バイト先に、自分を含めた色々な人々に
”変身”して、悪さを行っている人間がいるー。
そう確信した彼女は、その犯人を捕まえようとしてー…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーいったい、誰なんだろうー…」
絵梨は困惑した表情を浮かべながら
”バイト先のレジからお金を抜いたわたし”のことを考えるー。
同い年の男子大学生バイト・紀之のおかげで、
大滝店長からの疑いは少し晴れたー。
けれど、”絵梨”の姿に変身して
絵梨のフリをしてバイト先のレジからお金を引き抜きー、
さらに、絵梨にそれを問い詰められた際に、
後輩バイトの歩花に変身したあの人物は誰なのかー。
”他人に変身する力”が、あるなんて思えないー。
けれど、絵梨は実際に、
”絵梨の姿”をしたその人物が、”歩花”の姿に変化する
場面を目撃しているー。
ほとんどの人に信じて貰えないだろうけれど、
絵梨の姿を、そして歩花の姿を利用して、
悪事を働いている人間がいるー。
「ーーーー」
絵梨は表情を曇らせるー。
いずれにしても、相手は
”バイト先のこと”をよく理解している人物だー。
大滝店長ー、
同い年の男子大学生バイトの木田 紀之ー、
後輩バイトの歩花、
先輩の美智子ー、
同じく先輩のフリーター・月野 陸翔ー…
あるいは他のバイトかー…
仲間内に、真犯人が潜んでいるのかもしれないー。
「でもーー…」
絵梨は、先輩バイトの美智子だけは候補から
外してもいい、と、そんな風に考えるー。
何故なら、”偽物の絵梨”が店に入って行った際に、
美智子は偽物の絵梨と会話を交わしていたからだー。
つまり、絵梨に変身している”本人ではない”と、
いうことだー。
大滝店長も恐らく関係ないー。
美智子によれば、絵梨が”偽物の絵梨”を追いかけている際にも
大滝店長は店の事務所にいたらしいから、
絵梨に変身した張本人とは別人だろうー。
「ーーーいったい、誰がー」
絵梨は”わたしの姿が勝手に悪用されている”という状況に
改めて強い恐怖を覚えるー。
今は、”バイト内”というある意味”身内”の範囲内で
留まってはいるー。
しかし、仮に絵梨の姿で他の場所で盗難などの行為に
及ばれてしまったり、
ネット上に大炎上するような内容を顔出しで投稿されたり、
犯罪行為にでも及ばれてしまったら、
絵梨の人生は壊されてしまうー。
今でさえ、既にバイト先から横領の疑いを掛けられて
大変な状況なのにー。
そう思いつつ、絵梨は”早く捕まえなきゃ”と、
そう言葉を口にするのだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーへへへへへへ♡」
”絵梨に変身した”人物は、
絵梨の姿のまま、鏡の前に立って
邪悪な笑みを浮かべていたー。
「ーあぁ…可愛いよ可愛いー…」
絵梨に変身した人物は、ニヤニヤしながら
そう言葉を口にすると、
鏡に顔を近づけて、その鏡にキスをしたー。
絵梨に変身している人物は
”自分が好きになった相手”が悪いことをしている姿に
興奮する、そんな”性癖”の持ち主ー。
「ーーへへへへへ…絵梨ちゃんが
レジからお金を抜き取ってるなんてー
考えただけで興奮するー」
ゾクゾクしながら、絵梨の姿でそう言葉を口にするー。
絵梨に”変身”している人物の目的は
”お金”などではなくー、
”自分が好きになった相手が悪いことをすること”で、
性癖を満たすためだったー。
「ーでも、そろそろ気付かれ始めてるみたいだしー
”あの手”を使おうかなー」
絵梨に変身している人物は、静かにそう言葉を口にすると、
やがて、邪悪な笑みを浮かべたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
数日後ー
”本当に偽物がいるかもしれない”という事態に
大滝店長は、絵梨本人に疑ったことをひとまず謝罪し、
警察への通報は事実が明らかになるまで一旦見送ることを告げたー。
「ーすみませんー。ご迷惑をおかけしてー」
絵梨が心底申し訳なさそうに言うと、
大滝店長は「いやー…」と、そう言葉を口にしてから、
「ーもしも本当に偽物がいるのなら、悪いのはそいつだー。
永坂さんは悪くない」と、そう続けるー。
その上で「ただ、本当はやっぱり永坂さんが犯人だった場合はー、
僕もちゃんと対応しないといけないー」と、そう言葉を口にすると
「まだ”どっち”と、僕には断定できないからー、
もしも”真犯人が別にいた”場合は、僕にしっかりと謝らせて欲しい」と、
そう続けたー。
「ーーはいー。必ず、本当の犯人を見つけますー」
絵梨がそう言葉を口にすると、
そのままその日のバイトを終えて、
帰路につこうとするー。
「ーあ、そうだー。永坂さんー」
大滝店長は、そんな絵梨を呼び止めると、
「僕さ、月曜日から”腰痛”なんだー」と、
苦笑いしながらそう言葉を口にしたー。
「ーーえ…?」
絵梨が少し戸惑うー。
「ーははー。いたたたたた」
大滝店長はそれだけ言うと、絵梨は少し戸惑いながら
「ー大丈夫ですかー…?お大事にして下さいねー」と、
そう言葉を口にしたー。
がー、”問題”が起きたのは
その翌日のことだったー。
「ーーー店長ー。”真犯人”を見つけましたー」
絵梨がそう言葉を口にするー。
「ーー本当かー?」
先輩のフリーターバイトの月野 陸翔がそう言葉を口にするー。
”陸翔”は1万円が消えた日に、絵梨にとって後輩の歩花と共に
一緒にシフトに入っていたバイトだ。
「ーーーはいー。今日、ここに来るように言ってあるので
もうすぐ到着すると思いますー」
絵梨はそう言葉を口にすると、
大滝店長は、少し戸惑ったような表情を浮かべながら
「分かったー」と、そう頷いたー。
するとーー…
”絵梨”が後からやってきたー。
「ーーーー」
ニヤッと口元を歪める”先にお店にやって来ていた絵梨”ー
実は、今、先にやってきていた絵梨は
”絵梨に変身している偽物”ー。
何も知らず、”今日こそ真犯人を突き止めなくちゃ”と
思いつつ、バイト先にやってきた絵梨は、
驚いたような表情を浮かべるー。
それもそのはずー、
バイト先に到着したら”もう一人のわたし”が、
バイト先に既に到着している状態だったのだからー。
「ーー!」
大滝店長も、フリーターの陸翔も
”絵梨が二人いる光景”を始めて直接見て困惑の表情を浮かべるー。
すると、先に到着していた”偽物”が笑みを浮かべながら言ったー。
「ーーー店長!来ました!わたしの偽物です!」
とー。
「ーえっ…!?えぇっ!?」
後から到着した本物の絵梨が心底困惑したような表情を
浮かべると、偽物の絵梨は邪悪な笑みを浮かべながら
「店長ーお金を盗んだのはこの人です!」と、
そう言い放ったー。
「ーーーー!!!」
本物の絵梨は心底困惑するー。
絵梨に変身している人物の”狙い”はこれだったー。
既に店側が”偽物がいる”と気付き始めている状態ー。
これ以上”長くは続けられない”と、そう思った
絵梨に変身している人物は、本物の絵梨を”偽物扱い”して、
最後に”もうちょっと”楽しもうと、そんな風に考えていたー。
「ーーそ、そんなーほ、本物はわたしです!
お金を盗んだ犯人はこっちです!」
本物の絵梨が偽物の絵梨を指差しながら言うー。
「ーーーな、何を言ってるの!?本物はわたしよ!?」
偽物の絵梨がそう反論するー。
そんな”言い合い”を続ける中ー、
本物の絵梨は「あなたは誰!?どうしてこんなことするの!?」と、
心底困惑したような表情を浮かべつつ、
そう言い放ったー。
いったい、この人は誰なのかー。
少なくとも、”大滝店長”と、
今この場にいる先輩のフリーター・陸翔は
関係ないー。
同じく先輩であるバイト・美智子も
”偽物”と一緒にいたから無関係ー
と、なるとー…?
そんな風に考えていると、
店長が「ー腰痛ー。いつからだったっけ?」と、
ふいにそんな言葉を口にした。
「ー腰痛??」
偽物の絵梨が困惑した表情を浮かべると、
本物の絵梨は少しだけ考えてから
「あっー!」と、表情を変えるー。
「僕さ、月曜日から”腰痛”なんだー」
昨日、大滝店長がそう言葉を口にしたのを、絵梨は思い出したー。
何で急に腰痛の話をー?と、少し不思議に思ったものの、
あれは、大滝店長が”本物の絵梨”に対してこっそりと”合言葉”の意味で
伝えた言葉だったのだー。
”二人で合言葉を決めておこう”と言えば、
誰かに盗み聞きされていた場合、暗記されている可能性があるー。
が、何気ない言葉の裏に合言葉的なものを隠しておけばー…
偽物がそれをもし聞いていても、”普通の会話”として流して
覚えていない可能性が高いとそう考えたー。
そして、絵梨のことを長い間”バイトと店長の関係”で見守って来た
大滝店長は”何気ない話でも覚えてくれている”と、そう信頼していたー
偽物の絵梨は表情を歪めるー。
”先に答えると”それを真似されると思った本物の絵梨は
「店長の腰痛ー、いつから?」と、偽物の絵梨にそう言い放つー。
「ーわたしは知ってるー」
本物の絵梨がそう言うと、偽物は悔しそうな表情を浮かべつつ、
絵梨を見つめ返すー。
「ーわ、わ、わたしだって知ってるからー」
偽物の絵梨がそう言い返すと、本物の絵梨は
「じゃあ、紙に書いて店長に渡しましょう」と、そう提案するー
偽物は表情を歪めるー。
「ー”何日からか”紙に書いてね」
本物は”あえて”そう言ったー。
偽物が
”適当に書いてたまたま的中してしまう”ことを防ぐためにー。
「ーーー」
そしてーー
本物の絵梨は”店長の腰痛は月曜日からです”と、そう書いて
大滝店長に紙を渡すー。
しかし、”日付で”と本物に引っかけられた偽物は
まんまとそれにはまって、”22日ごろからだったと思います”と、
そう書いて店長に渡したー。
大滝店長は笑うと「君が偽物だね」と、偽物の絵梨に対して
そう言い放ったー
「くっー…!」
偽物の絵梨は表情を歪めるー。
絵梨に変身して悪さをするのもそろそろ潮時ー。
そう思った絵梨の偽物は、最後に
絵梨に変身して、本物を偽物扱いした上で
”この一連の遊び”を終えようとしていたー。
今度はまた、絵梨ではない別の誰かをターゲットに
別の場所で”お楽しみ”をするつもりだったのだー。
しかしーーー
その行動が墓穴を掘ってしまうことになったー
「くそっ!」
慌てて逃げ出そうとする偽物の絵梨ー。
それを見た先輩のフリーター男性・月野 陸翔が
偽物の絵梨の腕を掴むと、そのまま偽物の絵梨を投げ飛ばしたー
陸翔は「よく分かんないけどー、お前が偽物なんだろ?」と、
今まで、絵梨の偽物の件にあまり絡んでこなかったために
そう言葉を口にすると、
その衝撃を受けた絵梨の偽物の姿がーー
”本来の姿”に戻ったー。
その姿はーー
「ーーーえっ」
本物の絵梨が驚くー
大滝店長も困惑の表情を浮かべると、
”絵梨に変身していた偽物”はー、
このお店のスタッフではなかったー。
カメラの位置やレジの位置、
そしてスタッフの顔ぶれなどを知っていたからこそ、
”身内”の犯行だと、そう思われていたものの、違ったー。
その人物はー、このお店の”常連客”だったー。
絵梨が最初に横領の疑いを掛けられて店長に呼び出されたあと、
戻って来た絵梨に”「絵梨ちゃんがそんなに怖い顔するなんて珍しいなぁ」”と
言っていた人物ー。
絵梨が最初に偽物と直接対峙したあと、
店で何食わぬ顔で客として、座っていた人物ー。
あの日は、絵梨に変身し、後輩の歩花に変身したあと、
店に絵梨よりも早く戻って、絵梨の反応を見て楽しんでいたのだー。
犯人は”常連客の男”ー
店に通ううちに絵梨を気に入り、”気に入った子の姿で悪さをする”という
性癖を満たしていたのだー。
「ーーあなただったのですか」
大滝店長は呆れ顔で言うと、
そのまま常連客の男の腕を掴んで
「逃げられると思わないで下さいよ?」と、怒りの形相を浮かべたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
後日ーー
「ーー改めて、本当にすまなかったー。」
大滝店長が、絵梨を疑ってしまったことを謝罪すると、
絵梨は苦笑いしながら
「わたしも逆の立場なら疑ったと思いますしー」と、そう言葉を口にするー。
そして、絵梨は穏やかに微笑むと
「これからも、宜しくお願いしますー」と、
そう言葉を返すー。
優しく頷く大滝店長ー。
そこに、今日、シフトが一緒の同い年の男子大学生バイト・紀之がやってくると、
紀之も「無事に解決したみたいでよかった」と、
満足そうに笑みを浮かべるのだったー。
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
最終回でした~!★
犯人の常連客の男は目立たないように
こっそり①と②に登場していました~!笑
お読み下さりありがとうございました★★!
★作品一覧★

コメント