く乗り換えたいんだけどー?」
涼子(津田)がそう言い放つと、
美月は強い口調で言い放ったー。
「ーー涼子の身体を奪っておいて、それをさらに捨てるなんて絶対に許さないー。
責任を持ってその身体を大事にしないと、
ーー絶対に許さないー」
美月の言葉に、涼子(津田)は、少しだけ驚いたような表情を浮かべるー。
美月がここまで強く、ハッキリとモノを言うタイプだとは
思っていなかったからだー。
「ーーーーー」
そんな、美月の全力の言葉に、涼子の身体が少しだけ反応するー。
”もう、心はいない”というのにー。
「ーーーーー……」
涼子(津田)は、しばらく表情を歪めていたもののー
やがて、口を開いたー。
「ーーわかったー。わかったー。
責任を持って、この身体で生きていくからー」
涼子(津田)の言葉に、
美月は「嘘だったら、許しませんからー」と、
そう言い放つー。
「ーーー…嘘じゃないー。
病気も治してー、この身体で生きてくー。
入れ替わり相談も取り下げするー」
涼子(津田)はそれだけ言い放つと、
美月の方を今一度見つめたー。
涼子の身体を奪ったあとー、涼子のフリをして
美月と一緒に暮らし始めてー、
美月を弄ぼうと思っていたー。
がー、
涼子の身体が強い拒絶反応を出しー、
それが出来なかったー。
それにー、美月が辛い顔をしていると、
何故か自分まで辛くなってしまったー。
だから、美月との同棲を解消して
そのまま姿を消していたー。
美月を傷つけないためにー。
「ーーーー…この身体でいると、美月には弱いねー」
涼子(津田)は自虐的にそう言葉を口にすると、
「”美月との約束”は守るよー」
と、それだけ言葉を口にしたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーおはようございます~!」
今日も、入れ替わり相談所にやってきた美月ー。
「あぁ、おはようー」
所長の幸則が穏やかに笑うー。
園香たち、同僚の相談員たちも、美月を見て笑うー。
「ーーーーーーー」
今日も仕事の準備を始める美月ー。
美月は、休憩室に飾られている
涼子がまだ、この相談所に勤務している時に
撮影した相談員の集合写真を見つめるー。
そしてーー
少しだけ寂しそうに、けれども前向きに呟いたー
「ー涼子ー、わたし、これからも頑張るねー」
とー。
おわり
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コメント
時代は入れ活の後日談でした~!☆
4話構成で、本編より長くなっちゃいましたネ~笑
ここまでお読み下さりありがとうございました~~!!
コメント
ぜひシリーズ化お願いします!
ありがとうございます~~!★
違う相談所視点でのお話とかも書けそうですネ~!
また機会があれば~!★!
美月さんの入れ替わりまでの話とかも読みたいです
ご検討お願いします!
それも確かに面白そうですネ~!
また時間は空くと思いますが、機会があれば~!☆!