<憑依>離婚危機を救うため①~異変~

ある日、突然”存在”が消えてしまった男ー。

一体何が起きたのか戸惑っていると、
現れた謎の人物から衝撃の事実を伝えられたー。

それは、”何者かに過去が変えられて”、
自分の両親が”自分が生まれる前に離婚してしまう”過去に変わったー…というものだった。

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一人暮らしを始めて2年ー。

大学生の里山 浩太(さとやま こうた)は、
親友の正行(まさゆき)と共に、雑談をしていたー。

「そういや、また進藤(しんどう)教授が
 なんかヤバい実験してたみたいだぜ」

正行のそんな言葉に、浩太は「はは…またかー」と
苦笑いするー。

進藤教授とは、この大学の教授だー。

過去には優秀な研究者だったようだが、
あまりにも危険な実験を繰り返した結果、研究者としての道を絶たれたー、
そんな噂も聞いているー。

この大学でも、時折謎の実験を繰り返していて、
過去には、進藤教授の実験に協力した女子生徒が、
突然人が変わったかのように、豹変してしまったー…
などという噂も聞いたことがあるー。

「ーーまぁ、できれば近付きたくないよなー…」
浩太が呆れ顔で言うと、
正行は「ははー、だな。」と、頷くー。

そこに、浩太の彼女・美亜(みあ)が、偶然通りかかるー。

「ーあ、浩太!」

ちょうど、現在は昼休みー。
美亜も何か食べようと、大学内の食堂に顔を出した様子だったー。

「ーお、美亜も今から何か食べるのか?」
浩太がそう反応すると、美亜は「うんー」と頷くー。

「ーーへへ…じゃ、俺は邪魔者になっちまいそうだし、
 これで失礼するかなー」
正行が笑いながらそんな言葉を口にすると、
美亜は「え~?別に大丈夫だよ?」と、笑いながら言い放つー。

「ーーえ~?そうかぁ?」
正行が浩太のほうを見ると、浩太も「俺も全然気にしないし、邪魔じゃないよ」と、
正行に伝えるー。

「ははー…じゃあー、仲良しなお前たちの観察でもするか!」と、
笑いながら再び着席する正行ー。

美亜が、華奢な体格に似合わない、割とがっつりとした昼食を
持ってくるとー、
「ーいつも思うケド、見た目の割に食べるよなー」
と、正行が突っ込むー。

「ーーふふー」
美亜は、そんな正行の言葉に笑うと、
美味しそうにカレーライスを口にし始めたー。

浩太は、そんな美亜の姿を微笑ましそうに見つめるー。
美亜は、とにかく何でもおいしそうに食べるー。
そんな姿が、浩太も好きだったー。

今日も、そんな姿を微笑ましく見つめていた浩太ー。

がー、カレーライスを口に運ぶ美亜の表情が
急に、少しきつくなった気がして、浩太は首を傾げるー。

「ーーー…?」
横に座っていたはずの、正行の姿も無くなっているー。

「え?あれ?正行は?」
一瞬にして正行が消えたような気がして、美亜にそう言葉を口にするが、
美亜は反応せず、カレーライスをそのまま食べながら、
10秒ぐらいして、ようやく顔を上げたー。

よく見ると、美亜の髪の一部だけ赤く染まっていて、
いつもと髪の色が違うー。

”あれ?美亜、さっきまでいつもの黒髪じゃなかったか?”
そう思っていると、
美亜は「あのさ」と、いつもよりキツイ口調で言葉を口にしたー。

「ーーー…もう、うんざりなんだけど、そういうのー」
美亜の言葉に、浩太は「えっ!?」と声を上げるー。

「ーーーどうせ、あの子にもそういうこと言ってるんでしょ?
 ー…散々裏切られても信じようとしたけど、もういいからー」

美亜の言ってる意味がまるで分からないー。
浩太が「え?何のことー?」と言葉を口にすると同時に、
浩太のすぐ側から、
「そ、そんなことないってー!」という男の声が聞こえたー

「ー!?!?!?!?」
浩太がビクッとして座席から立ち上がるとー、
自分の座っていた場所に親友の正行も座っていたー

「ーはっ!?!?えっ!?!?!?」
”何で俺と同じイスに座ってんだよ!?”と、思いながら
正行に向かって声をかけるも、正行は反応しないー。

やがて、美亜と正行の会話が続くー。

「ーわたしたち、もう無理ー。別れよ。
 わたしにも我慢の限界があるの」
美亜に笑顔はないー。

「ーーそ…そんな…俺の本命は美亜なんだって!」
正行が叫ぶー。

まるで二人が付き合っているかのような会話ー。

「ーーー…そういうのも、もううんざり。さよなら」
美亜は怒りの形相でそう言葉を口にすると、
そのまま立ち去っていくー。

一人残された正行は「はぁ…やっちまったー」と、首を横に振るー

「ーえ?なに?は???」
浩太は混乱しながら、正行に声をかけるー。

しかし、やはり正行は無反応ー。

「どういうことだよ?おいっ!」
浩太が正行に手を触れようとしたその時だったー。

すかっ、と、浩太の手が正行をすり抜けるー。

「ーー!?!?!?!?」
浩太は表情を歪めるー。

「え…」
浩太が、再び正行に触れようとするー。

が、正行は反応しないー。

慌てて、美亜のほうを追いかけて、美亜に声を掛けたりー、
美亜の前で変顔をしてみせたりするも、やはり美亜は無反応ー。

しかも、何だか滅茶苦茶機嫌が悪そうだー。

「ーえ…い、いったい、何がどうなってー…?」
浩太は戸惑うー。

急にみんなが反応しなくなり、
自分が透明人間のような状態になってしまったー。

しかも、まるで美亜と正行が付き合っているような会話をしていたし、
美亜がいつもと違ってなんだかピリピリしているー。

浩太は混乱しながら、大学内を歩き回るも、
やはり誰も反応せずー、
しかも…

”浩太がこの大学に在籍していないような状況”になっていることに気付いたー。

慌てて浩太は、自分のアパートに引き返すー。

がー、
そこには”沢尻(さわじり)”と別の名前が刻まれていたー。

「はー……??? え???」
混乱する浩太ー。

そこにーー

「ーーやぁ、君かー」

という声が聞こえたー。

「ー!?!?!?!??」
浩太が振り返ると、そこには優しそうな雰囲気の青年が立っていたー。

「ーーえ…お、俺…?
 俺が見えてるのか?」
浩太が言うと、その青年は頷いたー。

「ーーあぁ、僕にだけは、ねー。」
青年のその言葉に、浩太は混乱しながら
「な、なにが起こってるんだー?」と、確認の言葉を口にする。

するとその青年は、少し困惑した表情を浮かべながら、
「何者かが”不正に”過去を変えた」と、そう言葉を口にしたー。

「へ…?な、なんだってー?」
戸惑う浩太ー。

「ー君のご両親が、”君が生まれる前”に、離婚したー」
青年が険しい表情で言う。

その言葉に、浩太は「な、何を言ってるんだー?」と、
不安そうに呟くー。

「ー落ち着いて聞いてくれー。
 本来の”歴史”は、君の両親は結婚、君という子供を授かったー。

 が、その”歴史”が何者かによって不正に変えられて、
 君の両親は結婚はしたが、君の母親が、妊娠する前に
 二人は離婚してしまったー…
 そんな歴史に変わったんだ

 つまり、君は生まれていないことになったー」

青年の言葉に、浩太は「い…いや、意味が分からないー」と、言葉を口にするー。

が、青年はさらに言葉を続けるー。

「大学の食堂で、”急に”君のことを誰も認識しなくなっただろうー?

 それに君の彼女だった美亜と言う子は”君のいない世界”では
 君の親友だった正行という子と付き合ってるー」

その言葉に、浩太は食堂での光景を思い出すー。

”確かに、あの二人、そんな会話をー…”

「ーーけど、君が存在しないことで、君の周囲の人間の運命も
 ちょっとずつ変わっててねー。
 君の彼女だった美亜という子は君がいた世界よりも
 ちょっときつい性格で、彼氏とも上手く行ってないー。

 君の親友だった正行も、”君というツッコミを入れる存在”がいないからー
 浮気ばっかしてるー」

青年の言葉に、浩太は震えるー

「ーー…………じ、じゃあ、俺はどうなるんだー?」
とー。

青年は言うー。

「ー急に歴史が変わって、君は今”存在しない彷徨える魂”になったー。
 このまま放っておけば、変えられた歴史は”完全に定着”し、
 君は消える」

「ーー…う、嘘だろー…?」
浩太が呆然としていると、青年は言ったー。

「でも、大丈夫ー。
 僕は、それを阻止するために君に会いに来たー。

 僕は”時空の番人”
 過去を不正に変えられた際に、それを正す者ー」

青年はそう言うと、
「ただし、僕は直接歴史には介入できないー。
 だから、君の力を借りたい」
と、そう言葉を口にしたー。

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”時空の渦”の中に入り込んだ浩太は、
青年に対して色々質問をしていたー。

「それで、俺は何をすればいいー?」
浩太が言うと、渦の中を移動しながら、
青年は言うー。

「過去に戻って、
 君の両親が離婚するのを”阻止”するんだー

 そうすれば、再び君のお母さんは妊娠して、
 君を出産しー、君という存在がこの世に戻って来るー」

そんな会話をしているうちに、時空の渦を抜けて、
”過去”の世界へとやってきた二人ー。

「ーー…君の、ご両親だー」
青年が、上空に浮遊したまま、
遊園地にいる男女のカップルを指差すー。

父親の輝彦(てるひこ)と、母親の雅美(まさみ)の姿が
そこにはあったー。
二人とも、とても若いー。

特に母・雅美はもしも”他人”で、同じ大学に通う学生だったら
一目ぼれしてしまいそうなぐらいに可愛かったー。

がー…

「ーー”このタイミング”だー」
青年がそう言うと、母・雅美が、父・輝彦がトイレに行ったあと、
突然ビクッと震えたー。

そしてー、ニヤッと笑みを浮かべた母・雅美は
笑みを浮かべながら、”自分の胸”を揉み始めたのだー。

「ーえ…お、おい…?母さんー…?」
戸惑う浩太ー。

浩太の姿は、”この時代”には存在しないために、
他の人には認識できないー。

浩太が目の前で「な、なにやってんだよー…母さん」と、
言葉を掛けるも、母・雅美は反応する素振りを見せなかったー。

そうこうしているうちに、父・輝彦が戻ってくると、
雅美は笑みを浮かべながら言うー。

「ねぇ、わたしたち、別れましょ?」
とー。

「ーーえ」
父・輝彦が困惑の表情を浮かべるー。

しかし、母・雅美は邪悪な笑みを浮かべながら、
「あなたのこと、嫌いになっちゃったー」と、
言葉を口にするー。

「ーーお、おいおいおいー…え?なんでー?」
息子の浩太が”若い頃”の母・雅美に対してツッコミを入れるー。

ついさっきまで、あんなに仲良くしていたのにー…。
そう、不思議に思いながらー。

浩太の言葉は届かずー、
やがて、母・雅美があまりにも酷く、父・輝彦を罵り始めたために、
父・輝彦も困惑の表情を浮かべながら
次第に揉めていくー。

「ーー”これ”だー
 ここが、歴史の改変点ー。
 本来であれば、君のご両親はこんな喧嘩をすることなく、
 このまま楽しく遊園地デートを終えて、
 その後も順調に関係を深めていくー

 そのはずだったー。

 けど、”何か”がこの時、君のお母さんに起きているー」

時空の番人を名乗る青年はそう言葉を口にすると、
”今一度”、数分前に戻り、母・雅美が豹変する様子を見せたー。

「うっ…」
雅美がビクッと震えながら
そんな言葉を口にしているように見えるー。

「ーーー…誰かがー…母さんに何かをー?」
浩太がそう言うと、
青年は頷くー。

「ー…こ、こんなの、どうすればー?」
浩太は戸惑うー。

こんな場面を見せられても、元に戻すためには
どうすればいいのか分からないー。

がー、青年は言葉を続けたー。

「僕の力を君に貸すー。
 人に”憑依”する力だー。
 僕が直接介入すると、”掟”破りになってしまうー。
 だから、君に僕の力を託すー。

 君自身が、お母さんに憑依して、
 ”歴史”を守るんだー」

時空の番人の言葉に、呆然とする浩太ー。

「つ、つまり、俺に若い頃の母さんに憑依しろとー?」
浩太がそう言うと、時空の番人は「そうだ」と、頷いたー。

「ーーーーー…」

自分の母親の若い頃に憑依するなんて、
正直、複雑な気分だー。

しかも、”父さん”と、恋愛ムードを維持しないといけないなんてー。

戸惑う浩太ー。

がー、
「ーーそれ以外に手立てはないし、
 このまま歴史が定着すれば、君は消えてしまうー。」

そんな時空の番人の言葉を聞いて、
浩太は「あ~…わかった!わかった!やればいいんだろー」と、
戸惑いの表情のまま、言葉を口にするとー、

”若い頃の母親”に、憑依し、歴史を守ることを決意するのだったー…。

②へ続く

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コメント

突然歴史が変わっちゃう…
怖いことですネ~!☆

若い頃の母親に憑依して、離婚を阻止できるのかどうかは、
次回以降のお楽しみデス~!

今日もありがとうございました~!!

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