<入れ替わり>過去と未来③~未来への決意~(完)

未来からやってきた”わたし”の目的を知った彼女ー。

未来からやってきた自分に身体を入れ替えられたままの
彼女のとった行動はー…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーー…」
千穂(未来の千穂)は、
彼氏である”冬馬”の自殺を知らされたー

「ーここまでするつもりはなかったのにー」
千穂(未来の千穂)は、事故現場の近くでそう呟くー。

”本来の歴史”では、
千穂はこのまま冬馬との交際を続けて
やがて、冬馬と結婚、
冬馬との間に純太(じゅんた)という男の子が生まれるも、
冬馬の”大事な人を大切にする”性格がどんどんエスカレートしていき、
やがて”全部千穂のためなんだ”と、暴力まで振るうようになっていくー。

最終的に、千穂は冬馬に”監禁”されているも同然の状態に
なってしまい、千穂の未来は閉ざされるのだー。

千穂はなんとか逃げ出し、
”執拗な追跡”から身を隠しつつ、最終的に
過去に来るための技術を盗み出し、2022年にやってきたー。

2022年で、冬馬と千穂の仲を引き裂けば、
未来で冬馬と結婚することはないはずー。

そう、考えたからだー。

「ーーーー」
冬馬の自殺現場付近を見つめながら
千穂(未来の千穂)は思うー。

”こういう極端な考えの持ち主だからー
 未来で、あんなことになるのかもしれないー”

とー。

「ーーあんたはやっぱり……最低な男よ」
千穂(未来の千穂)は、そう言い放ったー

たぶん、本人に悪気はないのかもしれない。
ある意味で、どこまでも純粋すぎてー
それ故に、自分で自分のブレーキを踏むことができないのかもしれないー

でも、純粋すぎるということは、狂気だー。
人間は、何においても、どこかで自分にブレーキを
踏まないといけないー

「ーーさよなら」
千穂(未来の千穂)は、”高校時代の冬馬の死”に、
そう呟きながら、その現場を立ち去ったー。

冬馬が自殺までするとは予想外だったー。
でも、これで、”未来にも冬馬は存在しない”ことになりー、
冬馬との結婚もなくなるわけだから、
歴史は確実に変わるー。

「ーーー…」
千穂(未来の千穂)は、微笑むー。

未来ではー
”千穂の状況”に心を痛めた母親が、心労で倒れて、世を去っているー。
2035年のことだったー。

それも、未来の千穂がこういう行動を引き起こす
大きなきっかけになったのも事実ー。

「ーーーー…」
高校時代の自分の”まだ綺麗な手”を見つめながら
千穂(未来の千穂)は微笑むー。

「ーーーもう、苦しまなくていいんだからねー
 ”わたし”ー」

寂しそうにそう呟いた千穂(未来の千穂)は、
”身体を元に戻すため、
未来の千穂になった千穂がいる場所へと向かったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーー」
今日が約束の日ー。

未来の千穂(千穂)は、
”ある決意”を心の中で固めていたー。

”未来の家族写真”を見つめるー

「冬馬ー…」
”夫”になった未来の冬馬は、”暴走”するのだというー。

今の千穂からすれば、到底信じることはできない
話ではあるものの、
一方で”わたしが、そんな嘘をついてまでこの時代に来ることなんてしないー”
とも感じていたー

信じたくはないけれど、
”未来のわたし”が、過去にやってきてまで、
こんなことをするー
と、いうことは、本当に追い詰められていたことが分かるー

「ーでも…やっぱり、間違ってるよ。わたしー…」
未来の千穂(千穂)は、ぎゅっと写真を握りしめると、
玄関の扉が開いたことに気付くー

やってきたのは、千穂(未来の千穂)ー

「ー全部、終わったわー」
千穂(未来の千穂)はそう呟くー。

「ー冬馬は死んじゃったけどー。
 …未来の出来事を阻止するためだからー」

千穂(未来の千穂)は、
心労で母が倒れて、そのまま体調が戻らないまま
死んでしまったことも告げるー。

「ーー”高校の時のわたし”に言っても
 ”そんなことないよ!”って言うのは分かってるー」
千穂(未来の千穂)の言葉に、
未来の千穂(千穂)は「うん。そう思ってるー」と、頷くー。

「ーでも、同時に、わたしのこと、信じてもくれてるんでしょ?」
千穂(未来の千穂)の言葉にー
「うんー。さすがわたしー…わたしのこと、よく分かってるねー…」
と、少しだけ微笑みながら答える未来の千穂(千穂)ー

「ーーじゃあ、身体、元に戻すからー」
千穂(未来の千穂)は、そう言いながら、
未来の千穂(千穂)の方に近付いてきたー。

キスをすることで、再び身体を元に戻そうとしているのだー。

「ーやっぱー…高校生の時の身体のほうが、動きやすいねー…
 30超えると、若いときみたいにはいかないからー」

千穂(未来の千穂)は名残惜しそうにそう呟くと、
未来の千穂(千穂)にキスをしたー

そして、元に戻る身体ー

だがー
その時だったー。

「ー間違ってるー」
千穂が呟くー

「え?」
未来の千穂は首を傾げるー。

「やっぱり!未来のわたしは間違ってるよ!」
そう呟くと、未来の千穂の足を引っかけて、
突然、未来の千穂を転倒させるー。

「ーえ…な、何をー」
未来の千穂が持っていたキューブのようなものが
床に転がり落ちるー。

”時空を超えるための装置”だー。

「ーーちょっ…何をするの!」
未来の千穂が叫ぶー。

時空を超えるキューブを拾った千穂は、言い放つー

「ー冬馬が酷いことしてくるようになるのは分かったよー!
 分かったけどー
 でも、未来のわたしは間違ってる!絶対にー!」

その言葉に、
未来の千穂は表情を歪めるー

未来の千穂は”高校時代のわたしならどういう行動をするか”を
頭の中で想像した上で、今回の計画を練ったー。

”なんでー…?未来のわたしより、冬馬を信じるのー?”

そんな風に思いながら”過去の自分”の予想外の行動に
未来の千穂は困惑の表情を浮かべたー。

「ーーな、なにが間違ってるって言うの!?
 冬馬は、わたしに暴力ーーー」

そこまで言って、未来の千穂は言葉を止めたー。

千穂が”未来の家族写真”を手に、
指を指しているー。

「ーーーこの子、名前は何て言うの!?」
目に涙を浮かべながら、千穂が叫ぶー

千穂が指をさしていたのはー
”未来の千穂と未来の冬馬”の子供ー”純太”だったー。

「ーーーじ、純太ー」
未来の千穂が言うと、
千穂は言い放つー

「ーー…冬馬との結婚を阻止したら、
 純太くんが、消えちゃうんだよ!?
 未来のわたしは、それでもいいのー?」

”2022年”で、冬馬との関係を引き裂きー、
 冬馬を自殺させてしまったー”

そうなれば、当然、2037年に存在している
千穂と冬馬の息子・純太は
この世界に誕生できなくなるー

「ーだってー…それしかー…方法がー」
未来の千穂が悲しそうに言うー。

未来の千穂も、息子の純太のことは、
親として愛していたー。

けれどー
それでもー

「ーーーーー……たぶん、本当に辛い思いをしてきたんだよねー」
千穂がふと、悲しそうに呟くー

”自分の子供が消えてしまう”
そんなことは、未来のわたしだって考えたはずー、
と、千穂は思うー

”それでも”
こんな行動を”わたし”が起こしたということは
”未来のわたし”は、想像以上に、本当に苦しい状況にいたー、
そういうことなのだと、千穂は理解しているー

でもーーーー

「ーーー!」
未来の千穂が表情を歪めるー。

千穂が、タイムスリップの際に使うキューブを
”起動”させたのだー

「ーちょっと待って!何をするの!?」
未来の千穂が叫ぶー。

すると、千穂は言い放ったー

「ー冬馬を自殺させちゃダメー。
 こんな未来ー
 絶対に未来のわたしも後悔することになるー」

千穂はそれだけ言うと
”どうやって操作するのか”は、よく分からなかったけれど、
何とか勘でキューブを操作してー
2週間前の日付を入力するとー

そのまま”2週間前”へと
千穂はタイムスリップしてしまったー。

「ーーど…どうするつもりなのー?」
一人その場に残された未来の千穂は、唖然とした表情で
その場に立ち尽くすことしかできなかったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

2週間前ー

「ーーわ…すごい」
千穂は驚くー。

”ホントに2週間前に来ることができたー”
そんな風に思いながら、周囲を見渡すー

”未来のわたしが来るのは、1週間後だから…”
そんな風に考えながら、千穂は、
”現在の千穂”から見て2週間前の自分ー、
過去の千穂と出会い、事情を説明ー、
未来の千穂がやってきたら、二人で未来の千穂を
なんとか阻止して、説得、
三人でより良い未来に変えようー、と、
そう考えていたー。

「ーー……でも、まさか未来のわたしだけじゃなくて
 過去のわたしとも会うことになるなんてー」

千穂はそんな風に思いながら
過去の千穂…2週間前の自分が
学校から出て来るのを待つー。

「確かこの日はー…」
まだ2週間前ー。
自分の行動もある程度ハッキリと思い出すことができるー。

”時空を超えることができる謎のキューブ”
それを手に、千穂は、2週間前の自分が学校から
出てきたことを確認するー

”でも、どうやって説明しようかなぁ…”

2週間前の自分の考え方・性格・行動などはー
”今の自分”と、ほとんど変わらないー。
だから、もし、自分が”2週間後のわたしなの!”と姿を現したり、
”15年後のわたしが1週間後にやってきて、身体を入れ替えられちゃうの!”なんて
説明されてもー…、
絶対に信じない、ということは分かるー。

「ーー……う~ん……でも…やるしかないよね…」

未来の自分が持ってきた”未来の家族写真”を思い出す千穂ー。

未来の家族写真には、冬馬と、自分の子供が写っていたー。

15年後の千穂がやったように、
冬馬との付き合いを阻止したらー、
その子供ー純太という子は、生まれなくなるー。

それに、結果的に、15年後の自分の行動は
冬馬を自殺に追い込んでしまったー
仮に、将来、冬馬が束縛や暴力をするように
なってくるのだとしてもー、
そこまでする必要はない、と、今の千穂は考えていたー。

全部ー
全部、丸く収めるためにはー

「ーーー…あの!」
千穂が背後から、”過去の千穂”に声を掛けるー

「ーーえ…っ… えぇっ!?」
過去の千穂が驚くー。
”自分と全く同じ人間”が突然姿を現したのだー
当然、そういう反応をするのは無理もないー。

「ーあ、あの…!し、信じられないと思うけど、
 わたしの話を聞いてー!」

千穂は、2週間前の千穂に全て話を説明したー。

”1週間後”に15年後の千穂がやって来ることー。
そして、千穂は未来の千穂と身体を入れ替えられてしまい、
冬馬との仲を引き裂かれることー。

さらにー
冬馬はそれが原因で自殺してしまい、
未来に生まれるはずだった子供が生まれなくなることー。

必死の説得の末に、過去の千穂はなんとか
千穂の話を信じてくれたー

「ーなんで…信じてくれたのー?」
千穂が言うと、
「ーーだって…どう考えても、わたしっぽさ全開だしー」と、
2週間前の千穂は笑ったー。

あり得ない現実離れした話だけど、
千穂の説明の仕方や考えが、
”どう考えてもわたしの考え方だから”と、
そう言葉を口にしたー。

「ーありがとうー」
千穂は、安心した様子で呟くー。

”未来はきっと、変えられるー”

知っていればー
彼氏の冬馬が結婚後に束縛してくるような状態を
回避することもできるかもしれないー。

そうならないように、冬馬と上手く話し合うこともできるかもしれないー。

そのためにもー
話し合うためにも”未来の千穂”の行動によって
冬馬が自殺してしまうのを防ぐ必要もあるー。

「ーーーねぇ」
”過去の千穂”が、ふと呟いたー

「え?」

「ーー未来のわたしが来るのって来週なんだよね?」
2週間前の千穂が苦笑いしながら言うと、
千穂は「うん」と答えるー。

「ーあと1週間…わたしはいいんだけど、
 2週間後のわたしは、何して待ってるの?」

そんな彼女の言葉に、千穂は「あ…」と呟くー。

一度自分の時代に戻ったら、また最初から
説明し直しかもしれないし、
ここに留まる必要があるー。

「ーーーつい、勢いで2週間前に来ちゃった?」
過去の千穂が、千穂の考えを見透かしたかのように笑うー。

「ーーうん。来ちゃったー
 さすがわたし、よく分かってるねー」

千穂は苦笑いするー

未来の千穂が来るまで、あと1週間ー
この”2週間前の世界”で、それまでどう過ごそうかなぁ…。

そんなことを考えながら
千穂は、”未来のわたしが来る1日前に来ればよかったー”と、
後悔するのだったー

おわり

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コメント

未来の自分との入れ替わりでした~!☆
この先は、書いたとしても、入れ替わりとは関係のないお話に
なってしまうので、
入れ替わりの物語としては、ここで完結デス~!

お読み下さりありがとうございました~!

コメント

  1. 匿名 より:

    この話は前にあった似た話とは違って、本当に未来から来た自分だったみたいですね。
    色々怪しい気がしてましたけど(笑)。

    それにしても、千穂の考えは相当甘い気がしますね。綺麗事と言ってもいいです。
    未来の千穂がここまでやる程追いつめられた冬馬をどうにかできるとはとても思えません。

    多分、最終的に全く同じような未来にたどり着いて、千穂はこの時の自分の決断をとても後悔することになるんじゃないですかね?

    そして未来の千穂と同じことをやる事になりそうな気がします。

    • 無名 より:

      コメントありがとうございます~!☆

      今回は本当の自分でした~!笑

      現在の千穂の考えは、コメントで頂いた通り、あえて”甘い”考えに
      してあります~!☆
      現在の千穂はまだ”高校生”で、未来のことを聞いたとは言え、そういう過酷な経験を
      していないこと、そして何よりこの時点では”冬馬のことが大好き”なので、
      そういう考えに至ってしまう…という感じですネ~!

      この千穂の選択が正しかったのかどうかは、
      入れ替わりからは外れてしまうので、書くかどうか、悩んでいる最中デス~!

  2. 匿名 より:

    入れ替わりから外れるという理由で続きを書くかどうか、悩んでるみたいですけど、こういうのはどうでしょう? やっぱり未来の千穂と同じ事になった千穂が、同じように過去に来て、今度は過去の自分ではなく、過去の冬馬と入れ替わって、元には戻らず、そのまま冬馬として自分で自分を幸せにするとか。

    こういう感じなら入れ替わりから外れずに続きが書けそうだと思います。未来の息子が消える事はなくなりますし。

    あるいは別に過去に来なくても、未来で入れ替わるだけの展開でも続編としていけるかもしれませんね。

    ↑はただの個人的な思いつきですが、良かったら続編の参考にしてください。

    このまま終わりでは結末が気になるので、何らかの続編はやって欲しいですね。

    • 無名 より:

      コメントありがとうございます~!☆!

      頂いた内容も面白そうですネ~!

      続きはいずれ、何らかの形で描けたら、と思います~!!