<他者変身>バイト先にわたしがもう一人!?①~困惑~

ある日、店長から身に覚えのない”横領”を
問い詰められた彼女ー。

困惑する彼女は、そのことを調べていくとー…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーー永坂(ながさか)さんー」
バイト先で、いつものように仕事をしていると、
店長の大滝 節史(おおたき せつじ)に声を掛けられた
女子大生アルバイト・永坂 絵梨(ながさか えり)は
「はいー?」と、少し不思議そうな表情を浮かべたー。

”穏やかなおじさん”ー
そう表現するのがぴったりな店長が
いつもとは違い、どことなく暗い表情を
浮かべていたからだー。

絵梨のバイト先は、それほど大きくない街のカフェ。
店長と、絵梨を含めた10人に満たないアルバイトで
回っているお店だ。

大滝店長から呼び出された絵梨は
同い年の男子大学生バイト・木田 紀之(きだ のりゆき)に
その場を任せると、大滝店長と共に店の奥の休憩室の方に移動していくー。

そして、大滝店長が休憩室の扉を閉めると、
大きくため息を吐き出してから
「永坂さんー。どうしてあんなことを?」と、
そう言葉を口にしたー。

「はい????」
突然の”意味不明”な質問に絵梨は困惑すると、
「ーー”レジのお金”を抜いたことだよー」と、
大滝店長は、いつものように優しい口調ながら
心底失望が混じったようなトーンでそう言葉を口にしたー。

「レ、レ、レジのお金を!?わたしが!?」
絵梨は思わず動揺しながらそんな言葉を口にするー。

”バレちゃった!?どうしよう!?”と、いう意味での
動揺ではないー。
”レジからお金を抜いた”記憶など全くないのだー。
そんなこと、しようと思ったことすら一度もない。

「あ、あ、あのー…わ、わたし、そんなことしてませんー」

レジからお金を抜いた記憶など全くないにも関わらず、
疑われている状況に、
絵梨は心底動揺しながらそう言葉を口にするー。

すると、大滝店長は
「僕もそう思いたいんだけどねー…」と、
心底残念そうにそう言葉を口にするー。

「先月から、何度かレジのお金が合わないことが
 あったー…って言うのは永坂さんも知っているねー?」

大滝店長はそう確認すると、
「まぁ…永坂さんがそれをしていたんだから、知らないはずは
 ないと思うけどー」と、残念そうに言葉を付け加えるー。

絵梨は「そ、それは知ってますー。でも、わたしじゃありません」と、
すぐに否定するー。

確かに、ここ最近、レジのお金が”足りない”ことが何度かあったー。

そして少し前には、
絵梨の後輩である岡林 歩花(おかばやし あゆか)と、
先輩のフリーター男性・月野 陸翔(つきの りくと)が、
シフトに入っている日に、”1万円”ものズレが生じたー。

大滝店長もそのことを深刻に考え、調査を進めた結果
絵梨が犯人であると判明したというのだー。

「ま、ま、待ってくださいー!
 わたし、1万円ズレたって言う日はそもそもシフトに入ってないですし
 その日はずっと大学にいてー」

絵梨がそう言うと、
大滝店長は悲しそうに首を振ったー。

「ーせめて素直に話して欲しかったー」
とー。

絵梨は困惑しながら、
「ほ、本当にやってません!
 ーど、どうしてわたしがやったって言うんですかー?」と、
少し不満も覚えながらそう言葉を口にするー。

すると、大滝店長は
「ーー僕だって永坂さんを信じてあげたいー。ただ…」と、
そう言葉を口にするとパソコンのキーボードを入力して
”映像”を表示させたー。

「ーーー!」
絵梨が困惑した表情を浮かべながら映像を見ると、
店に忍び込んで来た”絵梨”が、レジからお金を
抜き取る映像がそこには映し出されていたー。

「ーーー…うちは小さなお店だからねー。
 防犯カメラもお客さんの方に向けたものしか
 今まではなかったけど、
 最近のレジのお金が消える件で、
 バイトのみんなには申し訳ないと思いつつ
 こっそりとレジが映るようにカメラを増やしたんだー」

大滝店長がそう説明しながら
映像を見つめるー。

そこには確かに、絵梨が
”1万円札”を盗み出す映像がハッキリと記録されていたー。

「ーまさかこれを見ても”わたしじゃないです”とは言わないよね?」
大滝店長は心底悲しそうにそう言葉を口にするー。

絵梨は”監視カメラ”にハッキリと映っている”自分”がレジから
お金を抜き取る姿に困惑すると同時にー
この状況に青ざめるー。

何故ならー…これでは疑われても仕方がないし、
大滝店長が”永坂さんが犯人だね”と、そう決めつけるような態度を
取るのも無理もない話だったからだー。

「ーーーわ、わたしじゃありませんー…
 た、確かにわたしに見えますケドー…」
絵梨は混乱しながらも、すぐに”わたしではない”と否定するー。

決してとぼけているわけではなく、
本当に”絵梨”ではないのだ。

都合よく記憶が飛んでいるわけでもないし、
”わたしの中の別人格が”なんてこともでもない。

本当に、絵梨はやっていないー。

「ーー…こんなにそっくりな子が別にいると、
 そう言いたいのかい?」
大滝店長は困惑するー。

「ー君そっくりの子が、わざわざこのお店にやってきて
 レジの位置もシステムも知っているかのように、
 スムーズにお金を抜いて立ち去っていくー。

 ーーそんな偶然があると…?」

大滝店長のその言葉に、
絵梨は表情を曇らせるー。

確かにそんな偶然ー、まずあり得ないー。
しかも、映像を見る限り、
”元々設置されていた防犯カメラ”には
この絵梨は映らないように移動しており、
”このお店のことを良く知っている”ことも分かるー。

大滝店長がこっそり追加した防犯カメラのことは、
絵梨本人も知らなかったし、
恐らくはこの映像に残されている絵梨も
知らなかったのだろうー。

「ーーー…そんな偶然ー…あるなんて、確かにわたしも思いませんー」
絵梨はそこまで言うと”でも”と、言葉を続けながら
大滝店長の方を真っすぐ見つめるー。

「わたしは、バイトを始める前から
 このお店が大好きでしたし、
 そんなお店に、店長に迷惑をかけることなんて
 絶対にしませんー」

絵梨はハッキリと、そう言葉を口にするー。

絵梨は、バイトを始める前から
このお店を利用していた”客”で、
そこからバイト募集を見かけてバイトを始めた子だー。

大滝店長も当然そのことは覚えているー。

だからこそ、”まさか永坂さんが”と
店長の立場からすればショックを受けていたー。

「ー誰かが、映像を加工したってことはないですかー?」
絵梨がそう言うと、
「僕以外、カメラの存在は知らないし映像はいじれないー。
 映像を確認するためのパスワードは僕しか知らない」
と、大滝店長はそう即答するー。

その上で「もちろん、僕は映像を加工なんてしていないー。
永坂さんを貶める意味なんてないからねー」と、
そう付け加えるー。

「ーーーー」
今は映像の技術も格段と上がっていて、
悪意のある人間が映像を全力で編集すれば、
”絵梨がお金を抜き取っているように見せる映像”を作ることなど
たやすいことだろうー。

けれど、大滝店長以外いじることができないなら
その可能性は低いー。

「店長ー…わたし、本当にやっていないんですー」
絵梨がそう言うと、
このまま警察に通報しようかとも考えていた大滝店長は
少しだけ表情を歪めたー。

そしてーー

「半月ー」
大滝店長はそう言うと、絵梨は「はい…?」と、
その意図を聞き返す。

すると、大滝店長は
「もし永坂さんが犯人じゃないと言うのなら、
 真犯人を突き止めて欲しいー。
 この映像に写っている”君のそっくりさん”が誰なのかー。

 ーーそれが出来なければ、僕も君を通報しないといけないー」と、
最大限の譲歩を口にしたー。

大滝店長からすれば、絵梨のことを信じたい。

しかし、その一方で、”絵梨がレジからお金を抜いている”という
決定的な映像が残っている以上ー、
”永坂さんだから、それでも僕は永坂さんを信じたい”などということを
してしまうことはできなかったー。

いくら信頼しているアルバイト相手だからと言って
”君だから見逃すよ”なんてことをしてしまえば
店長として、その方が問題だ。

大滝店長以外、映像を確認することは出来ず、
当然いじることもできない環境ー。
大滝店長が先程、絵梨本人に対して口にしたように、
大滝店長自身に映像を加工して絵梨を犯人に仕立て上げるなどということを
する理由は一切ない。

そして、映像を確認する限り、
”絵梨のそっくりさん”などという可能性は低く、
誰かが絵梨に変装しているなどということも可能性としては
かなり低いように見えた。

仮に、警察に通報してこの映像を提出すれば
ほぼ確実に絵梨が犯人として罪を問われることになるだろうー。

「ーーーーー」
絵梨は困惑した表情を浮かべながら、
今一度監視カメラの映像を見つめるー。

「ーーバイトには今まで通り出て貰って構わないよー。
 そうしないと”真犯人”を見つけ出すことも難しいと思うからねー。

 ーーーもし、真犯人がいれば、の話だけど」

大滝店長がそう言葉を口にするー。

”信じたい”という気持ちと、
けれども”動かぬ証拠を前にして信じられない”という気持ちの中で、
大滝店長も迷っている様子を見せているー。

「ーーありがとうございますー
 わたし…絶対にこんなことしてませんー
 …だからー…こんなことした人を絶対に見つけ出しますー」

絵梨は意を決した様子でそう言葉を口にすると、
大滝店長は静かに頷いたー

絵梨は、店内へと戻っていくー。

店内へと戻ると、同い年の男性アルバイト・木田 紀之が
「永坂さんー?何か問題?」と、少し心配そうに言葉を口にするー。

「え…あ、ううんー」
絵梨はそう言葉を口にすると、
首を横に振るー。

”真犯人”を絶対に見つけてみせるー。

そう思いながら少しだけ表情を曇らせると、
「絵梨ちゃんがそんなに怖い顔するなんて珍しいなぁ」と、
常連客の男がそう言葉を口にするー。

絵梨はハッとしてすぐに表情を変えると、
「ーーすみませんー」と、そう言葉を口にして
その日は接客に集中することにしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

店長は”絵梨”にしか、
監視カメラの映像の件を言っていない、と
そう言っていたー。

つまり、”絵梨のそっくりさん”が
他にいるのだとすれば、まだ店長に映像を
確保されていることを知らないー。

そうなれば、店長の言う”半月”の期限以内に
”また同じこと”をする可能性は高いー。

「ーーーー」
絵梨は注意深く、レジを確認して
さらには大学がない日は出来る限り
バイト先の付近で、その様子を探っていたー。

そして、大滝店長から
衝撃の映像を見せられた3日後ー、
”それ”は起きたー。

「ーーー!?」

今日はバイトのシフトが入っていないため、
店の近くで店を見張っていた絵梨ー。

するとそこに”絵梨”が姿を現して、
何食わぬ顔でバイト先の中へと入って行ったのだー。

「ーーーえ…?」
絵梨は”信じられないものを見た”と、
驚きの表情を浮かべながら、
その場で手を震わせるー。

”あれが犯人”だと、絵梨はそう確信したー。

しかし、それと同時にー
”あの人は何ー…?”と、恐怖と混乱を覚えるー。

何故ならー、
”自分”と全く同じような感じの姿の人間が
店の中に入って行ったのだからー。

絵梨は、店の方に近付いていくと、
この日のバイトだった
絵梨の1歳年上の先輩バイト・美智子(みちこ)と
”絵梨のそっくりさん”が話をしているのが見えたー。

「ーーーーー」
何を話しているのかは聞き取れない。

絵梨が困惑の表情を浮かべているとー…
美智子がレジを離れたタイミングで、
”絵梨のそっくりさん”がレジから
何かを抜き取るのが見えたー。

「ーーー!」
絵梨は”やっぱりあの人が犯人ー”と、
そう思いつつ、
店から出て来た”そっくりさん”に声をかけたー。

「ーちょっと!!何してるんですか!?」
絵梨がそう叫ぶと、絵梨の”偽物”ーー

”絵梨に変身している人物”は、
驚いたような表情を浮かべて、咄嗟に逃げ始めたー。

絵梨はまだ知らないー。
そっくりさんの正体をー。
そして、その人物が特殊な力で”絵梨に変身している”
と、いうことをー…

②へ続く

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コメント

変身能力を使っている何者かのせいで、
バイト先から横領を疑われてしまうお話デス~!!

こんなことになってしまうと、大変ですネ~…!

続きはまた次回デス~!!

続けて②をみる!

「バイト先にわたしがもう一人!?」目次

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