<入れ替わり>入れ替わり爆弾③~確保~(完)

集団入れ替わりを引き起こして楽しむ男ー。

今度は”学校”と”病院”ー。
同時に発生した集団入れ替わりを前に、
それを止めようとする刑事はー…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーー警察ですー」
学校に到着して、校長室に出向くと、「ご苦労様です…」と、
小柄な女子生徒が表情を歪めながら、
大輔を出迎えたー。

「ーー…えっと…校長先生…ですかー?」
大輔が、まさかと思いながら聞くと、
小柄な女子生徒は恥ずかしそうに頷きながら、
「こ、こんな姿ですがー…」と、スカートをぎこちなく整えながら
イスに座ったー。

”み、見えてますよー”という指摘は
何となく申し訳なく思い、大輔は彼女…いや、校長先生に指摘せず、
そのまま話を聞くー。

話によれば”僕は神です”と名乗る他校の生徒と思われる女子が
入ってきて、爆弾のようなものを投げ、
そこから噴き出した煙によって、学校中の生徒が
入れ替わってしまったのだと言うー。

「それは、何時何分頃のお話ですかー?」
そう確認すると、女子生徒の身体の校長は”10時ちょうどぐらいだったと思います”と、
答えたー。

「ーーー…」
大輔は表情を歪めるー。

「ーーーー…分かりました。ところで先ほどからー…」
大輔は気まずそうに、女子生徒(校長)に、髪をやたらと触っていることを
指摘するー。

すると、女子生徒(校長)は顔を赤らめながら
「あ、いや、申し訳ありませんー実は私ー…髪がないのでー…
 こんなに髪があると…ついー」と、そう言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

一方、病院にやってきた後輩刑事の西郷は
他の刑事と共に情報収集にあたっていたー。

「ーーまずいですねー」
西郷が、別の刑事に向かってそう言葉を口にするー。

病院で発生した集団入れ替わりー。

”結構な人数”が、病院から立ち去っているのだー。

「ーー…入院中の人間が健康な身体を手に入れて、
 そのまま持ち逃げしたってことかー…」

”入院患者”の中には
余命宣告をされたものや、高齢者、身体の不自由な人、
痛みに耐えているものー…
そういった人々が多く存在したー。

そのため、集団入れ替わりが発生後、”健康な身体”を手に入れた
患者の一部が、そのまま身体を持ち逃げしたのだー

「ー…責める気にはなれませんねー…
 自分も、余命宣告されてる状況で、健康な身体と入れ替わったらー…
 そうするかもしれませんし」
西郷がそう言うと、先輩刑事は「確かになー」と、頷くー。

「ーーー…えへへへへへ…♡」
女性看護師がニヤニヤしながら胸を揉んでいるー。

「ーーあぁぁぁ…あぁぁぁぁ」
高齢のおじいさんが”彼氏に何て説明すれば”と泣き崩れているー。

「ーーー…へへへへっ!身体がこんなに動くぅ!」
若い男性医師が腕をぶんぶんと振って喜んでいるー。

「ーーばいばい…ママ クククー」
小さな娘が、泣きじゃくる母親に”お別れ”を宣言して、笑いながら
走り去っているー。

そんな光景を見つめながら、西郷は”院長”から話を聞くー。

病院での集団入れ替わりは”限られた区画”のみで
院長は無事だったようだー。

「ーーなるほどー…9時58分にその男が入って来たわけですねー」
西郷がそう言うと、院長は「えぇ」と、頷くー。

9時58分に不審な男が入ってきて、受付に向かって
”入れ替わり爆弾”を投げたのだと言うー。

「ーその男は?」
西郷がそう確認したその時だったー。

不気味な女の笑い声が、響き渡ったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーくそっ…学校のほぼ全域で入れ替わりが発生しているー」

しばらく学校中を回っていた大輔ー。
大輔がそう呟きながら、学校の様子を見つめるー。

ニヤニヤしながら自分のスカートをめくって、
他の子に見せている女子ー。
その女子のスカートの中を見て喜んでいるのも女子ー。
中身は両方男だろうかー。

ガムを噛みながら、スマホをいじっている女教師ー。
中身は不良だろうかー。

恥ずかしそうに鏡で顔を見ている男子ー。
あれは、中身は女子だろうかー。

そんなことを思いながら、大混乱中の学校の廊下を歩いていると、
「ーーあの…」と、背後から、呼び止められたー。

「ーー…君は?」
大輔が振り返ると、そこには真面目そうな雰囲気の女子生徒が立っていたー。

「ーあ、わたしは生徒会長の白本 愛由美(しらもと あゆみ)と申しますー…
 …あ、えと…身体は違う子のなんですけどー」

愛由美を名乗った女子生徒は、”身体は小梅ちゃんの…”と、呟きながら、
大輔のほうを見つめるー。

大輔も警察手帳を見せながら挨拶をすると、
小梅(愛由美)は”実は怪しい人を見かけて…”と、そう言葉を口にしたー。

「怪しい人ー?」
大輔が確認をすると、小梅(愛由美)は頷くー。

彼女によれば、2階の女子トイレの中の個室から、
変な笑い声が聞こえたのだと言うー。

「ーーー……」
大輔は考え込むー。

”集団入れ替わり”で、
男が女になったり、女が男になったりー、
色々なパターンでの入れ替わりが起きている。

”女子トイレの中で笑っている”人物が犯人とは限らないし、
単にエロイ男が女子の身体になって楽しんでいるだけかもしれないー。

がー…
とは言え、手がかりを逃すわけにもいかなかったー。

「ーー…分かった。その場所に案内してくれ」
大輔が言うと、小梅(愛由美)は静かに頷いたー。

「ーーーーーー」
大輔は、その女子トイレに向かって歩き出す小梅(愛由美)の後ろ姿を
見つめながら、少しだけ表情を曇らせるー。

やがてー…
その女子トイレが見えてくると、
小梅(愛由美)は「あそこですー」と、女子トイレの扉を指差したー。

「ーーーーー」
大輔は周囲を見渡すー。

周囲には使われていない教室ばかりー
校舎の他の場所からは、相変わらずどよめく声や騒ぐ声、泣き声などが
聞こえているものの、この辺には人はいないー。

「ーーーー」
女子トイレの方に近付きながら、
大輔は”この子…”と、表情を歪めるー。

どうして、こんなに人がいないようなトイレを使ったのかー…?
そんな疑問が頭によぎるー。

警戒しながら、女子トイレの扉を開けると、
個室の中から、喘ぐような声が聞こえて来るのが分かったー。

表情を歪める大輔ー。

「ーー…警察です」
そう声を掛けると、”ひっ!?”と、中から声が聞こえるー。

「ーーー…5分待ちますー。
 5分以内に身なりを整えて、外に出て来なさいー」
大輔がそう言うと、個室の中にいるであろう女は一瞬、沈黙したー。

が、大輔が再度、5分以内に出てくるように促すと、
個室の中にいる女は、観念した様子で”わ、分かりましたー…”と、
そう言葉を口にしたー。

背後にいる小梅(愛由美)は特に何もしてくる様子はないー

”ーーー…”
一瞬、小梅(愛由美)が”入れ替わり爆弾”の犯人なのではないかと疑っていた大輔ー。
が、それは杞憂だったのかもしれないー。

やがてー…
個室から出て来た女を見て、大輔は表情を歪めたー

「ーーー…こ、校長先生ー…」

そうー、個室で喘いでいたのは、今朝、
大輔を出迎えた小柄な女子生徒…
中身は校長先生の女子生徒だったー。

顔を真っ赤にしながら「も…申し訳ない…ついー」と、
謝罪の言葉を口にする校長ー。

呆れ顔で「生徒の身体で何をしてたんです?」と、
大輔が確認すると、
背後にいた小梅(愛由美)は「…ーーー…」
顔を真っ赤にしながら言葉を口にしたー。

「ーーわ、わたしの身体で何してるんですか!!!!」
とー。

どうやらー
”小柄な女子生徒”は、生徒会長・愛由美の身体だったようだー。

愛由美(校長)に詰め寄る小梅(愛由美)ー。

大輔は呆れ顔で
愛由美(校長)に口頭で注意するもー、
”入れ替わり”の状態で何かをした場合、どう処理すれば良いのか、
法律上にも規定がないために
口頭で注意する以上のことは今はできなかったー。

「ーーーあ…ありがとうございましたー」
小梅(愛由美)の言葉に、大輔は頷くと、
「必ず元に戻れる方法はあるはずだー」と、
そんな言葉を口にしてから、同行していた他の警官を無線で呼んでから
トイレの外に出たー。

どうやら、小梅(愛由美)は、別に犯人とは関係なく、
ただ単に、この女子トイレで変な声を聞いて大輔に声を
かけて来ただけだったようだー。

そんなことを思いながら歩き出そうとするー。

その時だったー…

「ーーーーー!」
いかにも慌てて走っていた”用務員のおばさん”と目が合ったー。

「ーーーあっ…!」

「ーー!」

用務員のおばさんが大輔を見ると同時に、
猛ダッシュで逃げ始めるー。

これでは自分が怪しいやつだと自白しているようなものだー。

「あ!おいっ!待て!」
慌てて大輔もその後を追うー。

「ーはっ…はぁ、はぁ、ババアの身体ー…お、おせぇ…!」
上手く走れないのか、
自分の身体との体力の差を嘆く用務員のおばさんー。

やがて、走るのにも限界を迎えて
その場に倒れ込むと、
後を追ってきた大輔に取り押さえられた。

「ーーお前が、入れ替わり爆弾の犯人だな!?」
大輔がそう言うと、用務員のおばさんは
「ーくっ…くそっ!!」と、悔しそうに言葉を口にするー。

その時だったー。

”ー西郷ですー。病院で”入れ替わり爆弾”の犯人を確保しましたー。
 女医の身体でー…中身は男のようですー”

後輩刑事の西郷から連絡が入ったー。

「ーーー…なに?こっちでも犯人を確保したぞ!?」
大輔がそう叫ぶと、
西郷は”えぇっ!?”と困惑の声を上げたー。

そしてー、
それと同時にー…

”動物園で集団入れ替わりが発生したー。
 動物も巻き込まれていて大混乱だー
 どうやら哺乳類は人間以外でも、入れ替わりに巻き込まれるようだー”

そんな無線連絡が入るー。

さらにー

”こっちの高校でも集団入れ替わりだ
 既に発生から時間が経過していて、地獄絵図だ!”
と、そんな叫び声も聞こえて来たー。

「ーーな…」
大輔は呆然とするー。

4か所でほぼ同時期に集団入れ替わりが起きるなどー…

それに、この学校と後輩刑事の西郷が向かった病院で
既に2人、犯人を確保しているー。

「ーーぐっ…どういうことだ!」
大輔が用務員のおばさんに向かって叫ぶと、
「ーお、俺は…俺は”入れ替わり爆弾”を貰っただけだー…!」と、言葉を口にするー。

「も、貰った?どういうことだ!」
大輔が声を荒げると、
用務員のおばさんの身体になっている男は、
”集団入れ替わり”を起こすことを条件に、入れ替わり爆弾を”神”と名乗る人物から
貰ったのだと自白したー。

「ぐ…… くそっ…!」
大輔は”その神とやらが主犯だ”と、表情を歪めながら、
用務員のおばさん(男)に話を聞くー。

だが、この男はネットを介して入れ替わり爆弾を貰っただけで
”神”なる人物と会ったこともなく、
しかも、”自分が入れ替わりに巻き込まれること”も知らず、
入れ替わり爆弾を使って用務員のおばさんになってしまったようだったー。

「ーーチッ…このままじゃまずいー」

”神”とやらは、入れ替わり爆弾をどのぐらいの人数に提供したのかー。

いや、それよりも早く”神”を確保しないと、
どんどん色々な場所で入れ替わりが起きてしまうー。

大輔はそう思いながら
”必ず神とやらを捕まえてやる”と、この学校のことを他の刑事に
任せて、別の場所へと向かうのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーークククク…”今回”は、
 入れ替わり相手の記憶まで読めるタイプの
 新型を使ったからなー。」

女子高生の身体と入れ替わった”神”こと、吾郎が
笑みを浮かべるー。

この学校でも、集団入れ替わりが発生していたー。

しかも、使われたのは”入れ替わり相手の記憶を読める”タイプー。

入れ替わり相手に記憶を読まれて、
もはや地獄のような状況になっている上ー、
「ーわたしは入れ替わってないけど?」と、
入れ替わり相手の記憶を利用して”入れ替わってないフリ”をする者まで
現れているー

「ーーククク…あぁ…いい光景だー」
女子高生(源吾)はそう呟くと、
「僕はそろそろ失礼しようかなー」と、その身体のまま
学校から立ち去っていくー。

捕まるようなヘマはしないー。
捕まれば、集団入れ替わりをこの目で見ることが
できなくなってしまうからー。

”入れ替わり爆弾”で各地で混乱を引き起こす吾郎は、
そのまま姿を消したー。

そしてまたー、
別の場所で更なる集団入れ替わりが引き起こされるのだったー。

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

犯人確保はならず…!
色々なところで集団入れ替わりが起きるお話でした~!☆

ちなみに、
②のラストで吾郎がいる学校と、
③で警察官の大輔が駆け付けた学校は別の学校デス~!

お読み下さりありがとうございました~!☆!

コメント

  1. 匿名 より:

    本当に危険で厄介な愉快犯ですね。
    このまま野放しにしておいたら被害者がどんどん増えて、世の中が滅茶苦茶になりそうです。

    だからといって、捕まえるのは絶望的に困難そうですが。

    • 無名 より:

      入れ替わり爆弾の彼を野放しにしておいたら
      いずれ世界中が…★

      今のうちに捕まえないと大変なことになるのデス~!