”だんだん君と一つになっていく感覚がたまらない”
男に憑依されてしまった女子大生が
次第に支配されていく物語…
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女子大生の藤谷 春菜(ふじたに はるな)は、
最近、”あること”に悩まされていたー。
それはー
”とある男”の存在ー。
同じ大学に通う先輩、
木村 景義(きむら かげよし)ー。
最近、その男から一方的に
好意を抱かれて付き纏われているのだー。
始まりはー
2か月ほど前だっただろうかー。
大学内で友達と歩いていた春菜に向かって、
突然、景義が「リアンちゃん!」と叫んだのだー
最初、春菜は自分が呼ばれているとも知らずに、
友達とそのまま普通に話を続けていたものの、
景義が突然目の前まで歩いてきて、
「ここにいたんだね…リアンちゃんー」と
訳の分からない言葉を口にしたー。
「ーーり…りあん…?あ、あの…」
春菜は、困惑の表情を浮かべるー。
横にいた春菜の友達・美姫(みき)も、
戸惑った様子を見せているー。
「ーーふへへへへ…リアンちゃんってば
僕の前から急にいなくなっちゃうんだもんなぁ…
寂しかったよぉ…
君は、僕の女神なのにー」
景義の”明らかに普通ではない様子”に、
春菜は戸惑いながらも
「ーーす、すみません…人違いをされてませんか?」と、
景義に対して確認するー
景義は「人違い?」と首を傾げてから
不気味な笑みを浮かべると、
「僕には分かるよ!髪を黒く染めても、
どんな格好をしていても、リアンちゃんはリアンちゃんだ!」と、
嬉しそうに、興奮した様子で叫ぶー。
「ーす…すみません…あのー」
そこまで言うと、春菜は持っていた鞄の中から
学生証を取り出して、それを見せつけたー。
そこには”藤谷 春菜”と記載されているー。
「ーーーふじたに…はるな…?」
景義は表情を歪めてから、
少しすると再びにこっと笑みを浮かべたー
「リアンちゃん、もしかして、自分がリアンだったことを
覚えていないのかいー?」
気味の悪い笑みを浮かべる景義ー。
そんな彼の様子を見て、春菜の横にいた美姫が
春菜の手を引っ張るー。
「ね…ねぇ、春菜、いこっ」
とー。
「ーーう、うんー。」
春菜もそれに応じると、今一度景義のほうを見て
「あの、わたし…本当にお探しの人ではないのでー…」と、
頭を下げて、そのまま立ち去って行ったー。
その後ー
春菜は自分に声を掛けて来た先輩・景義が
周囲から孤立しているタイプの男子大学生であることを知るー。
”リアンちゃん”というのは、
義景がハマっていたスマホゲームのヒロインで、
”リアンちゃんと一緒に素敵な日々を過ごそう♡”という
キャッチコピーで、配信されていたゲームの
キャラクターだったー。
基本プレイ無料の形式で配信されていて、
景義は、そんなゲームのヒロイン・リアンに
バイトで稼いだお金を全てつぎ込み、
リアンを心から愛していたのだと言うー。
”リアンは嫁”だと堂々と公言し、
そして、リアンのためだけに、毎日の時間を
費やしていたー。
しかしー…
そのゲームが先日”サービス終了”となってしまったのだー。
サービス終了を迎えるのは
ソーシャルゲームの宿命。
どんなに人気を博したゲームでも、
いつかは終わるー。
終わりを迎えるとき、そのゲームのヒロインとは別れを
迎えることになるし、
今まで、そのゲームにつぎ込んできたお金は、
サービスの終了と共に、
泡となって、消えていくー。
それが、真理だー。
けれども、人々はソーシャルゲームに熱中するー。
人生も、いずれ消えるー。
そう考えると、
いずれサービス終了を迎えるソーシャルゲームに
そのひと時の輝きを求めることは、間違いではないのかもしれないー。
人は、人の死を乗り越えるー。
そして、自分のプレイしていたゲームの終焉も乗り越えるー。
だがー
彼は、景義には、”それ”が出来なかったー。
サービス終了を迎えるその日ー
ゲーム内の最後のイベントで
リアンに”今までありがとう!わたしはあなたの側にいつでもいるね!”と
言われた時に、景義は絶叫したー
「いかないで!いかないで!」と、
ずっと部屋の中で叫び、赤ん坊のように泣いたー。
景義には、リアンのいない生活は耐えられなかったー。
「ーーー…似てる?」
春菜が、終了したそのゲームの公式サイトを見ながら
友人の美姫に確認すると、
美姫は「確かにちょっと似てはいるけど…」と、苦笑いをするー。
スマホの画面には景義が愛したキャラクター・リアンの姿が
写っているー
金髪の可愛らしい少女だー。
色々な衣装を購入してプレゼントしたりすることも
出来たらしいー。
「ーーでもさぁ…このリアンって子を、
春菜と間違えるなんて、ヤバくない?」
美姫が気味悪い!と言いながらそう呟くと、
春菜も「う~ん…まぁ…」と、苦笑いしたー。
「そもそも、髪の色も違うし、このリアンって子、
無邪気で明るく元気な子ー、みたいなこと書いてあるしー」
美姫の言葉に、春菜は少しだけ微笑むー。
この時はまだー
このあと起きる出来事を、二人は知る由もなかったー。
それから数日後ー
再び景義が春菜の前に姿を現し、
ゴスロリ風の服を突然プレゼントしてきたのだー
「え…」
戸惑う春菜ー。
「ーー前は画面の向こうからのプレゼントだったけど、
今度はこうやって、直接プレゼントできるね」
微笑む景義ー
その景義の笑みを見て、春菜はゾッとしてしまったー。
ゲーム内のヒロインに課金ー…
それが、”リアンに似ている春菜に課金”に変わったのだー
春菜は「す、すみませんーわたし、いらないので」と、
慌てて景義にその服を返すと、
そのまま走り去っていくー
「なんでだよ!」
背後から叫び声が聞こえるー
「リアンちゃんなんでだよ!僕のこと、忘れたのか!
僕が、どれだけ君を愛してると思ってるんだ!」
大声で叫ぶ景義ー。
春菜は震えながら、景義から逃げ切ると、
大学側に景義のことをただちに相談しー
大学側は景義に”厳重注意”を行ったー。
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景義が初めて春菜の前に姿を現してから
既に2か月ほどが経過した現在ー。
春菜は今日も、周囲に怯えるようにしながら
食事を食べていたー。
「ー春菜~!」
背後から声がする。
春菜が安心した様子で振り返ると、
そこには美姫がいたー。
春菜は大学内で”できる限り”誰かと一緒に
行動するようにしているー。
大学側から厳重注意を受けたにも関わらず、
景義は未だに迷惑行為を続けており、
春菜はすっかり怯える日々を送っていたー。
「ー大丈夫大丈夫。あの変態が来たら追い払うからー」
美姫が言うと、春菜は「ありがとうー」と、
呟きながらも、どこか落ち着かない様子だったー。
結局ー
その日は景義が春菜の前に姿を現すことはなく、
そのまま大学での1日が終わったー。
ーーはずだったー。
「ーーーリアンちゃんー」
大学から帰る途中ー
背後から、その声が聞こえて、
春菜は咄嗟に振り返ったー。
そこにはー
”景義”の姿があったのだー。
「ーーリアンちゃんー
どうして?どうしてなんだ?
僕はー
僕は、世界で一番リアンちゃんを愛しているのに!」
周囲の人混みも全く気にする様子を見せず、
大声で叫ぶ景義ー。
春菜は「いい加減にして下さい!」と叫び返すー。
しかし、景義は
「僕はリアンちゃんで毎日抜いてるんだよー」と、
突然笑みを浮かべながら言い始めたー。
「リアンちゃんは、何日に1回ぐらい僕で抜いてくれてるの?」
景義の不気味な笑みー。
春菜は”話が通じない”と判断して
慌てて逃げ始めるー。
だが、景義は「リアンちゃん!待って!」と叫びながら
春菜のことを追いかけてきたー。
必死に逃走する春菜ー
春菜が長い階段を下りながら、景義から逃げているー。
その時だったー
今日は、ちょうどお昼過ぎまで雨が降っていたー。
そのため、階段がまだ滑りやすくなっていてー
春菜を追って、階段を下ろうとしていた景義が、
バランスを崩して、勢いよく階段の上から転落し始めるー。
「ーーーうわああああ!リ、リアンちゃああああん!」
背後から景義の気味の悪い叫び声が聞こえて来て
咄嗟に振り返る春菜ー。
けれどー、
振り返った直後には、既に自分の目の前まで
迫ってきていた”転落中の景義”の姿があってー、
春菜はそれを避け切ることができなかったー
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「ーーーーうっ……」
目を覚ましたのはー
病院だったー。
春菜が目を覚ました時に、最初に目に入ったのは
見知らぬ天井ー。
春菜は驚いて周囲を見渡してー
すぐにここが病院であることを理解したー
「ーーーえ………」
春菜はここに至るまでの出来事を思い出すー。
そうだー
わたしは、あの変な先輩に追いかけられてー
すぐに、病院に運び込まれた理由を理解する春菜ー
「ーーっ…」
腕のあたりに痛みが走るー。
あの時、上から景義から追いかけられてー
「ーー…あら?目が覚めましたか?」
病院の看護師が偶然、部屋に入ってきて、
春菜に声を掛けるー。
「ーあまり、打ちどころが悪くなくてよかったー。
幸い、手に多少の怪我をしただけで済んだみたいだからー」
看護師の言葉に、春菜は「あ…ありがとうございます」と、頭を下げるー。
そしてー
春菜は少し考えてから、
言葉を口にしたー
「あ、あの…わたしと一緒に階段から落ちた人はー…?」
春菜が言うと、
「あ~…うん」と、看護師は少しためらってから言葉を続けたー。
「ーあなたを巻き込んで階段から転落した男の人はー…
そのまま頭を強く打って…亡くなったわー」
看護師の言葉に、
春菜は衝撃を受けると同時に、
不謹慎なのはわかっているけれどー
どこか少し”ホッとした”という気持ちもあったー。
これで、もう”リアンちゃん!”などと、勝手に
ゲーム内のヒロインと勘違いされて
ストーカーまがいの行為をされる心配もなくなったのだからー。
人として、他人の死で喜ぶー…
それは、良くないことだとは思いつつも、
でも、自分を脅かす存在がいなくなったー…と、いうことに
”安堵の感情”を抱くのはー
人間である以上、仕方のないことと言えたー。
「ーーー…今日中には退院できますよー。
まずは、ゆっくりしていてくださいね」
看護師がそう言って部屋から立ち去っていくー
春菜は、複雑な感情を抱きながらため息をつくー。
その時だったー
”まさかー僕がリアンちゃんとー
きみとひとつになれるなんてー”
「ーーえっ!?」
春菜が表情を歪めるー。
景義の声が聞こえたのだー
”ふふふー。僕はここだよー
僕、階段から落ちて死んじゃったみたいなんだけどー
気づいたら、リアンちゃんー…きみの中にいたんだ”
「ーーえ…?な…何を言ってるのー?」
春菜が不安そうな表情を浮かべると、
春菜が突然、”自分の意思とは関係なく”笑みを浮かべたー
「ーふふふふふ…僕がー、リアンちゃんになったんだー…
ぐふふふふふふー」
春菜の口から、そんな言葉が漏れるー
「ーー!?!?!?!?!?!?!?」
春菜は驚いた表情を浮かべると、
景義は”僕…リアンちゃんに…そう、”憑依”っていうのかなー…
しちゃったみたいだ”
と、春菜の”中”から語り掛けたー。
”きみとひとつになれるなんて、最高だよー…”
春菜の中から聞こえるその言葉にー、
春菜は恐怖を感じることしかできなかったー
②へ続く
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コメント
階段で転落…☆
だと、入れ替わりモノな気もしてしまいますが
今回は最初に書いている通り憑依デス~!
たまには、階段転落で憑依が起きてもいいですよネ~笑
お読み下さりありがとうございました~!
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