<憑依>きみとひとつに③~救出~(完)

春菜は、自分のことを
ゲームのヒロイン・リアンだと思い込んでいる
狂気の先輩・景義に憑依されてしまったー。

次第に、景義に支配されていく春菜の運命はー…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーー!!!!」

春菜は、自宅で目を覚ましたー。

「ーーーえ…?」
慌てて時計を見る春菜ー。

半日以上、時間が飛んでいるー

「ーーわたし…」
春菜は、自分の身に着けている服を見て、
悲鳴を上げるー。

アイドルのような可愛らしい衣装を身に着けて、
いつの間にか眠っていたのだー

「ーーわ…わたし…どうしてー」
鏡に映る金髪の自分を見ても、
違和感を感じることもできないまま、
春菜は表情を歪めるー

”ふふふふ…リアンちゃんー
 だんだんと、僕がリアンちゃんそのものになっているみたいだ…
 気持ちイイよ…きみと一つになっていく、この感触ー
 たまらなく、ゾクゾクするよー”

景義の声が聞こえてくるー

「ーー出てって!わたしから出て行って!」
叫ぶ春菜ー。

”くふふふふふふ~…
 無駄無駄…僕は、リアンちゃんと一つになるんだー。
 もうすぐ、リアンちゃんの全てが、僕のものになるー”

「ーー身体もー」
春菜の口から景義の言葉が発されるー

「ーー心もー」
「声もー」
「何も、かもー」

「ー僕が、リアンちゃんになるんだよー」

春菜は目から涙をあふれさせながら
自分の口を塞ごうとするー。

「ーーだめだよ…ほら、きみの手がするべきことは、
 口を塞ぐことじゃなくてー

 立派な胸を揉むことじゃないかー」

震えながら、春菜はそう言うと、下品な笑みを浮かべながら
胸を触り始めるー

「あっ…っぅ… ぅ…わたしは…わたしは…リアン…」
春菜はぷるぷると震えながら、
必死に景義の支配に抗おうとしているー。

けれどー
景義の支配は、確実に、より深いところまで
進んでいたー

”僕を置いて、いなくなっちゃだめじゃないかー…
 リアンちゃんー
 僕とリアンちゃんは、ず~っと、一緒だって、約束したんだからー”

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーー春菜、今日も来てないの?」
春菜の友人・美姫が不安そうに、春菜の友人の一人に尋ねるー。

「ーーうん。今日も見かけてないけどー」
その言葉に、美姫の不安は強まっていくー。

最近、春菜の様子が明らかにおかしかったー
ブツブツと独り言を言っているような様子も見たし、
急に金髪にしたり、
急に怒りだして、男のような口調で叫んだりー。

明らかに、”普通じゃない”
と、そう思える振る舞いが増えたー。

最初は、ストーカー化していた先輩・景義と共に
転落して、それで景義が死んでしまったことを
気にしているのだと、美姫はそう思っていたー。

けれど、何か違う気がするー

「ー昨日から、連絡もつかないんだよねー」
美姫が言うと、春菜の友人は”わたしも”と、
戸惑いながら答えたー

”既読”はついているー
だが、返事が来ないー。

「ーまぁ…いいや…、わたし、今日、このあと暇だから
 春菜の家に行ってみるー」

美姫の言葉に、春菜の友人の一人は「うん…」と、不安そうに頷いたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

大学が終わり、美姫は春菜の住むアパートへと向かうー。

「ーーーー…」
春菜の部屋には電気がついているー。
それを確認した美姫は
”まさか、部屋で一人で死んでるとかないよね”と、
不安と、春菜に対する心配でいっぱいになりながら、
春菜の部屋の前にやってきて、インターホンを鳴らしたー

”はいー”

「ーーー春菜?春菜なの?わたしー。
 大学に全然来なくなったから、心配になって来ちゃった」

美姫が言うと、春菜は”あぁ…”とだけ呟くと
”うん、ちょっと待ってて”とだけ応答し、
そのまま玄関の鍵を開けてくれたー。

「ーー!」
扉が開くと、ゴスロリのような服装を身に着けた
春菜に、美姫は驚くー

「ーど、どうしたの…?その格好?」
美姫が言うと、春菜は「かわいいでしょ?」とだけ言いながら、
部屋の奥に向かっていくー。

「ーー春菜…どうして大学に来なくなっちゃったのー…?
 みんな、心配してるよ?」

美姫が、金髪になった春菜の後ろ姿を不安そうに
見つめながら呟くー。

「ーーーふふふ」
微笑むだけの春菜ー。

「ーーねぇ…春菜…!最近何か変だよー…?」
美姫は、不安でいっぱいになって、正直に思っている言葉を
口にするー。

春菜の部屋の中は、前に来たときよりも随分と散らかっていて、
下着が見える場所に放置されているのが、美姫の目に入るー。

「ーーねぇ…春菜ってば!」
美姫がもう一度言うと、
春菜は「ー春菜春奈春菜春奈ー…」と、不満そうに呟くー。

「ーわたし、リアンだもん」
春菜が、死んだはずの先輩・景義が好きだった
ゲームキャラクターの名前を口にしたー

”そういえばー…”
美姫は、景義が好きだと言っていたキャラ・リアンの容姿を思い出すー。

髪の色は金髪で、ゴスロリ系の服装や、
アイドルのような可愛らしい衣装を身に着けているキャラだったー。

”顔の雰囲気が確かにリアンと似ている”感じの春菜が
リアンの服装、髪の色を真似すればー
”リアンそっくり”な雰囲気になるー。

「ーーー……な…何を言ってるのー?」
美姫が言うと、春菜は
「ーわたしと話できるんだから、感謝してよね」と、
笑いながら呟くー

「は…春菜…どういうことなの?」
美姫には、事情が理解できないー。

「ーリアン」
春菜は、”春菜”と呼ばれたことに腹を立てて、
名前を呟き、修正するように美姫に促すー

「ーふ…ふざけたこと言ってないで!春菜…真面目に話を聞いてよ!」

「ーーり・あ・ん!」
少し苛立った様子で名前の修正を求めてくる春菜ー。

「ーどうしちゃったの!?リアンとか言っちゃって!
 春菜は春菜でしょ!」

美姫が少しカッとなって声を荒げると
春菜は「ーあ~~~~~~~~!」と、金髪の髪を
掻きむしりながら、しばらく露骨にイライラして見せると、
顔を上げて笑みを浮かべたー。

「ーー鬱陶しいや お前ー。
 リアンちゃんはもう、僕のものなんだよー」

春菜が突然豹変するー。

「ーーえ…??え…どういうー…?」
美姫はビクッとして、春菜のほうを
不安げな表情で見つめながら、
やっとの思いでそう言葉を呟いたー。

しかし、春菜は笑みを浮かべながら続けるー。

「ー大学、行ってもいいんだけどさー
 リアンちゃん、可愛いから、
 僕のリアンちゃんに誰かが手を出したらいけないってー
 そう思ってさ」

春菜はそう言うと、ニヤニヤしながら
「リアンちゃん、可愛いだろう?」と、ポーズを決めて見せたー。

「ーー……は…春菜ー……
 い…いいえ…あなた…誰…?」

思わずそう言葉を口にしてしまったー。
とても、春菜とは思えないー。

そんな、”異常な”雰囲気に
その言葉を口にせざるを得なかったー。

「ーーあはっ!あははははっ!わたしはわたしだよー。
 だから言ってるじゃん!わたしはリアンだってー」

”くくくくくー”
春菜をほぼ完全に支配した景義は、春菜の身体で
リアンになりきって生活を続けていたー。

もう、春菜の意識の抵抗もほとんどないー。
身体はほぼ完全に掌握したと言えるー。

しかしー
”記憶”ー
春菜の記憶は読み取ることができなかったー。

そのため、支配が進むにつれて、
”大学で春菜として振る舞う”ことは困難になりー、
それも、春菜を支配した景義が
大学に姿を現さなくなった理由の一つだったー。

「ーーい…意味が…意味が分からないよ…」
美姫は目に涙を浮かべながら春菜を見つめるー。

”奇行”ー
美姫から見ればそんな行動を繰り返す春菜に
対して、恐怖のような感情も抱き始めていたー。

春菜はそんな美姫を見て、
不気味な笑みを浮かべるー

「そうだ…せっかく女の子がふたり、部屋に集まったんだし~
 リアンと一緒に、エッチなことしよ♪」

無邪気に微笑む春菜ー。

美姫が身構えたその時だったー。

突然、春菜の表情が歪みー
頭を押さえるようにして、苦しみ始めるー

「ーーみ…み…美姫ー…た…助けてー」
春菜の突然の態度の変化に、美姫は戸惑いながら
「ーーど…どうしちゃったの!?春菜!」と、叫ぶー。

春菜は苦しみながら答えたー

「死んだ…死んだ先輩が…わたしの中にいてー…
 わたしの身体が…か…勝手にー…」

そう呟くのがやっとで、苦しそうにする春菜ー

「ぼ…僕の…じゃま…じゃまを…す…するなぁ」
春菜の異様な雰囲気に、美姫は「い…今すぐ病院に行こう!」と、叫ぶー。

何が起きてるのか分からないー
けれど、今の美姫にはそれしかできなかったー。

「ーーー…ごめんね…ごめんね…」
苦しそうに春菜が呟く中、美姫は春菜をなんとか病院に
連れて行こうとするー。

幸い、春菜のアパートの近くには、病院が徒歩数分の場所にあるー。

美姫は、早速支度をして、春菜を病院に連れていくため、
春菜を支えながらアパートから出るー。

近くの階段を下って、その先に病院がー

「ーーー僕は…」
階段に差し掛かったタイミングで、突然春菜が呟くー。

「ーーー!」
美姫が、春菜のほうを見て、不安そうな表情を浮かべるー。

「ーーは…春菜…?大丈夫ー?」
美姫がそう叫ぶと同時にー
春菜が叫んだー

「僕はリアンちゃんと一つになるんだ!!!!!!!!!!!」
とー。

美姫を振り払った春菜ー。

だがー
その時、春菜がバランスを崩して、
手を差し伸べた美姫も間に合わずー
春菜はそのまま一人で階段を転がり落ちてしまったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

「ーーーでも、本当によかったー」
美姫が微笑むー

「ーーうん…色々迷惑かけてごめんねー」

1週間後ー

数日間、
入院していた春菜は、無事に学校に復帰したー。

あのあとー
階段から転落して病院に運び込まれた春菜は、
治療を受けて数日間入院することになったー。

けれどー
”結果的に”それは良い方向に転がったー。

転倒した際のショックだろうかー。
春菜の中にいた景義はいなくなり、
春菜に景義の声も聞こえなくなったのだと言うー。

美姫が必死に病院側に説明した結果、
精密検査も行われたものの、異常はなく、
春菜も「もう…いなくなったみたい」と、安堵の溜息をついていたー。

春菜の中にいた景義は、消滅したのだー。

そしてー
今日、先日退院した春菜は、無事に学校に復帰したのだったー。

髪も黒に戻しー
振る舞いもいつも通りに戻りー、
美姫は、そんな春菜の姿を見て、
心底安心したように微笑んだー。

「ーも~…それにしても、わたしはリアン!とか言い出しちゃって
 本当に怖かったんだからね~!」
冗談を言う美姫ー

春菜は「わたしだって怖いよ~!」と、笑いながら答えるー。

すっかり元気になった春菜に安心しながら
美姫は「でも、元通りになって本当によかったー」と、
穏やかな表情で春菜のほうを見つめたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーふふふふふ…
 わたしはリアン…わたしはリアン…わたしは…リアンー」

夜ー
自分の部屋で、アイドルみたいな服を着て
ポーズを決めながら、何度も”わたしはリアン”と呟く春菜ー

「ーーあぁ…ついに”完全に”
 きみとひとつになれたよー
 きみの身体も、きみの記憶も、何もかも、僕のものだー」

春菜は微笑むー。

階段から転落したショックだろうかー。
春菜本人と強く結びつき、混ざり合いー、
そして、景義は完全に春菜を支配したー

今では春菜の記憶も全て景義のものー。
学校で春菜として振る舞うのも、たやすいー

「ーーーー」
この女が何であろうと、何でもいいー

僕にとっては、リアンなんだからー。

春菜を完全に支配した景義は
笑みを浮かべながら鏡を見つめるー

そして、春菜は満面の笑みで
鏡に向かって囁いたー

「ー大好きだよ、リアンちゃん♡」

とー。

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

「きみとひとつに」の最終回でした~!☆

ちなみに、
私の過去作品に「きみとひとつになりたい(皮モノ)」も
ありますが、
それとは今回のお話は関係ありません~笑

お読み下さりありがとうございました~!

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憑依<きみとひとつに>

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