<入れ替わり>入れ替わり実習①~B組の場合~

その世界の学校では
”保健体育”の授業で、入れ替わり実習が行われていたー。

家庭科の調理実習のような感覚で、
当たり前のように行われる入れ替わり実習ー。

そんな、世界の物語…。

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”入れ替わり実習室”ー。
そんな、謎の教室で
歓喜の声や、悲鳴ー、色々な声が聞こえていたー。

「ちょっと!どこ触ってんのよ!」
男子が、そう叫ぶー。

その相手の女子はニヤニヤしながら
足を広げて座り、嬉しそうに胸を揉んでいるー。

「ーへへへー…お前も触ればいいだろ?
 ほら、何でそんなにズボンが膨らんでるんだぁ?」

女子がニヤニヤしながらそう言葉を口にするー。

その近くでは、一組の男女が恥ずかしそうに
顔を赤らめて、特に何もせず、ただひたすらと申し訳なさそうにしているー。

「ーーーー」
そんな様子を、保健体育の教師は見つめながら
「皆さん、一応これは実習なのであまりはしゃぎすぎないようにー」などと
そう言葉を口にしているー。

そうー。
今日は”入れ替わり実習”の授業の日ー。

この世界では、家庭科における調理実習のように、
当たり前のように行われている授業ー。

保健体育の授業の中に存在していて、
年に数回”入れ替わり実習”が行われるー。

その目的は”性教育”ー。
男女ともに、恋人のいない割合が年々増え続け、
その結果、”異性と何の接点もないまま大人になる人間”が
爆増したー。

当然、異性との接点がなければ
異性に関する知識は育まれないー。

男女ともに、
”異性に対する知識”の欠如が社会問題となり、
やがて、性教育全般が見直されることになったー。

そして、導入されたのが
”入れ替わり実習”

異性の身体を知るには、実際にそれを体験するのが一番、と、
政府主導で開発された”入れ替わり”の技術を用いて
実際に異性と入れ替わり、その状態で異性のことを学ぶー。

そんな、入れ替わり実習が保健体育の授業に導入されたのだったー。

”入れ替わり実習”の導入から既に
それなりの年月が流れー、
今ではこうして、学校で入れ替わり実習が行われることは
当たり前になっていたー。

今日はA組の入れ替わり実習が行われているー。

入れ替わり実習は男女での入れ替わりで
組み合わせは保健体育の先生が当日に発表する。
例えば、いじめを受けている者といじめている者だとか、
トラブルになりそうな組み合わせなど、
そういったものを避け、先生が組み合わせを決定、
入れ替わり実習の当日に、それを発表して、
政府主導で開発された”入れ替わりの糸”を用いて入れ替わり、
”異性の身体”を体験するのだー。

トラブル防止のための対策も完璧で、
”入れ替わりの糸”による入れ替わりは1時間で自動的に元に
戻るようになっているほか、
保健体育の先生には、”強制的に入れ替わりを解除する”ための
特別な端末も手渡されているー。

例えば、入れ替わった直後に相手の身体で自殺しようとする生徒が
現れたりしても、これがあれば先生の判断で強制的に元に戻すことができるため、
安全性も十分に配慮されているー。

「ーーあ~もう、最悪~!あんたに触られるとか!」
元に戻った女子生徒が不満そうに呟くー。

「ーへへへ そういう授業なんだから仕方ないだろ?」
相手の男子生徒が笑うー。

A組の入れ替わり実習は、色々な意味で盛り上がった末に、
こうして無事に終わりを迎えたのだったー。

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B組ー。

B組では、明日”入れ替わり実習”を控えていたー。

「ーー明日、入れ替わり実習だってさ」
男子生徒の信康(のぶやす)がそう呟くと、
隣にいた幼馴染の女子高生・晴美(はるみ)が、
「ーま~たニヤニヤしてる」と、呆れ顔で言葉を口にするー。

「ーーえへへへ…だって、もし水谷(みずたに)さんと入れ替われたらって
 思うと、ドキドキが止まらないしー

 ってか、晴美も入れ替わりたい相手とかいないのかよ?」

信康の言葉に、晴美は「う~ん、特にそういうのはないかなぁ」と、
そう言葉を口にしてから「あ!」と、言葉を口にするー。

「ーあんただけはヤダ!」
晴美は笑いながら、そう言い放つー。

「はぁ?俺だって晴美とは入れ替わりたくねぇよ!」
不満そうにそんな言葉を口にする信康ー。

小さい頃から、お互いに憎まれ口を叩き合うような間柄の二人ー。
恋人同士ではないものの、幼馴染としての絆は強いー。

がー、こうしてよく言い合いのようなことをしていることも多くー、
クラスメイトたちはよく”あ~、またやってるよ”などと
呆れていたー。

「ーーまぁ、うちのクラスは28人で、男女14人ずつだし?
 14分の1に当たることなんてないでしょ!」
晴美が笑いながら言うー。

がー、その言葉を聞いて信康は少しだけ表情を歪めたー

「おいおいおいおい 変なフラグ立てるなよー
 晴美と入れ替わりとか、絶対お断りだからなー?」

信康のそんな言葉に、晴美は「ーそれはこっちのセリフよ!」と、
そう言葉を返したー

そして、翌日ー

「ーーーは…?」
「ーーーえ?」

入れ替わり実習室にやってきた信康と晴美は、
掲示されていた”入れ替わりの組み合わせ”を見て
呆然とするー

「なんで晴美なんだよ!?」
「なんであんたなのよ!?」

二人して、ほぼ同じタイミングで
同じような反応をするー。

クラスメイトの一人が「はははーやっぱ、お前たちペアじゃん!」と
揶揄うようにして言うと、
信康は「うるせー!ってか、お前が水谷さんと入れ替わりかよ!」と、
羨ましそうに言葉を口にしたー。

「ーーーそれでは、書いてある組み合わせ同士で、座席に座って下さい」
保健体育の先生がやってきて、そう言葉を口にすると、
信康が咄嗟に口を開くー。

「せ、先生、俺の入れ替わり相手ー、どうにかなりませんか?」
とー。

「ーははは、なりません」
笑いながら即答する先生ー。

「ぐぬぬぬ…」
信康は、表情を歪めながら「よりによって何で晴美とー」と、
ブツブツ呟いていると、晴美も不満そうに「なんであんたなんかとー」と、
そう言葉を口にしたー。

それでも、二人は渋々、入れ替わりの糸を手に、互いの指に巻き付けて
身体を入れ替えるー。

2人にとっての入れ替わり実習はこれで4回目ー。
がー昨年は互いにクラスが違ったため、
信康と晴美が入れ替わるのは、今回が初めてだー。

「ーーー…うえぇぇ~…晴美になってるー」
晴美(信康)がイヤそうに表情を歪めると、
「ーーちょっと!なんでちょっと髭生えたままなの!?」と、
信康(晴美)が不満そうにそう言葉を口にするー。

「ーべ、別にいいだろー」
晴美(信康)は少し恥ずかしそうにそう言葉を口にすると、
ちょっと悪戯してやろうー、と思いながら、
「わたしー、前から信康のこと好きだったの♡」などと、
言葉を口にしてみるー。

「ーはぁぁぁ!?!?わたしの身体で何言ってんの!?こらっ!」
信康(晴美)が不満そうに声を荒げるー。

「ーへへへ~ 今なら晴美の声で喋り放題だもんね~!」
晴美(信康)がニヤニヤしながら言うー。

「ーーこら~~~!!!!」
信康(晴美)が、逃げる晴美(信康)を追いかけるー。

他のクラスメイトたちも、それぞれ入れ替わって
色々な声を発している中、
いつもの調子で喧嘩じみたやり取りを繰り返す二人ー。

「ーげげっ!晴美の身体、足おそっ!」
晴美(信康)が、そんな悲鳴を上げると、
信康(晴美)に追い付かれて腕を掴まれてしまうー。

そんな光景を見つめながら、
先生は苦笑いするー。

”入れ替わり実習”では、最初の頃は
先生の指導の下、色々なことを経験したりしていく流れに
なっているものの、
2年生にもなると、入れ替わり実習もある程度の回数を重ねていて、
自由時間も多くなってくるー。

「ーーちょ!おいっ!力入れすぎ!痛い!」
晴美(信康)が、悲痛な声を上げると、
信康(晴美)は「あ、ごめんーつい」と、腕の力を慌てて弱めたー。

いつもは、”信康の腕”を精いっぱいの力で掴んでも
すぐに振りほどかれてしまうため、ついつい癖で、力を入れすぎてしまったー。

「ーーいてててて…元に戻ったあと、知らないぞ~」
晴美(信康)が冗談めいた口調で言うと、
「ーーあ、あんたが変なこと言うからでしょ!」
と、信康(晴美)は、不満そうに言葉を口にしたー。

「ーははは…でもーー
 不思議な感覚だよなぁ…」

晴美(信康)は、晴美の腕を見つめながら言うー。

「前回の入れ替わり実習の時は、”俺の身体”より、力持ちだったけどー」
晴美(信康)は前回の入れ替わり実習を思い出しながら笑うー。

”前回”は、スポーツ万能なクラスメイトの女子と入れ替わったため、
”むしろ”自分の身体よりも動きやすかったし、力持ちだったー。
そんな時のことを思い出しながら笑うー。

「ーーーーあっ」
信康(晴美)は、ふとズボンの股間のあたりに手を触れて
顔を赤らめるー。

「ーーははは…別に触ってもいいんだぜー?
 せっかくの入れ替わり実習なんだしー」

「ーーはぁ!?だ、誰があんたのなんか!」

晴美(信康)と信康(晴美)がそんな言い合いをする中、
他のクラスメイトたちも、それぞれ入れ替わり状態を
楽しんだり、嫌がったり、色々な反応を見せているー。

「ー先生~~!コイツ、あたしの身体で変なことばっかりするぅ!
 元に戻して」

「ーーいやいやいやいや、俺はだなぁ、真面目に性を学ぼうと思ってだな!」

他のクラスメイトたちが騒ぐ中、
先生は苦笑いしつつ、その状況を見守るー。

先生は”度を越した行動”を起こす生徒がいた場合は、
強制的に入れ替わりを解除する役割も担うー。
決して、生徒たちが入れ替わった様子を見て、楽しむだけではいけないのだー。

「ーーってか、スカートって落ち着かなくないか?
 俺、何度入れ替わっても慣れねぇ」

晴美(信康)が言うと、信康(晴美)は、
「ーまぁ…わたしは履きなれてるから何とも思わないけどー、
 女子でも、普段履かない子は落ち着かないって子もいるよね」
と、そう言葉を口にするー。

「ーその点、女子はいいよなぁ
 ズボンも履けるから、別に俺の身体でもそこは違和感ないだろ?」

「ーう~ん…まぁ…ここについてるから違和感はあるけどー」

信康(晴美)が言うと、
晴美(信康)は「まぁそりゃそうかー」と、そう言葉を口にするー。

後半は、割と真面目な話をしながら、入れ替わり実習の時間が終わりー、
それぞれの生徒はレポートを書いて、実習終了となるー。

「ーーあんたとの入れ替わりは最初で最後だからね!」
元に戻った晴美が不満そうにそう言うと、
信康は笑いながら「組み合わせは先生が決めることだからなぁ」と、そう言葉を口にしたー。

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C組ー。

C組はB組の2日後に”入れ替わり実習”を控えていたー。

クラスの端っこにいつもいる気弱な男子生徒・
薄川 聡(うすかわ さとし)は、表情を歪めるー。

クラスの中心的存在な女子グループが
2日後に迫った入れ替わり実習のことをネタにしていたー。

「ねぇねぇ、薄川と入れ替わりだったらどうする?」
「え~~~?やだ~~!」
「ほらほら、そんなこと言わないー」

女子たちがそんな会話をしながら
教室から出ていくー。

”き、聞こえてるよー”
聡は表情を曇らせながら、”嫌だなぁ…”と、そう呟くー。

がーー
ふと、「ーーごめんね」と、そんな言葉を口にしたー。

”カースト上位”とでも言えば良いのだろうか。
そんな女子たちの中でも中心的存在の、
坂梨 萌美(さかなし もえみ)が、笑いながら
聡にそう言葉を掛けたー。

「ーー聞こえてたでしょ?今のー。」
萌美の言葉に、聡は「え…あ、はいー」と、
クラスメイトなのに敬語で返事をしてしまうー。

「ーあたしは薄川くんと入れ替わりでも全然気にしないから、
 もしも、入れ替わったらせっかくなんだし、色々触ったりしちゃっていいからね!」

萌美はそこまで言うと、
聡は顔を赤らめながら「え……あ、あのー…なんか、ごめんなさいー」と
意味もなく謝ってしまうー。

「ーあはは、謝るようなこと今、何もしてないでしょ?
 もしも、あたしが相手だったらよろしくねー」

萌美はそれだけ言うと、立ち去っていくー。

萌美は”クラスのアイドル的存在”で、
誰にでも優しいー。
聡にも、前から時々声をかけてくれるしー、
どうやら揶揄っているわけではなく、それなりに心配してくれている様子だー。

”…ぼ、ぼ、僕なんかが、坂梨さんとだったらー……
 坂梨さんが腐っちゃうよー”

自分に自信のないネガティブな聡は、
そんな言葉を心の中で口にするー。

そしてーー
B組に続き、C組も入れ替わり実習の日を迎えるのだったー。

②へ続く

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コメント

”入れ替わり実習”が行われている世界でのお話デス~!

今回はB組(A組は説明で消費…笑)
次回はC組、と毎回異なるクラスの様子を描きます~!

明日も楽しんでくださいネ~!

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