憑依されて、
自覚のないまま使用済みマスクの売買を続ける女子大生ー。
巻き込まれた彼女の運命はー?
そして、その先に待っているのはー…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーー」
智香の親友・瀬奈が緊張した様子で智香のほうを見つめるー。
瀬奈はー
最近、”寝落ちすること”が非常に多くなってー
しかも、寝ているはずなのに、”睡眠不足”のような症状に
悩まされているー。
それを不安に思った瀬奈が、智香に”家に遊びに来てほしい”と
お願いして、昨晩、自分の様子を見張っていて貰ったのだー。
そしてー。
一晩明けた今日ーー
瀬奈から”自分の様子はどうだったか”聞かれた智香は
少しためらってから口を開いたー
「ー瀬奈ちゃんって、いつもベッドでちゃんと寝てる?」
とー。
瀬奈は「え…?あ…ううんー…最近、寝落ちすることが多くてー」と、
そう答えるー。
智香は少しため息をついてからー
「やっぱりー」と、苦笑いするー。
昨日ー
夜に瀬奈が寝落ちしてから、
瀬奈の様子を見ていて、
智香は気づいたー。
変な態勢のまま寝ていたし、
途中で身体を何度も動かしたりして、寝にくそうな状態だったー
あれでは、睡眠時間がいくらあっても、
なかなか”質の良い睡眠”はできないー。
”寝るべきではない場所での寝落ち”を繰り返して
そのまま朝まで寝てしまうー
それが、瀬奈の睡眠不足と、連日の寝落ちの原因じゃないかな?と、
智香は瀬奈に説明したー。
寝る環境が悪いから、寝ても寝不足が解消されないー
寝不足が解消されないから、また寝落ちするー
その悪循環なのだとー。
「ーーーそ…そんなに寝相悪かった?」
瀬奈が恥ずかしそうに言うー。
智香は「う~ん…何と言うか… うん…悪かった」と、
素直に寝相が悪いことを指摘するー。
瀬奈は顔を赤らめながら
「そ…そっかー」と、言葉を口にすると
「ーな、なんかごめんね…くだらないことで智香に迷惑かけてー」と、
申し訳なさそうに平謝りするー
「いいのいいの!瀬奈ちゃんがちょっと抜けてるのは昔からだし!」ーと、
智香が冗談を口にすると、
瀬奈は「ぬ、抜けてるは失礼だよ!」と、笑いながら言い返してきたー
その日以降ー
瀬奈はちゃんとベッドで眠るようにしたところー
寝落ちも、睡眠不足も無事に解消されたのだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーーはぁ!?」
ガムを噛みながら”使用済みマスク”を出品していた
女子大生が不機嫌そうに声を上げるー
「ーふざけんじゃねーよ!」
見た目と真逆の口調で大声で叫ぶと、
不満そうに、近くにあったゴミ箱を蹴り飛ばしたー。
いつも通り、自撮りを上げていたのか、
今日はバニーガールの格好をしている彼女は
何度も何度も舌打ちをしながら、
イライラした様子で髪を掻きむしると、
睨みつけるようにして
パソコンの画面を見つめたー
そこにはー
”オークションのアカウントがロックされた”ことを
知らせる文字が表示されていたー。
彼女は、やりすぎたー。
使用済みマスク自体の出品を禁止しているサイトではなかったが
”あまりにも度を越した量を出品していた”ためだろうかー、
オークションサイト側からアカウントをロックされて、
憑依されている女子大生は、これ以上
使用済みマスクを出品することが
出来ない状態に陥ってしまったー。
「くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!」
何度も何度も机を叩き、
手が赤くなるまで、机を叩き続ける女子大生ー。
生まれてから、今までの人生で、この女子大生は
こんな恐ろしい形相を浮かべたことはないー。
だが、憑依されている彼女は、
自分とは全く関係のないことで、勝手に激怒させられて、
その顔を歪められているー。
「ーーーふざけやがって!」
まだ怒りが収まらない彼女は、大声でそう叫ぶと、
家の中で髪を振り乱しながら、一人、暴れまわったー
ようやく暴れ飽きると、
ストレス発散と言わんばかりに、狂ったように一人で
エッチなことを初めてー
そのまま、徹夜で、朝まで何度も何度も喘ぎ狂っていたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌朝ー
あくびをしながら大学にやってきた智香の前に、
彼氏の翔貴がやって来るー
「あ、翔貴ー おはよー」
智香がそう呟くと、
翔貴が少し困惑した表情で「おはよう」と言い返すと、
スマホを手に、それを智香に見せたー。
翔貴が表示していた画面は、
オークションの”使用済みマスク”の出品画面ー。
「この模様のマット…見覚えがあってー」
翔貴が、写真の端に映っているマットを指さすー。
これは、前に智香の家に遊びに行った時に
智香の家にあったやつだー。
もちろん、同じマットを持っている人なんて
たくさんいるかもしれないー。
だが、智香の家にあるそれはー
珍しい柄のマットで、
確か、智香は”おじいちゃんが海外旅行の時に買ってきてくれたやつ”と
説明していたはずー。
つまりー、そうそうそこら中にあるものではないのだー。
「ーー…ーーー」
智香が驚いた様子でオークションのページを見つめているー。
「ーやっぱ、智香…使用済みマスク、出品してたのか?」
翔貴が悲しそうに言うー。
困惑した様子の智香を見て、
翔貴は「いや、別にマスクを出品してるのは、まぁー…あれなんだけど、
なんか…智香に嘘つかれたのが悲しくてー」と、正直に言葉を口にしたー
前に使用済みマスクの話題で話をした時にー
智香はこう言っていたー。
「買う方も買う方だけど、売る方も売る方だし、
わたしには考えられないー」
「ーう・っ・て・ま・せ・ん!」
とー。
それなのに、平然と使用済みマスクを売っていたことがー
嘘をつかれたことが、翔貴には悲しかったー
「ー別に犯罪ってわけではないんだしー
正直に言って欲しかったー」
翔貴がそこまで言うと、
智香は驚いた様子で、その画面を見つめながら
翔貴のほうを見て、ようやくー
「ーーごめんなさいー」
と、申し訳なさそうに言葉を口にしたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
智香と翔貴は自動販売機の前で
会話を交わすー。
智香が出品していた使用済みマスクはごく少数ー。
智香によれば、
”使用済みマスクが売れる”ということを見て、
”わたしのも売れるのかな…?”と興味本位で売り始めたとのことだったー
だが、”ツイッターで自撮りを晒すなどして、大量の使用済みマスクを売っている”
例の女子大生とは異なり、
自撮りも、アピールもほとんどしていなかった智香のマスクは
そんなに高値では売れていなかったー
「ーーーー黙ってて、ごめんねー…」
智香が、今一度、翔貴に謝ると、
翔貴は「いや…いいけどさー」と、苦笑いしながらも、
同じ学部の麻帆と樹奈子が、
例の”大量の使用済みマスクを売る女子大生”の自撮り写真の隅っこに
うちの大学で配布されたものがある、と会話していたのを聞いて、
”これが智香なんじゃないか”と不安になったー、という気持ちを吐露したー。
さすがに、自分の彼女が、自撮りのコスプレ写真をネット上に
あげて、それを使用済みマスクの販売につなげているような人間だったらー
確かに、犯罪ではないとは言え、
翔貴からしてみれば”嫌”だったー。
だがー
結果的には、”大量出品の女子大生”は智香ではなかったー
智香も使用済みマスクを出品しているー
ということは驚きだったが
少なくとも、大学内で今問題になっている”例の女子大生”ではなかったのだー。
翔貴は、半分安心、半分は嘘をつかれていたことにショックを受けながらも、
智香のほうを見つめながら
「ーーまぁ、あんまり、そのー…マスク売ったりするのは、ほどほどにしとけよ?」と、
優しい口調で、けれども、ちゃんと分かってもらえるようにハッキリと
そう言い放ったー
「ーーーうんー…そうするー…」
智香はそれだけ言うと、”もう使用済みマスクの出品はしないこと”と
翔貴に約束したー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーー今日は遅くなっちゃったー」
サークルの集まりで少し帰りが遅くなってしまった智香は
急いで大学から、帰ろうとしていたー。
洗濯物も干したままだし、
このあとは雨の予報があるー。
その時だったー
「ーーーあ!智香!」
背後から声がして、智香が振り返るー。
そこにはー
彼氏の翔貴が”大量に使用済みマスクを出品しているのは智香ではないか”と
不安を抱くきっかけになった会話をしていた
女子大生二人組のうちの一人、麻帆の姿があったー
「あ、麻帆ー」
智香も、麻帆とは面識があるー。
いつものような調子で、返事をすると、
麻帆は、智香の目の前までやってきて、笑みを浮かべたー
「ーせっかくこの女で使用済みマスクを出品してたんだけどさぁ、
アカウント凍結されちゃったからー
”違う身体”に乗り換えることにしたよー」
麻帆が、いつもとはまるで別人のような口調で呟くー
「ーーーえ…? な、何を言ってるの?」
智香が表情を歪めるー
だが、その言葉に、麻帆は口元を歪めて言葉を続けたー。
「ーこの女の身体から、お前の身体に乗り換えるんだよー」
とー。
「ーーーど…どういうー?」
智香には、意味が理解できなかったー。
そんな智香の様子を見て、麻帆は微笑んだー。
「ー使用済みマスクを大量に出品していたのは、わたしー
いやー”させられていた”とでもいうべきかな?」
麻帆がニヤッと笑うー。
「ー大丈夫 怖くないよー。
普段はちゃんと意識を戻してあげるしー
”憑依されている自覚”は消してあげるしー
今、こうやって話している記憶も、消しておいてあげるからー」
麻帆はそこまで言うと、
「ーだからーお前に”憑依”させてもらうよー」
と、言葉を呟き、智香の返事を聞く前にー
そのまま智香にキスをしたー
白目になってその場に倒れ込んでピクピクと痙攣する麻帆ー
「ーぁ… …へ…へへへへへ」
ニヤニヤと笑い始めた智香は、
「ー最後、身体から抜けるときだけは、その身体に
負担がかかっちゃうんだよなぁ~」と、痙攣している麻帆のほうを見つめるー。
「ー今までにも何人か、”そのまま”壊れちゃった身体もあるけどー
まぁ…使い終わった身体がどうなろうと、知ったことじゃないしな」
智香はそう呟くと、
「ーー誰か~~~!」と、”友達が急に倒れた”という風を
装って、大学の職員を呼び始めたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
それから数日ー
大学では”ある噂”が流れ始めたー。
”使用済みマスクを大量に出品している女子大生”は
相変わらず使用済みマスクの出品を繰り返しているー
がー、
一度凍結されて、別アカウントで復活してから
”別人”になったのではないかという噂が流れ始めたのだー
ツイッターで顔を隠した自撮りを載せて、
客を増やそうとしているー…などの行動も全て同じー。
しかしー
”微妙に身体の感じが違う”のだー。
スタイルの良い身体つきであることには
変わらないものの、
”前の女子大生”と、違う部分がいくつも散見されたー。
「ーにしても、この子、本当に誰なんだろうな?」
智香の彼氏・翔貴が苦笑いしながら言うと、
智香は「う~ん…本当に誰なんだろうね?」と、笑いながら答えたー。
まさかー
”今度は自分自身が憑依されて、使用済みマスクを売らされている”とは、
記憶を操作された智香はー、夢にも思っていなかったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
夜ー
メイド服姿で、智香が自撮りを繰り返し、
それを、顔を隠してツイッターに載せているー
微笑みながら、色々なポーズをしたり、
際どい写真を撮影して、笑みを浮かべるー
「ーーふふふふ…バカなやつらだぜ ホントー」
身体は女子大生ー
だが、中身は男ー
しかし、そんなことは関係なく、マスクは売れていくー。
乗っ取られた智香は笑いながら、
自分の使用済みマスクを手に、
それをネットに出品し始めたー。
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
使い終えたそのマスク、の最終回でした~!☆
没バージョンもあるので、
それも「おまけ」で、いずれ掲載したいと思います~!
(もちろん、通常の更新とは別枠で更新するので、
安心してくださいネ~!普通の更新は毎日ちゃんとあります~!)
お読み下さりありがとうございました~!
コメント