自ら開発した謎の”入れ替わり爆弾”を用いて
集団入れ替わりを引き起こしては
それを観察して楽しむ男…。
彼による狂気の集団入れ替わりがまた、
別の場所で発生しようとしていたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ふふ…」
先日、商店街で集団入れ替わりで入れ替わった際に手に入れた
青年の身体で遊園地にやってきた吾郎ー。
イケメンな感じだった青年は、ボサボサ頭で
汚らしい雰囲気に変わっているー。
あれから吾郎は、青年の身体でいつも通り入れ替わり研究に没頭しー、
そして、入れ替わり爆弾による煙がより広範囲に放たれる
”改良型”の開発に成功していたー。
「”改良型”が完成した今”旧型”にもう用はないー」
余った旧型数十個を処分し、今日は新型を手に、
遊園地にやってきていた吾郎ー…。
「ーーふふふ…皆さん…僕のことは”神”と呼んでくれていいよー」
ニヤニヤしながら、遊園地の真ん中を堂々と歩く青年(吾郎)ー
当然、”ヤバいやつ”扱いされて、誰も青年(吾郎)に
関わろうとしないー。
だがー…
「ーー僕がジェットコースターなんかよりももっと素晴らしい
絶叫アトラクションに案内してあげよう!モルモットども!」
そう叫ぶと、彼は入れ替わり爆弾を上に向けて
嬉しそうに放り投げるー。
そしてー、それが遊園地の地面に落下して、
不気味な色の煙を放ち始めるー…
遊園地内に悲鳴が上がるー。
今日はここ、遊園地で”集団入れ替わり”が発生するのだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
警察官の塚島 大輔が通報を受けて
遊園地にやってくると、
突然、OLが大輔に泣きついて来たー
「ねぇ…ママが…ママがいないよぉ…!」
子供のように泣きじゃくるOLー
「ーーお、落ち着いて下さいー。一体、何があったんです?」
大輔は表情を歪めながらOLにそう尋ねるー。
がー、OLの中身は母親と一緒に遊園地に聞いていた男の子ー。
そんなことを聞いても、まともに答えられる状況にはなかったー。
「ーーママ…ママァ…
僕、ぼく、女の子になっちゃったよぉ…ママ!」
泣き叫ぶOL(男の子)ー
「ーー…き、君は”男”なのか?」
大輔がそう言うと、OL(男の子)は「うんー」と、泣きながら頷くー。
”ーまさか、集団入れ替わりは本当にー…”
最近、明るみになった1件目の集団入れ替わりは
柄の悪い不良たちがたまり場にしているゲームセンターだった。
そのときは集団幻覚・妄想、あるいは狂言で片付けられていたー。
が、先日、2度目の集団入れ替わりが商店街で発生してからは、
”本当に入れ替わりなどという非現実的なことが起きているのではないか”と、
大輔は思い始めていたー。
そして、今日が3件目ー。
「ーー警察です」
遊園地の職員らしき男に警察手帳を見せながら、やってきた理由を
説明するー。
が、職位の男は照れくさそうに
「あ、あのぅ…あたし……ただの高校生でー…」と、言葉を口にするー
「ーー…な…中身は高校生だと言うことですか?」
大輔がそう確認すると「はいー…」と、職員(女子高生)は頷くー
「ー…何があったか、教えてくれませんか?」
大輔が言うと、職員(女子高生)は落ち着かない様子で、
突然”神と呼んでくれ”という汚い男が現れて、
その男が爆弾のようなものを上空めがけて投げたと思ったら
変な色の煙が噴き出して、気付いたら身体が入れ替わっていたのだというー。
「ーー…」
大輔は、職員の男(女子高生)が勃起しているのに気づきながらも、
中身が女子高生であることから、指摘していいのかも分からず、
気付かないふりをして、話を聞き続けるー。
「ーーで、君の身体はどこにー?」
大輔がそう聞くと、職員の男(女子高生)は、少し先にある
メリーゴーランドのほうを指さしたー。
「んへへへへっ気持ちいい♡ 気持ちイイ♡」
何やら、メリーゴーランドの馬に身体を押し付けて
気持ちよさそうにしているギャルな女ー。
あれが、職員の男の身体になってしまった女子高生の”身体”らしいー
思わず目を背けながら
「中身はその男ってことかー?」と確認すると、
職員の男(女子高生)は「さっき話したんですけど、なんか違うっぽいんですよね」
と、言葉を口にしたー。
職員の男になってしまった女子高生といったん話を終えて、
遊園地内を歩く大輔ー。
遊園地内は混沌としているー。
「お、俺の彼女を返せ!」
と、叫ぶ中年ぐらいの女性ー。
そう叫ばれた女子大生ぐらいの大人しそうな女は
下品に笑いながら、
「ー嫌だね!こんなエロイ身体、返すもんか!」
叫んでいるー。
しかも、”俺の彼女を返せ!”と叫んでいる中年の女性の近くには
「お母さん!お母さん!」と泣きながら50代ぐらいの小太りのおっさんが叫んでいるー。
「ーー地獄だなー」
地獄のような混乱ぶりに、警察官の大輔は思わず唖然とするー。
「ーーえへへへ…ねぇねぇ、俺…じゃなかったー、わたしとエロイことしない?」
ニヤニヤしながら、ツインテールの女が近付いてくるー。
「ーーーーーー」
大輔は私服で遊園地にやってきていたため、
相手が警察官だとは知らずに、ツインテールの女が声をかけて来たようだー。
「ーー”俺”か。中身は男か?
あんまり、女の身体で変なことをするなよ?
罪に問うぞ?」
大輔がそう言いながら、警察手帳を見せると、
ツインテールの女は「なんだよ、サツかよ!」と舌打ちしながら
立ち去っていくー。
「ーーーー…この状況ー…
”神”を名乗っていた男とやらのせいなのかー…?」
大輔は入口で待機させておいた後輩の若手刑事に無線で連絡をすると、
「ー遊園地内は大混乱だー」と、状況を報告するー。
”ーそうみたいですねー
なんか、遊園地の外に出て行く女がさっき、ヤバい感じでしたー”
相手の若手刑事・西郷(さいごう)がそんな返事をするー。
「ーー”神”を名乗ってる不審な男が直前に目撃されていたー。
商店街の目撃談だと、”怪しい女”だったが、
もしかしたら犯人は複数なのかもしれない」
大輔はそう報告すると、返事を聞いてから会話を終えて、
そのまま遊園地内の移動を始めるー。
犯人は”複数”ではないー。
商店街の時は”赤髪の女の身体”で、
遊園地では”青年の身体”になっていただけで、
犯人は吾郎一人だ。
しかし、吾郎自身も入れ替わりに巻き込まれているために
毎回、身体が変わっていて、
警察の追撃をかく乱している状態にあったー。
「ーーーふふ…警察が来たみたいだね」
観覧車から集団入れ替わりを見ていた、
三つ編みの女子高生が笑うー。
「ーー僕は、ここだよー?
まぁ、見つけられないと思うケドー」
”綾子(あやこ)”と書かれた生徒手帳を手に、
笑みを浮かべる綾子(吾郎)ー。
吾郎は、今回も入れ替わり爆弾により発生した煙を
自らも吸い、また別の身体に飛ばされていたー。
「ーーはぁ…それにしても…」
綾子(吾郎)は、遊園地内の大混乱の状況を見つめながら微笑むー。
「ーーはぁぁぁ…集団入れ替わり…興奮しちゃうなぁ…」
綾子の身体で勝手に興奮しながら、吾郎は満足そうに
その光景を見つめたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
大混乱の中、大輔は”入れ替わり被害者”たちを集めて
話を聞いていたー。
遊園地全体ではなく、観覧車周辺にいた利用客を
中心に入れ替わりが発生したようだー。
なるべく、聞き込みを繰り返して
入れ替わり当事者たちを見つけ出したものの、
既に遊園地の外に出た人間や、
黙っている人間もいるため、
入れ替わり当事者たちを全員、集めることはできなかったー。
「ーまぁ、そりゃ例えば冴えないおじさんが
女子高生の身体になったりすれば、持ち帰りますよねー」
合流した若手刑事の西郷がそう言うと、
大輔は「お前ももし入れ替わったら、そうするのか?」と
冗談を返すー。
「いえ。僕は冴えないおっさんじゃないですしー、
どちらかと言えばイケメンなんで」
西郷の言葉に、
「自分でイケメンと言うなー」と、ツッコミながら
大輔は集まった”入れ替わり被害者”たちを見つめるー。
相変わらずの、混沌とした状況ー。
それを見つめながら、大輔は表情を曇らせるー。
”こんなことが、各地で起きたら大変なことになるぞー…?”
泣いている者もいればー、
少し嬉しそうな者もいるしー、
ただ戸惑っている者、パニックになっている者もいるー。
既に入れ替わった状態で身体を”持ち逃げ”している人間までいて、
その状況は混沌としているー。
「ーー……おい…早く何とかしろよ!」
ポニーテールの女子高生らしき女が、大輔の方に詰め寄って来るー。
「ー明日は大事な会議があるんだー
このまま元に戻れなかったら、どうするんだよ!」
ポニーテールの女子高生に胸倉を捕まれる大輔ー
「お、落ち着いてー。
犯人の行方を追うと共に、現在、元に戻る方法を調査中です」
大輔はそれだけ言うと、ポニーテールの女子高生は
舌打ちしながら「早くしろよ無能が!」と、声を荒げるー。
「ーー…申し訳ありません」
若手刑事の西郷もそう言いながら、
「ーーどうするんです?」と、大輔のほうを見つめるー。
「ーとりあえず、早急に犯人を確保しなくてはー
今日目撃された神を名乗ってた男と、
商店街の時に目撃された怪しい女の行方を調べよう」
大輔はそう言いながら、険しい表情で
「ー面倒なこと、してくれるじゃねぇかー」
と、入れ替わり爆弾で混乱を起こしている吾郎に対する怒りの
言葉を口にしたー。
いずれにせよー、とにかくまずは犯人を確保しなければ
始まらないー。
第4、第5の被害が起きるかもしれないし、
入れ替わり状態を元に戻す方法も分からないー。
「ーーーーーー」
そんな大輔のすぐ近くを、笑みを浮かべながら
立ち去っていく女がいたー。
入れ替わり爆弾を作った”吾郎”が、今使っている身体ー…
”綾子”だー。
「ーーー…(刑事さんー僕はここにいますよ?)」
心の中で、大輔のことをそうあざ笑いながら、
綾子(吾郎)は、悟られないようにそのまま静かに
遊園地から立ち去って行ったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
商店街で発生した集団入れ替わりの際に目撃された不審者ー…
”赤髪の女”の居場所を突き止めた大輔は、後輩刑事の西郷と共に、
赤髪の女を確保することに成功したー。
がー…
「ー信じて下さいよ!俺はあの日、変な煙を吸ったら
急にこの女の身体になってて!」
赤髪の女がそう叫ぶー。
「ーーー何だと…?」
大輔は険しい表情を浮かべながらも、
赤髪の女を確保した状態のまま、調べを進めるー。
結果ー、ゲームセンターの不良たちの証言から、
”赤髪の女”は、神を名乗る男に身体を奪われー、
さらには、商店街の集団入れ替わりの際に、さらに誰かと入れ替わっているのだろう、
というところまでたどり着いたー。
「ーくそっ、犯人自身も身体を乗り換えてるのかー
厄介だなー」
大輔はそう呟きながら、入手した情報をまとめたホワイトボードを見つめるー。
「ーつまり、犯人はその時その時によって姿が変わっているってことですねー」
若手刑事の西郷が言うと、大輔は頷くー。
と、その時だったー。
突然、警察署内に慌ただしい雰囲気が漂い始めるー。
「どうした?」
大輔が西郷と共にいた部屋から出て、
他の刑事に何があったのかを確認すると、
その刑事は答えたー。
「あぁ、塚島さん!大変ですよ!
例の集団入れ替わりー…
”学校”と”病院”で、発生しましたー」
その刑事の言葉に、
「な、なんだと…」と、表情を歪める大輔ー。
”くっ…入れ替わり野郎め…今度は2か所かー”
どんどんその行動がエスカレートしているー。
早く止めなければ大変なことになるー。
そう思いつつ、大輔は考えるー。
そして、すぐに言葉を口にしたー。
「ーー”先に通報”があったのは、どっちだ?」
とー。
声を掛けられた刑事は「先に通報があったのは病院です!」と、
返答すると、大輔はすぐに後輩刑事の西郷に向かって叫んだー
「俺は学校の方に行く!お前は病院へ!」
とー。
「ーーえ?あ、はい!分かりましたー!」
西郷はそう返事をすると、そのまま病院の方へと向かうー。
”後から通報があったのは学校ってことはー
やつはそっちの周辺ー
あるいはー…学校の中にいるはずだー”
大輔はそう思いながら、学校の方に向かって走り出したー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
集団入れ替わりが発生した学校は、
まさに”地獄絵図”となっていたー。
そしてー…
「ーーーーーー…やっぱいいーー…
あぁ、この混乱ー心地いいー…!」
入れ替わり爆弾を使って、今日も集団入れ替わりの”観察”を楽しんでいる吾郎はー
”他人の身体”で、その様子を見つめながら嬉しそうに笑みを浮かべたー。
③へ続く
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コメント
各地で集団入れ替わりを引き起こす危険な男を
止めることはできるのでしょうか~?
続きはまた明日デス~!
今日もありがとうございました~!
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