<入れ替わり>入れ替わり爆弾①~混乱~

”煙を吸い込んだ者全員を入れ替える”

そんな特殊な煙を発生させる謎の爆弾を
作り出した男ー。

彼は、あらゆるところで”集団入れ替わり”を
発生させ、混乱を拡大させていく…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーーククククク」

まるでホームレスのような風貌の男が
笑みを浮かべながら、ゆっくりとその場所にやってきていたー。

彼は、別にホームレスではない。

家はあるー。
しかし、ある研究に没頭しすぎて、
お風呂にも入らない日々が何度も続いているのだー。

ついでに、自分の容姿にも、清潔感にも
何一つ興味というものがない。

「ーーなんだお前はー?」
柄の悪い男が、そんな彼の前に立ちはだかるー。

「ん?僕?
 僕は神倉 吾郎(かみくら ごろう)ですー。
 まぁ、面倒臭いと思うから”神”って呼んでいいよ」

吾郎はそう言うと、笑みを浮かべたー。

「ーあぁ?何が神だ!
 ここは俺たちの遊び場だ!
 汚らしい格好で近寄るんじゃねぇ!」

そう言い放つと、金髪の不良男は
苛立ちを露わにして、吾郎とやらを睨みつけたー。

吾郎がやってきていたのは、
この繁華街において、不良のたまり場となっている
ゲームセンター。

そこに、堂々と一人、やってきていたのだー。

「ークククー。安心しなよ。すぐに帰るさー。
 でも、ここにはちょうどいい”モルモット”がたくさんいるんでね」

吾郎はそう言うと、突然”爆弾”のようなものを取り出したー。

「お、おい!テメェ!それはー」
金髪の男が叫ぶー

奥で他の男と遊んでいた赤髪の女が
「ねぇねぇ、そいつやばくない?」と、言葉を口にしながら
近付いてくるー。

がー…
吾郎は、そんな不良たちの反応をお構いなしに
その”爆弾”を、ゲームセンター内部に向かって投げつけたー。

「ーひぃっ!?」
内部にいた不良の一人が悲鳴を上げるー。

そして、次の瞬間ー
”破裂音”のようなものが聞こえて、
青い煙のようなものがそこら中に拡散したー。

「ーーーっっっ!?!?!?」
てっきり”爆発する”と、思っていた赤髪の女は表情を歪めながら
状況を確認するー。

破裂音に続き、謎の青い煙が噴き出したが、
イメージするような爆弾ではなく、
とりあえず怪我はしていないー。

そんな状況に、赤髪の女は少し安堵すると同時に、
思わず笑いだしてしまうー。

「ーははははは!何だよこのダセー爆弾は!
 変な色の煙が噴き出しただけで、全然俺たちー……

 ーーーーえ?」

そこまで言葉を口にして、赤髪の女は表情を歪めたー。

「えっ…!?な、なにこれ…あ、あたしが男になってるー!?」
近くにいた金髪の男が突然、女のような口調で叫ぶー。

周囲にいる不良たちも、それぞれ自分の身体を触ったりー、
股間を触ったり、胸を触ったりして
悲鳴を上げたり、逆に笑い出したりしているー。

「ーーくくくくくー」
その様子を見つめながら”神”を自称する吾郎は、
笑みを浮かべたー。

”入れ替わり爆弾”ー。
それが、彼の研究成果ー。
爆発自体に殺傷能力はないものの、
中からはじけだす青色の煙を吸った人間同士の身体を
入れ替えてしまう、そんな恐ろしい爆弾だー。

名前はシンプルに”入れ替わり爆弾”
カッコつけた名前をつけようかとも思ったが
彼にとって、名前は重要ではない。
何なら、「あ」でも「1」でも「A」でも良かったぐらいだー。

大事なのは、この成果ー。

「おぉぉい!神野郎!お前、これどうなってるんだ!」
赤髪の女(金髪男)が怒りの形相で迫って来るー。

「ちょ!あたしの身体で、言葉遣いが乱暴すぎ!
 喉、壊さないでよ!?」
金髪の男(赤髪女)が叫ぶー。

「ー”集団入れ替わり”」
吾郎が言うと、赤髪の女(金髪男)は表情を歪めるー。

「さっきの爆弾は、煙を吸った人間同士の身体を入れ替える爆弾ー。
 ふふ、どうだい?
 女になった気分はー?」

吾郎はそこまで言うと、
赤髪の女(金髪男)の胸のあたりを指差しながら、
「揉むと気持ちいいんじゃないかい?」と、笑みを浮かべるー。

「えっ… えへー…そ、それはー
 ちょ、ちょっと試してみるかー」
赤髪の女(金髪男)は、ニヤニヤしながら胸を揉もうとするー。

がー、「俺の彼女に何してんねん!」と、
背後から、ギャル風の女に叩かれて、「ぐへっ!」と、悲鳴を上げるー。

どうたら、このギャル風の女も、中身は男のようだー。

「ーーふふふふ…こうして、身体がバラバラに入れ替わって
 混乱している姿を見るとねー。
 僕は何だかこう、癒されるんだー。
 
 そう、僕にとっては集団入れ替わりは
 花見をしたり、花火を見たりしている気分なんだよー」

吾郎のそんな言葉に、
「んなことは聞いちゃいねぇ!俺の身体を元に戻せ!」
と、ギャル風の女が叫ぶー。

「あはは、乱暴だなぁ…
 ”わたし”か、”あたし”に一人称変えた方がいいよ?」
吾郎はそれだけ言うと、そのまま立ち去って行こうとするー。

「ーえぇ!?ちょっと!?元に戻して!?」
茶髪の男が叫ぶー。
彼の中身も、別の人間になっているー。

「ーーあはははー、
 僕の実験にご協力、感謝するよ。
 
 あ、そうそうー
 元に戻す方法は僕も分かんないからー。

 まぁー…入れ替わり爆弾何個も投げてれば
 そのうち元に戻るかもしれないけど、
 入れ替わり爆弾が勿体ないし、面倒臭いから
 そのまま過ごして」

吾郎のそんな物言いに、
赤髪の女(金髪男)が「ふざけるなぁ」と叫ぶー。

吾郎に殴りかかる赤髪の女(金髪男)ー。

吾郎を殴り飛ばし、そのまま何度も何度も
殴りつけるー。
ボロボロになった吾郎を見て、
赤髪の女(金髪男)は「へっ!さっさと元に戻してもらおうかー」と、
そう言葉を口にしたー。

がー…次の瞬間だったー。

「ーーえっ…?」
気付けば、身体に激痛が走り、
いつの間にか自分が天井を見上げているー。

そんな、訳の分からない状況に困惑していると、
自分たちの仲間である”赤髪の女”が、ニヤニヤしながら、
彼を見つめていたー。

「ーーえっ!??!?!?」
赤髪の女の身体になっていた金髪男は、いつの間にか
吾郎自身の…ホームレスみたいな風貌の身体に入れ替えられてしまっていたー。

「ーあ、ごめんごめんー
 あまりにも痛いから、身体を交換したよ」
赤髪の女(吾郎)が、笑みを浮かべるー。

「ーーお…お…おまえ…ふ、ふざけるな!」
吾郎の身体になってしまった金髪男が叫ぶー。
しかも、”赤髪の女の身体”でボコボコにしてしまった吾郎の身体にー。

「ーーあははー…
 ふざけてなんかいないよー。
 あ、そうそう、その身体は元々の僕の身体じゃないからー、
 身体の名前は分かんないけど、まぁ、頑張ってよー」

赤髪の女(吾郎)は、笑うー。

そうー、
このゲームセンターにやってきた”吾郎”は、
そもそももう、自分の身体ではなかったのだー。

”誰の身体かも分からない”
ホームレス風の男の身体を押し付けられた金髪男は
「ふ、ふざけるなぁ!」と、叫ぶー。

金髪男になってしまっている赤髪の女は
「あ、あたしの身体を返して!?」と、叫ぶも、
赤髪の女(吾郎)は「ーー面倒くさいから、いやだ」と、だけ答えて、
集団入れ替わりが発生したゲームセンターを、堂々とそのまま後にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

赤髪の女の身体で、研究に没頭する吾郎ー。

吾郎は、かねてから”入れ替わり”の研究に没頭して、
それを実現させていたー。

最近では、集団入れ替わりを”見物する”ことにハマっていて、
そのために開発したのが、入れ替わり爆弾だー。

「ーーーん~~~…女の身体だと、
 疲れた時に揉んでリラックスできるからいいよねー」
赤髪の女(吾郎)は、そう呟きながら
自分の胸を揉むー。

「ーーもっともっと、入れ替わりで混乱する奴らを見たいー」
そう言いながら、赤髪の女(吾郎)は興奮した様子で、
”次の入れ替わり爆弾”を使う場所を考え始めるー。

学校ー
病院ー
商店街ー
遊園地ー

色々な候補をパソコンに表示させながら
笑みを浮かべる赤髪の女(吾郎)ー。

「ーーー…そうだなぁ…とりあえず…」
赤髪の女(吾郎)は、
冷静に考えるー。

”入れ替わり爆弾”を使えば、当然のことながら騒ぎになるー。
集団入れ替わりを堪能すればするほど、世間的にも
問題は大きくなるはずー。

「でもまぁー僕は身体を移動してるし、
 気付かれても、大丈夫だけどねー」
赤髪の女(吾郎)はそう呟くと、
”まずは商店街だー”と、笑みを浮かべながら
2個目の入れ替わり爆弾の用意を始めたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー
商店街ー。

赤髪の女(吾郎)は、前日までの赤髪の女のおしゃれな服装ではなく、
面倒臭かったのか、自分がいつも着ていたジャージ姿で、
商店街にやってくると、
入れ替わり爆弾を手に、笑みを浮かべたー。

「ーーさぁさぁ、今日はどんな入れ替わりが見られるかなぁ…?」

そう言いながら、商店街の中心に
”入れ替わり爆弾”を投げつけるー。

ゲームセンターでこれを使った際には
最初は自分が煙を吸わないようにしていたものの、
今回は最初から、入れ替わり爆弾から発された煙を自分も吸うー。

「ーお、おわっ!?えっ!?」
突然、女子高生の身体になってしまった商店街を歩いていたサラリーマンが
自分の身体の異変に気付き、思わず変な声を上げてしまうー。

「ーーーーあ…?」
いきなり、洋菓子店のカウンターの後ろに立っている状況に戸惑う
おばさんー。
もちろん、中身は店主ではなく、商店街に居合わせた別の人間と
入れ替わっているー。

「ーいらっしゃいいらっしゃい!今日はキャベツが安いよ!」
入れ替わったことに気付かず、商店街の真ん中で
意味不明な言葉を口走るOL…
中身は八百屋の店主のようだー。

その八百屋の店主は、周囲をキョロキョロしながら
「えー…!?きゃあああああああああ!」などと悲鳴を上げるー。

商店街の一角で大混乱が発生するー。

精肉店の店主が、女子大生らしき子に対して
”わたしの身体を返して!”と、叫んでいるー。

一方、その女子大生は「わ、わしにも状況が理解できん!」と、
叫びながら周囲をキョロキョロとしているー。

自転車で走行中だった男子高校生は、その状態で入れ替わったことで
自転車ごと転倒ー。

「ーぼ、ぼ、僕の身体が怪我してるぅ!?」
と、そのそばで叫ぶおばさんー。

そんな様子を見つめながら、
通りすがりのイケメンっぽい青年の身体になった吾郎は
満足そうに微笑むー。

赤髪の女の身体でここにやってきていた吾郎は、
今回は自らも入れ替わり爆弾の煙に巻き込まれて
あえて入れ替わりを体験していたー。

自分自身が入れ替わるのも、嫌いじゃないー。
最もー…一番好きなのは
こういう”人々が入れ替わる”光景を見つめること、だがー。

「ーーーえっ…!?お、俺が女になってる!?」
さっきまで使っていた赤髪の女がそう叫んでいるー。

中身は、言動からするに男だろうー。
だが、吾郎が今使っているこの”青年”が中身とは限らないー。

入れ替わり爆弾に巻き込まれた人間は
”バラバラ”に入れ替わる。
たまたまお互いに入れ替わることもあれば、
全然違う相手と入れ替わることもあるー。

「ーーー…うほほほほっ…すっげぇ…♡」
赤髪の女は早速嬉しそうに自分の胸を揉み始めているー。

集団入れ替わりが発生した場所に
行き交う、喜びと戸惑いと怒りとパニックの声ー。

それが、何よりも心地いいー。

「ーーあぁ…素晴らしい…
 これこそ”神”の戯れだー」

青年の身体になった吾郎は、嬉しそうにそう微笑むと、
しばらくの間、大混乱に陥った商店街を、
とても満足そうにじっくりと見つめていたー…。

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「ーー先輩、ご存じですか?
 先日の”入れ替わり”事件ー」

警察署内で若手の刑事が一人、先輩刑事に向かって言葉を口にするー。

「ーあぁ、ゲーセンの若造たちの集団幻覚とか妄想とか言われてるやつだろ?」
先輩刑事の塚島 大輔(つかじま だいすけ)が面倒臭そうに言うと、
「ーそれがー、今朝、商店街でも同じような事例がー」
と、若手刑事が答えるー。

「なに?」
大輔はそんな報告を受けると、表情を歪めながら
若手刑事から渡された書類に目を通したー…。

②へ続く

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コメント

集団入れ替わりをあえて発生させて、
その様子を見物する…
そんな危険な男と、それを追う人の物語デス~!

今回は、入れ替わり爆弾を使う彼が、普段どんな風に
過ごしているのかを中心に描きました~!☆

明日以降もぜひ楽しんでくださいネ~!

コメント

  1. 匿名 より:

    金髪男は感情的に相手をボコボコにしたせいで、ホームレスみたいな身体にされて、凄く損しましたね。

    そんなことをしなければ、赤髪の女の身体でいられたのに。

    • 無名 より:

      コメントありがとうございます~!☆

      ついつい感情的になっちゃった彼の
      この先の人生は大変なことに…★

      赤髪の子の身体なら、いい人生が送れたかもですネ~!