<憑依>僕は魔王の息子なんだぞ②~現実~

①にもどる!

魔王の息子としてやりたい放題の生活を送っていた彼。

しかし、ある日突然、彼からすれば”異世界”の、
いじめられっ子に憑依した状態で目を覚ましー、
”魔王の息子”などという肩書きは何の役にも立たない世界に
放り出された彼はー…

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーー父上を呼べ!お前たちなんて焼き尽くしてやるからな!」
交番に連れて来られた美桜は偉そうに腕組みを
しながらそう言葉を口にするー。

「ーー…先輩ー、どうしますー?」
女性刑事・楓(かえで)が戸惑いの表情を浮かべながら言うと、
「ーとりあえず、時間も時間だし、保護者の方を呼ぼう」と、
先輩の男性刑事・浩太(こうた)が、同じく戸惑いながら
言葉を口にするー。

公園で一人、騒いでいた美桜を交番に連れて来た二人。
しかし、交番に到着後も話が全く通じないー。

”魔王の息子”だと名乗ったり、
名前を聞いても”ルドラ”だと答えたり、
挙句の果てには”お前たちを焼き尽くす!”などと、
時と場合によっては警察官に対する犯行予告と捉えられてしまっても
仕方のないような言葉まで口にする始末ー。

二人の警察官にとってもお手上げだったー。

「ーご自宅の連絡先は、言えるかなー?」
女性刑事・楓がそう言葉を口にすると、
「父上とはこの世界に来てから連絡がつかないー」と、
そう言葉を口にする美桜。

さらに腕組みをしながら
「だいたい、お前らのような愚民が父上に会えるものか!」と、
不満そうに声を漏らしたー。

「~~~~~」
楓が、全く話の通じない美桜に戸惑っていると、
男性刑事の浩太が、”学生証に連絡先が書いてあるんじゃないか?”と、
美桜の荷物を手に、言葉を口にする。

美桜と同性である楓が「ちょっと確認させてもらうね~」と
美桜にそう言葉を口にしてから、中身を確認すると、
すぐに学生証は見つかったー。

浩太と共に美桜の実家の連絡先を確認すると、
男性刑事の浩太はチラッと美桜の方を見つめるー。

「ー父上がお前たちを必ず焼き尽くすからな!覚悟しておけ」
美桜と視線が合うと、美桜はそんな言葉を吐き出す。

「~~~~」
浩太は戸惑いの表情を浮かべながらも
「ーよし、俺が連絡しておく」と、
親に迎えに来てもらうことを提案ー、
女性刑事の楓も「それが良さそうですねー」と、
そう言葉を口にしてから、静かに頷いたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

異世界ー

魔王ゾルが統治する城では、
三大幹部の一人であるバロが慌ただしく歩いていたー。

「魔王様ー」
バロがそう言葉を口にすると、
魔王ゾルが振り返るー。

「バロかー」

その言葉に、バロは緊張した様子で、
「ーールドラ様の捜索は続いておりますが、未だ発見には至っていませんー」と、
そう言葉を口にするー。

「ーーーそうか」
魔王ゾルは、息を吐き出すー。

この世界からすれば”異世界”に飛ばされて、
いじめられっ子の美桜に憑依してしまったルドラ。

当然、魔物たちが住む”こっちの世界”では、ルドラは
行方不明の状態になっていて、
捜索が続けられているー。

「ーーーバロよー」
魔王ゾルは、少し考えてからそう言葉を口にすると、
「ーお前とセラには伝えておいた方が良さそうだなー」と、
三大幹部のうちの二人、バロとセラに”あること”を伝えようとするー。

「セラを呼んで、もう一度ここに来てくれ。
 話しておくことがある」
魔王ゾルのその言葉に、バロは「ははっー。すぐに」と、
セラを探しに行くために、いったん、魔王ゾルの前から姿を消すー。

魔王ゾルは少しだけ表情を歪めると、
「ーールドラー」と、息子であるルドラの名を
口にするのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーうるさい!僕は”美桜”なんて変な名前じゃない!
 僕はルドラだ!」

交番に迎えに来た母親・夏帆(かほ)に連れられて
一旦家に帰宅した美桜ー。

しかし、帰宅中もずっと騒ぎ立てて、
帰宅してからもこの調子だー。

「ーどうしちゃったのかしらー?」
不安そうに呟く母・夏帆ー。

「ーー今朝からこんな感じなのかー?」
父親の健吾(けんご)も、戸惑いの表情を浮かべながら
そう言葉を口にすると、
夏帆は静かに頷くー。

「ーーーおい!!!父上はどこだ!?
 僕を誘拐したところで、
 父上はお前たちには屈しないぞ!」
美桜が怒りの形相で叫ぶー。

目の前に父親はいると言うのに、
そんな言葉を口にする美桜を見て、
両親は心底、戸惑ったような表情を浮かべることしか
できなかったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー。

「くそっ…僕にこんな格好をさせてー」
美桜が不満そうに、制服姿の自分を見つめるー。

「ー学校に行くんだから、仕方ないでしょ」
母・夏帆が、
”早く行かないと遅刻するわよ?”と、
呆れ顔で、美桜に対して学校に行くように指摘するー。

「僕に屈辱を味合わせたこと、いつか後悔させてやるからな!」
美桜はそう叫びながら、不満そうに学校に向かって歩き始めるー。

「ーくそっ!この僕が自分で歩いていくことになるなんて!
 バロは一体何をやってるんだー!!!」

美桜に憑依しているルドラの不満は止まらないー。

ブツブツと呟きながら街中を歩きー、
ようやく学校に到着した美桜ー。

がー、到着すると同時に、美桜は
姫香、由紀、紗枝の三人ー…
美桜をいじめていた三人と鉢合わせしてしまうー。

「ーお前らー…!
 昨日のー…
 
 ーー僕を痛めつけたことを必ず後悔させてやるからな!
 ーー必ずだ!!!!」

美桜が怒りの形相でそう宣言するー。

「ーーは?何言ってんの?」
リーダー格の姫香が、美桜からの”宣戦布告”にそう言葉を口にすると、
「ーねぇ、こいつ、昨日から頭おかしくなったんじゃない?」と、
仲間の紗枝が、不満そうに小声で言葉を口にするー。

姫香は少しだけ笑うと、
「ーどうやって”後悔”させるの?」と、美桜をあざ笑うようにして
言葉を口にするー。

「ーー僕は魔王の息子だ!!
 お前たちなんて、父上の力を借りれば、簡単にー」

美桜がそこまで言いかけると、姫香は美桜の髪を力強く引っ張りながら笑うー。

「ーー魔王の息子ー?
 魔王ってなに?
 っていうか、あんた、女でしょ?
 息子ってなに?
 バカじゃないのー?」

姫香の言葉に、美桜は「は…放せ!」と、声を上げるー。

けれどー、元々ルドラは実力も何もなく、
”魔王の息子”というステータスだけで威張り散らしていた存在ー。
美桜の身体になって、肉体的に力が落ちているだけではないー。
仮に、”ルドラ”の身体のままこの世界に来て
同じ立場に陥っていたとしても、
姫香らを返り討ちにすることができる力すらなかったー。

ルドラには、
いじめっ子の姫香らに立ち向かうような力はなく、
いじめを解決させるための”知力”も、持ち合わせていなかったー。

何もできず、姫香たちから熾烈ないじめを受ける美桜ー。

元々、美桜が”なぜ”いじられていたのかは分からないー。
けれど、姫香たちからすれば、
その美桜が”急に訳の分からないことを言い始めた”状態で、
余計にそのいじめはエスカレートしていたー。

最終的に水を掛けられて、
塗れた制服姿のまま、悔しそうに涙を流す美桜ー。

「ーーぼ、僕はーま、魔王のーーー」
やっとの思いで、そう言葉を振り絞る美桜であったものの、
そんな言葉に、この世界では何の意味もないー。

「ーーあははーだったら呼びなよー
 その”魔王”とか言うのをさー」
姫香の仲間である由紀がそう言葉を口にすると、
美桜は「ーお、お前たちなんてー、父上が来れば」と、
再度、言葉を吐き出すー。

「ーーーお、お前たちなんて…!お前たちなんて…!」

この世界に、”魔王”はいないー。
どんなにルドラが助けを求めても、魔王は来ないし、
どんなに”僕は魔王の息子なんだぞ”と叫んでも、
その言葉には何の意味も持たない。

それどころか”頭のおかしなやつ”と、思われてしまうだけ。
ルドラがいた世界では強い意味を持った言葉も、
この世界ではそれは空しく響き渡る。

「ついに、頭おかしくなっちゃったみたい」
クスクスと笑いながら、姫香たちが立ち去っていくー。

ずぶ濡れの制服姿のまま、
美桜は怒りの形相で拳を握りしめると、
自分の無力さを噛みしめながら、
そのまましばらく、その場で座り込んだまま、
悔しそうな表情を浮かべたまま、動くこともできなかった…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「くそっー…ここは一体どこなんだー
 何が起きてるー」

美桜に憑依してしまったルドラも、
ようやく”この世界”が、自分のいた世界とは
違う世界なのだと悟り始めていたー。

誰も”魔王ゾル”のことを知らないし、
そもそも、この世界には魔物が存在していない。
存在しているのは人間のみ。

遠い昔に魔族は滅ぼされてしまったのかー?
と、ここは自分のいた世界の”遥か未来”なのではないかと
そんな間違った考えも巡らせてしまうものの、
「くそっー…僕はー…僕はー」と、
美桜に憑依したルドラは、嫌でも自分の置かれた状況を理解し、
嫌でもそれを受け入れないといけない状況に、
追いやられていたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

数日後ー

「僕は…僕はお前たちになんて負けない!!
 僕は誇り高き魔王の息子だ!」

美桜は、そう叫んだー。

いじめっ子の姫香・由紀・紗枝の三人は
そんな美桜をあざ笑うー。

「2度とそんな風に笑えないようにしてやるー
 覚悟しろー」
美桜は強い口調でそう言い放つー。

姫香たちからは、相変わらずの嫌がらせを受けて
”返り討ち”にされたものの、
父親である”魔王”の存在がなく、
”魔王の息子”という肩書きが何の役にも立たないこの世界に
放り込まれたルドラは、
そんな状況に置かれたからだろうかー。

ようやく”自分自身の手で”動こうと、そんな考えを抱いたー。

「ー~~~~~~~~」
猛勉強を始める美桜ー。

”くそっ なんだこの字は…全然読めないぞー?”
国語の勉強に苦戦する美桜ー。

”ーーこれはまた違う言葉ー?意味が分からないー”
国語の他に”英語”の授業もあることにさらに困惑する美桜。

”ー僕の知る歴史じゃない!なんだここはー!?”
歴史の授業で戸惑う。
偉大なる魔王のことが何も書かれていない。

”くそっ!これは…何なんだ?どこだここはー?”
地理の授業で世界地図が出てきて、
自分の知っている大陸とは異なる世界に戸惑うー。

しかも、ここは”地球”と言う場所で、
この世界地図以上のものは”存在しない”のだということも知る。

「ーー……ち、父上…ぼ、僕は一体…」
美桜は自分の手を見つめながら震える。

体育の授業で成績を収めるために
走る練習もしたー。
体術の練習もしたー。

とにかく、あらゆることを努力した。
生まれた時から”魔王の息子”というステータスを持っていて
何の努力も知らなかったルドラは、
この時初めて”自分で努力する”ということを知ったのかもしれない。

何があっても守ってくれる父上はいない。
”僕は魔王の息子なんだぞ”もこの世界では通用しない。

魔王配下の三大幹部であったバロ、ドーラ、セラもここにはいない。

”自分の足で動かなければいけない”
そんな思いが、堕落してしまった一人息子のルドラを
次第に変え始めていた。

「ーー”いじめ”かー」
帰宅した美桜は、一人、険しい表情で考え事をしていた。

自分が姫香たちから受けているのは”いじめ”ー。
あまりにも酷く、理不尽だ。

が、その一方で、
”僕があの世界でしていたこともまた、
そうではなかっただろうか、と、
そう思わずにはいられなかった。

「ーこの人間の娘も、辛い思いをしてきたんだろうなー」
美桜は、鏡を見つめながらそう呟くと、
少しだけ間を置いてから首を振る。

「いや、僕は人間の小娘なんかに構ってる暇はないー。
 まず、この状況をどうにかしないとー。
 それに、元の世界に戻るための方法もー」
美桜はそう言葉を口にすると、
「勉強だー。色々学べば元の世界に戻る方法が見つかるかもしれない」と、
改めてそんな言葉を口にしたのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ルドラが元いた世界ー。

魔王ゾルの元には、
三大幹部のうちの二人、バロとセラが集まっていたー。

「二人には、伝えておかねばならんー。
 我が息子、ルドラはー…」

魔王ゾルはそこまで言うと、言葉を続けたー。

「ドーラの禁忌の秘術によってその魂を異世界へと飛ばしたー」
とー…。

三大幹部の残りの一人、魔術師ドーラの名を口に出したゾルは、
そう言葉を口にしたのだったー…

③へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

次回が最終回デス~!!!

”父上の威光”だけで生きて来た
魔王の息子にとっては
大変な状態が続いていますネ~…!!

今日もお読み下さり、ありがとうございました~!!

続けて③をみる!

「僕は魔王の息子なんだぞ」目次

コメント