とある異世界ー。
魔王の息子として生まれた彼は”ワガママ放題”の生活を送っていた。
しかしある日、そんな”魔王の息子”が、
この世界に飛ばされて
”いじめられっ子の少女”に憑依してしまい…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーぼ、ぼ、ぼ、僕は魔王の息子なんだぞ!」
女子高生の根岸 美桜(ねぎし みお)が、そう叫ぶー。
「ーあはは…何言ってんの?」
「魔王の息子とか、ヤバくないー?」
「ついに中二病ってやつになったの?ヤバッー」
三人組の女子生徒がそう言葉を口にしながら、
”魔王の息子なんだぞ”と叫んだ美桜をあざ笑うー。
「ーくそっ!無礼者どもめー…!
お前たちなんか、僕が父上に言いつければ
すぐに焼き尽くされてー」
大人しそうな美少女ー
そんな雰囲気の美桜が、その見た目に似合わない言葉を口にするー。
しかし、三人組の一人・由紀(ゆき)に髪を
引っ張られてしまった美桜はもがきながら
「くそっ!放せ!放せ!」と、目に涙を浮かべながら叫ぶー。
「ーバロ、ドーラ、セラ!!誰かいないか!!!
僕を助けろ!!!」
美桜はそう叫びながらも、
その三人は、”誰も”助けには来ないー。
「あははは!何こいつー、頭おかしくなったんじゃない?」
三人組のリーダー格ー、裕福な家庭に生まれてワガママに育った
お嬢様の姫香(ひめか)がそう言葉を口にすると、
横にいた紗枝(さえ)も、美桜をあざ笑うー。
「ー急に訳の分からないことばっかり言ってー
気持ち悪いんだよ!」
紗枝がそう言いながら、美桜を突き飛ばすと、
美桜はよろよろとよろめきながら、
「お前たちは死刑だ!!!父上がお前たちを焼き尽くすからな!」と、
悔しそうに声を上げるー。
「ーーーーー」
そんな言葉に、三人組のリーダー格・姫香ー。
不愉快そうに表情を歪めると、
美桜に近付いていき、美桜にビンタを喰らわせたー
「いつまでもごちゃごちゃと訳の分からないこと言ってー。
ホントに不愉快」
敵意をむき出しにする姫香ー。
そんな彼女に対して美桜は涙目で、
「ーーぼ、僕の父上が誰だか知らないようだなー」
と、そう言葉を口にするー
プライドが高そうな喋り方と、その言葉とは裏腹に、
美桜は身体を震わせながら、怯えたような表情も
同時に浮かべているー。
そんな美桜は、恐怖を感じながらも、
やっとの思いで叫んだー。
「ぼ、僕の父上は、魔物たちの誰かもが恐れる
”魔王ゾル”なんだぞ!!!!
僕をこんな目に遭わせてーー
お前たちなんてーーー!!!
お前たちなんてー!!!」
泣きながらそう叫ぶ美桜。
しかし、三人組のリーダー格・姫香は、
それをあざ笑うと、今一度美桜にビンタをして、
「調子にのんな」と、そう吐き捨てると、
そのまま「いこっ」と、
紗枝・由紀の二人を引き連れて
立ち去って行ったー。
「ーー僕はーー…僕はーーー」
一人になった美桜は悔しそうにそう言葉を口にすると、
「くそっ!!!僕は魔王の息子なんだぞ!!!!
僕は将来魔王になるんだぞ!!!!」
と、怒りの形相で叫んだー。
美桜はーー
元々、いじめを受けていた少女ー。
しかし、一人称は”僕”ではなかったし、
自分のことを魔王の息子だと言い出したりもしなかったー。
かと言って、今日、急に頭がおかしくなってしまったわけでもないー。
美桜はーー
今朝ー、”異世界の魔王の息子”に憑依されてしまったのだったー。
状況をハッキリと飲み込めないまま、
学校にやってきた美桜に憑依した異世界の魔王の息子は、
只々困惑していたー
魔王の息子・ルドラ。
彼は異世界を支配する強大な力を持つ魔王・ゾルの
一人息子。
しかし、”魔王を父に持つ”ことで、
ワガママな性格に育ち、
何かあればすぐに”父上に言いつけるぞ!”と、
周囲を思い通りにしてきた人物だー。
周囲も”ワガママ息子”だと、ルドラに陰口を叩きながら、
それでも、魔王ゾルの息子であるために、
ルドラに逆らう人間はいなかったー。
”魔王の息子”という肩書だけで、ルドラは守られ、
力を手にしていたのだー。
けれど、ルドラ自身には大した実力もなく、知恵も回らないー
プライドだけが高く、臆病な性格でもある彼は、
今朝、突然、ルドラからすれば異世界にあたるこの世界に
飛ばされ、しかし、いじめられっ子の美桜の身体に憑依した状態に
なってしまったために、戸惑っていたー。
「ーくそっー、父上はどこにー…
父上さえいれば、あんなやつらー…」
美桜に憑依しているルドラは、そう言葉を口にすると、
こうなってしまうまでのことを
頭の中で思い出し始めたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
異世界に飛ばされて美桜に憑依してしまう前日ー。
魔王の息子・ルドラはいつものように
”魔王の息子なんだぞ”と威張り散らしていたー。
その世界は、”魔族”と”人間”が存在していて、
世界は2分されていた。
と、言っても、魔族と人間たちの間に争いは起きておらず、
300年以上も前から、魔族と人間は停戦及び、同盟協定を結んだことで、
魔族と人間がともに”世界を半分ずつ”上手く分け合っての生活を
続けていたー。
そんな世界では、魔族側の領地にも”学校”が存在しており
”魔族学校”として、様々な魔族が勉強に励んでいたー。
「ーー僕は魔王の息子なんだぞ!」
魔王ゾルの息子であるルドラは、そんな魔族学校でも
威張り散らす日々を送っていたー。
「ーで、で、でも、悪いのはそっちじゃないかー」
同級生のゴブリンが不満そうに言葉を口にする。
確かに、悪いのはルドラだー。
ルドラがこのゴブリンから借りたものを失くしてしまい、
それを問い詰められたところ逆ギレー。
さらには、別のオークからもモノを盗むというやりたい放題な
有様だったー。
「お前たちなんて、父上がその気になれば黒焦げになるんだー」
”魔王”は、魔族たちを統べるものー。
この世界の”魔族側”の領地では最も偉く、そして恐れられている存在でもあり、
その”魔王ゾル”の息子であるルドラには、
全く意見もできない有様だったー。
人魚のような風貌の先生がやってくると、
「ー先生も分かるよね?僕の父上は魔王ゾルだ」と、
偉そうにルドラが言葉を口にするー。
「は、はいー… ほらー、もう座席に戻ってー」
先生も、ルドラには何も言い返せずに
ゴブリンやオークにそう言葉を口にすると、
ルドラはニヤニヤと笑いながら、
「僕はお前ら下級魔族とは違うんだ!ざまあみろ!!」と
嬉しそうに叫ぶー。
ゴブリンとオークは、不満そうにルドラのほうを振り返る。
しかしー、ルドラはそれが不満だったのか、
「ーなんだその目は?」と、そう言葉を口にすると
ゴブリンに向かって近づいていくー。
そして、ゴブリンをグーで殴りつけると、
「ー僕に何か文句があるなら言ってみろ!」と、
ルドラは叫ぶー。
散々馬鹿にされて怒り心頭のゴブリンは
「ー弱っちいくせに魔王の息子だってだけで威張りやがって!」と
ついにキレてしまい、ルドラと喧嘩になってしまうー。
魔王の息子・ルドラはー
”弱かった”ー。
自分が魔王の息子というだけで、それを盾に
ワガママし放題の生活を送ってきたために、
鍛錬も手を抜いていて、
実力も、魔力も、そして頭脳の面でも、
”どうしようもない”、そんな魔王の息子だったー
父親である魔王ゾルは”偉大”だー。
魔王と呼ぶにふさわしい実力と威厳を持っているし、
”魔族の国”を運営する手腕も確かなものだ。
先代、先々代の魔王と比べても
その実績は輝かしいもので、
”初代魔王の再来”と言われるほどに、
魔王ゾルは偉大だったー。
ただー、どんなに偉大な人物でも、
その子供まで優秀とは限らない。
歴史上においても、
大活躍をした人物の息子や娘が、
それを無にしてしまうようなことは度々起きている。
魔王ゾルの息子・ルドラも、
そんな、”親の威を利用する”だけで、
自分では何もできないー、
そんな息子だった。
「ーお前は死刑だー!父上がお前を焼き尽くしてやるからな!」
ゴブリンにすらあっけなく倒されてしまったルドラは、
泣きながらゴブリンのほうを指さすー。
「ーー~~~…」
怒りに任せてルドラを殴って、倒してしまったゴブリンは
冷静になったのか、青ざめているー。
以前も、魔王の息子であるルドラに逆らって
”姿を消した”魔物がいるのは知っているからだー。
「ーーーおい!!!アイツをちゃんと教育しておけよ!」
ルドラはボロボロの姿で泣きながら
先生に対しても怒りの言葉を口にすると、
「お前も父上に言って、クビにしてもらうからな!この無能!!」と、
そう叫んで、怒りの形相で校舎の外に向かって歩き出すー。
そして、正門前にやってくると、
やがて到着した”魔族”が使う車にあたる乗り物が到着したのを見て、
「遅い!!!僕をいつまで待たせるつもりだ!」と、
腕組みをしながら、ルドラが言ったー。
魔王ゾル配下の”三大幹部”の一人、バロ。
執事のような見た目の魔物で、魔王ゾルの私生活のサポートや、
献策などを主に担っている魔物だー。
「失礼いたしましたー」
バロがそう言葉を口にすると、「それにしても、大変でしたなー」と、
ボロボロになったルドラに対して言葉を口にするー。
ルドラは不満そうに「父上も父上だー。
愚民ばかりのところに僕を通わせるなんてー」と
人間からすれば禍々しい雰囲気の乗り物の後部座席に座ると、
偉そうにな態度でそう言葉を口にするー。
「魔王様は、ルドラ様にもっともっと優れた後継者になって
貰いたいと、そう願ってルドラ様を魔族学校に
通わせているのでしょうなー」
バロは運転をしながらそう言葉を口にすると、
ルドラは「ふん。僕が魔王になれば、父上などよりもっともっと
この世界を優れた世界にすることができるさー」と、
自分の能力を過大評価して、そう言葉を口にするー。
「ーーーそれは、楽しみですなー」
バロはそう言葉を口にしながら、
魔王城に到着すると「さ、ルドラ様ー。どうぞ」と、
ルドラを降ろすと、
三大幹部の残りの二人ー、”ドーラ”と”セラ”がルドラを出迎えたー。
覆面で顔を隠している魔術師のドーラと、
巫女のような姿をしているものの、三大幹部一の剣の使い手でもあるセラ。
ルドラはそんな二人を見つめると、「父上はどこだ?」と
そう言葉を口にするー。
そして、父である魔王・ゾルの元に足を運ぶと
学校で起きたことを報告し、
ゴブリンの処刑と、担任の先生を解任してほしいと、
そう叫んだー。
魔王ゾルは「ーー分かった」とだけそう呟くと、
そのまま静かにため息を吐き出したー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
美桜に憑依してしまったルドラは
そのことを思い出しながら
「くそっ!!!」と、声を荒げると、
「僕は、僕は魔王の息子なんだぞ!!!」と、
公園のブランコに座りながらそう声を上げるー。
「ーーくそっ!バロはまだかー
何をやってる!?ここはどこなんだ!」
イライラした様子で足をトントンしながら、
いつも自分を迎えに来る三大幹部・バロの名を口にするー。
しかし、ここはルドラがいた世界とは別世界ー。
この世界にはバロはいないし、
いくら待ってもバロが迎えに来ることはないー。
「ーーー…おい!!!バロ!!!
いつまで僕を待たせるんだ!」
公園で一人叫ぶ美桜ー。
既に日が暮れている時間帯であるために
公園には誰もいないものの、
あまりにも大きな声で一人、騒いでいたことで、
近所の住人が通報したのか、
やがて警察官が駆け付けるー。
「ーーそんなところで何をしているの?」
女性刑事が声を掛けて来るー。
もう一人、同行している男性刑事も、
美桜のほうを見つめると、
美桜は「なんだお前たちはー?」と、
不満そうに言葉を口にするー。
「ー家はどこ?
もう遅いしー、こんなところで騒いでいると
迷惑になっちゃうから、ね?」
女性刑事がそう言葉を口にするー。
けれど、美桜は「僕に指図するな!
僕は魔王の息子だぞ!」と、そう叫ぶー
「ーーー…?」
女性刑事が戸惑いながら男性刑事のほうを見ると、
男性刑事も困惑した表情を浮かべつつ、
美桜の方を見つめるー。
「ー名前は?」
男性刑事がそう言うと、
美桜は「ルドラだ!魔王ゾルの息子だぞ!」と、そう叫び返したー。
「ーーーー…」
男性刑事はそんな美桜を見つめながら、
少し間を置くと
「ーここだと、近所の迷惑になるー。
いったん、近くの交番で話を聞こうー」と、
この場で話を聞くのは困難だと判断して
そう言葉を口にするー。
女性刑事の方に「ーいったん場所を変えよう」と、
そう伝えると、女性刑事も「分かりました」と頷いてから
美桜を連行しようとするー。
「おい!!触るな!!無礼だぞ!!」
美桜が喚くー。
けれど、この世界では”魔王の息子”という肩書は
何の役にも立たず、美桜に憑依したルドラは
そのまま警察に連行されてしまうのだったー。
②へ続く
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コメント
ワガママ放題の魔王の息子が
この世界のいじめられっ子に憑依してしまって…
そんなお話デス~~!!!
今のところ、大変な状況になっていますネ~笑
今日もお読み下さり、ありがとうございました~!★!

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