<憑依>使い終えたそのマスク①~出品~

憑依を悪用して
使用済みマスクを売るー。

そんな、憑依人がいたー。

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「ーーククククー」
一人暮らしの女子大生が、
パソコンの画面を見つめながら笑みを浮かべているー。

そこに表示されているのは
”彼女自身が出品したマスク”

それも、普通のマスクではないー
彼女が使った”使用済みのマスク”だー。

「ーーへへへへ…こんなモン買ってどうすんだよ?」
そのマスクを出品した女子大生は、ニヤニヤとしながら、
見た目の印象とは、全く釣り合わない口調で言葉を口にするー。

「ーーーーさ~てと」

パソコンに向かうと、ガムを噛みながら
落札者に対してメッセージを送る女子大生ー。

♪~~~~

「ーーん?」
スマホのほうを見つめる彼女ー。

画面には、彼氏らしき名前が表示されているー

「ったくうるせぇなぁ
 人付き合いが多い女はこれだから困るー」

彼女はそう呟くと、
彼氏からの連絡を無視してそのままスマホの電源を切って、
ガムを膨らませながら再びパソコンのほうを見つめるー

「ーーは~~目がしょぼしょぼするー
 ”この女”、目、疲れやすいなー」

そう呟くと、適当に目薬をさして、
ため息をつくー。

「ーーこんな女の使ったマスクになんか金出しちゃってー
 くくくくくー
 ”中身”は俺みたいなクズなのになぁ…」

けらけらと笑う女子大生ー。

彼女は今ー
”男”に憑依されていたー。

憑依されて、自分の意思とは関係なく
”使用済みマスク”の売買をさせられていたー。

ネットではー
一部、”使用済みのマスク”の取引が行われていたー。

通常ー
誰かが使ったマスクなど、
衛生的に問題があるし、
とてもじゃないが、使えたものではない。

そもそも、自分の使ったマスクでも、
使い捨てのマスクでは、衛生上問題が生じるし、
中古の状態で何度も使いまわすことは、
本来、望ましいことではないー。

しかし、世の中には”使用済みのマスク”を
”普通のマスク”よりも高いお金を払って買うー

”物好き”と呼ばれる人たちが存在するー。

自分のマスクだったとしても、
中古の状態では衛生上問題があるのに、
”見ず知らずの他人のマスク”となれば、
さらに問題だー。

だが、買うのだー。

欲望を求めてー、
”使用済みマスク”を買う人間は、一定数いるのだー。

特に、今、使用済みマスクを売っている女子大生のようなー
”容姿に恵まれた人間”のマスクは、よく、売れるー。

「ーーへへへへ…こんな女の口紅がついてたからって
 何だってんだよ」

ご機嫌そうに笑う女子大生ー。

彼女は、”憑依”されるまでは
使用済みマスクを売ろうなんて考えたこともなかったし、
想像したこともなかったー。

だが、今の彼女はー
憑依されてしまった彼女は、
連日、自らの身体を悪用して、
使用済みマスクを売り捌いていたー。

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「ーーまさか、智香(ともか)やってないよな?」

大学ー。
昼休みの時間に、大学生の男女が
食堂で話し込んでいるー

「ーわたし、絶対そんなことしないし!」
智香と呼ばれた女子大生が、手を振りながら
”ないない”と、言い放つー。

「ーーははは、そうだよなぁ~」
智香の彼氏で、同じ大学に通う翔貴(しょうき)が
笑いながら呟くと、
智香は苦笑いしながら
「っていうか、自分の使ったマスクが他の人の手に
 渡るって気持ち悪くないー?
 それも、お金を払ってまで買う人の手に渡るなんてー
 何に使ってるのか知らないけど、絶対気持ち悪いし!」と、
言葉を付け加えるー。

「ーーでもなぁ~教授も言ってたけど、ほらー」

そう言うと、翔貴やスマホを操作して、
ネット上のオークションサイトや、フリマアプリを開いて、
そこに”使用済みのマスク”がたくさん出品されている光景を
見せつけるー

「ーほら、これなんかこんな金額で売れてる!」
翔貴が、使用済みマスクの出品を指さすと、
智香は「ありえないんだけどー」と、気持ち悪そうに
表情を歪めたー

「買う方も買う方だけど、売る方も売る方だし、
 わたしには考えられないー」

智香がそう言うと、
「そんなこと言って、実は智香が売ってたりー?」と
揶揄う様に翔貴が言うー。

「ーう・っ・て・ま・せ・ん!」
智香は、声を少し多く出してそう言うと、
翔貴は「ははは、冗談だよ冗談ー」と、智香に謝るー。

そんな翔貴に対して、今度は智香の方が
仕返しと言わんばかりに
「ー翔貴こそ、マスク売ってるんじゃな~いの?」と、
少し拗ねたような感じで言うー。

「ーい、いや、売らねーし!
 大体俺みたいなふつーの男子のマスクなんて
 誰も買わないだろ!?

 智香ならー
 滅茶苦茶かわいいから売れると思うけどー」

翔貴が笑いながら言うと、
智香は「絶対ヤダ!」と笑いながら答えたー。

先程、大学からの学生たちへの連絡で
”使用済みマスクの売買はしないでください”という
通達が出たばかりー。

少し前に、女子大生の使用済みマスクの売買で
ちょっとした問題が、世間で起きており、
”我が大学ではそのような学生はいないと思いますがー”
というような言い回しで、先ほど、大学側が
学生たちに注意喚起をしたのだー。

「ーーじゃ、またあとで」
昼食を終えた翔貴が、智香のほうを見て、
手を振るー

智香は「うん!またあとでー」と、
笑いながら翔貴に対して手を振り返したー。

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「相談ってー?」

大学の放課後ー。
同じ大学に通う、
智香の幼馴染の瀬奈に呼び出された智香は、
瀬奈が待っていた大学の一角で瀬奈と合流するー。

瀬奈は小さい頃から奥手な性格で、
友達は少ないタイプー。

けれどー、
小学生の頃に、
男子に揶揄われている瀬奈を、
智香が「あんたたちあっち行きなさいよ!」と何度も追い払ったりしているうちに、
次第に二人の間に友情が芽生え、
大学生になった今でも、こうしてその関係は続いているー。

「意識が飛ぶー?」
智香が困惑するー。

「ーーうん」
瀬奈は不安そうに呟くと、
「ーー…夜になると、何だか最近、寝落ちしちゃってることが多くて」と、
智香を見つめながら呟いたー。

瀬奈が智香を呼び出したのはー
このことを、相談するためー。

「ーーーう~ん…寝不足とか?」
智香がそう答えるもー
瀬奈は不安そうな表情を浮かべたままー

「ーーー…うん…それならいいんだけどー」
と、頷くー。

「ーでも…寝落ちしてるはずなのにー、
 全然身体の疲れが取れてなくてー」

瀬奈の言葉に、智香は
「ーだ、大丈夫ー?」と、心配そうに呟くー。

確かに、瀬奈の言う通り、瀬奈の目の下には
いかにも寝不足、という感じの雰囲気が漂っているー。

「ーーどこか体調悪いとか、ないの?」
智香がなおも確認するー

昔から、困っている人を放っておけないタイプの智香は、
親身になって瀬奈の話を聞きながら、
自分の思いつくことを答えていくー。

そういった面からも、智香は友達が多く、
男女問わず人気も高いー。

「ーー……うん…わかったーありがとうー」
瀬奈が少しだけ、安心したような表情を浮かべるー

智香は医者ではないし、
睡眠の専門家でもないー。
当然、瀬奈の身に何が起こっているのかを断定することもできないし、
”答え”を教えることもできない。

けれど、色々話を聞いてもらうだけでも
人は、気持ちが楽になるー。

結局”あまり無理をしないように、もう少し様子を見て、
どうしても気になるようだったらお医者さんにー”という
ありきたりな答えしか智香にはできなかったものの、
瀬奈は、智香に話を聞いてもらえて、
終始、安心したような表情を浮かべていたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーへへへー」

夜ー
女子大生が、笑みを浮かべながら
パソコンを見つめるー

「まさかこの女ー
 ”自分が使用済みマスクを売っている”なんて、
 夢にも思ってねぇだろうなぁ…」

そう呟くと、女子大生は
”今日、大学でつけていたマスク”を
ゴミ箱から回収して、それの写真を撮影し始めるー。

「ー口紅つきも作っとくか」
そう呟きながら化粧をすると、赤く染まった唇のまま
マスクをつけて”売り物”の準備を始めるー

「ーーへへへへ…群がる群がるー」
ニヤニヤとしながら、”自分の使用済みマスク”が
売れていくのを見つめー、
満足そうに微笑む彼女ー

マスクを身に付けながら、胡坐をかいて、
パソコンの画面を見つめー
そして、胸を揉むー

「へへへっ…!いい商売だぜ!へへへへへっ!」
あまりに順調ー。
そんな、”自分のマスク”が売れていく光景を見ながら
愉悦に浸った彼女はー、
自然と自分の胸を揉む手にも、力が入って
気持ち良さそうに笑みを浮かべたー。

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「この女、ヤバくね?すげぇ量のマスク出品してる」

翌日ー
大学では彼氏の翔貴が、
智香に向かって苦笑いしながら、
マスクが出品されている画面を見せつけるー

「うわっ…すご…」
智香はあきれ顔で、とある出品者の
出品物一覧を見つめるー。

明らかにー
”日常生活で使ったマスク”というよりも
”売るためにわざと”マスクをつけて
それを出品しているような、
そんな感じもするー

「ーしかもツイッターでほら、
 口紅塗った唇写したり、
 顔は隠してあるけど、コスプレとか披露してて
 あざといよなぁ…」

翔貴が笑いながら言うー。

「ーー翔貴も落札してたりして」
冗談を呟く智香ー。

「ーーいやいやいや、しないし!
 っていうか、他人のマスクなんて不衛生だろ!?」

衛生面に気遣う翔貴は、
”他の人の食べ残し”も食べないようなタイプで、
”他人の使用済みマスク”を使うなんて、考えられないことだったー

彼からすれば、便器にキスをしているのと同じようなことだー。

「ーーま、まぁ~ほら、そのサイトでも
 確か禁止になってるわけじゃないんだし
 放っておけばいいんじゃない?」

智香が言うー。

「ーーまぁ、確かに俺たちに関係あることじゃないけどな」
翔貴はそう言いながらも、
少しソワソワした様子の智香を見つめたー

「ーなんか、ソワソワしてないか?」
翔貴がすぐにそれを指摘すると、
智香は「えっ!?べ、別にー?」と、少し目を逸らしたー

「怪しいなぁ~」

「ー怪しいないよ!」

智香は苦笑いしながら、そんな翔貴に向かって
別の話題を振り始めたー。

「ーーなんだよ~急に話を変えて、尚更怪しいなぁ~」
翔貴が言うと、
智香は「ー揶揄わないでよ、も~!」と、
笑いながら翔貴の肩を叩いたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

夜ー

「ははははっ!今日もマスクが売れるぜ!」

女子大生はご機嫌そうに笑みを浮かべるー。

「いやぁ~最高だぜ…
 憑依は、色々使い道があるなぁ…
 こうして”他人の女の身体”を使えば、
 個人情報とかも心配しなくていいし、
 いざとなったら、この身体を捨てればいいだけだからな」

ニヤニヤしながらパソコンを見つめるー。

「ーそれにしてもこの女、すぐに目が疲れるな…ったく」
うんざりしながら目薬を使うと、
そのままパソコンのほうを見つめて、
しょぼしょぼとした目で、
マスクが一つ、落札されたことを確認するー。

「ーへへへへ…お買い上げ、ありがとうございま~す♡」

甘い声を出しながら、
”憑依された女子大生”は、
今日も笑みを浮かべながら、マスクの出品を続けていたー

②へ続く

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コメント

憑依を金儲けに使う男…
どのような展開になっていくのかは、
また次回のお楽しみデス~!

今日もお読み下さりありがとうございました~!

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