ごく普通の女子高生の前に、ある日現れたのは
”未来からやってきた自分”
しかも、未来からやってきた自分に、
彼女は身体を奪われてしまいー…?
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「ーー千穂(ちほ)、今度の土曜日だけどー」
昼休みー。
机で4時間目の授業の道具を片付けていた
女子生徒、中西 千穂(なかにし ちほ)に対して
彼氏の矢田 冬馬(やだ とうま)が、声を掛けるー。
「ーーえ?あ!うん!この前、話した通りで大丈夫だよ!」
笑いながら答える千穂ー。
千穂は、明るさと優しさを兼ね備えた少女で、
周囲からの信頼も厚く、友達も多いタイプー。
控えめな一面もあるために、クラスの中心的な存在ー、と
まではいかないものの、
交友関係は広く、こうして彼氏もいるー。
一方の冬馬は、
穏やかな性格の持ち主で、
人のことをとても大切にするタイプの男子だー。
半年前から付き合い始めた千穂のことも、
とても大切にしているー。
そんな、千穂と冬馬は、昼休みの間、
楽しそうに雑談しながら昼食を済ませると、
昼休みの終わりを告げるチャイムが聞こえて来たー。
「ー5時間目、寝るなよ?」
冬馬が自分の机に戻っていきながら、そう笑うと、
「寝ない寝ないー!確かに社会の授業、眠くなるけど」と、
笑いながら千穂は答えたー。
社会科の先生は、
穏やかな口調で、ゆっくりとしたトーンで話す先生のため、
とても眠くなるー。
しかも、授業中は黒板に書いたことをノートに書き写すだけのタイプの
先生のため、急に指名されて、問題に答えさせられるようなこともなく、
そのせいか、より眠くなるー。
昼休みのあとの5時間目の社会の授業は
”睡魔と戦う授業”とまで、一部の生徒に言われてしまっているー。
「ーー(寝ないようにしなくちゃ)」
千穂はそんな風に心の中で呟きながら、
社会科の授業の教科書を手にしたー。
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いつものような1日が終わりー
学校から帰路につく千穂ー。
彼氏の冬馬は、今日はこのあと、バイトがあるとのことで、
そのまま足早に立ち去っていき、
千穂は一人で家を目指していたー。
その時だったー。
突然、背後に気配を感じた千穂は、
とっさに振り返ったー。
そこにはー
暗い表情の女が、いつの間にか立っていたー
「ーーえ」
突然、女が自分のすぐ後ろに立っていたことに
驚く千穂ー。
その直後ー
千穂の後ろに立っていた女は、不気味な笑みを浮かべて
こう呟いたー
「ーみ~つけた」
とー。
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「ーーーーうっ……」
千穂が、目を覚ますー。
「ーーえ…?」
周囲を見渡すと、そこは知らない部屋の中だったー。
「ーーごめんね。手荒な真似してー」
女の声ー。
千穂が驚いて振り返ると、
そこには、さっきの女がいたー。
黒いワンピース姿のその女は、
千穂の近くまでやってくると、
千穂のほうをじっと見つめたー
「ーーえ…い、いったい何なんですか…?
ここ、どこですかー?」
千穂が戸惑いながら言うー。
急に意識が飛んで、
気が付いたらこの場所にいたー。
と、いうことは
この女の人に眠らされて、ここまで連れて来られたー…
そういうことになるー。
「ーーーけ、警察ー」
千穂が慌てて近くに置かれていた自分の鞄を手に、
スマホを取り出そうとすると、
「ま、待って!追いついて!」と
黒いワンピースの女が叫んだー。
「ーーわたしは、あなたを傷つけるつもりはないの!」
そんな、黒いワンピースの女の言葉に、
千穂は「じ、じゃあ…何なんですか?」と、不安そうに
スマホを握りしめたまま、女に確認するー。
意味が分からないー
いきなり、こんな場所に連れて来られて、
一体この人は、何をー…
千穂がそんな風に思っていると、
黒いワンピース姿の女は、
「ーー怖がる気持ちは分かるけど、大丈夫ー。
わたしは絶対にあなたを傷つけたりしないー」
と、言いながら、近くの椅子に座るー
「ーわたし、あなたを傷つけたりしたら、
大変なことになるもんー」
黒いワンピースの女は、そう呟くー
「ーー…そ、それはどういう意味ですかー?」
怯えた様子の千穂ー。
そんな千穂に対して、黒いワンピースの女は答えたー。
「ーーこういう意味ー」
とー。
「ーーー!?!?!?」
女がバッグから取り出して、手渡してきたものを見て、
千穂は目を疑ったー。
女が手渡してきたのは”免許証”ー。
そこには”中西 千穂”と書かれているー
黒いワンピースの女と同じ人物の顔写真がついていてー
生年月日は千穂と全く同じー
「ーーーえ…?」
千穂は、意味が分からず首を傾げるー
”自分と同姓同名、しかも同じ誕生日の女の人ー?”
けどー
千穂はまだ、自動車の運転免許証を取得できる年齢ではないし、
もし同い年だとしたら、目の前にいる千穂は、
随分と年上に見えるー。
少なくとも20代後半ーいや、30代かもしれないー。
「ーーここを見てー」
そんな千穂の反応を見た黒いワンピースの女は
免許証の”有効期限”の欄を示したー。
そこにはー
令和19年6月15日まで有効ー、と、
そう書かれていたー
「ーれ、令和19年ー?」
令和19年と言えば西暦で言えば2037年だー。
そんなに免許証の有効期限が長いはずがないー。
「ーーーびっくりさせてごめんねー
わたしは未来から来たのー」
黒いワンピースの女は、
自分は”未来の千穂”だと語ったー
「ーーえ……え???え???わ、わたしなの…?」
千穂が言うと、
未来の千穂は頷くー。
「信じられないと思うけどー」
今の千穂と比べると、ずいぶんと顔に生気がなく、
暗いオーラを漂わせているー
けど、確かに言われてみれば、
千穂自身の顔立ちが、そのまま歳をとったような
感じに見えるー
「ーーえ……え…………?」
それでも、千穂は混乱していたー。
そんな千穂を見てか、未来の千穂は
「ふふっ…高校生の頃のわたしなら、そういう反応すると思って
ちゃんと、持ってきたよ」と、バッグから
何かを取り出したー
それはー
高校の卒業アルバムや、大学の卒業時の写真ー、
それに、ウェディングドレス姿の千穂の写真ー
「ーー…えっ…う、嘘ー…」
驚きの表情で、それらを見つめる千穂ー
「ーあ、そうだー、それとー」
未来の千穂はそう言うと、ワンピースで隠れた
肩の部分を少し見せると、
「ーほらー…」と、
千穂の身体に小さいころからある”ほくろ”を示したー
「ーーう…嘘…すごい… ほ、本当に未来のわたしー…?」
千穂の言葉に、未来の千穂は「他人がこんな嘘ついて、
わたしを騙すメリット、ないでしょ?」と、微笑んだー
「ーそ、そうだよねー」
千穂がそれだけ言うと、
「ーって…え、ど、どうやって過去にー?!」
と、戸惑いながら、未来の千穂に尋ねるー。
「ーん~~…特殊な技術でー…
この時代には、まだそういうの、ないもんねー」
未来の千穂は、そこまで言うと、
「ーーちょうど今ぐらいだったよね?」と、笑うー。
「ーえ?」
千穂が首を傾げるー。
「ほら!あいつ…冬馬と付き合い始めたの!」
未来の千穂の言葉に、
「ーーあ、うん!半年前ぐらいから!」と、
千穂が答えたー。
「あ、半年前だったか~やっぱ10年以上昔だと、
少し記憶も曖昧になっちゃうね」
未来の千穂がそれだけ言うとー
千穂の方を見つめたー。
千穂は、目の前にいる女が”未来の自分”だということは
信じたもののー
あることが引っ掛かっていたー
「ーーあの…何か用があるってことだよね…?」
千穂が言うと、未来の千穂は「うん」と頷くー。
「ー未来でタイムマシンが出来たんだとしても、
”わたし”なら、用もなく過去のわたしに会いに来たりしないと思うし」
千穂は、”自分”だからこそ分かる、未来の千穂の考えを指摘するー。
「ーそう!さすがわたし!よく分かってるね!」
未来の千穂はそれだけ言うと、
”本題”を切り出したー。
「ーー身体を、貸してほしいのー」
「ーーーえ?」
未来の千穂の言葉に、千穂は思わず表情を曇らせたー。
”いきなり”そんなお願いをされるとは、
流石に夢にも思っていなかったからだー。
「ーそ、それはどういうー…」
そう尋ねようとした千穂ー。
だが、未来の千穂は”千穂”の確認を取ることもなく、
キスをしたー。
「ーーー!?!?!?!?!?!?」
驚いていると、身体に今まで感じたことのないような
不思議な感覚を覚えて、そのままその場に倒れ込んだー。
そしてー
自分の手を見て、すぐに「えっ…」と、声を上げるー。
”自分の手”であって”自分の手”ではないー。
同じ人間でも
”およそ15年”の年月が流れていれば
当然ー、
その手の感じも、変わるー。
制服を着ていたはずの自分がー
黒いワンピース姿になっているー
倒れ込んだ状態から、咄嗟に背後を振り返ると、
そこには、笑みを浮かべた”今の自分”が立っていたー。
「ーーありがとう。ふふふ」
未来の千穂はー
”今の千穂”と、身体を入れ替えたのだー。
「ーー……少しこの身体、借りるねー」
”今の千穂”になった”未来の千穂”が微笑むー。
「ーううんー。”借りる”って言い方はおかしいかなー?
だって、高校生の頃とはいえ、わたしの身体だもんねー」
そう呟くと、千穂(未来の千穂)は、
「ーちゃんと家にも帰るし、学校にも行くから、そこでじっとしててー」と、
言葉を口にしたー
「ーえ…そ、そんなー…な、何を企んでるの!?」
未来の千穂になってしまった千穂が叫ぶと、
「ー大事なことー」と、千穂(未来の千穂)は言い放ったー
「ーわたしのためにも、あなたのためにもー」
それだけ言うと、千穂になった未来の千穂は
「うん!やっぱりこの時のわたしのほうが動きやすいし、
肌もきれいだし…!」と、嬉しそうに自分の手を
見つめると、そのまま部屋の外に出て行こうとするー。
「ーーちょ!ちょっと待って!」
未来の千穂の身体になった千穂は必死に叫ぶー。
たとえ、相手が未来の自分なのだとしても、
こんな知らない部屋に連れて来られて、
こんな風に身体を入れ替えられてー
全く意味が分からないー
「ーま、まさか、わたしの身体を奪って
また高校生活をやり直そう、とか、考えてるのー!?」
未来の千穂(千穂)の言葉に、
千穂(未来の千穂)は
「ーーぶー…はずれ!」と、指で×を作りながら呟いたー。
「ーそうじゃないよー。
”わたし”なのに、”わたし”のこと分からないんだねー」
と、呟いてからー
「ーー……ーーー…まぁ…高校生の頃は、”こんな”に
なるなんて、思わなかったもんね」
と、小声で呟いたー
「ーーえ…」
未来の千穂(千穂)は表情を歪めると、
千穂(未来の千穂)は「1週間ー」と、言葉を発したー
「1週間、ここにいてー。
大丈夫ー。わたしは”未来の千穂”なんだからー
高校生の頃、お父さんやお母さんとどんなふうに
過ごしてたかもちゃんと覚えてるし、
学校でも、どんな風に過ごしてたか、ちゃんと覚えてるー
だから、安心してー。
わたしには”どうしても”やらないといけないことがあるのー」
千穂(未来の千穂)はそう宣言すると
「あ、冬馬…」と、スマホを見つめながら
彼氏の名前を口にすると、そのままスマホをいじり始めたー
「ーーちょっと!もっと詳しい事情を説明してよ!」
未来の千穂(千穂)は、困惑しながらそう叫ぶー。
けれどー
千穂になった未来の千穂は
「ごめんねー。それはできないのー」と、
だけ呟くと、
そのまま部屋の外に出てー
”外から”扉を開けられないように、扉に何らかの細工をして
立ち去ってしまったー
「ーーー…わたしの身体で、何をするつもりなのー…?」
未来の千穂の身体になってしまった千穂は、
身体を奪われて、謎の部屋に閉じ込められてしまったこの状況にー、
困惑することしかできなかったー
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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突然現れた未来の自分との入れ替わり…!
大変なことになりそうですネ~!
続きはまた明日デス!
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