最近、悪いやつらと付き合い始めた幼馴染ー。
その影響を、彼女自身も受けていくのを見ながら苦々しく思っていた彼。
しかし、階段から転落した際に
彼はその幼馴染に憑依してしまいー…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーー…!」
麻梨奈に憑依してしまった武史は、
麻梨奈の身体で、麻梨奈の家に帰宅したー。
麻梨奈の家は、小さい頃によく遊んでいたために知っているー。
最後に、ここに来たのは
中学時代だっただろうかー。
麻梨奈が風邪で休んだ際に、
家が近くだったこともあり、プリント類を届けたのだー。
その時に、麻梨奈の親に
せっかくだから上がって行って、と言われて
半分強引に上がらされて、その時に麻梨奈の部屋も訪れたのが
最後だった気がするー。
「ーーーーー…」
そんな、麻梨奈の家に、まさか”麻梨奈の身体”でやってくることになるなんてー。
そう思いつつ、麻梨奈の部屋の扉を開けるとー、
そこには、武史からはよく分からない派手なロックバンドの
ポスターやグッズが飾られていたー。
「ーーー…川井さんー」
以前の可愛らしいキャラクターの小さなぬいぐるみや、
小物類が並んでいた部屋とは、まるで別人のような部屋ー。
もちろん、人は生きていれば趣味が変わる、ということは分かっている。
けれどー
どうしても麻梨奈が”悪いやつら”の影響を受けているような気がして
悲しかったー。
机の上に飾られている
”4人の写真”を見つめるー
カラオケで撮影されたものだろうかー。
麻梨奈と彼氏の久義、
その親友のクラスの問題児・竜一。
さらには不良の熊山先輩が映っていて、
麻梨奈は、今まで見たこともないような
意地悪そうな笑顔で、他の三人と一緒に
指を突き立てるようなポーズをしているー。
「ーーー…」
変わってしまった幼馴染を見るのは、辛かったー。
心底イヤそうな表情を浮かべながら、
その写真を見つめる麻梨奈ー。
「こんな川井さんはー見たくないー」
麻梨奈はそう呟くと、大きくため息をつくー。
麻梨奈は、しっかり者で今まで、恐らく彼氏はいなかったと思うー。
そんな麻梨奈が隣のクラスの男子・久義と付き合い始めて、
夢中になってしまったー。
今まで彼氏がいなかった分、彼氏にのめり込んでしまって、
その影響を強く受けているのだと思うー。
もちろん、麻梨奈が誰と付き合うかどうかなんて自由だー。
でもーーー
部屋にあった鏡を見つめる麻梨奈ー。
茶髪で、少し派手なメイクに、ネイルー。
「ーーこんな川井さんー似合わないよー」
麻梨奈はそれだけ呟くと、悲しそうに表情を曇らせたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー
昨日は、”色々な意味で”大変だったー。
着替え一つでもドキドキしてしまうし、
トイレはどう済ませていいか分からなかったし、
お風呂は、心臓が破裂しそうになったー。
でもー、
お風呂に入らず次の日学校に行くわけにもいかずー、
結局、お風呂にも入ったー。
とにかく、大変な1日だったー。
「ーー…この方が、絶対にいいよー」
麻梨奈は、そう呟きながら学校の水道のところにある鏡を見つめるー。
今日は、メイクをしなかったー。
そもそも、武史にはどうすればいいのかも分からないけれど、
仮に、メイクの知識があったとしても、武史は何もしなかったとは思うー。
元々、真面目で優しそうな雰囲気の麻梨奈の顔に、
派手めなメイクは似合わないー。
少なくとも、武史はそう思っていたー。
「ーお~麻梨奈ー」
背後から、彼氏である隣のクラスの男子・久義の声がしたー
「あーーー……え……えっとー」
麻梨奈は戸惑いながら、久義の方を見つめると、
久義は「まだ時間があるし、いつもの場所でどうだ?」と、
笑みを浮かべたー。
「い、いつもの場所ー?」
麻梨奈はそう言葉を口にしながらも、
久義に対する怯えの感情と、
”川井さんのフリをしないといけない”というそんな気持ちから、
渋々それに従ったー。
久義についていくと、
久義がやってきたのは、生徒会室だったー。
「ーーー…ーー生徒会室?」
麻梨奈が言うと、
久義は「ーへへへー、麻梨奈が教えてくれたんじゃねぇかー。
この時間ならだれも来ないから、煙草を吸うのにもちょうどいいってさ」と、
そんな言葉を口にしたー
「ーえ…」
麻梨奈は表情を歪めるー。
久義の言葉が本当なら、麻梨奈は学校内での喫煙を肯定していたことになるー。
”川井さんー…なんでー…”
悲しそうに心の中でそう呟く麻梨奈ー。
武史が勝手に”麻梨奈に幻想を抱いていた”だけなのかもしれないー。
でも、麻梨奈がそんな子だとは、やっぱり思いたくなかったー
「ーーおぅー、北澤」
後から、教室に入って来たのは明らかにガラの悪い先輩・熊山ー。
彼氏の久義が熊山先輩と親しいことで、
麻梨奈にも熊山先輩との接点ができてしまったのだー。
「ーーそういや、”金”にするか”赤”にするか決まったか?」
熊山先輩がそう言うと、麻梨奈は「え?」と、言葉を口にするー。
「ーははは、ほら、麻梨奈ー。
この前、髪を染めたいって言ってたじゃん?
熊山先輩みたいにー」
金髪の熊山先輩を指差す久義ー
「ーーーーえ…」
呆然とする麻梨奈ー。
冗談じゃないー。
茶髪だって似合わないと、そう思っているのにー、と
武史は怒りのような感情を抱くー。
「ーーーや、やっぱりいいですー。
黒に戻そうかなって思っててー」
麻梨奈に憑依している武史は、不満からそんな言葉を口にすると、
熊山先輩は「あ??」と、不満そうに言葉を口にするー。
「ー絶対、お前にはもっと派手な色が似合うと思うんだけどなー」
熊山先輩は不満そうにしながらも「まぁ、好きにすればいいけどよ」と、
そう言葉を口にするー
「おいおい、麻梨奈ー。
自分で言いだしたのに、そりゃないぜー」
久義がそう言うと、”川井さんが、自分でー”と、表情を歪めるー。
「ーーーへへー、もう揃ってたかー」
ふと、生徒会室の扉が開くー。
そこには武史らのクラスメイトで問題児の竜一の姿があった。
竜一は、久義らと親しく、久義と付き合い始めた麻梨奈とも
親しくなっていたー。
「ーそうだ!麻梨奈ちゃん、これ」
竜一がそう言いながら、煙草の箱を放り投げて来るー。
「ーーえ?これはー?」
麻梨奈が思わずそんな声を上げると、
竜一は「麻梨奈ちゃんが”吸ってる”やつー」と、
そう言葉を口にしたー。
その言葉と同時に、麻梨奈は自分の手が震えるのを感じたー
”川井さんもー…喫煙してるのー!?”
とー。
あまりの衝撃に、この場で叫び出したい気持ちになりながらも、
武史はそれを抑え込みー、
麻梨奈として、振る舞おうと必死になるー。
けれどー
”「ーーふふ 知ってる知ってるー
でも、ちゃんと隠れて吸ってるし、問題ないでしょ?」”
憑依してしまう前の、麻梨奈の言葉を思い出すー。
彼氏の喫煙のことを言われた際に、
ああ言っていたのは、自分自身も喫煙していたからだったのだと、
そう理解する武史ー。
幼馴染の変わりように衝撃を受け、
強いショックを受ける武史ー。
麻梨奈が悪い彼氏と一緒に煙草を吸ってる姿を想像するだけで
吐き気がするー。
「ーーわ、わたし、やっぱ煙草とかいいやー。
だって、まだ吸っちゃいけない年齢だし、
校則で禁止されてるしー」
麻梨奈が感情的になってそう言い放つと、
彼氏の久義、竜一、そして熊山先輩が表情を変えたー。
イヤな空気が流れるー。
「ーーーーーーーははははー麻梨奈、どうしたんだよ~」
久義がそう言いながら、麻梨奈の背後から近づいてきて、
平気で麻梨奈の胸を揉み始めるー。
恐らく”いつも”そうしていたのだろうー。
あまりに躊躇のない行動ー。
「ーさ、触るなよ!」
麻梨奈に憑依している武史は、思わず感情的になってそう叫ぶー。
「ーーな、何だよ」
久義が不満そうに言葉を口にするー。
「ーおい、お前…今日は何かおかしいぞ?」
熊山先輩が少し怒りを滲ませた表情で言葉を口にするー。
「ーす、すみません先輩ー。
麻梨奈、今日は機嫌が悪いみたいでー」
久義が、熊山先輩にへこへこと頭を下げ始めるー。
そんな様子を見て、麻梨奈に憑依している武史は、
「ーーも、もう…お、お前たちと何か縁を切るから!」と、
勢いでそう言葉を口にしたー。
麻梨奈本人は、ここにいる”悪いやつら”との関係を楽しんでいたのかもしれないー。
けれど、仮にそうだったとしても、
武史には我慢できなかったー。
「ーーー…今、何て言った?」
熊山先輩が、怒りを隠さずに脅すような口調で言葉を口にするー。
「ーーか、川井さー、いや、
わ、わたしにこれ以上、汚い手で触れるな!」
麻梨奈が変わってしまったことに対する怒りと、
恐らく、この三人が麻梨奈をそういう道に引き込んだのであろう怒りから、
麻梨奈の身体でそう叫ぶと、
熊山先輩と彼氏の久義、その友達の竜一は戸惑いの表情を浮かべたー。
「ーおいおい、麻梨奈ー」
彼氏の久義が、麻梨奈の突然の豹変に困惑しながら
戸惑っていると、その友人の竜一が言葉を口にしたー。
「そういや麻梨奈ちゃん、昨日、階段から落ちたって聞いたぜー?
そのせいで、おかしくなってるんじゃね?」
とー。
少しギクッとする麻梨奈ー。
だが、さすがに”憑依”のことまでは分からないだろうー。
そう思いつつ、
「おかしくなんかなってない!」と、言い放つと、
久義の方を見つめながら声をあげたー
「ーーお、お、お前となんてー、わ、別れるから!」
とー。
麻梨奈がこんな男と付き合っていることが、耐えられなかったー。
髪の色が変わる前の麻梨奈のことを思い出すー。
あの笑顔を汚したこいつらを許さない、と、麻梨奈に憑依した武史は
思いながら、そう言葉を口にしたー。
「ーーーは…? い、いやいやいや、なんで急に」
久義は狼狽えた様子で言葉を口にするー。
「ーぼーー…わ、わたしは…!
わたしは、あんたたちみたいな奴とは縁を切ることにしたから!」
そう言い放つと、そのまま教室から逃げるように立ち去っていく麻梨奈ー。
廊下を怒り心頭、という様子で歩きながらも
手が震えていることに気付き、麻梨奈は表情を歪めるー。
「どうしようー、どうしようー、どうしようー、
勝手にあいつらと別れちゃったー」
怒りから、勢いであんなことを言ってしまったものの、
麻梨奈に憑依している武史は内心びくびくしていたー。
麻梨奈の身体から抜けた時、麻梨奈に何て言われるだろうかー。
そもそも、熊山先輩と久義、竜一の三人はこのあとどんなアクションを
起こすだろうかー。
そんなことを考えると、心臓がバクバクして仕方がなかったー。
「ーーーーーーーー」
教室に戻ると、しばらくしてクラスメイトでもある竜一が
教室に戻って来たー。
「ーーーー」
彼氏である別のクラスの男子・久義と、
熊山先輩の姿はないー。
そして、竜一は特に麻梨奈に話しかけて来ることはなく、
その日は特に何も起きることはなかったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
帰宅して、”麻梨奈”として再び過ごす武史ー。
”男子高校生、昨日から行方不明”
そんなニュースをスマホで見つめる麻梨奈ー
「あ~…僕のことかー」
麻梨奈はそう呟くー。
そう、”武史”は、麻梨奈に憑依してしまった際に
吸収されるようにして麻梨奈の中に入ってしまったために
”身体”が、この世に存在しない状態になってしまっているー。
そのため、”行方不明”の状態だー。
「でもまさか、僕は川井さんの中にいる、とは言えないしなぁ」
麻梨奈はそう呟きながら、
ふと、そのサイトに表示されているメイド服の広告のようなものを見つめて
思わずドキッとしてしまうー。
「ーそ、そういえば、今の僕ならー」
麻梨奈は、自分の姿を鏡で見つめながらドキドキすると、
そのまま、ネットショップのサイトを開いて、
”川井さんが着たら似合いそうなコスプレ”を見つめー、
思わずニヤニヤしてしまったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌朝ー。
「ーーよぉ」
教室に熊山先輩が姿を現したー。
彼氏の久義も一緒だー。
「ーーー…な、何ー?」
ゴクリ、と唾を飲み込みながら麻梨奈が
二人の方を見つめると、
「ちょっと話がある。ツラ貸せや」
と、熊山先輩が怒りの形相で言葉を口にしたー
周囲を見渡す麻梨奈ー。
クラスメイトたちは熊山先輩らと関わりたくないのか、
目を逸らしているー。
「ーーーーーーー」
麻梨奈は怯えた表情を浮かべながらも
「わ、分かったー」と、だけ言葉を口にすると、
そのまま熊山先輩らに連れられて、
ゆっくりと廊下を歩き出したー…。
③へ続く
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コメント
次回が最終回デス~!☆
憑依はどうなるのか、
悪い先輩たちとの関係はどうなるのか、
色々な答えは明日のお楽しみデス~!!
今日もお読み下さりありがとうございました~~!
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