<入れ替わり>過去と未来②~理由~

未来からやってきた自分に
身体を入れ替えられてしまい、
身体を奪われてしまった少女ー。

そんな彼女の運命は…?

・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーー」
謎の部屋に閉じ込められてしまった
未来の千穂(千穂)は、
なんとか部屋から脱出しようと、
周囲を確認するー

一見すると、普通のアパートの一室に見えるー。

しかし、窓は封鎖されていて、
家の中にあるもので、窓を破壊して
外に出るのは難しそうだったー

「ー何考えてるの…未来のわたし…」
困惑する未来の千穂になった千穂ー。

「ー昔のわたしを閉じ込めるなんてー
 そんなこと、わたしならしないんだけどなぁ…」

さっき見せられた免許証の更新日付を見る限り、
”更新まであと何年”のタイミングなのかは分からないが
”およそ15年ほど”経過している感じだったー。

「15年もすると…昔の自分を傷つけるようなこと
 平気でするようになっちゃうのかなー」

未来の千穂(千穂)は、未来の自分に対して
少し腹立たしさも覚えながら、
部屋の外に出ようとして、
情報を再び整理するー。

”出口”になりそうなのは、
玄関らしき場所の扉と封鎖された窓ぐらいだー。

壁を破壊する手段もあるかもしれないけれど、
それができるなら、封鎖された窓を破壊して
外に出た方がいいだろうー。

「ーーー!」
ふと、自分の腕に傷があることに気付くー。

未来の千穂(千穂)は、戸惑いの表情を浮かべていると、
ふと、机の上に”写真”が置かれていることに気付いたー

そこにはー
未来の千穂と、未来の千穂の子供らしき男の子ー、そしてーー

「ーー!!!」
未来の千穂になってしまった千穂は、写真を見て、
その表情を歪めたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーあ~~~!久しぶりの実家~~~♡」
現代の千穂になった未来の千穂は
嬉しそうに自分の部屋のベッドに飛び込むー

「帰ってきた~!って感じがするぅ」
ベッドの上で嬉しそうに、自分の頬を枕にこすりつけると、
「ーーやっぱ、この頃が一番楽しかったかもなぁ~…」と、
嬉しそうに周囲を見渡すー

「あ~!これこれ!なつかしい~!」

「ーーそういえばここにー あっ!やっぱこれ隠してた~!」

「ーー由美子(ゆみこ)!? 懐かしい~!大学行ってから疎遠になってたもんね」

と、色々なものを見つめながら
”高校時代の自分”を、”高校時代の自分の身体”で懐かしむ千穂ー。

彼女は”正真正銘”未来からやってきた千穂であり、
他人が千穂を名乗っているわけではないー。

しかもー
彼女は未来で”罪”を冒してまでこの時代にやってきたー。

いやー、
”やってこないといけなかった”ー。

「ーーー…ごめんね。怖がらせてー」
鏡を見つめる千穂(未来の千穂)ー

”高校時代の自分”を鏡で見つめながら、
彼女は呟くー。

「ーでも、理由を説明しても、高校時代のわたしなら、
 たぶん止めるもんねー。
 だからー、説明できないー」

千穂(未来の千穂)は、そう呟いてから
決意の表情で鏡を見つめるとー

「ーーでも…それは、また明日考えるとしてー」
と、笑みを浮かべるー

「ー高校時代のわたしを、堪能しちゃお!」
嬉しそうにそう叫んだ千穂(未来の千穂)は、
そのまま自分の髪を触り始めたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

「ーーーえ…?き、急にどうしたんだよ?」
彼氏の冬馬が困惑の表情を浮かべたー。

「ーー…わたしと別れてほしいの」
千穂(未来の千穂)がそう言い放つと、
冬馬は「ど、どういうことだよ…急に…?」と、
混乱するー

急に別れを告げられた冬馬ー。
”穏やかな性格”で、人のことをとても大切にするタイプの冬馬ー。

彼は、声を荒げることはしなかったものの、
流石に少し戸惑った様子だったー

「別にいいじゃないー。別れたくなったの。ただ、それだけ」
千穂は、いつもより少し大人っぽい雰囲気を晒していて、
千穂(未来の千穂)自身は意識していなかったのかもしれないがー、
冬馬には”違和感”を与えてしまったー。

「ーーー浮気してるのか?」
冬馬が呟くー

その言葉に、千穂(未来の千穂)は表情を歪めたー。

「ーそうか、浮気なのかー?」
冬馬が悲しそうに言うと、
千穂(未来の千穂)は、突然声を荒げたー

「ーわたし、浮気なんて一言も言ってないよね!?
 どうして、そうやって決めつけるの?
 そういうところ!そういうところが無理なの!!」

千穂(未来の千穂)の急な怒鳴り声に、
冬馬は驚いた表情を浮かべながら
「な…な、なんだよー…!じ、じゃあなんだってんだよ!」と、
声を荒げるー。

「ーただーあんたが嫌いになったー
 それだけー。」

千穂(未来の千穂)はそれだけ言うと、
冬馬はとても落ち込んだような表情に変わって、
「ーーーーわかったよ」と、だけ呟いたー

立ち去っていく冬馬ー
そんな冬馬を見つめながら、千穂(未来の千穂)は
「ふふっ…」と、笑みを浮かべたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーなんなの…これー…?」

部屋からの脱出方法を探すうちに、
未来の千穂になってしまった千穂は、
さらにあることに気付いていたー

それはー
”未来の自分”の身体のいたるところに
”痣”のようなものがあることだったー

顔や手ー
見える場所にはないー。

だが、足や背中などー
”見えない場所”には、痣がたくさんあったー。

未来の千穂が足元まで隠すような黒いワンピース姿だったのも、
足の打撲を隠すためだったのかもしれないー。

そしてーー
昨日見つけた写真ー

その写真にはー
未来の千穂と、千穂の子供らしき男の子とー
”夫”らしき人物が映っていたー。

その”夫”らしき人物の顔はー
ハサミで切り取られたのだろうかー
まるで”憎しみ”があるかのように、ボロボロにされていたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ー聞いたよ~!急に別れちゃったってー
 どうしたのー?」

友達の言葉に、千穂(未来の千穂)は笑みを浮かべたー

「どうしてって~?
 だって、なんか嫌な感じだったしー」

”冬馬”に聞こえるようにそう言い放つ千穂(未来の千穂)ー

”まだ、これじゃ足りないー”
千穂(未来の千穂)は”1週間”かけて、
さらに”確実”に、彼氏・冬馬との仲を引き裂こうとしていたー。

「ーー急に暴力振るってきたりしてー」
千穂(未来の千穂)の言葉に、友達は「え~~!酷い~!」と、
声を上げるー

あることないことを周囲に広めていく千穂(未来の千穂)ー
冬馬は「そんなことしてない!」とクラスメイトたちに
弁明していたものの、
元々”千穂のほうが、クラスメイトたちからの信頼が厚く、交友関係も広い”ことや、
千穂になった未来の千穂が、うまく立ち回ったことで、
千穂と冬馬が別れたのは”冬馬のせい”ということに、
クラスの中ではなりつつあったー。

落ち込んでいく冬馬ー

「ーーもっと…もっと落ち込みなさいー」
千穂(未来の千穂)はそんな冬馬を横目で確認しながら
笑みを浮かべるー

「ーあんたのそういう顔ー…最高ー」
千穂(未来の千穂)は少し興奮した様子で小声でそう呟くと、
”それにしてもー”
と、周囲を見渡しながら
”高校ー…何もかも、懐かしいなぁ”と、静かに呟いたー。

それからもー
未来の千穂になった千穂は脱出できずー、
千穂になった未来の千穂は、冬馬の悪い噂を撒き続け、
冬馬とは完全に”決裂”状態になっていたー。

入れ替わってから6日ー。
千穂(未来の千穂)が、未来の千穂(千穂)の
いる部屋へとやってきたー。

「ー冷蔵庫の食べ物、ちゃんと食べてるー?」
千穂(未来の千穂)の言葉に、未来の千穂(千穂)は「うんー」と頷くー

「ーよかったー。
 過去のわたしに何かあったら、わたしも大変なことになると思うからー」
と、そう言うと、
「ー怖がらせてごめんね。でも、約束通り、明日にはもう元に戻って
 大丈夫だと思うからー」と、
千穂(未来の千穂)は悲しそうに微笑みながら椅子に座ったー

「ーーーー」
未来の千穂の身体で、千穂は”質問”を口にするー

「ーーねぇ…この痣はなにー?
 それにー…この写真ー…たぶん、未来でわたしが結婚してるってことなんだろうけどー
 これは、誰ー?」

「ーーーーーー」
千穂(未来の千穂)は複雑そうな笑みを浮かべると、
「ーまぁ…”もう”今、聞いたところで何もできないと思うしー」と、
言葉を続けるー。

「ーそうー。
 わたしは結婚して、子供も生まれてー…
 幸せになれると思ってたー。

 でもねー
 なれなかったー。」

千穂(未来の千穂)は悲しそうに呟くー。

「ーー…それは、どういうー…?」
未来の千穂(千穂)は、戸惑いながら呟くー。

「その痣ー」
千穂(未来の千穂)が、未来の千穂になった千穂の
”痣”のある場所を指さしながら呟くー。

「ーーー…わたしは”夫”に暴力を振るわれていたー」
千穂(未来の千穂)の言葉に、
未来の千穂(千穂)は「え…」と、呟きながら
写真を今一度見つめるー

写真の”夫”の顔はボロボロにされていて
誰なのかは確認できないー。

「ーそれで…こんな風にー?」
写真を指さす未来の千穂(千穂)ー。

夫の暴力に対する怒りで、家族写真の夫の部分を
ボロボロにしたのだろうかー。

「ーそう。
 それでーわたしがこの時代に来て、
 昔のわたしと、入れ替わった理由はー

 ーー夫と”結婚”に至るのを阻止するためー」

千穂(未来の千穂)はそう言い放ったー。

「ーーーえ…」
未来の千穂(千穂)が、さらに戸惑うー。

「ー2037年ではねー
 秘密裏に時空に干渉する技術ー…
 つまり、タイムマシンのような技術の開発が行われていてねー
 
 わたしは、”自分の歴史”を変えるために、
 その研究施設に何とか侵入して、
 ”これ”を盗み出したのー。」

千穂(未来の千穂)が、小さな輝くキューブのようなものを
手にするー。

「ーこれで、わたしは2037年からやってきたー」
千穂(未来の千穂)は、そう言うと、
「ーまぁ、これを盗んだから、2037年では今頃わたし、指名手配されてると
 思うけど、でもーこの時代で未来を変えれば、
 それも、大丈夫だと思うからー」と、笑みを浮かべたー。

入れ替わりの技術も、そこで盗み出したものなのだと言うー。

「ーーーわたしは、この時代に来て、
 この時代のわたしと入れ替わってー
 そして、未来で夫になるーーー

 冬馬との仲を引き裂くためにー
 そのために、ここに来たのー」

千穂(未来の千穂)が言うー。

「ーと…冬馬ー!?」

冬馬ー。
千穂の今の彼氏だー。
とても優しく”人のことをとても大切にするタイプ”の冬馬が
未来で千穂と結婚して、そして千穂に暴力を振るうというのかー。

「ーーと、冬馬がそんなことー!」
未来の千穂(千穂)が叫ぶと、
千穂(未来の千穂)は叫んだー。

「ーするのよ!冬馬はわたしに暴力を振るうー
 ”わたしを守るため”ってー
 知ってるでしょ?
 冬馬、”人のことを大切にする”男だってー

 結婚すると、それがどんどん強くなっていって
 最後にはわたしを束縛するようになるのー

 ”全部、お前を守るためだ”って、
 そう言いながらー」

千穂(未来の千穂)の言葉に、
未来の千穂(千穂)は「そんな…」と、戸惑いの言葉を呟くー。

「ーー約束通り、明日、身体は返すからー」
千穂(未来の千穂)はそう言うと、そのまま立ち去って行こうとするー。

”冬馬をさらに追い詰めて、わたしが元の時代に帰ったあとも
 絶対に冬馬が、わたしに近付かないようにするー”

未来の千穂は、そんなことを考えながら、
その場所から立ち去ろうとしたー。

しかしー
その時だったー

「ーーー!」
千穂(未来の千穂)は、スマホを手に、表情を歪めたー

”大変!矢田くんが!矢田くんが、飛び降りたって!”
友達からの連絡ー。

千穂に振られてー
ショックを受けた千穂の彼氏・矢田冬馬はー
この日、”自殺”してしまったのだったー

未来は変わるー。
そう、確実に、異なる方向へー。

③へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

次回はさらに思わぬ展開に…!?
続きはまた明日デス~!

コメント