幼馴染が、彼氏の影響を受けて、
変わってしまったー…。
そんな彼女に事故で憑依してしまった彼は、
”悪いやつら”と縁を切り、
昔の幼馴染を取り戻そうと試みるー…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーお前のせいで、コイツはこのざまだー。」
熊山先輩に連れられて、
麻梨奈たちにとって”いつもの場所”である
生徒会室に連れて来られた麻梨奈ー。
麻梨奈の彼氏”だった”久義は、
昨日、麻梨奈に振られたことで、
食事が喉を通らなくなり、酷く落ち込んでいるのだと、
熊山先輩はそう言葉を口にしたー。
「ーー麻梨奈ーーーーー」
酷く落ち込んだ様子の久義ー。
がー、麻梨奈に憑依している武史は
”そんなこと知らないよ!”と、心の中で思いながら
「ーわ、わたしは真面目に生きるの!」と、そう言葉を口にしたー。
「ーーーおい」
熊山先輩が、怒りの形相で口を挟むー。
「ーーお前、俺の可愛い後輩をこんな風に落ち込ませて
タダで済むと思ってんのか?」
熊山先輩の露骨な敵意ー。
だが、彼氏の久義は「先輩ー…俺のことはいいですからー」と、
一応は麻梨奈の彼氏だったからだろうかー。
麻梨奈を庇うような素振りを見せるー。
そんなやり取りを前に、麻梨奈に憑依している武史は、
正直、ビビっていたー。
だがーーーー
「ーーー!!」
麻梨奈は、机の上に煙草が置かれているのを見て、
咄嗟にその近くに駆け寄り、煙草の箱を手にしたー。
「ーー…こ、これ…!
こ、これ以上わたしに関わろうとするなら
せ、先生に煙草のこと言うから!」
麻梨奈が煙草の箱を手にそう叫ぶー。
「ーーーあァ?
お前、正気かー?
お前だって吸ってるじゃねぇかー。
俺たちのことを、告げ口したらお前も処分の対象だぜ?」
熊山先輩は笑うー。
だがーー
麻梨奈は「い、いいよー。お前たちと縁を切るためなら!」と、
そう言い放つと、そのまま生徒会室を飛び出すー。
「ーおい!待ちやがれ!」
熊山先輩が怒りの形相で叫ぶー。
がー、麻梨奈は職員室に駆け込むと、
「先生!」と、そう言葉を口にしたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
麻梨奈を”含む”4人は停学処分になったー。
「ーー川井さんだって、喫煙してたんだから、
仕方ないよねー?」
自宅で、鏡を見つめながら
”麻梨奈本人の意識”に語り掛けるようにしてそう呟く麻梨奈ー。
「ーーー…」
当然、麻梨奈本人から返事はないー。
「あ~~~あ…
どうして川井さん、変わっちゃったんだろー」
ため息をつく麻梨奈ー。
麻梨奈に憑依してしまった今、
麻梨奈がどういう気持ちで、道を踏み外していたのか
それを聞くことはできないー。
がー…
「ー僕が、元の川井さんに戻すんだー」
と、そう決意を口にすると、ふと”先ほど届いたばかりの”ダンボールを見つめたー。
その中には、昨日、我慢できずに買ってしまった
コスプレの衣装がいくつか入っているー。
そのダンボールを見るだけで興奮してしまうー。
「ーーあぁ…なんか、ヤバいー。
川井さんの身体がすごい、ほわほわしてる…」
麻梨奈の身体が興奮していることを感覚で受け止めながら
箱の方を見つめるー。
麻梨奈の身体で、メイド服やら巫女服やら、
そんな服を着る、ということを考えるだけで
頭がおかしくなりそうになるー。
「ーーー…き、今日は無理だー…」
麻梨奈は、そう呟きながら
ふと、鼻血が垂れてきていることに気付いて、
「今日は、絶対無理だー」と、
結局、ダンボールを開けることもできずに
そのままその日を終えたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
停学処分が明けて、学校に復帰した麻梨奈ー。
麻梨奈は”武史が見ていた麻梨奈”を忠実になぞるかのように、
真面目に学校生活を送り始めるー。
「ーーー小沼くんは、まだ見つからないわー」
保健室の先生からは、そんな言葉を告げられたー。
麻梨奈に憑依した”武史”は、未だ行方不明ー。
それもそのはず、
麻梨奈に憑依してしまって、身体ごと消えてしまったのだから
見つかるはずはないー。
先生たちが必死に自分を探してくれているのは
申し訳ないし、親にも申し訳ないとは思うー。
でもー、言っても信じてもらえないだろうし、
言ってしまえば、このまま生活することもできなくなるー。
「ーー僕は、川井さんを元に戻すんだー」
そんな言葉を口に、真面目な見た目に戻った麻梨奈は、
今日も”かつての麻梨奈”のような振る舞いで、
学校生活を送るー。
だがーー
「ーーよぉー」
昼休みー
熊山先輩と彼氏の久義が再び姿を現したー。
クラスメイトの竜一を含む三人も、今日、停学明けで
学校に復帰していたー。
座席に座っていた竜一も立ち上がり、
熊山先輩の近くにやってくると、
「ーお前のせいで、酷い目に遭ったぜー。覚悟はできてんだろな?」
と、熊山先輩は鋭い目つきで麻梨奈を睨みつけたー。
「ーーーーーーも、もうー…縁を切ったからー
ぼー…わたしに関わらないで」
麻梨奈はそう言い放つと、
熊山先輩は笑ったー
「ーそんなこと知るかー。
”縁”ってのはなぁ、お互いが切らなきゃ、完全には切れねぇんだ」
熊山先輩はそう言うと、
麻梨奈の腕を掴むー。
「ーーー…」
内心びくびくしながらも、
「ーま、また停学になりたいの?」と、そう言い放つと、
熊山先輩は邪悪な笑みを浮かべたー
「ーー俺は、”女” ”子供” ”老人”
誰が相手でも容赦しねぇぞ?
覚悟はできてるんだろうなー?」
とー。
ビクッとしながらも、麻梨奈は
”女”という言葉に反応を示すー。
”ーそうだー今の僕はーー…”
今の自分は”女子”であることを改めて思い出すー。
”女”であることを武器にすれば、
あるいはー
そう思いながら、麻梨奈は熊山先輩たちに連れられて、
この時間は使われることのない生徒会室へとやってくるー。
「ーーよぉし、
このクソ女には罰を与えなくちゃな」
熊山先輩は笑いながらそう言うと、
「おい、お前ら。こいつを押さえとけ」と、
麻梨奈の彼氏であった久義と、その友人の竜一に命令するー。
二人は「はい」と言いながら、麻梨奈を取り押さえると、
熊山先輩はニヤニヤしながら、麻梨奈に近付いてー、
麻梨奈の胸を触ったー。
「ーーっっ…~…」
ドキッとしてしまう麻梨奈に憑依している武史ー。
思わず、変な声が出そうになってしまうー。
男であったときには、感じることのできなかった、
ある意味、不思議な感覚ー。
「へへへへへー
いい顔するじゃねぇかー」
熊山先輩が不気味に笑うー。
麻梨奈は久義の方を見つめながら、
「ーー”元カノ”にこんなことするのー?」と、呆れ顔で言うと、
久義は少しだけ表情を歪めてから、
「お、お前は俺を裏切ったー!
何もしてないのに急に俺を振りやがって!
このクソ女が!」と、そう叫んだー。
この前は少し庇うような素振りも見せていた久義だったが、
やはり、同類のようだー。
麻梨奈は、それでも挑発的な言葉を繰り返すー。
本当は怖かったー。
でも、こいつらと縁を切って、
”元の川井さん”に戻すためにはーーー…
「ーーわたしは、お前たちみたいな奴らとは、もう関わらないって決めたの!」
麻梨奈がそう叫ぶー。
逆上した熊山先輩が、なりふり構わず
麻梨奈に暴力を振るいー、
さらには乱暴に制服を脱がせようとし始めるー。
麻梨奈はそれでも、必死に抵抗しながら、
挙句の果てに、熊山先輩の”急所”を蹴りつけたー。
激怒した熊山先輩の行動はエスカレートしていくー。
文字通り”滅茶苦茶”にされていく麻梨奈ー
「せ、先輩ーさすがにそれはー」
「ーやばいですよ!」
久義と竜一は、怒りに我を見失っている熊山先輩を見て
それを止めようとするー。
だがー、熊山先輩は麻梨奈にさらに色々な意味での攻撃を
加えるーーー
”ーーーそろそろー…”
しかしー、それは、麻梨奈に憑依した武史の狙いだったー。
もちろん怖かったー。
でも、こうして逆上させることで、
熊山先輩らにとって、”取り返しのつかない状況”を作り出したー。
「ーーーー」
すぅ、と息を吸って、緊張した様子で、
乱れた格好のまま、生徒会室を飛び出すー。
「ーー誰か、誰か助けて!」
ありったけの声を振り絞り、そう叫んだー。
突然の麻梨奈の行動に驚いた熊山先輩は
「おい!テメェ!」と、叫ぶもー、
既に生徒が集まって、
”乱れ切った麻梨奈”を見て、騒ぎになっていたー。
「ーーーーーー…」
呆然とする熊山先輩ー。
程なくして、”三人に乱暴された”と、泣きながら言う麻梨奈の元に
先生が駆け付けるー。
熊山先輩、久義、竜一の三人は
「違う!俺たちはー!」などと反論していたものの、
現在の状況ー、そして、普段の三人の素行から聞き入れてもらうことが
できないまま、そのまま先生たちに生徒指導室へと連れていかれたー。
「ーー大丈夫?」
「ー大丈夫だった?」
麻梨奈の友達が麻梨奈の身を案じるー。
「ーーーだ、大丈夫ー」
麻梨奈に憑依している武史は、震える身体を押さえながらも、
”これで…あいつらはー”
そんな希望を抱くー。
その願いが通じたのだろうかー。
熊山先輩と久義は、そのまま退学処分となり、
久義の友人・竜一も停学処分になった後に、自ら退学届を出して、
退学したー。
その後、しばらくの間は”あいつらが仕返ししに来るかもしれない”と、
そんな警戒をしていたものの、
結局、熊山先輩も彼氏だった久義も、その友人の竜一も、
麻梨奈の前に姿を現すことはなかったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「おはよ~」
それから数か月ー。
武史は、今でも麻梨奈に憑依したままの状態ー。
そもそも、”元に戻る”方法が武史には分からず、
仮に憑依から抜け出そうとしても、
どうすることもできないー。
”武史”は世間的には行方不明のままー。
一度、”武史”の身を案じるふりをして、
自分の両親に会ってきたものの、
両親はとても疲れている様子だったー。
「きっと、小沼くんはどこかで元気にしてますよ」と、
麻梨奈の身体で伝えたものの、
両親には申し訳ないことをしたー。
「ーーーやっぱり、川井さんはこうじゃなくっちゃ」
麻梨奈は、鏡の前で”武史の理想の麻梨奈”に戻ったことを
嬉しそうに、実感するー。
「ーー悪いやつらと縁も切れたしー、これでこそ川井さんだよー
えへへー」
麻梨奈は嬉しそうに一人でボソボソと呟くー。
もし、麻梨奈本人が意識を取り戻したら、
きっと、麻梨奈は怒るー。
それは、武史にも分かっているー。
”これでこそ川井さん”と、言うのは、
武史から見た”川井 麻梨奈”でしかないー。
武史自身が勝手に麻梨奈を美化していただけで、
本来の麻梨奈は、久義たちと付き合っていたのは事実だし、
喫煙をしていたのも事実なのだろうー。
久義と付き合ったことで悪い影響を受けたのか、
あるいはそもそも麻梨奈自身、そういう考えの持ち主だったのかは分からないー。
どういう想いで、隠れて校則を平気で破っていたのかも、今はもう分からないー。
麻梨奈の身体から出ることができない以上、
麻梨奈本人に聞くことはできないのだからー。
「ーーあ~でも……」
麻梨奈はふと廊下を歩きながらそう呟くー。
武史が憑依してー、
悪いやつらと縁を切ってー、
武史の知る”麻梨奈”へと戻ったー。
でもー。
変わったところもあるー。
それはー
「ーーえへへへへへー」
帰宅した麻梨奈は顔を赤らめながら、巫女服姿で
鏡を見つめるー。
一人で顔を真っ赤にしながら
「ー可愛すぎでしょー川井さんー」と、ニヤニヤと笑みを浮かべる麻梨奈ー。
麻梨奈に憑依した武史は、
麻梨奈の身体でコスプレをすることにハマってしまっていたー。
まだ、熊山先輩たちと縁を切ることができる前に
なんとなく購入したコスプレ衣装をきっかけにコスプレにハマって、
今ではどんどん、その服が増えているー。
やがてー…
大学生になる頃には、コスプレイヤーとして活動を始めて、
イベントにまで参加し始めることになるものの、
それはまだ、今の麻梨奈からすれば、少し先の話だったー…。
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
最終回でした~!☆
結局、憑依された側は意識を取り戻すことはなく、
結末を迎えました!~☆
大学生活編…は、今のところは予定はありません~笑
お読み下さりありがとうございました~!☆
コメント