<入れ替わり>それでも君とは付き合えない(後編)

付き纏われていたイケメン男子と、
付き纏っていた根暗な女子が
入れ替わってしまったー。

入れ替わり後の、二人の困難な状況は続く…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーー」
女子トイレへとやってきた加奈子(修太)は
戸惑いの表情を浮かべながら、
足早に個室へと駆け込むー。

誰か、他の女子生徒がいたわけではないけれど、
修太からしてみれば”申し訳ない気持ち”になってしまい、
目を閉じながら個室の中に入ったー。

「ーーはぁー」
ため息を吐き出しながら、加奈子(修太)は
不慣れな加奈子の身体でトイレを済ませるー。

イケメンな修太は、女子ともよく話すし、
彼女がいたこともあるため、
”女子慣れしていない”わけではないけれどー、
それとこれは話が別ー。

女子に慣れていようと、慣れていなかろうと、
自分自身が女子になってしまう、ということを
そう簡単に受け入れることはできなかったし、
こうして”俺は男なのにー”と思いつつ、
女子トイレに入るのが正解な現状には
戸惑いを覚えていたー。

何だか、女子トイレに忍び込んでいるような、
そんな感覚に陥ってしまうー。

けれどー、
今の加奈子(修太)にとっては
”これが正解”なのも事実ー。
逆に、加奈子の身体で男子トイレに入って行けば
その方が騒ぎになってしまうー。

「ーーー…早く、元に戻る方法を見つけないとなー」
加奈子(修太)は戸惑いの表情を浮かべつつも、
改めてそんな言葉を口にすると、
ようやくトイレを済ませて、女子トイレの外に出るー。

がーーー

「ーーー!」
加奈子(修太)はふと、修太(加奈子)が物陰から
自分を見ていることに気付いたー。

加奈子(修太)は戸惑いながら、周囲を確認しつつ、
修太(加奈子)の方に駆け寄っていくと、
「な、なにしてるんだよー…!?」と、
そう言葉を口にするー。

”俺の身体になってまで、ストーカーを続けるつもりなのかー?”と
困惑せずにはいられないー。

すると、修太(加奈子)は
「えへへー”いつも”見てたよ」と、そう呟いたー

「い、いつもー…?」
加奈子(修太)はそう言葉を口にすると、
修太(加奈子)のほうを見るー

「ーふふふー
 うんー。
 わたし、いつもー…見てたのー
 ふふー…久川くんがトイレに入っていくのも、
 出て来るのもー」

修太(加奈子)は、修太のイケメンな顔に
不気味なオーラを漂わせながらそう言って見せると、
「ーわたしー、ず~~~っと、見てたよ?」と、
嬉しそうににっこり微笑むー。

思わず寒気すら覚えながら、
「や、やめてくれよー」と、そう言葉を口にする
加奈子(修太)ー

これが、”男子にストーカーされる女子”の気持ちなのだろうかー。
それとも、単に自分が加奈子にストーカーされている状態で
嫌悪感を抱いているのだろうかー。

それも分からなくなりそうになりながら、
困惑の表情を浮かべると、
咄嗟に「お、俺の身体で女子トイレをじっと見られるとー
そのー色々まずいんだー。分かって欲しい」と、そう言葉を口にするー。

もちろん、女子が男子トイレに入った男子を外から
じっと見つめているのも、それなりにリスクはあるし、
下心丸出しで見ているのなら、それはアウトだ。

ただー、世の中的に、男子が女子トイレに入った女子を
外からじっと見つめている方が”よりリスクが高い”ような気がするし、
修太としては、余計な誤解を招くのはイヤだったー。

「ーーでも~…久川くんがわたしの身体でトイレに
 入っていくと思うとー、ふふー…」
ニヤニヤしながら、そう言葉を口にする修太(加奈子)ー。

また危険な妄想モードに突入しそうな雰囲気だー。

慌てた様子で加奈子(修太)は
「と、と、とにかく、”友達”が困ってるんだからー。
 た、頼むよー」と、そう言葉を口にすると、
「友達ー…」と、修太(加奈子)は嬉しそうに
その言葉を噛みしめてから「うん!」と、
そう返事をしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

元に戻るまでは”友達”でいなくてはいけないー。

そう思いつつ、
加奈子(修太)は、修太(加奈子)に
度々”友達だから”と言う言葉を繰り返しつつ、
入れ替わり生活を送っていたー。

加奈子のことを”騙しているような気がして”
気が引けたけれどー、
それでも、加奈子が修太の身体を使っている以上ー、
滅多なことはできなかったし、
考えようによっては”修太の身体を人質に取られているようなもの”
でもあったために、
こうするしかなかったー。

そんな日が数日間続いたその日ー。

「ーーー」
加奈子(修太)は、学校にやってくると、
教室で一人、自分の座席に座っている修太(加奈子)の姿を見つけたー。

入れ替わる前までは、”必ず”修太の周りには誰かしらがいたー。

しかし、たった数日で修太(加奈子)の周りには
人がいなくなってしまったー。

もちろん、”加奈子”になっている修太は大人しくしているために、
加奈子(修太)の周りにも誰も集まらなかったものの、
元々は人気者だった”修太”の周りからも人が消えてしまったー。

”ーわたしには、久川くんがいれば十分だもんー”
修太(加奈子)はそんな風に言葉を口にするー。

けれどー、その目にはうっすらと暗い感情が見えたー。

「ーーねぇ、わたしーどうしてこうなるのかなー…?」
修太(加奈子)がふと、そんな言葉を漏らすー。

「ーーー」
加奈子(修太)は、
”それは思い込みが激しくて、周囲が全く見えない様子で暴走するし、
 でも興味がない人には全く愛想もないし、会話も膨らませようとしないしー”と、
色々なことが頭の中に浮かぶー。

がー、それを言えば、”加奈子”は修太の身体でまた暴走するかもしれないー。

そう思った加奈子(修太)は
喉まで出かかった本心を口にせずに、
「ーーやっぱー…身体と、中身が違ってると
 みんな違和感を感じるんだよー。
 だからー、みんな自然と離れてくー」
と、そう言葉を口にするー。

”修太になった加奈子”が、修太の身体と立場を使いこなせないのは
当然だとー。

「ーーーだからー村岡さんのためにも、早く元に戻ろう。」
何とか”元に戻る”という方向に話を持って行こうとする加奈子(修太)ー

けれど、修太(加奈子)は
「どうせ、わたしに魅力がないからー。
 久川くんみたいな人気者になっても、結局わたしは一人ぼっちになる」と、
そう言葉を吐き出すー。

「~~~~~」
加奈子(修太)は”そういう性格をまずは直さないとー”と思ったものの
とにかく刺激したくなかったために、
「そんなことないー。村岡さんにもいいところはある」と、
そう言い放つー。

「本当にー…?」
修太(加奈子)が涙目でそう言葉を口にするー。

そんな情けない顔をする自分を見たくはないーと、
思いつつもその気持ちを堪えつつ
「あぁ、あるよー」と、そう言葉を続けるー。

「ーーうんーー…久川くんがそう言ってくれるならー」
修太(加奈子)はようやく微笑むと、
その様子を少し安堵した表情を浮かべながら
見つめる加奈子(修太)ー。

ただー…

”ーーーーこういうこと言うと、
 また”勘違い”されるんだろうなー…”
加奈子(修太)は内心で不安そうな表情を浮かべるー。

元に戻ったあとのことを考えると、
とても憂鬱だー。

加奈子が修太に”付き纏う”ようになった理由を聞く限り、
加奈子はとても思い込みが激しいー。

今の言葉だって、加奈子からすれば
”久川くんはわたしのこと好きみたい”と、
変換されてもおかしくはないー。

ただー、そうは言っても、
”元に戻ることができるまで”は、
加奈子の機嫌を損ねないようにする必要があったー。

加奈子の性格を考えれば
怒らせれば人生を滅茶苦茶にされてしまう可能性も
十分にあるし、
最悪の場合ーーー

”死んでやる!”みたいなことを言われる恐れもーー

「ーねぇねぇ、久川くんー
 やっぱり、わたしたち、付き合っちゃおうよー
 付き合えばこの先、元に戻れなかったとしても、
 色々心配せずに過ごしていけるでしょ?」

ふと、修太(加奈子)がそんな言葉を口にしたー。

「ーーー!」
加奈子(修太)は、表情を曇らせると、
「ーいや、それはー…」と、言葉を詰まらせるー。

加奈子とは”付き合いたくない”ー。
一部の生徒がしているように、”加奈子菌”などと、
加奈子のことを呼ぶようなことはしないし、
そんなことをしているやつらには”やめろよ”と、
前にも苦言を呈したこともあるー。

ただーー…
だからと言って、付き合うか、付き合わないかは
修太が選択することだ。

人に付き纏って、思い込みで人を困らせるような人とは
”付き合いたくない”
それが、本心ー。

「ーーまずは友達から。そういう約束だろー?
 それに元に戻ったあとに村岡さんのこと、
 色々と知ってからじゃないと何にも言えないよ」

加奈子(修太)がそう言うと、
修太(加奈子)は複雑そうな表情を浮かべてから
静かに頷いたー。

「”元に戻ったら”恋人になろうねー」
修太(加奈子)は笑うー。

そんな約束をしたのではない。
そんなことは言っていない。

けれども、修太(加奈子)はすっかりと
その気になった様子で微笑んでいるー。

”こういうところ”が、
加奈子が周囲から嫌われてしまう原因なのだろうー。

できることなら、それに、本人に気付いてほしいー。
けれど、加奈子(修太)はこれ以上今の時点では
何も指摘せずにおいたー。

ただー、同時に今回の入れ替わりをきっかけに
加奈子自身が成長してくれればー
今までの自分の振る舞いを顧みて、
改心してくれるようなことがあればーー…

それなら、と、全く可能性がないわけではない、とも思ったー。

かなり思い込みが激しいし、
かなり人間性には問題があるけれど、
じっくり話せば理解してくれる部分もあるー、
ということはこれまでの入れ替わり生活でも
ほんの少し感じることができたー。

だから、彼女が”変わって”さえくれればー、
それなら、その時こそー…
と、いうことは少しだけ感じていたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

だがー
その数日後のことだったー。

「ーーやめて!!やめてってば!」

そんな声が聞こえたー。

朝、登校してきている途中だった
加奈子(修太)は、困惑の表情を浮かべるー。

廊下の曲がり角の先から聞こえて来た声はー…
”やめて”と、そう叫ぶ声ー。

ただー……
その声は修太自身ー、
修太になった加奈子のものではなくー、
別の女子生徒の声だったー…。

「ーーーーー」
加奈子(修太)が、慌てて廊下の曲がり角を曲がると、
その先ではーー
入れ替わる前ー、よく修太に声を掛けて来ていた女子生徒ー、
晴美(はるみ)の姿があったー。

修太に対してよく話しかけて来る一方で、
加奈子に対して冷たく当たっていたような子だー。
加奈子いじめに加担している子ではないものの、
加奈子のことが嫌いなのは露骨に見えていたー。

その晴美がーー、
水をかけられて、ズブ濡れになった状態で、
しかも、髪を引っ張られながら、
「ーお願い!やめて!」と、そう叫んでいたー。

そしてー、そんな晴美の髪を引っ張りー、
晴美を痛めつけていたのはー…
”修太になった加奈子”だったー。

「ーーおいー、いや、ちょっとー…何をしてー」
加奈子(修太)がそう言うと、
髪を引っ張られていた晴美が、
”加奈子が来た”と思ったのだろうー。

「ー全部全部、あんたのせいよ」と、
敵意むき出しにしながら、加奈子(修太)を
睨みつけると、そのまま走り去っていったー。

「ーーーー」
修太(加奈子)はそんな後ろ姿を見つめながら
残念そうにしているー。

そんな光景を前に、
加奈子(修太)は戸惑いの表情を浮かべながら、
「ーおい…村岡さんーいったいなにが?」と、
何があったのかを確認するー。

するとー
修太(加奈子)は笑みを浮かべながら言ったー。

「ー天罰を与えたの」
とー。

「て、天罰ー…?」
加奈子(修太)は困惑しながら言うー。

すると、
「だって、あの子、久川くんにばかりいい顔してー。
 久川くんはわたしのものなのにー
 ーー身の程を弁えていないからー
 だから、天罰を与えたの」と、
嬉しそうに修太(加奈子)は言ったー。

さらに、修太(加奈子)は続けるー。

「ーーー久川くんにー
 この身体に近付いて来るやつには、バツを与えなくちゃー

 だって、そうでしょ?
 久川くんは、わたしの友達なんだからー」

まるで、独り占めするかのようなセリフー。

その言葉を聞いて、加奈子(修太)は呆然としながら
内心で言葉を口にしたー

”あぁー、
 人間、何をやっても分かり合えない相手っているんだなー”

とー。

そう思いつつ、加奈子(修太)は
”一刻も早く身体を取り返さなければならない”と、
そう決意するのだったー

<完結編>へ続く

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コメント

「前編」…から初めて「後編」まで来たのですが、
”無理に終わらせると駆け足になっちゃう!!”
ということで、後編の後に完結編(邪道)を
することにしました~~!!

来週で本当に終わるので、もう1週間、
楽しみにしていて下さいネ~!!
(※毎週土曜日の作品は予約投稿の都合上、次も1週間後デス~!)

今日もありがとうございました~!!

「それでも君とは付き合えない」目次

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